フルスロットルでGO?
- スレ1-365
 
- フルスロットルでGO?
 - 07/10/05 21:07:14
 
 >>362氏の前菜として俺が懲りずに二回目の投下をする。期待はしないでくれ   
 広大な大湿原のあるノモセシティを抜けたサトシたち一行は213番道路に差し掛かっていた。 
 辺りは草叢や木が生い茂っており空気がとてもおいしい。そんな道を進んでいると、二人の男女がなにやらビラを配っているようだった。 
 「何してるんだ?」 
 「何か配ってるみたいだけど…」 
 「ん!?あれは!!」 
 後姿で好みのタイプだとわかったのか、タケシはそう呟くといつものごとく凄まじい勢いで走り出す。 
 「お姉さーん!自分はタケシと申します!失礼ですがあなたのお名前をお伺いしたい」 
 茶色のポニーテールを揺らしながら女性が驚いた様子で振り返り答えた 
 「へっ?ユイですけど…」 
 「ああユイさん、あなたのその美しい姿に、自分は心を打ち抜かれました!。これから自分と一緒に愛と書かれたビラを配りま―っ!?シビレビレ~…」 
 そのままバタリとタケシは崩れ落ちた。見ると、いつの間に出てきたのかグレッグルがタケシを引きずって何処かへ引きずっていってしまった…。 
 「えっと…」 
 ユイはどうしたらいいのか目をパチクリしながら言葉を失っている。 
 「いつものことだから気にしないでください」 
 そうタケシに少し遅れてきたヒカリが苦笑いしながら言う、何を配っているか興味を持ったサトシが 
 「ところで何を配っていたんですか?」 
 と聞いた。ぱっと笑顔を作りながらユイは 
 「ああこれ?実はこの先の海岸で水上バイクのレースをやるのよ、賞品はなんとリゾートホテル無料宿泊券!どう?参加してみない?」 
 そういったのだ。その言葉に真っ先に反応したのはヒカリだった。  
 
- スレ1-366
 
- フルスロットルでGO?②
 - 07/10/05 21:08:50
 
 「ええ!?リゾートホテルってあのシンオウでも屈指の人気があるあのグランドレイク!?ねえサトシ、せっかくだから参加してみようよ~」  
 そう目を輝かせてヒカリが言った。無論賞品が目当てであろう。そんな事とは露知らずサトシは  
 「確かに面白そうだな、よし!やってみるか!」  
 とやる気なった、その答えを聞いてヒカリが嬉しそうに  
 「うん、頑張りましょ♪」  
 そう返し、早速説明を受けようとする。しかし、いつのまにか復活したタケシがわって入り  
 「ユイさん!水上バイクに乗って自分と共に愛を語りながら地平線のかなたまで―いっ!?」  
 再びグレッグルの毒突きを食らって引きずられていったのはいうまでもない…。  
 そのやり取りを無言で見送った後、ユイは忘れてたとばかりに  
 「…そうそう!ルールはそこにいる彼に聞いてね」  
 と隣にいた男を指差した。指差された彼は何もしゃべらず黙っているものだからユイが促す  
 「ほらっ早く早く」  
 「では…ルールを説明する」  
 そういうと彼は二人にビラを渡してから説明を始めた。   
 
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- フルスロットルでGO?③
 - 07/10/05 22:08:03
 
 「ルールは三人で1チームとし、そこに書かれているコースを通っていく。チームの中で最も早かった者の成績がチームの順位となる。なおレース中ポケモンの所持は認められない」 
 「え!?どうしてですか?」 
 サトシの問いに対して答えたのは彼ではなくユイだった 
 「実は前の大会でね、ポケモンを使った不正行為があったのよ。だから使用禁止なっちゃったってワケ。ポケモンは私達が責任を持って預かるから心配しないでね」 
 「わかりました、じゃあピカチュウたちをお願いします」 
 「お願いしま~す」 
 二人はそれぞれの手持ちと痺れてまだ動けないタケシの手持ちをユイに渡した。 
 「ピカチュウ、みんなを頼むぜ」 
 「ポッチャマ、ピカチュウと一緒にみんなを世話してね」 
 ピカチュウは頷き、ポッチャマは任せておけといわんばかりに胸を張る。 
 「頼んだわよ。ってタケシ早くたってよー、私早く行きたいの~」 
 ヒカリは急かすがタケシは動かず 
 「う…動けん…」 
 と倒れながらいった。その様子見て 
 「しょうがないなぁ、ほら肩貸すぜ」 
 「私も肩貸すから捕まって」 
 「す…すまない…ていうか俺も出るのか?」 
 「三人一チームだから当たり前でしょ?」 
 「頼りにしてるぜ!」 
 二人はタケシに肩を貸しながらそんな会話をし、海岸まで歩いて行った。   
 「あの男、見たところ負傷してるみたいだが大丈夫なのか?」 
 「あの子達曰くいつもの事らしいからいいんじゃない?それよりもう時間だからコースの準備に行くわよ」 
 「…了解」 
 そう軽く会話し、ユイと男はサトシ達とは違う方向に小走りいった。  
 
