慈しみの聖女クレセリア
- スレ1-599
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/05/21 17:17:53
 
   プロローグ       
 静かな町の静かな教会    
 参拝者も途絶え、正門にかぎが掛けられる時間となった今、教会の2階にある神父とその家族が住む家から小さな子どもの声が聞こえる。   
 「ママー、ねるまえにごほん よんで」 
 「いいわよ?どれにする?」 
 「えーっとー・・・・これ!!」   
 少女が本棚からとある絵本を選び、ベットに座っている母親に手渡す。   
 母親は表紙に綺麗な三日月が描かれているその本を手に取り、少女をベットに寝かせると表紙を開きゆっくりと物語を語り始めた・・・           
 むかーしむかし モンスターボールもポケモンセンターもなかったじだい     
 まだ人とポケモンのケッコンがゆるされていたじだい あるポケモンがある人間にコイをしました     
 そのポケモンは もうたすからないかと思うほどの大怪我をしていました      
 いたくていたくて くるしくてくるしくて なんどもなんども 「たすけて」とさけびましたが だれもきづいてはくれませんでした   
 もうだめか・・・そうポケモンが思ったときでした       
 「けがしてるの?だいじょうぶ?」       
 ある一人の少女がポケモンのけがに気づき駆け寄ってきてくれました     
 それからというもの その少女は必死になってポケモンのかんびょうをしました       
 元気になるきのみをあげたり 薬を持ってきてあげたり うごけなくてたいくつだろうと、いろいろなお話をしてあげたり     
 そしてポケモンのケガが治りきるころになると ポケモンと少女はすっかり恋に落ちていました       
 「ずっといっしょにいたい」        
 ですが、その願いはかないませんでした  
 
- スレ1-600
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/05/21 17:23:13
 
   少女の暮らしている島で、そのポケモンは「あくま」少女はそのあくまをしりぞける「聖女」でした。   
 あくまとの結婚を島の人びとが許すはずがなく、少女は島の地下牢に閉じ込められてしまいました。     
 聖女がいれば、この島は安心     
 島の人たちにとって、聖女がどうなろうと構いませんでした ただ「あくまを退けてくれれば、それでよかった」のです。     
 もし死んだら新しい聖女を育てればいい その位の価値観でした       
 怒ったあくまは、島の人達を襲い始めました     
 人も、そしてポケモンも、あくまとけんめいに戦い、多くの人とポケモン、そしてあくまが傷つきました       
 戦いが始まってから丸3日 三日月の夜       
 あくまが聖女と出会った日とおんなじ月の夜   
 あくまは最期の力をふりしぼり、島を消滅させようとしました     
 人への恨みと憎しみで埋め尽くされたあくまはいつしか聖女への愛を忘れてしまっていました     
 「ウゥゥオオオオオオオオ!!」     
 人への恨みと憎しみで埋め尽くされたあくまはいつしか聖女への愛を忘れてしまっていました       
 その時、一筋の光が島とあくまに降り注ぎました。     
 それは「裁きの光」「創造神」が放つ聖なる光「神の怒り」に触れた証     
 裁きの光を浴びた物は、消滅する運命にある     
 それはシンオウ地方全土に伝わる話でした      
 
- スレ1-601
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/05/21 17:23:41
 
 島がどんどん消滅していく中、人々が絶望する中、聖女は地下牢を抜け出し    
 「慈しみの間」へとやって来ました     
 そこは聖地「神に祈りを捧げる間」     
 そこで歌を歌いました。後に「慈しみの歌」とも「怒神鎮歌」とも呼ばれるようになるその歌は、神の心にしっかりと届きました       
 怒りを鎮めた神は聖女の前に静かに降り立ちました       
 「人を、彼を許してあげてください。・・・・・もし、其れが叶わぬと言うのなら、愚昧なる私に、慈しみの力をください。聖女として、彼を愛した者として、この地方を優しき慈しみで包みます、怒りを、憎しみを、慈しみで包み続ける永遠の聖女になりましょう」       
 聖女が言葉を言い終えたその瞬間、聖女は光に包まれ、周りから見えなくなりました。次にそこに居たのは、聖女ではなく一匹のポケモンでした。       
 そのポケモンが歌を歌うと、消滅したはずの島がまるで本々消えてなかったかのようにそこに現れました。そしてなにより、人々の中にあった、ありとあらゆる負の感情が、その歌に消されて行きました。       
 歌を歌い終わったそのポケモンは創造神、そしてあくまと共に島を去っていきました。       
 たとえ誰だろうと優しく、慈しみをそそぎ続ける優しきそのポケモンを人は、「クレセリア」と呼ぶようになりました。           
 「・・・あら?」   
 母親の隣から可愛らしい寝息が聞こえる。少女はすっかり夢の世界へ冒険に行っていたみたいだ   
 「ふふ、いい夢をみてね。」     
 母親が我が子を優しくなでるその行為は、間違いなく慈愛にあふれる物だった           
 ポケットモンスターDP     
 【慈愛の聖女クレセリア】            
 
- スレ1-608
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/05/26 11:40:58
 
 ポケットモンスターDP   
 【慈しみの聖女クレセリア】       
 第1話「ドゥウムタウン」     
 シンオウリーグ出場を目指すサトシと、グランドフェスティバル出場を目指すヒカリ、そしてその二人の保護者的存在であるタケシは、シンオウ地方最西端の町を目指していた。   
 時は昼過ぎ、季節は初夏 
 海沿いの街道は、夏独特の湿気が多い暑苦しさを和らげるような風が吹き渡り、とても気持ち良い。サトシの肩に乗っているピカチュウが気持ちよさそうに鳴いている   
 「お、見えてきたぞ!あれがドゥウムタウンだ」   
 タケシの言葉にサトシとヒカリから歓声が上がる。前回ポケモンセンターに泊まったのが3日前、その間はずっと野宿。 
 旅をしているとよくある事だし、悪い物ではないが、やはり屋根の下、ベットの上で寝る方がゆっくりと休めるし、食材や道具の補充もできる。   
 しかし、何よりこの街に来たがっていた理由は、他でもない   
 「タケシ!早く早く!お祭り始まっちゃうよ!!」 
 「そうだよ、早く行こうぜ!!」   
 タケシを急かすように促すと、二人揃って街への坂道を駆け下りていく   
 「お祭り」 いつの時代も人々の胸を高鳴らせる要因の一つであるそれは、少年少女のテンションを挙げるのには十分すぎるものだった   
 「おーい!転ぶなよー」 
 まだ時間はあるのになあ   
 タケシがポケットから折り畳んでいた祭りの広告チラシを取り出す   
 「午後3時から開催、癒しの聖女へ捧げる・・・」   
 チラシの最後の部分に目を通す。うん、間違いない、今は2時、十分間に合う 
 タケシは安心してチラシを再度折りたたんだ。     
 その街は賑わっていた・・・・・ほんの少し前までは      
 
- スレ1-609
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/05/26 11:42:23
 
   シンオウ最西端の街ドゥウムタウン、そこはいたって普通の海辺の街だった・・・ある特徴さえ除けば   
 「・・・なーんかここら辺に建ってる家、光ってないか?」 
 「そう言えばそうねえ?なんでだろ?」   
 まずポケモンセンターに向かうことにしたサトシ達の眼にとまるのは、辺りに建っている「光った」家 
 家に限らず、ありとあらゆる建造物が光っている。正確にいえば光っていると言うよりは、そう見えなくも無いという程度   
 「慈憎石っていうこの辺りの名産らしいぞ、月の石と闇の石を合わせた様な物で、月明かりなどに当てるともっと光るって書いてある」 
 いつの間にか手に入れたパンフレットの説明文を読むタケシに、へ~、と二人がそろって相槌を打つ。   
 「この祭りの発端になった伝説では幻のポケモン、クレセリアからの贈り物、って事になってるみたいだな」 
 「クレセリア?」 
 「え!サトシもしかして「三日月伝説」知らないの!?」   
 サトシの言葉といかにも「なにそれ?」といった表情にヒカリが強い反応を示す。 
 「オレも気になってたんだけど・・・なんなんだその三日月伝説って?」   
 タケシもパンフレットの説明文にたびたび出てくる「三日月伝説」の意味が分からず唯一詳しそうなヒカリに問う 
 「小さい頃ママに話してもらわなかった?」 
 「・・・俺達カントー出身なんだけど・・・;」 
 「あ!ごめんごめん;三日月伝説っていうのはね・・・」   
 神話が数多く残るシンオウでは結構有名な話だが、その他の地方ではあまり伝わってないのかもしれない、ヒカリはゆっくりと昔ママに聞かせてもらった三日月伝説を2人に話し始めた・・・       
 優しい光を求めるならば、もっと前にお進みよ? 闇の悪夢が怖いのならば今すぐそこからお戻りよ?どっちを選ぶもあなたの自由。(シンオウ地方のとある島のわらべ唄)  
 
- スレ1-610
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/05/26 12:00:12
 
 ポケットモンスターDP   
 【慈しみの聖女クレセリア】 
 第2話「少女」     
 「・・・って言うのがシンオウ三日月伝説、私、このおとぎ話、1番好きなの!」   
 小さなころから聞かされていたという事もあるけど、何といってもロマンチックじゃない!自分をポケモンに変えてくれって神様に頼んでまで街の人、そして悪魔を愛した聖女!!素敵よね~?   
 「確かに女の子受けしそうな話だな、面白かったよ」 
 「でしょでしょ!!サトシはどうだった?」 
 タケシが多少なりとも関心したような顔をしたのに対し、サトシは考え込むような表情をしたままだ 
 「サトシ!ちゃんと聞いてる~?」 
 「あ、ああ;面白かったぜ!な、ピカチュウ」 
 「でしょ~♪」   
 サトシの言葉にピカチュウが相槌を打つと、ヒカリは満足そうに頷いた 
 このお祭りに一番来たがっていたのは他でもないヒカリだ、自分の大好きな神話を司った祭り、サトシ達と旅に出るずっと前から一度でいいから来てみたい!!そう思っていたのだった     
 「・・・うーん・・・変だな?」 
 「変って・・・何が?」 
 ヒカリが話し始める前、そして話している間もキョロキョロとあたりを見回していたタケシがようやく異変に確信を持つ   
 「祭があるにしては少し静かすぎないか?」 
 タケシの言葉どおり、確かに街には普段はされてないであろう飾り付けが至る所にされているが、有名なお祭りがあるにしては静かすぎる気がする。むしろ普通の時より静かだ   
 「本当、どうしてだろ?」 
 「なあタケシ、ちゃんと今日で合ってるのか?」 
 「あ、ああその筈なんだが・・・」   
 タケシがポケットからチラシを取り出し、広げる。 
 タケシの言葉に間違いはなく、日にち、時刻、開催される街、その全てが合っていた   
 「うーん・・・間違いないんだがなあ?」 
 「ねえ!ポケモンセンターで聞いてみましょうよ!」 
 「そうだな!なにかあったのかもしれない!!急ごう!!」       
 そんな3人を見つめる小さな影がある事に3人は気づいていなかった・・・・・    
 
- スレ1-611
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/05/26 12:05:14
 
     「「えー~~~!!!!」」   
 ポケモンセンターにサトシとヒカリの声がこだまする。自分たち以外に人が誰もいないという事もあってその声は本当に良く響いた。何時もどおりジョーイさんをナンパしようとしてグレッグルの毒づきを食らい気絶したタケシが飛び起きるほどに。   
 「会場はここじゃない!?」 
 「どういう事ですかそれ!?」   
 二人の勢いに圧倒され、ジョーイさんがあわてて話し出す   
 「あ、あのね;確かにお祭りはこの街で行われるんだけど、それはこの街が所有しているゆりかご島って所でやる事になってるのよ、チラシの下の方に書いてあったと思うんだけど・・・」 
 二人がジロッと、まるで般若の如くタケシをにらむ 
 「え、え~っと・・・;;」 
 タケシが慌ててチラシを取り出して見ると   
 「午後3時から開催、癒しの聖女へ捧げる・・・略・・・港に船をご用意しています、最終便は「午後2時半です」」   
 現時刻は午後2時20分   
 「た、大変!急ぎましょ!サトシ!タケシ!」 
 「お、おい!待てよヒカリ!!」   
 真っ先にポケモンセンターを飛び出したヒカリをサトシとタケシは追いかける  
 
- スレ1-612
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/05/26 12:06:48
 
   「ヒカリ、待てって!」 
 「早くしてよ!!時間が無いんだから!!まだ間に合うかもしれないじゃない!!」   
 ヒカリが本気で起こった時以外出さないような剣幕で怒鳴る。 
 ヒカリのやつ・・・どうしたんだ? 
 サトシがそんな事を考えていた時だった   
 グイ!!   
 「うわ!?」   
 ヒカリを追いかけている途中何かに服の裾を引っ張られサトシは立ち止まる。サトシの服を引っ張っていたのは、自分よりも何歳か年下に見える女の子だった。   
 「ど、どうしたんだ?」 
 「・・・・・・・・・・・・」 
 「え、ええっと・・・;;」 
 何も言わないが、自分の裾をギュッとつかむその少女にサトシは困り果てる 
 (もしかして・・・まいごか?) 
 お祭りに行く途中ではぐれたというのは有るかもしれない 
 「あ、あのさ・・・」 
 「・・・・・けて」 
 「え?」 
 少女がさらにギュッとサトシの服をつかみサトシを見上げる   
 「助けて・・・なくなっちゃう、きえちゃう・・・全部」 
 え? 
 そう言うと、少女はサトシの服をパッと放し、ヒカリとタケシが向かった港とは違う、港への抜け道のような街字路へ入って行ってしまった。   
 「あ!ちょっと!」   
 サトシは慌てて後を追う。 
 助けてって・・・どういう意味だ? 
 サトシが少女を追って曲がり角に差し掛かった時だった。   
 「うわ!?」   
 突然目の前がパッと明るくなり、サトシは反射的に目をつぶる。そして次の瞬間、サトシは目の前は真っ白になった・・・・・     
 もし・・・もし、未来(これからの事)が見えるとして、それが悪いものだとしたら・・・貴方は変える?それとも戦う?  
 
