- スレ1-356
 
- 手
 - 07/10/04 20:44:22
 
 今日の放送を見たら無性に書きたくなった。 
 今日の放送のネタばれあるかもですがご容赦ください。   
 にぎやかなヨスガの町明かりもだんだんと落とされていき、周辺は静かな眠りの時間が訪れようとしていた。 
 「はぁ・・・。」 
 ポケモンセンターの部屋のベランダの一角。 
 そこでヒカリが一つため息をつく。 
 濃い紫を幾重にも塗り重ねたような空に星が散らばり、ため息が吸い込まれていく感覚だけがわずかに残った。 
 正直、今日の敗戦はショックだった。 
 自信はあった。 
 ポケモンも心から信頼していた。 
 自分のベストを尽くしたつもりだった。 
 でも負けた。 
 (あたしのためじゃなくて、ポケモンのために、でしょ?) 
 ノゾミの言葉が胸に刺さる。 
 自分は過信していたのかもしれない。 
 そんな考えがいまだに胸中に渦巻いて、気持ち悪かった。 
 他の皆にはそれでも心配をかけたくなくて、悔しさと悲しさを隠しているつもりだが、ばれているのだろう。 
 だからこそ、ノゾミとの反省会の後もサトシとタケシはコンテストのことについて触れなかった。 
 「・・・」 
 自分の尊敬する母親に電話したとき、自分に頼ってはいけないといわれた。 
 そんな言葉も、ノゾミの言葉もぐるぐると頭の中で交差していって、サトシとタケシが慰めてくれても反発してしまった。   
 「・・・っ・・・ぅ・・・」   
 まったくいやになる。 
 ポケモンたちの力も、仲間の応援にも答えられなかった。 
 ヒカリはしばらく声を殺して泣いた。 
 涙と一緒にこの感情を流してしまえればいいのにと。 
 自然に瞼から落ちる雫を、とどまるまで拭う。 
 涙が止まった頃には、目が腫れぼったい感じがして、少し痛かった。  
 
- スレ1-359
 
- 手
 - 07/10/04 21:28:49
 
 雲に隠れていた月が、再び顔を出す。 
 月明かりで目のはれた顔が見られてしまうかもしれない。 
 それでもかまわずに、ヒカリはサトシの目を見た。 
 「ありがとうね、サトシ」 
 サトシは答えなかったが、笑ってくれた。 
 それが嬉しくて、ヒカリも笑い返す。 
 「サトシも、いざとなったらあたしを頼ってね」 
 「ああ、もちろんさ!」 
 そうやってまた、夜空を二人で眺めた。 
 空気は冷えていたが、それでも心は温かみを取り戻していた。 
 心のもやもやとしたものが、晴れていく。 
 するとサトシがこちらを振り返り、さわやかに歯を輝かせる様子が見えた気がした 
 「なっ・・・!」 
 「・・・どうした?ヒカリ」 
 「な、なんでもない!大丈夫・・・」 
 なんだったのだろうか、今のは。 
 顔が上気しているのが分かる。夜じゃなかったらばれていたかもしれない。 
 そもそもサトシの歯は光ったりしない。 
 気のせいだ。そう自分に言い聞かせても顔はまだ熱を持っている。 
 サトシはよく分からないといった風で見つめていたが、しばらくすると 
 「さ、風邪引くし部屋に戻ろうぜ」 
 「あ、うん」 
 サトシはヒカリの手を引いた。 
 また少し、顔が熱くなる。 
 なんなのかは分からなかったが、悪い気はしない。 
 お互いの手は冷えていたが、暖かく安心できた。 
 「あ、サトシ」 
 「どうした?」 
 ヒカリが、手を離す。 
 すると彼女は手をゆっくりと上げた。 
 「あぁ・・」 
 サトシにもヒカリがやろうとしていることが伝わって、サトシも同じように手を上げる。 
 パンッ! 
 乾いた音が夜の空気を一瞬だけ割いた 
 ただなんとなく、そんなハイタッチでもいい。 
 お互いに頼れる仲間がいる、その証なのだから。   
                  了   
 思いつきでアドリブ書きした所為で展開が変ですがご容赦を。