- スレ1-369
 
- フルスロットルでGO?④
 - 07/10/05 23:03:44
 
 海岸につくと沢山の参加者が既に準備をしスタートの時を待っていた。 
 サトシ達は先ほど貰ったビラに書かれている【緑色の6番、12番、18番】と書かれているバイクを探す、そしてバイクを見つけたがそれぞれ離れておいてあることに気づいた。 
 「どうやらスタートがそれぞれ離れて行われるらしいな」 
 「そうみたいだな、燃えてきたぜ!」 
 そう意気込み、やる気満々でバイクに乗り込もうとするサトシとは打って変わって 
 「(なんか変な感じだな…)」 
 とヒカリはなぜかそんな気持ちになっていた。今までずっと一緒だったサトシたちと離れてしまうことが原因かもしれない。 
 だがルール上仕方のないことだ。 
 「(大丈夫…大丈夫…)」 
 目を閉じ、そう自分に言い聞かせる。 
 「大丈夫か?ヒカリ?具合が悪いんだったらやめておいたほうがいいぜ?」 
 ヒカリの異変にいち早く気づいたサトシが心配そうに問いかける。 
 「えっ!?うん…大丈夫、大丈夫」 
 「それならいいんだけど…」 
 サトシはヒカリのことを気にしつつバイクに乗り込んだ。ヒカリも自分のバイクに乗り込む。 
 ヒカリは大丈夫といったものの違和感が治まることはなかった。 
 「(今はレースに集中しなきゃ)」 
 そうこうしてるうちにいつからそこにいたかも判らない司会がマイクを振りかざし 
 「さあ、そろそろレースのはじまりだー!みんな準備はいいかー?それじゃ行くぞー!!!」 
 それから数秒待って旗が振られ、その瞬間一斉にサトシ達含む参加者たちがスタートした。  
 
- スレ1-370
 
- フルスロットルでGO?⑤
 - 07/10/05 23:44:07
 
 波打ち際に近いところを沢山の水上バイクが走っていき、いたるところで水しぶきがあがり服をぬらす。 
 「くっ運転しにくいな」 
 そうサトシは悪戦苦闘しながらなんとか運転していた。スタート時はヒカリ達がどこにいるかが大体わかってたが、今では周りのバイクの引き起こす波で横転しないよう運転するのがいっぱいで気にかける余裕がなかった。 
 現在位置は恐らく中盤より後ろ辺りだろう。 
 「みんな大丈夫かな」 
 そう呟いた後、矢印が沖に向いた看板を見つけハンドルを切っていった。 
 ヒカリはというと無言のままとても的確にバイクを運転していた。周りにほとんどバイクがいないことと後ろから聞こえるエンジン音から、結構上位にいることだということが判る。 
 「(なんかつまんないな…)」 
 はじめは賞品目当てで参加した大会でもちろん楽しみだっただが、それはサトシ達と共に行くから楽しいのであって今の状況はけっして決してそうはいえない。 
 そんな気持ちのまま運転していると前方に最初にビラを配っていた女性―ユイがラプラスに乗ってたたずんでいた。 
 隣にはカメックス、ジュゴン、アズマオウがいる。 
 「ユイさん!?どうしてここに?」 
 「フフッそう簡単にゴールさせるワケにはいかないの、みんな!ハイドロポンプよ!!」 
 そう命じられたポケモンたちは一斉に激しい水圧の大砲を繰り出す。 
 「キャアッ!?」 
 「ほらほら~頑張らないと先には進めないわよ~」 
 ユイはそういうと他の参加者にもハイドロポンプを打ち出すように命じる。すでに何人かは命中してリタイヤしていた。 
 「(ま、負けてたまるもんですか!)」 
 ヒカリは迫り来るハイドロポンプを寸でのところでかいくぐり、見事難関を突破することに成功した。 
 「(あちゃ~突破されちゃった…)」 
 ユイは頭の中でそう思いつつ次から次へと来る参加者にハイドロポンプをかます。他にも何人かは突破して行ったようだ 
 そして後から来たサトシがこれを突破するのに多少時間がかかってしまったのは言うまでもない。  
 