- スレ1-617
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/05/28 16:40:51
 
 ポケットモンスターDP   
 【慈しみの聖女クレセリア】 
 第3話「憤怒」     
 そこは、真っ暗な暗闇の世界、ひとかけらの光も無い世界。   
 その世界の中心に、サトシは居た   
 「ここ・・・どこだ?」 
 肩に居る筈のピカチュウが居なくなっていて、サトシは慌てる   
 「ピカチュウ!?ピカチュウ!!」 
 サトシが前に進もうと一歩前に足を踏み出した時だった。   
 ダセ・・・   
 「え?」   
 ダセ・・・・・ダセ、だせ、出せ!堕せ!!ダセ!!!駄せ!!!!だせ!!!!!ココカラダセ!!!!!!!   
 「な、なんだ!?」   
 まるで奈落の底から聞こえるような声があたり一面に響き、サトシは身をすくませる。 
 次の瞬間、サトシの目の前に、黒く禍々しい液体が集まり、一つの物を形創っていった。最初こそ何だか分からなかったものの、輪郭がつかめてくると次第に何だか分かるようになってくる   
 「お、・・・・・おれ?」   
 目の前に現れたのは、背中にまっ黒なオーラのようなものを背おってなければ、サトシそのものだった、前にポケランティス王にサトシが体を乗っ取られた時と似ているが、その時とは全然迫力が違う。 
 まるで幾月もの年月をかけて積りに積もった不の感情をサトシに背負わせた様な感じがする。   
 「だ、誰だ!おまえ!!」   
 サトシの言葉に、闇サトシはニヤリと不気味に笑うと、サトシの方へ走ってきた。 
 突然の事にサトシは身動きが取れず、そのまま突き飛ばされてしまう。なぜか地面にぶつかると思った背中がなかなかぶつからない。まるで、とてつもなく高い所から落されているような感じがした。   
 「うわあああああああああああ!!!!」   
 サトシは自分の悲鳴と、遠のく意識の中で、微かに声を聞いた気がした。     
 ・・・・・・・助けて・・・・・・・     
 それはなんだか・・・ヒカリの声に、似ていた・・・・・        
 
- スレ1-618
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/05/28 16:41:27
 
   「ピー、カー、チュー!!!!」 
 「うわあああああああ!!!!」   
 強烈なピカチュウの10万ボルトを浴びて、サトシはハッと目を覚ます。   
 「ぴ、ピカチュウ?俺・・・」 
 サトシが言葉を言い終える前にピカチュウが胸に飛び込んでくる、よほどサトシを心配していたのか、とても嬉しそうに笑っていた。 
 「ごめんな、心配掛けて・・・」   
 あれ?でも何だか・・・何か・・・足りないような・・・・   
 「・・・?そう言えばあの子は・・・」   
 辺りにはあの時の子は居なく、ピカチュウが首を横に振っている所を見ると、もうこの辺りにはいなそうだった   
 「ピカピ!ピカチュウ!!」 
 ボーっとしているサトシにピカチュウが訴える様に、港への道を指差している 
 「え、ああ!やっばい!!おれ、港に行く途中だったんだ!急がないと!!」     
 サトシはピカチュウを肩に乗せると、慌てて港へ続く道を走りだした。     
 貴方に・・・・・悪夢に打ち勝つ力は・・・ありますか?      
 
- スレ1-620
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/05/30 14:16:45
 
 ポケットモンスターDP   
 【慈しみの聖女クレセリア】 
 「激怒」   
 港から船の汽笛が聞こえる。もうダメだ、その事が分かっていてもサトシは全力で走り続けた。 
 港に仲間たちを待たせている以上、走らない訳にはいかなかった。     
 「ヒカリー!タケシー!」 
 仲間たちを港の船着き場に見つけ、サトシは駆け寄る、が、自分の方を向いて手を振ってくれたのはタケシだけだった。 
 そして案の定、船はすでに出港した後で、2~30メートルくらい先に船が見える   
 「ふ、ふねは・・・・・?」 
 「見ての通り、間に合わなかった・・・・・さ」   
 そうか・・・、と、サトシは呟く。同時に、気絶していたとは言え、自分が遅れて来た事に、罪悪感を感じる。   
 「・・・すまん、俺がちゃんと確認していれば・・・・」 
 「失敗なんて誰にでもあるだろ!・・・・・まあ、お祭りにいけなかったのは残念だけどさ?」 
 だから今日の買い物は全部タケシの奢りで良いよな? 
 サトシの言葉にタケシはトホホ、と苦笑いを浮かべる。この分では旅の必需品以外にも色々と奢らされそうだ。 
 「さ、ヒカリ!行こうぜ!」 
 サトシがヒカリの肩にポン、と手を置いた時だった   
 「・・・・・たのに・・・・・」   
 「え?」 
 「なんで!?私は間に合ってたのに!!」 
 そう言うと、手に握りしめていた3枚分の船のチケットを、サトシに突き出す。   
 「すごく楽しみにしてたのに!!なんで!?」 
 ヒカリがタケシをキッと睨む、先程サトシと一緒にタケシを睨んだ時の様な迫力は無く、心の中にある悔しさが伝わってくるようで胸が痛い。ピカチュウはヒカリを労わる様に鳴いている。    
 
- スレ1-621
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/05/30 14:19:49
 
 「落ち着けよ、ヒカリ!祭りに行けなくて悔しいのは俺たちだって・・・」 
 「どうしても・・・このお祭りだけは・・・・・どうしても行きたかったのに・・・タケシは色々間違えるし!!サトシはノロマだし!!」   
 この時、ヒカリが何を考えているか分かれば、どんなに酷い言葉をかけられたとしてもサトシはこんな言葉をかけはしなかった   
 「そんな言い方ないだろ!それに俺達との旅が終われば何時でも来られるじゃんか!!」   
 サトシがそう言った途端、ヒカリの表情がまるで時が止った様に固まる 
 「!!・・・・・私・・・私・・・・・!」 
 ヒカリの目にはうっすらと涙が浮かんでいる     
 「サトシなんてだいっきらい!!」   
 「なんだよ!だったらヒカリ一人で行けば良かっただろ!!」     
 サトシが勢いと感情に任せたその言葉を口にした瞬間、ヒカリの涙線は完全に解き放たれ 
 「・・・ヒ、ヒカリ・・・?」 
 「・・・ッ!!」 
 ボロボロと涙を零しながら、街の方へ走って行ってしまった   
 「あ、・・・・・」 
 「言い過ぎだぞ、サトシ!」 
 「ピカピーカ!!」 
 タケシがそう言っても、それにピカチュウが相槌を打っても、サトシは不満だった。確かに間に合わなかったのは自分達のせいだと言う事が分かっていても、行けなくてすごく残念なのは分かっているし、自分もそう思っていても、自分ならあそこまで強い口調で人を責められない。   
 「・・・で、でもさ!あそこまで言わなくてもいいだろ!?」 
 「ヒカリの様子がおかしい事にサトシも気づいているだろ?何か理由が有るのかもしれない、それに今言った事はお前も同じだろ?」   
 サトシは下を向いて頷く。確かに今日のヒカリはちょっと様子がおかしかった、口喧嘩で泣いたのも初めてだ、と言うかヒカリは、誰かが少しくらい酷い事を言っただけでは、泣く様な奴じゃないとサトシは思っている。   
 「とにかく、ヒカリを追いかけよう」 
 タケシの言葉にサトシは俯いたまま頷くと、街の方へ向けて歩き出した・・・・・   
 正確には「歩き出そうとした」   
 「あれ?ヒカリ?何してるんだ?」   
 タケシの言葉にサトシが顔を上げると、驚いて目を見開く。 
 そこには、街の入り口で、あの小さな女の子にスカートの裾をギュッと握られているヒカリが居た。    
 
- スレ1-622
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/05/30 14:23:12
 
 私・・・馬鹿だ、臆病者だ、・・・分かってるのに・・・全部・・・分かってるのに・・・     
 「きゃあ!!」   
 突然スカートの裾をつかまれ、ヒカリは立ち止まる。見ると、自分よりも小さな女の子がジッと上目で、悲しそうに自分を見つめている。   
 「・・・・・ど、どうしたの?」 
 「・・・・・・・・・・・・・」 
 「えっと;;」   
 何も言わずジッと自分を見つめているその少女に、ヒカリは、(もしかして・・・迷子かな・・・?) 
 そう思い、女の子の背の丈まで屈み、頭の高さを一緒にして、話しやすいようにする。   
 「どうしたの?・・・もしかしてまい・・・え?」 
 少女はポケットから綺麗なハンカチを取り出すと、無言でヒカリの目元を拭う。   
 「・・・だいじょうぶ?・・・おねえちゃん」 
 「あ・・・う、うん!ありがと!」 
 こんな小さな子に心配されていると思うとちょっと恥ずかしくなる、もしかしてさっきの喧嘩も見られてたのかもしれない。 
 ヒカリが少女に微笑むと、少女もまた安心したように微笑んだ。   
 「あ!」 
 ヒカリがふと先程までいた船着き場の方を見ると、サトシとタケシがこちらに向かって走って来ている。今あの二人に、特にサトシとは会いたくなかった。   
 「ご、ごめん!!じゃあね!!」   
 ヒカリは急いでその場を離れようとするものの、未だに少女が自分のスカートの裾をギュッと持っているため、前に進めない。 
 「!?は、はなし」 
 「・・・るよ」 
 離して、ヒカリがそう言おうとする前に少女が口を開く 
 「え?」 
 次に少女が発した言葉が、これから巻き起こる大騒動への幕開けになるとは、こと時、ヒカリは思いもしなかった       
 「船・・・まだ・・・あるよ」       
 人が何を怖れているかは人それぞれだけど・・・・・貴方が怖れているそれが「私にとって、貴方が怖れていてくれて嬉しい事」だと良いな。そう思います。  
 
- スレ1-624
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/02 15:51:42
 
 ポケットモンスターDP 
 【慈しみの聖女クレセリア】   
 5話「ゆりかご島へ」     
 数分前「こうなると良い」そう思っていた事が、今は気まずい出来事になる。そんな事数分前は思ってもいなかった。 
 なんにせよ「行けないと思っていたゆりかご島に行けるようになったこと」が喜ばしい事である事は確かなのだが 
 少なくとも今ここにある、この気まずい空気だけは、望んだ物では無かったとサトシは思う。   
 「本当にありがとうございます。無理して乗せて頂いて・・・」 
 サトシ達が乗っている小型船、その操縦席の方から、この船の船長にタケシがお礼を言っているのが聞こえる。   
 「お礼なんていいよ!困った時はお互い様さ!」 
 そう言って操縦席から顔をのぞかせるのは、この船「ムーンライト」の船長「カイ」歳はタケシと同じか、少し下かといった所。   
 「それに折角足を運んでもらったんだ、楽しんで行ってもらいたいしね」 
 そう言って再び船の操縦かんに手を走らせるその様は、若くして、爽やかな海の男といった感じがする。   
 そして、この船にサトシ達を招いた張本人は、船の先端でジッと前を見つめていた・・・・・       
 「船がまだあるって・・・それ本当!?」 
 ヒカリの言葉に少女はコクンと頷くと、一般の船乗り場とは違う、漁船や貨物船が留る、いわゆる業務船が留めてある方の港に走っていく。   
 「あ!まって!!」 
 「ヒカリ!どうしたんだ!?」 
 「船、まだあるかもしれない!」 
 「本当か!?」 
 まだ間に合うかもしれない、一筋の期待を胸にヒカリ達は少女の後を追いかけた。   
 普段は活気に溢れているであろうその港も、今は物音一つしないほど静まり返っていた。 
 船はある一つの小さな物を除き、全てゆりかご島へと出港した後らしい。   
 「あ!あれ・・・!!」 
 少女はその小さな船の前でヒカリ達に向かって手を振っていた。 
 少女が船の方に目を向けたと同時に一人の少年(カイ)がまるでヒカリ達を待っていたかのように船から出てくる。    
 
