夢か現か

  • スレ1-29
  • 夢か現か
  • 07/09/04 20:10:55
とりあえず昨日思いついたけどかけなかったねたでカキコ。

ゴツン!と、頭に衝撃が走るのを感じてすぐに、意識が別の方向へと消えていくのをヒカリは感じた。
自分を呼ぶ心配そうな声がやけに遠くに聞こえる。
「ふにゃ・・・」
体を動かす気も起きず、ヒカリはそのまま意識を闇に落とした。

「ポチャ・・・」
頭が痛い・・・。
そんなことを思いながら、体を起こして周りを見回す。
ヒカリは一番に、ベッドや自分の周りのものがやけに大きく感じた。
こちらに気がついた様子のジョーイが、少しあわてた、しかしほっとした様子で聴診器を当てる。
しかし大きなジョーイさんだ。
ひとまずサトシたちはどこだろう、と声を上げて、ヒカリは自分が奇怪な声を発したのに気がついた。
視界にあるのは、短く水かきのついた脚と小さなひれのような手。
口元にそれを当てて確認してみれば、硬くとがったくちばしがあった。
そしてガラス越しに見える隣の部屋に寝ているのは・・・。

「ポポポ、ポッチャーーー!!??」
まさしく、自分の体だった。


  • スレ1-30
  • 夢か現か
  • 07/09/04 20:30:46
「はい、サトシ君。ポッチャマの方は特に異常はないわ。ただ、少し興奮しているみたいだから注意してあげてね」
「はい、ありがとうございます。あの・・・ヒカリは・・・」
「ポチャ!ポチャポーチャ!」
説明してくれと、そういったはずなのにポチャポチャとしか言葉が出ない。
いったいどうなっているのかわけもわからない
脇では、自分のものであるはずの体の額に、タケシが冷ましたタオルを置いていた
「頭を木から落ちてきたポッチャマとぶつけただけだし、大丈夫だとは思うけど・・・。」
「打ち所によっては、意識の回復には時間がかかるでしょうね・・・。」
「そうですか・・・」
頭を打った。
一生懸命それに当てはまりそうな事柄を思い出す。
ベッドの上によじ登って確かめたけれど、確かに本物の体だった。
確か、木陰でうたたねをしかけていた所に、木の上でピカチュウと遊んでいたポッチャマが落ちてきて・・。

そこから覚えていない。
(そうか、夢よ。)
そもそも自分は転寝しかけていたのだ、これは夢に違いない。
頭を打ってポケモンに意識が移るなど、聞いたこともない。
これは夢だろう。多分。
そうすると妙に安心できて、せっかくだからポッチャマの体を楽しもうと思って、ヒカリ(姿はポッチャマ)はベッドの上から跳び降りた。
(わっ・・)
小さな体に慣れていないせいだろうか、着地はしたもののバランスを崩してこけてしまった。
「おいおい、ポッチャマ大丈夫か?」
まだ頭を打ったせいでふらふらするんだろうと、タケシが言ってるのを耳にしながら、ゆっくりとサトシに抱き上げられた
「ヒカリならきっと大丈夫だよ。」
心配してくれているのだろう、いつもの強気な表情は少し萎えてる。
「ポチャ、ポチャポーチャ(大丈夫、これは夢だもん)」
一生懸命ジェスチャーで伝えようと短い手足をばたばたさせる。
するとずるりと腕から落ちてしまった。
「おっと」
頭から落ちる寸前で、キャッチされた。
「危ないから暴れるなよ。ヒカリが心配なのはみんな同じなんだぜ?」
「ピカ、ピカチュウ」
ピカチュウがそうだよ、といってくれて、それにうなずくタケシやサトシの言葉を聴いて、
改めていい旅仲間に出会えたと思った。

  • スレ1-31
  • 夢か現か
  • 07/09/04 21:01:29
ポケモンの体になってわかったが、夢の中でもサトシはポケモンに優しかった
心地よく、安心できる場所に思えて、それがサトシが人やポケモンをひきつける理由なのかもしれない

時計の針はすでに夜中の二時をさしていて、夢の中でまで眠る気に慣れなかったヒカリは窓辺で空を見ていた。
サトシはいまだに自分の眠った体に付きっ切りで、それがうれしくもあり、少し恥ずかしい。
こんなにも大切に思ってくれている仲間がいてくれることは誇らしいことだろう。
肩からずり落ちかけている毛布を小さな体で一生懸命に引っ張ってサトシにかけなおす。
なれない体のせいか、一気に疲れた。同じ毛布で包まって休もう。そう思ってポッチャマ姿のヒカリは毛布にもぐりこんで、サトシに寄り添って眠った。

「・・・ん・・・んぅ・・・」
朝日がやけにまぶしい。そう感じながらヒカリは体を起こした
一応自分の手足を確認する。
ちゃんと人間のものだ、やはり夢だったらしい。
しかしそれにしてはおかしかった。
サトシやポッチャマやピカチュウはなぜか夢のとおり自分の寝台に寄りかかるように眠り込んでいる。
それにあれが夢なら目を覚ますのは外のはずだ。
しかしここは明らかに室内である。
「お、ヒカリ起きたか。ジョーイさん呼んでくるからまってろ」
扉を開けたタケシが、真顔で言って去っていった。
「もしかしてこれって・・・。いままでのことって・・・。」
―夢じゃ・・ない・・?
そう理解した瞬間、ポケモンの姿だったとはいえ、サトシに抱っこされたりサトシと同じ毛布で眠ったことがやけに現実味を帯びる。
早朝のポケモンセンターでヒカリは声にならない声を上げた

「なあヒカリ、顔真っ赤だけど本当に大丈夫か?調子悪いなら背負っていくぞ?」
「だだだだ大丈夫!大丈夫だから、本当に」
目を合わせるのが、気恥ずかしい。
この恥ずかしさは何なんだろう、今は良くわからないが、目を合わせると顔から火でもふけそうだ。
その日は、置いてきぼりのサトシとタケシ、そして一人であたふたとするヒカリと、いつもとは違う日常になった。
                      
                           了