- スレ1-374
 
- フルスロットルでGO?⑦
 - 07/10/06 01:20:23
 
 人が二人乗っているのにもかかわらず、バイクは疾風のごとく走っていき参加者達をゴボウ抜きにしていった。途中抜かれた者の一人は  
 「なんであんなにはやいんだよ…ありえないだろ」  
 そう口から漏らしていた。  
 最終コーナーを曲がり、スタートした時のような波打ち際を走っている時、巻き上げる水しぶきが海岸にいた一人のトレーナーにかかってしまった。  
 「わりぃ!!」  
 「ごめんなさーい!!」  
 「な、何だってんだよー!!!」  
 そう傾きかけた日の下、三つの声が響き渡った。  
 そしてついにスタート地点でありゴールが見えてきた。やっとついた、そう二人は確信すると同時におかしなことに気づいた。なにやらピンク色の液体で汚れたバイクと参加者達が沢山海に落ちていたのだ。  
 「なんなんだ…あれ?」  
 「さ、さあ…」  
 言い知れぬ不安が二人を襲う。しかしその答えは案外すぐ近くにあった。彼だ。あの時ユイと一緒にいたあの男がバズーカのようなものを持って海岸からこちらを狙っている。  
 「ターゲット確認…攻撃開始」  
 そう呟くと同時に引き金を引き、ピンクのねばねばしてそうな球体を発射した。  
 「右よっサトシ避けて!」  
 「おうっ!」  
 ヒカリの指示を受けて回避するサトシのコンビネーションは見事で一発もかすることなくヒラリヒラリと球体を避けていった。  
 「…ちっ」  
 彼はそう舌打ちするとバズーカをその場に置き、今度はガトリングガンのようなものを取り出し再び打ち始めた。弾速は速くどんどんバイクに迫ってくる。  
 「サトシもっとスピード上げて!」  
 「もう全開だって!!」  
 それから二、三発球体が二人に命中したところで弾は飛んでこなくなった。どうやら射程外まで逃げ切ったらしい。  
 「(ターゲットロスト…やるな)」  
 彼はそう二人に感心しつつ次の獲物に標準を合わせるのだった。   
 
- スレ1-375
 
- フルスロットルでGO?⑧
 - 07/10/06 01:47:07
 
 バイクが始まりであり終わりの場所を通る。 
 「ゴーーーーール!!!!なんと予想外の二人乗りでのチェッカー!しかし残念ながら順位はおしくも4位!。だが大健闘のレースだったぞ!!」  
 実況と盛大な歓声が二人を迎える。  
 「ゴールだぜヒカリ!」  
 「やったねサトシ!でも…一位になれなかったね…」  
 「そんなのいいじゃんか、俺ヒカリと一緒ですごく楽しかったぜ!!」  
 「サトシ…私もたのしかったよ!!」  
 その後他の参加者達も帰ってきて(といってもほとんどが水浸しだったり、粘々したピンクの液体まみれだったが)表彰式が始まろうとしていた。 
 ヒカリは表彰台にのぼっていく者達をを見ずに下を向き溜め息をついていた。 
 「おいヒカリ!あれ見ろよ!!」 
 「え?なに~」 
 どっと疲れたヒカリだれ気味に上を向き、それから言葉を失った。なんと最上段でトロフィーを掲げてるのはタケシではないか。タケシがこっちに気づき手を振る 
 「おーい!ふたりともー!」 
 「やったなタケシ!!」 
 「すごいじゃんタケシ!」 
 「ああ!俺やったぞ!」 
 こうして水上バイク大会は幕を閉じたのであった。  
 
- スレ1-376
 
- フルスロットルでGO?おまけ1
 - 07/10/06 01:56:56
 
 笑顔で会話してる三人を少し遠くで見ていた二人がいた 
 「あの子達、いいなぁ」 
 「何だ?ホテルに泊まりたかったのならお前も参加すればよかったじゃないか?」 
 「そうじゃないわよっこの馬鹿。さ~ていいもの見せてもらったし私達は旅にもどろっか?」 
 「(…よくわからんが、まあいいか)ああ」 
 こうして二人は誰にも気づかれないうちにその場を立ち去ったとさ。  
 
- スレ1-377
 
- フルスロットルでGO?おまけ2
 - 07/10/06 02:08:24
 
 ホテルグランドレイクの一室でサトシ達は先ほどの疲れを癒してた。 
 サトシとタケシは既に寝ていたがヒカリはまだ寝ておらず、今日抱いた思いについて考えていた。 
 「(なんだったんだろうなあれ)」 
 あれとはサトシに掴まっていたときに感じたことである。 
 楽しいとか、安心とはちょっと違う、【何か】。しかし考えても考えてもあるのは答えのないもやもやしたものだけで一向に解決しなかった。 
 「(考えてもしょうがないか、もう寝よ)」 
 床に就いたヒカリが深い眠りにつくのに時間はかからなかった。 
 そして三人共、朝起きるのが大分遅くなったのは言うまでもない― 
 ~Fin~