- スレ1-625
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/02 15:59:12
 
 「あ、あの、お願いします!!私達をゆりかご島まで乗せて行ってくれませんか?」 
 「ああ、良いよ!」 
 ずいぶんあっさりと返事をする。本当にここに来るのが分かっていたかのようだ。   
 「あの・・・その子・・・」 
 サトシが自分とヒカリに声をかけ、ここまで導いた少女を見ると、少女はコソコソと少年の後ろに隠れてしまった。   
 「俺はカイ、こいつは俺の義妹のシヤ」 
 「おれ、サトシです」 
 「ヒカリです」 
 「おれは、タケシ」 
 「よろしく!・・・ほらシヤ、あいさつしろ」 
 カイに言われ、ようやくシヤがカイの後ろから出てくる   
 「・・・(ペコリ)・・・」 
 一度だけ頭を下げると、今度は船に乗ってしまう。   
 「おいシヤ!・・・まったく、自分が連れて来たくせに、なにやってんだか」 
 「え?連れて来たって・・・?」 
 「ああ、毎年、君達みたいに船に乗り遅れる人が案外いてね、普通祭りが始まる前にここらの漁師や、船を持ってる人たちはゆりかご島に行っちゃうんだけど、俺達はギリギリまで残るようにしてるのさ。 
 シヤはここまでの案内役って感じかな・・・内気だからあんまり誘えないみたいだけど。さ、乗ったのった!」       
 ・・・・・あれから船上で聞こえる音はタケシとカイが色々話している声が主だった。ポケモンたちを出して遊ばせてもよかったとも思うけど、あいにく3人のポケモンを全部出して遊ばせられるほど、この船は広くなかった。      
 
- スレ1-626
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/02 15:59:58
 
   ヒカリはあれから黙ったままだ、何か話そうとしても、あの時から変わらないヒカリの寂しそうな表情を見ると、サトシはその気を失った。肩ではそんなサトシを労わる様にピカチュウが鳴いている。   
 何時もなら、喧嘩することがあっても、それが原因で泣く事など無かったヒカリが、泣いた。 
 そして、その原因は自分にある。そう考えると胸の奥が不思議な位、苦しくて堪らなくなった。   
 自分で原因を作ってしまったのだからしょうがないと思っていても、何もしてやれない自分が辛かった・・・前にも似たような事があった気がする・・・あれは・・・確か・・・・・   
 「・・・・・ん?」 
 「おにーちゃん・・・大丈夫?」 
 いつの間に側にやって来たのか、シヤがジッと心配そうにサトシを見つめている   
 「え?大丈夫って、何が?」 
 シヤは何も言わずにサトシの胸にそっと手をあてる   
 「ココ・・・だいじょうぶ?・・・」 
 「え?」 
 サトシは大きく目を見開く。この子には何もかも見透かされているような感じがした。   
 「あ、ああ!だいじょうぶ、ダイジョーブ!!」 
 サトシの言葉に、シヤは首を横にフルフルと振る。   
 「ダメだよ・・・今のままじゃ・・・悪夢に勝てないよ・・・」 
 「え?」 
 シヤはそう言うと、初めて会った時の様に、再び船の先端へ駆けて行ってしまった。     
 「おーい!見えてきたぜ!!」 
 シヤを見送ったその直ぐ後にカイの声が甲板に響き、サトシは船の前方に目をやる。そこには青く透き通った海に囲まれた、綺麗な島が見えた。   
 「あれが・・・」 
 「ああ、ゆりかご島さ!」       
 助けてあげて・・・・・島も、人も、そして・・・貴方も。    
 
- スレ1-632
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/04 16:10:26
 
 ポケットモンスターDP 
 【慈しみの聖女クレセリア】   
 第6話「ゆりかご島①」   
 島にある小さな港、その小さな港に、これまた小さな船が到着する。   
 「着いたぜ、ここがゆりかご島さ」 
 一見、無人島にも思える島の第一印象は、やはり、綺麗な所だな、とサトシは思う。 
 島唯一の港は、船を留めるための簡単な整備しかされてなく、島の海に面している場所の殆どは綺麗な砂浜で埋め尽くされていた。   
 「わあ~!スッゴク綺麗なとこ!!」 
 「ああ!そうだろ!でも、綺麗なのは外見だけじゃないぜ、サトシ!砂浜でジャンプしてみてくれよ!!」 
 「え?ああ、・・・せーの!!」 
 サトシが砂浜に着地した瞬間   
 キュ!   
 と、まるで掃除した後の風呂場のタイルを指で擦った様な音が砂浜に響く   
 「うわあ!何だこれ!?」 
 「へえ、「鳴砂」か」 
 「なりすな?」 
 「ポチャ?」 
 「ピーカ?」 
 「・・・(コクコク)・・・」 
 初めて耳にする言葉にピカチュウとポッチャマは首を傾げる。勿論ヒカリも例外ではない   
 「鳴り砂は、海砂の一粒一粒にある、目に見えない位小さな突起が擦れ合ってできる音の事さ」 
 「海が凄くきれいじゃ無いと、砂が汚れて音が出なくなっちまうんだ、今じゃあシンオウ地方で鳴り砂ができるのはこの島くらいさ」 
 カイが軽くステップを踏むと 
 キュ、キュ、キュ、キュキュッキュ、キュ!   
 軽快な音が砂浜に響く   
 「わあ!スゲエ!」 
 サトシがもう一度!とばかりに今度はカイを真似て、ダンス風にステップすると、再び軽快な音が砂浜に響く。それを見ていたピカチュウとポッチャマが我も我もと仲間に加わる。   
 「お兄ちゃん・・・・・気を付けないと・・・」 
 「え?なに・・・」       
 ドシーン!!       
 シヤがサトシに話しかけたのとほぼ同時に、鳴り砂とは違う、大きく、マヌケな音が砂浜に響く   
 「・・・すべるよ;」 
 風呂場のタイルを掃除した後に擦った時と似た音がすると言う事は、そうなる危険性があると言う事は予想できる物だが、 
 残念ながらサトシは、風呂掃除など一度もした事が無いのであった。    
 
- スレ1-633
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/04 16:12:54
 
 「痛てててて;;」 
 「ピカピー?」 
 「ポチャー?」 
 「だいじょーぶ?おにーちゃん?」 
 「大丈夫ダイジョーブ;あははは;;」 
 シヤ達がサトシの顔を心配そうに覗き込む。タケシとカイもサトシの側に歩み寄る 
 「まったく、何やってんだ」 
 「はは;まあ俺も小さい頃何度も尻モチ付いたけど・・・今のは豪快だったよな~」 
 「へヘ♪」 
 サトシがよっ、と反動を付けて起き上がる。ふと、まだ唯一自分のそばに来ていないヒカリの方を見ると     
 (ヒカリ・・・・・?)     
 あの時よりも、いや、今まで見て来たヒカリの表情の中で、1番寂しそうな顔でこちらを見つめているヒカリが居た。     
 「おーい!ヒカリー!!こっちに来いよー!」 
 何時もならサトシが言っていたであろうセリフをタケシが言う。 
 「う、うん!今いく!!」 
 ヒカリはすぐに表情を変えると、サトシ達の方へと駆けて来た   
 「もう、私びっくりして動けなかったんだからね」 
 「あ、ああ・・・・・ごめん」 
 何でだろう・・・・・元気が出ない・・・・・楽しかったはずなのに・・・・・   
 「?、サトシ大丈夫?頭でも打った?あたしが診てあげる!」 
 ヒカリがサトシの後ろに回り、まるでポケモンが毛づくろいをするように頭を診?始める   
 「い、いいよ!大丈夫だから!!;;」 
 サトシが慌ててヒカリの手を除ける 
 「サトシのダイジョーブは大丈夫じゃないでしょ!」 
 「それはヒカリだろ!?」 
 「おいおい;」   
 つい昨日までのような空気がその場に流れる。昨日の事のはずなのに、懐かしい・・・いや、嬉しい?そう、嬉しかった。   
 「はは!仲良いな!!・・・でも、そろそろ街に行った方がいいぜ、メインイベントは6時からだけど、それ以外にも色々・・・・・ん?どうしたシヤ?」 
 シヤはカイの服をクイクイと引っ張ると、ポケットからアクセサリーのような物をカイに見せる。   
 「・・・おにいちゃんたちも・・・いっしょに行く・・・」 
 「!!??お、おいシヤ!!本気か!?・・・っておい!!」 
 シヤはカイの言葉を無視して森の入口のような所に入っていく    
 
- スレ1-634
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/04 16:15:37
 
   「シヤちゃん!!」 
 「何所に行くんだ?この先には何も無い筈じゃあ・・・」   
 タケシが島のパンフレットを開く、ゆりかご島にはマイナスイオンを沢山出す木がある森があって森林緑に最適、とは書いてあったが、シヤの様子を見るとわざわざ森林緑をさせたいだけとも思えない。カイは大きなため息をつく   
 「・・・・・はあ、もう止められない・・・悪い思いさせない自信はあるからさ、祭りに行く前にちょっと付き合ってくれないか?」 
 「え・・・でも・・・」   
 ヒカリが何て言うか・・・   
 「別に、良んじゃない?」   
 え?   
 サトシとタケシは自分の耳を疑う。この祭りに行きたいとあれだけ言っていたヒカリがあっさりとOKを出した・・・どんな気まぐれなのだろう。それともメインイベントさえ見られればそれで良いんだろうか?   
 「どうしたの?サトシもタケシも固まっちゃって?」 
 「あ、いや・・・その・・・なあ、サトシ」 
 「え!あ、えっと、何でも無い何でも無い;;」 
 「じゃ、決まりだな」 
 「ええ!行きましょ!!」     
 シヤの向かった森の先に4人が歩き出そうとした時だった       
 え?       
 サトシは、今度は自分の目を疑った、ヒカリがほんの、ほんの一瞬だけ、虚ろな色に染まっていた。寂しさや不の感情を超越したような、見ている方が苦しくなるような、圧倒的な、「闇色」       
 「ヒカリ!!!!」       
 何だかこのままヒカリが闇に消えてしまいそうで、サトシは大声で呼びかける   
 「ど、どうしたの?急に大声出して・・・本当に頭、打った?」 
 「あ、いや・・・なんでもない・・・ごめん」 
 「?変なサトシ?・・・・・ほら、行こ!」 
 「あ、ああ」       
 ・・・あの時見えた闇は・・・・・見間違いなんかじゃ、無い     
 そう確信を持ちながら、サトシはカイの後を付いていった。      
 
- スレ1-635
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/04 16:36:47
 
 ポケットモンスターDP 
 【慈しみの聖女クレセリア】   
 第6話「ゆりかご島②」     
 「うー・・・・・んっ!気持いい!なんだかリラックスできそう!!」 
 大きく背伸びをし、ヒカリが率直に森の感想を述べる。 
 サトシが以前、大冒険をしたあの森ほどの深さと大樹は無い物の、サラサラと流れる湧水、その湧水が集まって出来た小川、そしてちょうど良い具合に日差しが差し込み、体中をリフレッシュさせてくれるような感じがした。 
 先程感じた不安が薄れていくような・・・そんな感覚をサトシは覚える。   
 「ああ、なんだか、不思議な力で癒されてるみたいだな、なんかこう、癒しの力が直接、体の中に入ってくるような・・・・・」 
 タケシも立ち止まり、大きく深呼吸をする。 
 それを真似てピカチュウとポッチャマも同じように大きく息を吐き、そして吸い込む。   
 「この森にはちょっとした仕組みがあるんだ、でてこい、ルナトーン!」 
 カイのモンスターボールからルナトーンが現れる、が、普通のルナトーンとはちょっと違い、黄金に輝いていた。   
 「へえ!色違いのルナトーンか!」 
 「ルナトーン!「月の光」だ!!」 
 カイがルナトーンに月の光を指示したその瞬間、急に辺りが輝きだす。しかしそれはルナトーンの月の光によるものではなく。月の光を受けて、まるで化学反応が起こっているかのように森自身がが光っていた。   
 「森が・・・・・光ってる?」 
 「わーあ!すっごく綺麗・・・」      
 
