タマゴの思い出

  • スレ1-387
  • タマゴの思い出①
  • 07/10/08 00:21:35
此処見て書きたくなった
投下は初めてだけど、>>381-383の続き待ちのおつまみにでも(・ω・`)


ポケモンセンターまでまだ距離のある小さな村で、急な雨に降られて困っていたサトシ達を
雨宿りさせてくれたのは、小さな育て屋をしている老夫婦だった。
雨宿りの恩にと、此処での仕事の手伝いを申し出たヒカリに、サトシとタケシが首を横に
振るはずもなく、タケシは預かったタマゴの世話、ヒカリはポケモン達のポフィン作り、
サトシも外で遊びたがるポケモン達の誘導などで手伝いを始める事にした。
そのまま夜になっても止まない激しい雨に止めてもらえる事になり、老夫婦と一緒に夕飯をと
用意をしていた矢先、村人の青年が駆け込んできた。
どうやら、彼の家のミルタンクが病気になったので診てほしいとの事。
この村は、大きな街と町のちょうど境にあり旅人の必需品とも言えるフレンドリィショップも
ポケモンセンターの無い為、村人達の相談もよく持ち込まれると老夫婦の話だ。
仕方なくタケシが手伝いで老夫婦と一緒に彼の家へと向かう事になり、サトシとヒカリは
留守番とポケモン達やタマゴの世話を任される事になった。
「ねえ、ミルタンク、大丈夫かな?」
家族も同然だろうミルタンクの病気を心配した青年の顔を思い出し、ヒカリもサトシの
方に振り返りながら何時もの笑顔を曇らせている。
「大丈夫さ。 ミルタンクの病気に効く木の実があるってタケシが言っただろ?」
「うん… そうだよね。 大丈夫、大丈夫…!」
笑い返すサトシに、ヒカリも漸く何時もの口癖を口にする。
だが…
「きゃーっ!!」
何度も聞こえる雷が一際大きな音をたてた瞬間に突然消えた室内灯に響き渡るヒカリの悲鳴。
「おい、ヒカリ! 大丈夫だって!!」
体当たりするかのように抱きつかれたサトシは苦笑するしかなく、ぽんぽんとその背を叩く。
「あー、びっくりした」
「ヒカリのあの大声で、此処のポケモン達の方がびっくりしたんじゃないのか?」
「そ、そんなに大きな声出してませーんーっ!」
からかい口調に怒るヒカリが顔を上げ、互いの顔を見合わせるとほぼ同時に笑い合った。

  • スレ1-388
  • タマゴの思い出②
  • 07/10/08 00:23:02
なかなか復旧しない電気に、仕方なくとソファーに一緒に座るサトシとヒカリ。
ヒカリの腕の中には、此処で預かっているタマゴが大事そうに抱かれている。
彼女曰く「電気がなくて温めてあげられないからせめてね」だそうだ。

「あ、ねえ、サトシ」
そのタマゴを見詰めていたヒカリが不意に顔を向け、サトシが?顔で振り返る。
「サトシはポケモンのタマゴを孵したことってあるの?」
「ああ、あるよ。 ゴマゾウのタマゴを貰って、オレ自分のシャツの中で孵したんだ」
「そうなんだ。 いいな~ あたしも何時かポケモンのタマゴに会えるかな~」
「旅を続けていたら、きっと会えるさ。 …でも、最後は別れる事もあるけどな」
「サトシ?」
「オレ、前にヨーギラスと逢った事があるんだ。 あいつがまだタマゴの時に」
ヒカリの腕の中のタマゴに眼を向けたサトシの表情から笑みが消える様子に、ヒカリが
開きかけた口を閉じる。

「ヨーギラスは、タマゴの時に密猟者に盗まれて親のバンギラスと引き離されたんだ。
あいつは、それが元で外に出るのを怖がってさ。 生まれてからもしばらくは周りは
怖い物ばかりで全然オレの方も見てくれなかったんだ」
懐かしさと寂しさを見せるサトシの横顔に、ヒカリは驚きながらもハンターJと対峙した
時のサトシの怒りを思い出していた。
「それから色々あって、漸くオレにもタケシ達にも懐いてくれた時、ヨーギラスの生まれ
故郷の保護区に連れて行ったら、また密猟者達が居て…」
当時を思い出しているのか、サトシは自分の掌を握り締めているのに気付いてはいないだろう。
「ヨーギラスだけじゃなく、あいつのママのバンギラスまで狙われて…」
「それでっ!? どうなったのっ!?」
「最初はオレ達の事も憎んでいたバンギラスも解ってくれて、密猟者をとっ捕まえた後
ヨーギラスはやっとママの元に戻れたんだ…」
そこで大きく息を吐き出すサトシを、同じく安堵した息を零したヒカリが見詰めていた。

  • スレ1-389
  • タマゴの思い出③
  • 07/10/08 00:26:39
「…良かった」
「オレさ。 今でも時々あいつ、どうしてるのかな~って思い出すんだ」
ヒカリの方に顔を戻したサトシの表情は何時もの笑顔に戻っていて、思わずヒカリも
笑い返した。
「そのヨーギラスに会いたい?」
「…うん。 でも、もうオレの事、忘れちゃったんじゃないかなって…」
「そんな事ないっ!」
「ヒカリ?」
「だって、ヨーギラスを孵して外の楽しさを教えてあげたのは、サトシなんでしょ?
だったら、絶対覚えてるよっ!」
我が事のように力説するヒカリに、驚いた顔を笑みに戻すサトシ。
「サトシが今でも思い出すように、そのヨーギラスだって今もサトシの事を思い出して
会いたいって思ってるかも… ううんっ! 絶対そうよっ!」
まるで言い聞かせるような口調に、思わず吹き出すサトシ。
「何よっ! 何でそこで笑うのっ!?」
「ごめん。 でも… ありがとう、ヒカリ」
「えっ?」
「オレも、本当はそう思ってたんだ。 ヒカリがそう言ってくれて自信がついたよ。
だから… ありがとう」
「そっか。 じゃあさ、今度ヨーギラスに逢いにいく時は、あたしにも紹介してっ!」
「ああ、いいぜ。 一緒に会いに行こうっ!」
次第に遠ざかる雷鳴と稲光が部屋を照らし出す中、笑い合うサトシとヒカリ。

やがて、びしょ濡れで笑顔で戻ってきたタケシと老夫婦が見たものは、一緒にタマゴを
抱えたままソファーで並んで寄り掛かり合って眠っているサトシとヒカリの姿だった。


愛と勢いでやったorz
>>381-383
続くwktkでお待ちしてます