- スレ1-636
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/04 16:37:30
 
 「この島の岩や、地面のほとんどは「慈憎石」と同じ成分でできてるんだ。雨が長い年月をかけて地下水になる、その時、慈憎石の成分が水に溶けて、一緒に湧き水として流れ出す、 
 そして、その水を吸って育った植物は慈憎石と同じように光るって訳さ。もういいぜ、サンキュー、ルナトーン!」   
 ルナトーンが月の光を止めると、森は何事も無かったかのように元の姿を取り戻していた。   
 「今は、ルナトーンの月の光で光らせたから、ちょっと光が強めだったけど、本物の月の光、特に今夜の「聖なる三日月の夜」にはもっと幻想的で、綺麗に光るんだぜ!」 
 「へーえ・・・所で・・・見せたかったものって・・・これ?」 
 「いや?第一シヤが居ないだろ?今のはガイドみたいなもんさ、もうちょっと歩いてもらうぜ」 
 そう言うとさらに森の奥に足を進める。   
 「一体、どこに行くんですか?」 
 タケシの言葉にカイは少し考えるような表情をして言った       
 「一言で言うなら・・・・・聖域?」       
 早くしなきゃ・・・・・悪夢が始まる・・・・・その前に      
 
- スレ1-639
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/06 17:02:49
 
 ポケットモンスターDP 
 【慈しみの聖女クレセリア】   
 第7話「聖域と夢巫女①」     
 「・・・・・ってな訳で、石材の中でもかなり優秀な種類の「慈憎石」がこの島の名産・・・つまりはドゥムタウンの名産ってわけなんだ」 
 「へえー、それじゃあ例え光って無くてもこの島の殆どの物は・・・」 
 「ああ、「慈憎石」で出来てるって訳さ」   
 サトシ達はカイの話を聞きながら森の奥へと向かっていた。 
 歩いてばかりで退屈だろうと、カイが話し出したのは、主にこの島の見所と名産、その中にはパンフレットには載っていない物もあった。 
 この島を楽しむ為には欠かせない情報で、ありがたい物だったのだが・・・   
 「サトシ!サトシったら!!」 
 「あ!ああ;な、何?」 
 「もう!サトシったらさっきからずっと、ボーッとして全然カイさんの話聞いてないじゃ無い!」   
 そんな事言われたって・・・・・そうなる原因作ったのはヒカリだろ!!今日のヒカリおかしいぞ!?何なんだよ!あの・・・あの・・・・・     
 あの闇は・・・・・     
 そう言えたらどんなに楽だろう・・・・・いや、いつもなら、いつものサトシなら、そう言ってたはずだった   
 サトシは先程から言いようのない不安に駆られていた、いつもの調子が、元気が、根こそぎ奪われていくような・・・・・そんな感覚   
 「はは、おれの話がつまんなかったんだろ!」 
 「あ!いや!そんな事ないって!!」 
 「いいさ、全然気にしてないから」 
 大体、自分でもつまんねえ話してるなあ・・・って思ってるからさ! 
 そう言って、笑うカイにサトシは必死で弁解しようとするが、先程の不安がまた襲って来て、良い言葉が見つからない、そして自然と暗い顔になってしまう。   
 「おいサトシ、顔色良くないぞ、気分でも悪いのか?」 
 「そ、そんな事ねえって!!ほら!」 
 心配するタケシにそう言って、無理やりに顔を直して、10メートルぐらい先まで全力で走る。   
 「気分が良くてさ!元気すぎるぐらいだって!!」 
 「それなら良いんだが・・・」    
 
- スレ1-640
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/06 17:04:04
 
   「そうこうしてる内に着いたぜ!ここさ!」 
 そう言ってカイが指さす先にあったのは、人が何とか入れると言った感じの小さな洞窟、その洞窟の前にシヤは居た   
 「シヤ、連れて来たぞ!」 
 「あの・・・シヤちゃん?」 
 「・・・こっち・・・」 
 シヤはサトシ達を置いて、先に洞窟の中に入って行ってしまう。   
 「またあいつは勝手に・・・さ、俺達も行こうぜ」 
 カイはモンスターボールからデンリュウを繰り出し、フラッシュを指示すると先に洞窟に入っていく。 
 サトシ達も恐る恐る洞窟の中に入ってゆくと、狭いのは入口だけで、中は結構広い。   
 洞窟に入ってから1分程度ですぐに天井からの光で輝いている上向きの出口が見えて来た。     
 「さあ、ここが、俺とシヤの秘密の場所・・・・・「聖域」さ!!」       
 だめ・・・このままじゃ悪夢に食べられちゃう・・・・・助けてあげて・・・おにいちゃん      
 
- スレ1-641
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/06 17:09:18
 
 ポケットモンスターDP 
 【慈しみの聖女クレセリア】   
 第7話「聖域と夢巫女②」     
 そこは、聖域と言う名に相応しい場所だった。   
 底まで見えるほど透き通った小さな湖、その湖の周りに咲く色とりどりの綺麗な草花、そしてその場所を円く囲むように生えている樹木。地面が露出している場所など、どこにも見当たらない。 
 先程の森もかなり神秘的だったが、明らかにケタが違う。   
 「ここは・・・一体・・・」 
 「だから言っただろ「聖域」だってさ」 
 カイはそう言うと、眼と鼻の先にある湖に向かって歩き出す。   
 「まだ行くんですか?」 
 サトシが不安げに問う 
 「当たり前じゃん!ここまで来たんだからもうちょっと付き合ってくれよ!」 
 「でも・・・・・そろそろ祭りが」 
 タケシの言う通り、最後に時を確かめたのが、カイの船に付いている時計で、島に着いた時。   
 その時の時刻が3時10分、ここまで森を歩いた時間がどう少なく見積もっても30分。 
 往復の時間を考えると元居た場所に戻れるのは4時10分。さらに宿泊場所の確保や、ポケモン達の回復。その他諸々を含めると、今すぐに引き返しても5時を回るかもしれなかった。 
 カイの言うメインイベントには間に合うが、どうせなら他にもいろいろ楽しみたい。   
 「ああ、それなら心配無用さ!ここは・・・・・」 
 そこまで言うと、カイは口元にニヤリと笑みを浮かべ、喋るのを止める。   
 「とにかく何時間過ごしても心配ないからさ!俺に任せてついて来いって!」 
 自信たっぷりに言うカイの言葉を受け、最初に穴から出たのはヒカリだった   
 「ヒカリ!?」 
 「ピカピー!?」 
 「ポチャ!ポーチャー!」 
 「ヒカリ!祭りはいいのか?」 
 「カイさんは心配ないって言ってるんだもの。きっと大丈夫よ」 
 それにここ、凄く素敵じゃない!! 
 そう言うヒカリに習い、サトシとタケシも穴を出てカイを追う。      
 
- スレ1-642
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/06 17:13:22
 
   「綺麗だろここ、俺がこの島の中で一番好きな場所さ」 
 カイが言うように確かに綺麗な場所だ。それに、森とは比べ物にならないほどのエネルギーを感じる。   
 「ピーカ~・・・チャア~・・・・・」 
 「ポチャ・・・ポー・・・チャア~・・・・・」 
 「ん?どうしたピカチュウ、ポッチャマ?」 
 「ひょっとして・・・眠いんじゃないか?」 
 ピカチュウとポッチャマが見事にあくびをシンクロさせたのを見てタケシが指摘する。 
 確かに二匹の眼はしょぼついていて、心なしかフラフラしている。   
 「そうだろそうだろ!!ここほど昼寝に最適な場所は無いぜ!!」 
 何より元気になるしな!カイはそう言うと、その場にごろりと寝ころぶ。 
 「なあ、一眠りしていかないか?」 
 「で、でも・・・・・」     
 お祭りが・・・・・あれ?そう言えばヒカリはどこ行ったんだ?     
 サトシがそう言おうとした、その時だった。         
 「キャアアアア!!!!」     
 空間を引き裂くようなヒカリの悲鳴が聞こえたのは・・・・・      
 
- スレ1-645
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/09 15:02:50
 
 あの時・・・・・何で俺は全力で走ったんだろう       
 「ヒカリ!!!!!!」       
 大きな声にびっくりしたから? 
 正義感と好奇心がそうさせた? 
 それともさっきから続いている、この嫌な気持ちと予感のせい?       
 実際はそんなのどうでも良かった。       
 ただ、何故だか今日は、旅の途中で何度か聞いたことが有る筈なのに・・・・・     
 ヒカリの叫び声を聞いたら体中が寒くなって、いやな予感と不安が体中にひろがって、心配で心配で、とにかく居ても立ってもいられなくて、全力で駆けだしてた・・・・・     
 何でそうなったかは分からないけど・・・・・       
 ただ・・・・・今一つ分かるのは・・・・・         
 「ヒカリ!!!!!なにg」         
 「キャアア!!これすっごく美味しいね!!」 
 「・・・(コクン)・・・(シャクシャク)・・・」       
 心配なんてするんじゃなかったって事だ!!(-_-メ)       
 ポケットモンスターDP 
 【慈しみの聖女クレセリア】   
 第7話「聖域と夢巫女③」      
 
- スレ1-646
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/09 15:04:47
 
 「おい!!何やってんだよヒカリ!!!」 
 「あ!サトシも食べない?おいしいよ!この木の実!」 
 「・・・(コクコク)・・・」 
 そう言ってヒカリはニコニコとサトシに三日月形の木の実を見せる。   
 「ヒカリ!お前なあ・・・・・!!」 
 「ど、どうしたの、サトシ;;」 
 「どうしたもこうしたも!!ヒカリが悲鳴上げたから何か遭ったのかと思ったんだよ!!」 
 心配したんだぞ!!と、怒りを露にしてサトシが怒鳴ってもヒカリは落ち着いたままだ。   
 「こーんなに、綺麗で素敵な場所で危険な事なんてある訳ないじゃない!ね、シヤちゃん!!」 
 ヒカリが隣に座っているシヤを見ると、シヤはヒカリの言葉に応えるかのように、ジーッ・・・・・と、ウルウルとした眼でサトシの方を見つめる。 
 まるでシヤがヒカリの代わりに、サトシに許しを請っているようだった。   
 「うう・・・;」 
 「ね?ダイジョーブでしょ?」 
 「(・・・・・ジーッ・・・・・)」 
 何がダイジョーブなのかさっぱり分からないが、少なくともサトシは目をウルウルと滲ませてジッと自分を見つめてくるシヤの前で怒鳴る事など出来ないのであった。   
 「おーい!いったいなにが・・・・・!!な、何でサトシが項垂れてるんだ?」 
 「はは・・・ははは、ダイジョーブダイジョーブ・・・・・」   
 タケシの言葉にサトシは力なく答える。 
 そうさせたのは、あっけらかんと自分の前で木の実を頬張るヒカリとシヤか、それともシヤのウルウル目線であっさり毒気を吸い取られてしまった自分自身か。 
 いずれにせよ、何とも言えない情けなさに支配されていたサトシに、いつもの調子を保つなど到底無理なことだった。    
 
- スレ1-647
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/09 15:06:26
 
 「お!ルナの実か!これ、甘くて美味いんだ!!」 
 カイはそう言うと、よっ、とジャンプして3~4メートル上に生えているルナの実をもぎ取り、食ってみろよ!とサトシとタケシに投げ渡す。   
 「・・・(シャクシャク)・・・あ、すっごく美味い!!」 
 「なんだか、今まで味わった事が無いですね、おれ、ポケモンブリーダー目指してるから、結構色んな木の実のこと知ってるけど、こんな木の実は初めてだ」   
 カイがルナの実と呼ぶそれは、まるでケーキに果汁を浸みこませたように、次から次へと果汁が溢れてくる。しかしながらケーキのふんわりとした柔らかさは失われてなくて、それが不思議な感覚を引き起こさせているようだった。 
 ピカチュウとポッチャマも、おいしそうに木の実をパクついている。   
 「そりゃそうさ、なんたってここにしか生えない不思議な木の実だからな!」 
 「え?じゃあこの木の実は・・・」 
 「シヤが見つけて、俺が名前を付けた、いわゆる幻の実、かな?」 
 カイは全員が殆ど木の実を食べ終わったのを見はからって、もたれていた木から体を起こす      
 
- スレ1-648
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/09 15:07:13
 
 「ここには、他にも不思議な所が沢山あるんだ!シヤ!案内してやろうぜ!!」 
 「(コクン)」           
 カイの言う通り、この場所は不思議な所がいっぱいあった。     
 太陽も無いのに明るく、昼間のまま 
 湧き水も、水の入出場所も無いのに、綺麗な湖(蒸発もしない) 
 ポケモンを含め、生き物が、虫一匹も棲んでいない     
 「あとは・・・あ!そうそう!こっちこっち!!」 
 カイはさっき木の実を食べた林のもっと奥へと足を進める   
 「・・・う、海?」 
 「そ、海さ、でも普通の海とはちょっと違うんだよな~・・・出て来い!ラプラス!!」 
 カイのモンスターボールから運び屋ポケモンラプラスが繰り出される。しかし、ラプラスは自分を収めたボールを持っているマスターよりも、シヤに懐いているらしく、その長い首を下げて撫でる行為を要求している。   
 「おいおい、お前のマスターは俺だっつーの;;」 
 「ラプラスは、シヤちゃんのポケモンなんですか?」 
 「いや、本々怪我してる所をシヤが見つけて、看病してやったのがきっかけでさ、出来ればその時シヤが捕まえれば良かったんだけど、シヤはまだポケモンを持つことが許可されてないから、俺が捕まえるしかなかったのさ」   
 カイがサラリといきさつを話す。その間もラプラスはシヤに夢中で撫でられていて気持ち良さそうに目を細めている   
 「お~い、そろそろ出番だぞ~・・・えーっと・・・誰が良いかな?」 
 カイが全員をサラリと見回した時だった             
 「お兄ちゃんとお姉ちゃんがいい・・・」     
 シヤの小さな声が、小さな浜辺に響き渡った。      
 
- スレ1-662
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/11 12:44:52
 
   第8話「2人きりで」       
 ・・・・・・   
 ・・・・・・・・・   
 ・・・・・・・・・・・・き、気まずい;;     
 チラリとヒカリの方を見ると、ジッと前を見つめていて、話すタイミングが見つからない。どうすりゃ良んだよ~;;サトシは心の中で大きな溜め息を吐いた。       
 そもそも何でこんな事になったのか、否、そもそも何で気まずい空気が流れているのか。 
 これまでの事をサトシは必死に振り返ろうとする。         
 まず、なんでヒカリと二人きりでラプラスに乗っているのか。   
 答えは実にシンプルで、カイに「2人でラプラスに乗って、ここを真っ直ぐに進んで行ってくれ」 
 と、頼まれたから。その他にも、カイのラプラスは小振りで、2人乗りが精いっぱいだったと言う事と、シヤが2人を指名した事が上げられる。     
 だが問題はそこでは無い。     
 先程まで、島に着く前の喧嘩の事など、一切感じさせなかったヒカリだが。 
 サトシと2人きりになってから、また、カイの船、島の浜辺で見せたあの寂しそうな表情になってしまった。   
 やはり喧嘩の事を気にしているんだろうか、それだったらもう自分が悪いことで構わないから今すぐ仲直りがしたいとサトシは思う。 
 それでヒカリの調子が戻るなら、この島に、この街に来る前にいつも見せていた笑顔を取り戻してくれるなら・・・・・     
 だけど、何となく、喧嘩が迎因じゃ無いというのがサトシには分った。 
 それに、こんな事を思うようになったのは、あのヒカリを見てからだ。    
 
- スレ1-663
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/11 12:46:52
 
   あの時、闇色に染まったヒカリを見てから胸の奥にこびり付いて離れないこの嫌な感じ。 
 心の呼吸ができなくなるような、この苦しさ。 
 いつもならその苦しさを取り除こうと何か行動を起こすのに、それさえ出来ない。   
 今回の場合、ヒカリに自分の感じた事、思う事を話し、それをヒカリに問う事なのだが、サトシにはそれが出来なかった。     
 どうすりゃいんだよ・・・・・・・・       
 「サトシ!!」 
 「うわわわわわっ!!!」 
 ヒカリに急に大声で話しかけられ、サトシはラプラスの背中から落ちかける。   
 「な、何だよ、ヒカリ;」 
 「あれ見てってば!!」 
 ヒカリが指さす方向、自分達が進んでいる前方に現れたのは、小さな島、その浜辺にいたのは見間違うはずも無い       
 「あ、あれは・・・・・!!し、シヤちゃん!?」 
 「カイさん!!タケシ!!」    
 
- スレ1-664
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/11 12:47:44
 
     「ってな訳で、ここの島を含め、ここに広がる海は、どうやら俺らが住んでいる世界とは違う、異空間らしいんだ、それも、ただの異空間じゃ無いらしいんだよな~」 
 島に上陸してから、ようやくカイが色々説明してくれた。     
 どうやらここは、ゆりかご島と、あの小さな抜け道で繋がっている異空間らしい。 
 サトシ達が上陸したところは、ラプラスの出発地点ではなく、反対側、つまりは小さな島の裏側。 
 つまり、僅か10分足らずの船旅で、この世界を一周してきたことになる。カイ曰く、   
 「ま、小さな球状の世界があるって認識してもらえればいいさ」   
 らしい・・・・・そんなに呆気無く言い切っていい物かは別だが。       
 カイはサトシ達を座らせると、背負っているバッグから、いかにも古そうな一冊の本を取り出す。   
 「ここは、神々が創った空間らしいんだ、伝説、幻のポケモンが居ると俺は睨んでるんだよ!!」         
 「俺の母さんは考古学者で、シンオウ時空伝説を専門に研究を進めてたんだ。」 
 カイは本のページをぺらぺらと捲りながら、懐かしそうに目を細める   
 「この島に来たのも、三日月伝説を研究するためらしくてさ、で、その時知り合ったこの島の唯一のポケモントレーナーであり、守人・・・・・つまり俺の親父な、と恋に落ちて結婚したらしいんだ。」 
 「唯一のトレーナー?」 
 「・・・・・この島の人はポケモン、ゲットしないの・・・・・」 
 「自然のまま、ありのままが良いって事らしいな」       
 ま、二人とも船の難破事故で死んじまったんだけどさ・・・・・       
 「母さん、いつも言ってたよ、「一度で良い、一生に一度で良いから幻、伝説、神と呼ばれしポケモンに会ってみたい」って・・・・・俺、いつかこの島に新たな守人候補ができたら、この島を出て、旅に出るつもりなんだ。」     
 一生をかけても会えるかどうか分からない、伝説のポケモンを探しにさ!!           
 ・・・・・なあ、タケシ・・・・・おれ、どうすればいい?   
 ・・・・・とりあえず「沈黙が金」だ、サトシ・・・・・         
 サトシとタケシが心の中でそんな会話をしていた事は知らない、誰も知らない・・・・・・・        
 
- スレ1-670
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/16 12:56:31
 
 第9話【夢巫女①】       
 ・・・・・;;   
 ・・・・・・・・・;;;;   
 ・・・・・・・・・・・・・・・;;;;;;;;   
 「どうかしたのか?二人とも」 
 「あ、いや!な、何でも無いです;;な!タケシ!!」 
 「え、ええ!!ちょっと考え事をしてたんだ;;」   
 明らかに挙動不審な態度をとるサトシとタケシをカイの鋭い眼光がジーッ、と見つめる!!   
 サトシとタケシは慌てている!!   
 「なあ・・・・・もしかしてお前ら・・・・・!!」       
 『ギクゥ!!!!』                   
 「眠くなってきちまったんだろ!!」     
 ・・・・・鈍くて良かった;;(サトシは人の事言えない)         
 「ここは凄く気持ち良いからな~!シヤなんかほら!!」 
 カイの隣に座っていた筈のシヤは、カイの肩にもたれかかりながら、スヤスヤとかわいい寝息を立てていた 
 「シヤは、ここに来るとよく眠るんだ、気分が良い、ってのも有るんだろうけど・・・・・」 
 そこまで言うと、カイはシヤを横たわらせて、バックから取り出した、少々小さい毛布をそっと掛ける。   
 優しく、優しく、眠っている小さく可愛いお姫様を起こさないように。   
 「・・・・・ここまで聞いてもらったんだ、シヤの事も、少し話そうか」     
 カイは、再びサトシ達の方を向いて座る。 
 その眼には苦しみこそ映っていないものの、明らかに先程の生き生きとした表情は消えていた。      
 
- スレ1-671
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/16 13:04:28
 
     もうかれこれ7年くらい前。カイの母親と父親が死んでから、一週間後の早朝、シヤは、島の浜辺に、一人ポツンと、突っ立っていた。     
 どこから来たの? 
 若い女性がきいた。   
 歳はいくつ? 
 中年の男がきいた。   
 どうしてここに来たんだ? 
 小さい子供がきいた。     
 老若男女、様々な人がいろいろ質問をしたが、シヤは、何も答えずに、ジーッっと下を向き続けていた。       
 「キミの・・・なまえ、・・・・・名前は?」       
 まだ小さかったカイがこの質問をした時、初めて顔を上げ 
 「・・・・・シヤ・・・・・」 
 とだけ答えた。         
 とりあえず、当時カイがこれから養ってもらう事が決まっていた老夫婦の元に預けられる事になったのだが・・・・・       
 ある日、カイを除きあれだけ無口だったシヤが、大声で叫びながら島中を走り回った       
 「逃げて!!!!海がくしゃみするよ!!!!!」     
 何の事だかサッパリ訳が分からなかったが、明らかに脅え、震えている。   
 「おい、シヤ!!どうしたんだよ!?落ち着けって、と言うか待てって!!どこ行くんだよ!?」 
 カイがいくら大声で呼び止めても、シヤは必死になって走り続けた。      
 
- スレ1-672
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/16 13:06:51
 
     「や、やっと・・・・・お、おい・・・・・・ついた・・・・・」 
 み、水~、水をくれ~;;   
 そう叫びたかったのだが、のどがカラカラに渇いて、声が出ない。 
 なんであいつこんなに足速いんだよ~;;・・・・・つ~か・・・なんで俺、シヤを追いかけてんだっけ?   
 カイがやっとシヤに追い付いた時、カイは、これでもかと言うほど息が上がっていた。   
 これ以上走れるやつがいたら見てみたいと、当時のカイは思ったほどだ。     
 息が上がるのも当然だった。 
 シヤが必死になって目指していた場所は、山の中に在る三日月島唯一の神社であり、島一番の高台。 
 其処に行くには何段もの階段を登らなければならず、当時まだ7歳だったカイは、死に物狂いで走って、やっと着いたといった感じだ。   
 なんで俺、こんな事してんだろう?・・・・・って・・・そーだった!!   
 「おいシヤ!!お前何やってんだよ!!!」   
 別にわめきながら走ってただけだと言えばそれまでで、その様子があまりに変で思わず追いかけてしまっただけなのだが・・・・・   
 島のありとあらゆる場所をそれはもう、あのイカズチポケモンライコウもビックリの驚異的な速さで駆け巡らされたカイにとって、文句の1つ・・・いや、2つも3つも言ってやりたい所だった。   
 「・・・・・・だって・・・だって・・・・・」 
 シヤはウルウルとその眼を涙で滲ませ、ジッとカイの方を見上げるが、その手?(シヤは勿論自覚無)にはもう乗らないぞ!!そして、もう逃がさないぞ!! 
 と、「黒い眼差し」ばりに(ここで逃げられたらもうゲット(?)できねえ・・・;;)シヤを睨みつける。      
 
- スレ1-673
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/16 13:10:46
 
     シヤと暮らすようになってから、カイはいつも損していた。   
 爺やと婆やは、その容姿からか、シヤの事ばかりかわいがる。 
 決して、爺やと婆やが、どこぞのおとぎ話に出てくる意地悪じいさん・ばあさんと言った訳では無いのだが、カイ自身もまだ子供だと言うのに見るからに不公平な扱いをされていた。 
 自分が何か要望を言ってもシヤの二の次で、シヤを憎らしく思っていたのだが・・・・・     
 シヤの「なきごえ」&「ウルウルめせん」のコンボに「一撃で戦闘不能」(毒気が)にされてきた自分の方がよっぽど腹正しかった。(シヤは自覚無)     
 だが今日はちがうぞ!!今まで戦闘不能にされ続ける事、幾何十回!!もはや、そんな薄汚い技(何度も言うが、シヤは自覚無)に戦闘不能にされる俺じゃあない!!!     
 そう意気込んだ時               
 奇妙な音がして、海の方を見たカイの目に飛び込んできたのは   
 この島を丸々飲み込まんとするような大津波だった。      
 
- スレ1-675
 
- 名無しさん@サトヒカ萌え
 - 08/06/16 14:39:20
 
 あ!!付け足し忘れたんですが、カイとシヤのプロフィールをどうぞ!!   
 カイ   
 トレードマーク・サトシ張りのツンツン頭と、腕に巻いてある白い布   
 持ちポケ・ルナトーン(色違い)・デンリュウ・ラプラス   
 好きな事・聖域での昼寝・魚釣り 
 特技・シヤの面倒を見る事・シヤの「無敵のコンボ」で戦闘不能にならない   
 性格・元気いっぱいの熱血少年の時もあれば、冷静クールなインテリ系少年の時もある。   
 シヤの義理の兄 
 ゆりかご島唯一のポケモントレーナーであり、守人を務めているが、いつかは島を出て伝説のポケモンを探しに行きたいと思っている。     
 シヤ   
 トレードマーク・ヒカリ並のキューティクルな髪と、透通るような眼   
 好きな事・聖域での昼寝・野生ポケモンたちとのお喋り   
 特技・「なきごえ」と「ウルウルめせん」のコンボ!これで戦闘不能にならないのはカイ位   
 性格・内気で無口だが、純粋な心を持っている   
 ゆりかご島に住んでいる、可愛く、美形な少女。 
 ゆりかご島における「夢巫女」という役割をしていて、島一番の権力を持っている。     
 PS・途中何度か島の名前を「三日月島」と打ってしまっていましたorz 
 正しくは「ゆりかご島」です。  
 
- スレ1-677
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/17 16:20:09
 
 第10話【夢巫女②】       
 その津波で、多くの人が亡くなった、爺さんも婆さんも死んじまった、俺はシヤ・・・夢巫女のおかげで助かったけど       
 「夢巫女ってのはこの島・・・いや、シンオウ地方に伝わる伝説「三日月伝説」に出てくる聖女、その不思議な力を見に宿して生まれると言われている人の事だよ。 
 予知夢を見る事が出来て、この辺り一帯の守り神として祀られているんだ。ま、これもシヤが来るまでは伝説だったんだけど」     
 「ここまで話せば分かるだろ。シヤは予知夢を見る事が出来るんだ、その影響でよく眠るんだよ」 
 カイはシヤの髪を優しく撫でる   
 「でも・・・出来ればそんな力、持たない方が嬉しかったな」   
 シヤが予知夢を見る事が出来るって分かってからみんな大騒ぎ。シヤを夢巫女として祀るようになったまでは良いんだけど・・・・・その噂が広がってからはもう大変   
 テレビや雑誌のマスコミが押しかけ取材、噂がさらに広まって、養子にほしいという人が山のように押しかけてくる。 
 挙句の果てにはその力を自分のものにしようとする集団が現れてシヤを誘拐しようとする・・・・・     
 「てな具合にさ、俺、守人だからそいつらが来る度に追い返すんだけど、それでも切りがなくて・・・・・ 
 だから俺はシヤが死んだように見せかけたんだ、崖からの転落事故で死んだことになってる。」   
 カイはそう言ってカバンの中から一枚の写真を取り出す。そこにはまだ小さいカイと、金髪ショートカットの一人の少女が写っていた   
 「これが、昔のシヤ、今と全然違うだろ。髪の色を黒に染めて、何年か掛けて髪を伸ばしたんだ、それに雰囲気も昔に比べるとずいぶん明るくなった」   
 カイは一息吐くと、眼をゆっくりと細める     
 「おかしな話だよな、夢巫女ってさ、「誰かを救う事は出来るのに、自分は救えない」んだぜ」      
 
- スレ1-678
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/17 16:21:54
 
   どういう理不尽だ、それじゃあシヤは永遠に持っている力に振り回されるっていうのか!!   
 誰かを救うだなんてしなくていい!!予知夢なんて見ない方がいい!!!!   
 ・・・そう感じたのは、もう随分昔のようで・・・・・   
 でも・・・・・カイがどんなに言っても、シヤは予知夢を見る事を止めなかった。 
 眠れば必ず予知夢を見てしまうのだから、止めるも何も無いのだけれど。     
 だから・・・・・俺、シヤと約束したんだ   
 シヤが誰かを守るのなら、俺はシヤを守る。 
 誰かを救おうとするお前の手伝いをさせてくれ。   
 「って、もしかしなくてもカッコつけ過ぎか~!」 
 カイは、そう言って‘ははははは!!と、高らかに笑う・・・・・はずだった。             
 「・・・・・っておーい!!!!何でお前ら全員寝てんだよー!!!!」   
 ・・・サトシもヒカリも、タケシまでもが寝そべって寝ている。 
 この特殊な場所の癒しの力なのか、それともカイの話がつまらなかったのか・・・・・カイの名誉のため一応前者にしておこう・・・うん   
 自分で言うのは恥しいけど俺今アツ~くあつ~く語ったんだぞ!!深いい話したんだぞ!! 
 決して切れる事のない兄妹の絆、愛の深さを語ったんだぞ!!(血は繋がって無いけど!)   
 カッコつけ過ぎか~‘の後は「そんなことないです!!感動しました!!」っぽいセリフを言うべきだろー!!何で寝てんだよ~!!       
 「・・・・・まっいっか!!俺も眠いし、昼寝でもしよ~」   
 カイはシヤの隣に寝ころび、大きなあくびをすると、僅か3秒たらずで、グ~グ~と、夢の世界へと入っていった。         
 あの妹にして、この兄在り。        
 
- スレ1-681
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/18 16:35:13
 
   ・・・・・まっくらだ・・・・・     
 ここは・・・・・どこなんだ?     
 辺りがふわふわとした黒い雲のような靄のような霧のような、それが無限に続いているような 
 不思議な空間にサトシは一人、ポツンと突っ立っていた。     
 「あれ?・・・・・あれって・・・・・ヒカリ!?」   
 50メートルくらい前方に見えたのは、見間違うはずが無いヒカリの後ろ姿   
 「おーい!ヒカリ!!」   
 サトシが大声で叫びながらヒカリに駆け寄ろうとした時だった。         
 できれば・・・・・見たくなかった                 
 なぜってサトシの方を振り向いたヒカリの表情は     
 あの時以上に、これ以上ないって位に     
 悲壮感に満ち溢れた顔だったから・・・・・      
 
- スレ1-682
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/18 16:38:22
 
     第11話【ゆめ】     
 「ヒカリ!!!!」   
 とてつもなく嫌な感じがして、サトシは腹の中から精一杯に声を出して叫ぶとヒカリの方へ向って全速力で駆けだす。 
 ヒカリと自分との距離は僅か50メートル程度だというのにサトシには1キロも10キロも遠く、離れているような気がした。 
 サトシは、自分は足が速い方だ、と思っているが、今はこれ以上スピードが出せない自分が恨めしい。 
 こんな事だったらポケモン達だけじゃなく、もっと自分も鍛えておくんだったと思うほどに。     
 ヒカリとの距離が半分くらいに縮まった、その時だった     
 ヒカリ側に、忘れもしない前に見た自分の「影」が現れた。 
 ゾクッとした感覚が背中をはじめ、体中を支配する。   
 影は、サトシの方を向いてニヤリと不気味に笑うと、モワモワした闇になってヒカリをゆっくりと包み込んでゆく   
 「ヒカリーーーーーーーー!!!!!!」         
 まだ闇に包まれていないヒカリの右手を掴んだサトシの手は     
 繋がった、二人の手は         
 あっさりと、放れてしまった     
 サトシ・・・・・・・サトシ!!     
 確かに聞こえたヒカリの声に、サトシはハッと目を覚ます。 
 そこは、カイが案内してくれた聖域で、サトシは一気に記憶を取り戻した。   
 そうか・・・・・おれ、カイさんの話の途中で寝ちゃったんだ・・・・・   
 「どうしたの?さっきからうなされてたけど・・・・・だいじょうぶ?」 
 すぐ真上でするヒカリの声、眼を開けると、真っ先に飛び込んでくるヒカリの顔。 
 この状態からするに、自分はヒカリに膝枕をしてもらっているようだ。   
 「あ、ああ、だいじょうぶ・・・・」 
 サトシは大丈夫だという事をアピールするため、反動を付けて一気に立ち上がる   
 「その・・・・・ヒカリこそ大丈夫か?」 
 「?大丈夫って・・・・・なにが?」 
 「あ!いや、何でもない何でもない;;」   
 そうだ、あれは夢じゃないか・・・・・何にも心配ない・・・心配ないんだ・・・・・ 
 サトシは、そう自分に言い聞かせた      
 
- スレ1-683
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/18 16:40:53
 
   サトシは自分に必死にそう言い聞かせると、ヒカリから少し離れた場所に座る。   
 「よ!起きたか。」 
 「あ、カイさん・・・・・」 
 「よく寝てたよな~・・・ま、俺も昼寝できたからいいけど」   
 すみません、おれ達、話の途中で寝ちゃって・・・・・   
 そう言おうとしたサトシの声は               
 ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリン!!!!!!!!!!       
 鼓膜がブチ切れるのではないかと思うほどやかましい「目覚まし時計の音」でかき消された   
 「!・・・・・・・!!!」(な!何この音~!!、と言っている) 
 ヒカリが耳を塞ぎながら何か大声で喋っているが・・・何にも聞こえない 
 「・・・・・・・・・・・!!!」(だあああ~~~~ー!!!、と言っている) 
 あまりのやかましさに飛び起きたタケシに至っては、某有名名画のように口を大きくあけて絶叫している。 
 「「「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・!!!!」」」」」」」」」」」」 
 気持ちが良いだろうから、とモンスターボールの外に出しておいたサトシ達のポケモン達もそれぞれ大絶叫をしているようだが、勿論な~んにも聞こえない   
 騒音の原因の近くにいたサトシはもう「思考回路がショート寸前」 
 まさにぐうの音も出ない状態だ     
 そんな中・・・・・   
 バックの中をゴソゴソと探り、バクオングの「ハイパーボイス」並の音波を出す 
 「超特大目覚まし時計と言う兵器」の停止ボタンをバシッと止めたカイは神様に見えた   
 「・・・・・おはよう・・・・・」 
 「おうシヤ!起きたか。いや~な、シヤはマジで寝ると地震があろうが火事があろうが起きなくてさ~これ位大きな音が出る目覚まし時計じゃないと起きないんだよな~」       
 いや、だからそれは「目覚まし時計と言う名の兵器です」   
 と、突っ込む気力は、少なくとも今ここにいるメンバーの中にはいなかった       
 カイとシヤ以外「全員戦闘不能」    
 
- スレ1-685
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/20 21:07:59
 
 第12話【つくよみ祭り】     
 大きく、気品あふれる神社で行われるそれは、サトシ達が旅の途中で立ち寄った『グレッグル祭り』の倍以上は観光客がいると言うのにどこか静寂で、清楚な感じがした。   
 観光客・・・いや、参拝客でも良いかもしれない人々は、その半数以上が「浴衣」を身に纏っている。   
 だが誰もが気品を漂わせ、静かにしているといった訳では無い。祭りでおなじみの屋台はところ狭しと出ているし、小さな子どもはキャッキャッと騒いでいる。その親も勿論、子供の相手をするのに忙しそうだ。   
 だがそう言う風景が無いと静かすぎてしまう。 
 カイ曰く 
 「この位がちょうど良い」のだそうだ     
 「ジャ~ン!!」 
 ヒカリが歩いているサトシ達の前に急に飛び出して、着ている浴衣を見せびらかすようにクルリと一回転する。   
 祭に行く前、カイに「母さんの浴衣だけど・・・もし良かったら着てくかい?」 
 と言われて、二つ返事で貸してもらったそれは、ヒカリの髪の色と同じ淡い紺色をベースに、刺繍として小さな三日月がいくつも散りばめられていて、まるで夜の世界を浴衣に閉じ込めた感じがした。   
 「えへへ、どう?似合う?」 
 「へ~、似合ってるじゃないかヒカリ」 
 「ああ、よく似合ってるぞ」 
 タケシとサトシの言葉にヒカリはさらにテンションを上げる。   
 「でも良かった~!絶対間に合わないと思ったもん」         
 あの後・・・・・あの『凶悪目覚まし兵器』にたたき起こされたサトシ達は、自分達が寝ていた事に気づいて、慌てて聖域を出た。   
 聖域はいつでも昼間のように明るいため、自分達が何時間寝ていたのか、どのくらいの時間がたってしまったのかさっぱり分からないが、少なくとも3時間以上は居た筈だった。   
 サトシ達が聖域の外に出た時には外はもうすっかり暗く・・・・・・・・・・・・・・・             
 なっていなかった。      
 
- スレ1-686
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/20 21:09:50
 
   むしろ、聖域に入った時と同じ位置に太陽が有る気がしたのは偶然では無かった。     
 「でも驚いたなー『聖域では時間すら止まってしまう』なんて・・・・・」     
 慌てて聖域の外に出て混乱しているサトシ達に対し、カイとシヤはのんびりと、落ち着いた表情で聖域の外に出て、その種を明かしてくれた。   
 「まあ何でそうなってるのかは分からないけどな~アハハ~」   
 ・・・・・まあそのおかげで祭りに間に合ったのだから感謝はしないといけないだろう 
 (・・・この場合感謝するべきなのはカイとシヤなのか?という疑問は置いておこう)   
 しかし急がないといろいろ準備したりする時間は無いことは確実で、結局走る事になったのだが・・・・・・・・             
 パン!!   
 軽快な音が響き渡る。   
 「あ~もう!また外れちゃった~;」   
 ヒカリの残念そうな声も響き渡る。   
 サトシとヒカリはタケシとメインイベントが行われる場所で待ち合わせをする約束をして、別行動をとる事にした。   
 というのも・・・・・「こんなに綺麗で清楚なお姉さん方がいるのに観光なんてしてられるかー!!」という若干暴走気味のタケシの勢いに押されてしまい、結果的にこうなったのは伏せておこう(言ってんじゃん;)     
 まあ・・・・・結果はサトシとヒカリの予想どおり、グレッグルの毒づきを食らいまくる結果に終わる事は『確実』なのだが、これも伏せておこう(言ってんじゃん;;)     
 とりあえず屋台をまわる事にしたサトシとヒカリだが・・・・・   
 「おじさん!もう一回!!」 
 「あいよ~」 
 一軒目の「射的」でもうヒカリが5回も挑戦したせいで、3000円あった持ち金が半分を切ってしまった。(1回6発300円×5)   
 「おいヒカリ!いい加減にしろよ!」 
 「お願いっ!あと一回!!あと一回で良いから~」 
 「ったく・・・・・一体何が欲しいんだよ?」 
 今までヒカリの様子を見ていただけだったサトシだが、これ以上持ち金が減ってはかなわないと、ヒカリの元に歩み寄る。      
 
- スレ1-687
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/20 21:11:36
 
   「あれ!あのお守り!!」 
 ヒカリが指さした先にあったのは、羽のような形をした綺麗なペンダントで、如何にもヒカリが好きそうな物だった。   
 「小さくて全然当たらないのよ~;ねえサトシ!取ってくれない?」 
 元々そのつもりだったサトシは、ヒカリから射的用の鉄砲を受け取ると、ペンダントに狙いを定める。   
 これ以上ヒカリに任せていては、本当に持ち金がゼロに成りかねない。   
 サトシは色々なプレッシャーを感じながら、ゆっくりと引き金を引いた・・・・・                   
 「くっそ~!!何で当たらないんだよ~!!」 
 「さ、サトシ、もういいよ;大丈夫だから;;」 
 「おじさん!!もう一回!!!!」 
 「あ、あいよ・・・;;」 
 サトシは自分が熱血漢だという事を忘れていた;;   
 すさまじいサトシの気合いに『ヒカリや屋台のおじさんは勿論、屋台のそばを通った人達まで引いている』のに『まったく』気づいていない。   
 パン!パン!!パン!!!パン!!!!パン!!!!!   
 「だああ~~!!また外れた~!!!!」 
 サトシのイライラメーターが10上がった!!     
 くっそ~、当たり前だけど撃った瞬間ぶれるんだよな~!距離も結構あるし、標的が小さいから余計に外れやすいし・・・・・発射台でもあればな~・・・・・       
 ・・・・・ぶれる?・・・・・発射台・・・・・!!そうだ!!     
 「ヒカリ!!!!」 
 サトシがいきなり大声を出した事にヒカリは若干びくつくが、サトシはそんなことはお構いなしに、ヒカリの両肩を両手でガシッと掴む         
 「俺の発射台になってくれ!!!!」      
 
- スレ1-688
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/20 21:13:09
 
     「・・・・・・・・・・・・・(は?)」 
 (いや、どんな告白だよ!!(言わずもがなだが、サトシはそんな意味で言ったのではない))     
 「は、はい・・・・・」 
 「よし!!じゃあよろしく頼むぜ!!」 
 「え?な、なにを?」 
 「ほら!まずヒカリがこれを持って、その上からさらに俺が持つんだ、そうすれば安定して命中率が上がるだろ!!」 
 「あ、そ、そうね、うん!!」 
 ヒカリはサトシに言われたとおり、ペンダントに銃を構える。 
 そしてサトシは『銃を持つヒカリの手を『ギュッと握りしめ』銃身を安定させる』   
 「・・・・・・・」 
 「?ほらヒカリ、もっとしっかり持てって!あともっと近づけろよ!!」 
 サトシはそう言うと、ヒカリの手を更にギュッと握りしめ、『ヒカリの顔に自分の顔をグッと近づける』 
 「!!??な、なにを、」 
 「ほら・・・もっと『銃口を近づけ』なきゃ、威力は少しでもほしいし・・・」 
 「あ、う、うん」   
 (ヒカリの様子・・・・・なんか変だな・・・おれ、変なこと言ったかな?)   
 「よし、いくぜ・・・・・」 
 「う、うん・・・・・・・」   
 「「せーの!!!!」」       
 バン!!!!!           
 さてさて、結果は・・・・・?    
 
- スレ1-698
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/24 14:16:33
 
   第13話【ヒカリの異変】       
 パタン     
 そっけない音を出し、ペンダントを立て掛けていた台が倒れる。     
 「・・・・・・・・・・いよっっっしやぁあああああ!!!!!」 
 サトシはジム戦で勝った時と同じくらいの勝利の雄たけびを上げる。(そんな大げさな;)   
 苦労に苦労を重ね、ストレスと、精神&肉体的疲労をこれでもかと感じ、イライライライラしながら、それでも勝ち取ったこの快感。 
 賞品は自分の物にならなくても、サトシは何とも言えない達成感に満ち溢れていた。   
 「やった、やったあ!サトシすご~い!!」 
 ヒカリは銃を掴んだままサトシに抱きつくが、殆ど瞬間的で、すぐにパッ‘と離れてしまう。   
 「あ・・・ご、ごめん;;」 
 「?いいっていいって!」   
 これでやっと食べ物にありつける!!   
 おい!!と、突っこみたくなるのはご愛敬 
 なにせ聖域でルナの実を食べたのが最後、何も口にしていない。正直これ以上時間がたつと、腹の虫がグ~グ~鳴り出しそうだった。   
 「おめでとー!兄ちゃんこいつを選ぶたあ良い眼してるじゃねえか!!こいつは三日月のペンダント。悪夢を打ち消し、幸せな夢を見せ、奇跡を起こしてくれるお守りさ!(彼女へのプレゼントにゃあピッタリだぜ!!)」 
 屋台のおじさんが色々勘違いしながらサトシに賞品であるペンダントを渡す。   
 「ありがとうございます!」        
 
- スレ1-699
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/24 14:19:22
 
       「ほら、ヒカリ」 
 次の屋台へ行く途中、サトシはヒカリに何の迷いも無く、取ったペンダントを渡す。   
 「サトシ・・・いいの?」 
 「いいのって、何が?」 
 「だってこのペンダント、サトシが取ったんだし・・・・・」 
 「なに言ってんだよ、ヒカリが協力してくれなかったら取れなかったんだぜ?」 
 「でも私はサトシの言う通りに動いただけだし・・・・・」   
 「だ~か~ら~!!そんなの関係無いって!俺が『ヒカリのために頑張ろう』って!思ったんだからさ!」   
 だからお礼は言われても、あやまられたり、遠慮されるのはなんか違うだろ?   
 サトシは自分なりの意見をヒカリに伝える。   
 友達のため、仲間のため、ポケモンのため、がんばるのは当然の事。 
 そう思い続けているサトシにとって、それはゴク自然な、当たり前の事。     
 「で、でも・・・・・あ、あのね」 
 「それにこんな物、俺には邪魔なだけだからさ。」       
 だからいらないよ       
 「そっか・・・・・そうだよね・・・・・」       
 え?       
 サトシはあの感覚をヒカリから感じ、ヒカリの方を向く。 
 一瞬ではあるが確かに感じた。 
 この島に来てから確かにヒカリから感じるあの嫌な感覚。   
 「ヒカリ・・・?」 
 「どうしたのサトシ?」 
 「あ、いや、なんでもない」 
 気がつけばジッと、食い入るようにヒカリを見つめている自分が恥ずかしくなり、バッと顔を背ける。   
 「サトシ・・・ごめんね・・・」 
 「だから別にいいって!それより、何か食おうぜ!!おれ、腹減っちゃってさ!!」 
 いつか自分が言ったようなセリフで何とか空気を変えようとするサトシだったが、それは思いもよらない障害で拒まれるのだった・・・・・   
 「そ、その事なんだけど・・・・;」 
 「なんだよ?」 
 「サトシ・・・私は5回、サトシも5回、射的やったよね・・・」 
 「それがどうかしたのか?」 
 「・・・え~と;;射的って一回300円だったじゃない?それを私とサトシで十回やったって事は?」      
 
- スレ1-700
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/24 14:21:43
 
 「・・・・・・・・・」   
 「・・・・・・・・・」       
 「えーと、300+300+300+・・・」 
 「3000!!」 
 いちいち指を3本ずつ折り曲げてまるで小さな子供みたいに(いや、十分子供だけど) 
 計算するサトシにビシッと足し算の和を言う。     
 「そうそう!!三千・・・・・」     
 「・・・・・・・・・・・・・」     
 「って、ああああああ!!さ、さっきので金、使いきっちゃった・・・・・?」 
 ヒカリは申し訳なさそうにサトシに頭を下げる。   
 「うん、だってサトシ、すごく真剣だったから・・・・・その・・・・・」 
 「あ、いや、いいって、気付かなかった俺が悪い。って言うか、俺こそごめん、もう何もできないな・・・・・」   
 綿菓子・・・たこ焼き・・・水ふうせん釣り・・・まだまだしたい事は沢山あったけど、これじゃあ元も子もない。           
 「あ~あ、これじゃあ全然思い出にならないな~。」       
 「そんなことない!!!!」       
 ヒカリが突然大声を上げる。   
 サトシに何かを訴えかけるかのような、そんな感じが言葉から伝わってきた。   
 「そんな事ない・・・・・私は覚えてる・・・・・この島に来た事も、カイさんとシヤちゃんに会った事も、サトシが頑張ってこのペンダントを取ってくれた事も・・・・・今までの旅も、全部・・・ぜんぶ・・・・・」   
 「ヒカリ・・・・・?」   
 苦しそうな、切なそうな表情をしたヒカリを、サトシは目を大きく見開いて見つめる。   
 サトシがほとんど何も言えなかったのは、驚いたからでは無い、圧倒されてしまったからだ。   
 言葉、表情、ヒカリという存在から伝わってくるエネルギー 
 サトシには、いや、サトシだからこそ伝わってくる何かを訴えかけるかのような『はかいこうせん』にも勝るとも劣らないエネルギー。     
 もっとも、その効果は『はかいこうせん』とはうって変わって、人を惹きつけるようなものだったけれど。          
 
- スレ2-4
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/25 17:25:57
 
     半端じゃない、胸を締め付けられるかのような空気が場を支配する。 
 ヒカリもサトシも重くなった唇を呼吸に使うのが精いっぱいで少しも喋る事が出来ない。   
 サトシの肩に乗っているピカチュウ、ヒカリの足元にいるポッチャマも同じ、自分のトレーナーの元気が無い事があからさまに分かるこの状況で、心配しない方がおかしいというものだ。     
 「・・・・・・・・・・」 
 「・・・・・・・・・・ヒカリ・・・おれ」   
 「おっねえさーあ~ん!!ボクと一緒にこの神秘で素敵な神社で後世へ永遠に伝えられる素敵なれんあ(ドスッ!!)・・・・・し、シビレビレ~」   
 「・・・・・・・・・・」 
 「・・・・・・・・・・」 
 「ケッケッケッ」   
 なんとも言えないこの空気をぶち壊したのは、サトシ達の近くで少しも懲りずにナンパをしていたタケシと、その情けない主人にどくづきを食らわすグレッグルだったのが少し残念に思えるサトシだったが、それでも物凄く有り難かった。   
 あれ以上あの空気が自分に纏わり付いていたら呼吸もできなくなりそうだ。     
 「よう!何やってんだ?」 
 「カイさん!!」 
 「こんにちは、もうお祭りの準備は終わったんですか?」 
 「おう!メインの準備は万全さ!!・・・で、何でタケシは青い顔して倒れてんだ?」   
 タケシのこの状態を説明するには何かとめんどくさい、これまでずっといっしょに旅してきたサトシでもまだタケシのナンパ癖には慣れない   
 「と言うか『慣れたくない』」   
 二人はいつも通り苦笑いで誤魔化す。   
 「?ま、いいか、もうすぐ始まるから必ず来てくれよ!!」 
 カイはそう言うと、来た道を駆け足で戻っていく。流石に島でただ一人のポケモントレーナーとなるといろいろ忙しいようだ。     
 そう言えば・・・・・メインステージって、一体何をやるんだろう?     
 「サトシ!早くいこっ!!」 
 「あ、ああ!待ってくれよヒカリ~!!」   
 いつの間にか自分の前方にいるヒカリを追いかけながら、サトシはメインステージ会場へ急ぐのだった。       
 「し、シビレビレ~・・・・・グ、グレッグ、い、イテ!イテテテ!!つ、ツレテッテクレルナラヒキヅラナイデクレ~」 
 「ケッケッケッ(ズルズルズル)」    
 
- スレ2-5
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/25 17:30:03
 
 第14話「夢巫女の舞」     
 時は夕刻、太陽が海に沈む少し前。     
 明るくライトアップされた大きな舞台。 
 その舞台でゆっくりと、とても美しく舞う少女。 
 その舞台を囲むようにして張られている立ち入り禁止用のロープ。 
 そのロープの周りにズラリと立ち並ぶ観客。     
 舞の曲『月が舞い踊る夜に』を流す為の裏舞台からそっと覗きこむと、今日自分の船で乗せて来たあの3人組もいた。     
 この観客全員の目当てが、たった一人の少女の、自分の義妹の『舞』を見るためだと思うと、カイは誇らしくなる。     
 シヤは容姿もさながら、舞っている姿は実に美しく、いつもシヤを見慣れているカイでさえ心奪われてしまうのだ。   
 本当にこの娘は俺の義妹なのか、と         
 シヤは小さい時から舞うのが上手だったことは記憶にある。噂も結構広まっている方だと思う、だからこそ夢巫女として死んでも、踊り子としての顔で生きる事が出来ているのだから。     
 熟練した20代前半であろう踊り子が、勝負にと島まで来た事もあったが・・・・・     
 結果はシヤの圧勝。勝つも何も、先手であるシヤの舞を見ていた踊り子が、あっさりと自分の負けを申し出てしまったのだ。         
 シヤの舞は何と言うか、舞う技術や演技と言った物もあるが、シヤと言う存在自体が観ている人を惹きつけているように思う。   
 サラサラとした黒髪、深く暗く、人を引き付けるような目 
 少しでも力を入れたらポキッと折れてしまいそうな手足と、毎日遊びまわっているとは思えないきしゃな身体          
 
- スレ2-6
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/25 17:32:37
 
   過大評価かもしれないが、舞い踊っている時のシヤは、老若男女、それこそ万人を惹きつける。     
 それこそ毎日見ていたらシヤしか見えなくなる位・・・・・・・・・・           
 (って、俺はどんだけシスコン何だっつ~の!!)   
 カイは危うく声に上げそうになった自分の口を必死で押さえる。   
 (そんなんじゃねーぞ!!俺はこの島を出て伝説のポケモンを全部見るっつ~壮大な夢があるんだからな、うん!!・・・・・ 
 そりゃシヤは可愛いし、綺麗だし、なんで『10歳で』あるのかは分からないけど魅力があって・・・・・ってなに支離滅裂な思考回路になってんだ俺~!!)     
 「おい、カイ!もうすぐ曲終わるぞ!!なにボーっとしてんだよ!!」 
 「え!?あ、やっべ!!ここ頼む!!」 
 カイと同じ場所を担当している同い年の少年に怒鳴られ、カイは一目散に舞台と繋がっている出口へと急ぐ。   
 舞が始まる前も、終わった後も、シヤの手伝いをするのはカイの役目。 
 要はタレントなどのアシスタントマネージャーの様な役割だ。     
 これは、守人カイが必ずしなければいけない仕事。     
 ・・・・・と、いうのも他の人がやると、シヤが何一つ手伝わせてくれない為、仕方なくそうなったのだけど。     
 カイが到着した時には既に曲は終わり、シヤは舞台裏に戻ってきていた。 
 五月蝿い位の拍手が未だに聞こえてくる。   
 シヤは、あの華麗に舞い踊っていた少女とは思えない位、オロオロと小さな子供の様にカイを探していた。   
 「おーい!シヤ!!お疲れー!」 
 カイの姿を見つけると、安堵の顔をして、パタパタと可愛らしい音を立てて走り寄り、カイの胸に飛び込む。     
 (まったくこいつは・・・・・しょうがねえなあ=3) 
 と思いながらも、カイは顔を若気させて、シヤの頭を撫でるのだった。           
 若気てなんか無い!!byカイ        
 
- スレ2-9
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/26 16:09:06
 
   おれが・・・・・おれがもっとヒカリの事を気にかけてやれれば・・・・・!       
 第15話「悪夢の始まり①」     
 ゆりかご島に来てから、ヒカリの様子がおかしい事は分かってた。   
 暗く、苦しそうな表情をしたかと思えば,いつも以上に明るく、元気になったり・・・・・ 
 そしてなにより、ヒカリから時々出ていたあの不気味な闇。   
 分かっていたのに・・・・・なのに・・・・・!                     
 正直・・・・・見惚れていた。     
 誰か一人の演技や劇を、ここまで真剣に見た事は今までない 
 見れば見るほどに惹き付けられてしまう   
 それほどシヤの舞は素晴らしいものだった。 
 最初の登場から、最後の退場まで一瞬も目が離せなかった。   
 自分の心が圧倒され、何も考えられず、ただボーっと見惚れてしまった       
 ・・・・・だから・・・・・気付けなかったんだろうか・・・・・         
 シヤの肩が、ビクッと震えるのが分かった。   
 「どうしたシヤ?」 
 楽屋と言うには少々狭い小屋で、シヤの手伝いをしていたカイが、シヤの異変に真っ先に気づく。   
 いつもの身軽なワンピース姿に着替え終わっていたシヤは、ジッと窓の外を見つめている   
 「くる・・・・・・・・・・」 
 「え?」       
 「悪夢が・・・・・くる!」 
 シヤは静かにそう言うと、勢いよく小屋を飛び出し、先程まで自分が舞っていたステージへと駆けてゆく。   
 「お、おいシヤ!!」 
 カイは、何だか嫌な予感がして、シヤの後を全速力で追いかけた。    
 
- スレ2-10
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/26 16:12:53
 
       「綺麗だったな~!シヤちゃんの舞、あそこまで凄い舞は今まで見た事が無いな」 
 「ああ!おれ、見とれちゃったよ!!」         
 ヒカリはどうだった?           
 何も言わないヒカリに話しかけようとした、その時だった。       
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 
 「ヒカ・・・・・リ?」 
 ヒカリの顔は真っ青で、いつの間にか地面にしゃがみ込み、目を大きく見開いてガタガタと震えていた。       
 おい!どうしたんだよヒカリ!!大丈夫か!!!!   
 その言葉が出てこなかったのは、ヒカリに駆け寄れなかったのは   
 「・・・・・い・・・・・や・・・」       
 え?       
 ヒカリが言った言葉の意味が分からなかったからか     
 それとも     
 「・・・・・なんだよ・・・・・あれ・・・・・」 
 ヒカリの真上に集まってくる不気味な闇に圧倒されてしまったからか。       
 「シヤ!待てって!!・・・お、サトシ、なにやって・・・!・・・・・そ、そんな・・・あ、あいつは・・・・・」   
 「・・・・・ダークライ・・・・・」     
 カイとシヤの言葉が、妙にハッキリと聞こえた  
 
- スレ2-13
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/28 22:47:39
 
   恐怖に歪む人々の顔 
 悲鳴を上げながら必死に逃げる   
 ここは・・・・・戦場?   
 いや違う。周りは炎の海じゃないし、怪我人はいるかもしれないけど、死人は一人もいない。       
 ただ・・・・・人が、『何か』に攫われているだけだ       
 第15話「悪夢の始まり②」       
 「こっち!!はやく!!」 
 「おさないでー!慌てず避難してくださーい!!」 
 必死になってポケモンセンターのある街の方へ逃げる人々、その先頭に立ち、皆を誘導しているのはシヤ、中間地点に立ち、同じく誘導係になっているのはタケシ     
 「ピカチュウ10万ボルト!!」 
 「デンリュウかみなりパンチ!!」 
 ピカチュウの電撃が、デンリュウの電撃を籠めた拳が、『何か』に命中する。     
 そして後方で『何か』と戦い、時間稼ぎ・・・つまり「しんがり」を務めるのは、サトシ、そしてカイ。       
 いったいどうしてこんな事になってしまったのか、それは今バトルに集中している頭と体では考えられない、否、考えてはならない事だった。   
 「くっっそ!!何なんだよこの『闇の塊みたいな奴ら!!』倒しても倒してもスグ新手がきやがる!!」   
 カイが舌打ちと共に愚痴を吐く。 
 その言葉の通り、『闇の塊』は、ある程度攻撃をするとジュワッという音と共に消滅するのだが、一体どこからやってくるのか、すぐに新しい闇がやってくる。     
 そうまるで、無限に広がる闇の如く・・・・・どこまで逃げても逃げられないという事を示すように・・・・・            
 
- スレ2-14
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/28 22:50:02
 
   「ダーク・・・ライ?」   
 サトシがその言葉を言い終わるか否かのその瞬間。   
 ダークライは闇の霧となり、不気味なほど早くヒカリを包み込み始めた。       
 迷いはなかった。   
 今にも飲み込まれんとしているヒカリを掴もうと、手を伸ばせるだけ伸ばしながら、突進する勢いで走った。       
 僅かに闇から出ていたヒカリの右手をつかめた       
 確かに掴んだ筈だった。           
 パシイ!           
 何が起こったのか分からなかった・・・       
 ・・・否、分りたくなかった     
 「ひ、か・・・・り」     
 ヒカリが、自分の手を払いのけたなんて事、認めたくなかった     
 尻モチを付くまでの時間が、とても長く感じた・・・・・・・・・・           
 あれからヒカリと共に、一瞬でその場から消えたダークライが残したのが、あの闇の塊達。 
 一見モワモワとした丸いボールのような形のそれは、人とポケモンを無差別に襲った、 
 いや襲ったと言うよりはあの時のヒカリと同じく、攫っていった。   
 人を自らに取り込み、一瞬で何処かに消える。   
 その行為は人々の恐怖心を刺激するのには十分すぎる物で、瞬く間にその場は大混乱になってしまった。   
 カイとシヤのリードが無ければ被害はさらに広がっていただろう。    
 
- スレ2-15
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/28 22:55:07
 
     (・・・・・・・・・くそっ!なんで・・・なんでっつ!!) 
 「サトシ!?あぶねえ!!」 
 「ピカピー!!」 
 カイとピカチュウの声に、サトシはハッと我に帰る。 
 いつの間にか、闇が自分を包み込もうとしていたことに気づき、必死になってもがく。   
 「は、はなせ!!この!!」 
 もがいてももがいても、まるで霧のような状態になった闇は掴むこともできず、どんどん自分を包み込んでゆくのが分かる     
 (や、ばい・・・・・いしきが・・・・・) 
 何故か凄く眠たくなり、サトシが瞼をゆっくり閉じそうになった時だった     
 「ポッチャマー!!!!」     
 聞き覚えのあるポッチャマの声と共に、大量の泡が自分の顔に命中し、サトシは驚いて目を開ける。 
 見ると、自分に纏わり付いていた筈の闇は跡形も無く消えていて、目の前には、『バブルこうせん』を放ったであろうポッチャマが心配そうに自分を見上げていた。   
 「さ、サンキューポッチャマ、助かったぜ」 
 「サトシ!!だいじょぶか!!」 
 「ピカピーカ!?」 
 「ああ、だいじょうぶ・・・・・」     
 今のはおれのミスだ・・・・・集中しなきゃいけないのに・・・・・余計なことばっか考えて・・・・・!!     
 「ウ~ポー!!」 
 「!?いて、いていてててて!!」 
 「ミ~ミーー~!!」 
 「ウリー!!」 
 「つ、つめた、冷たいって!!」 
 「チパチパチパチパ、チパ~~~!!」 
 「わ゛ああああああああああああ!!!!」   
 何故かエテボース、ミミロル、ウリム~、パチリスからそれぞれの得意攻撃 
 スピードスター、れいとうビーム、こなゆき、ほうでんを食らいサトシはその場にブッ倒れる   
 「・・・・・おい!!おまえら何すん・・・」   
 サトシは、結構な凄みを効かせて睨みつけたつもりだったが   
 ヒカリのポケモン達はそれ以上の凄みで自分を睨み上げていた・・・・・    
 
- スレ2-16
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/28 22:57:57
 
   「ポ~チャ!ポチャポチャポ~チャア!!」 
 「ウポ!ウポウポポー!!」 
 「ミ!ミミ!!ミミミロ~!!」 
 「ウーリ、ウリウリウー」 
 「チパチ!!パチパチチパチパー!!」   
 何かを訴えている・・・・・とても大切な何かを・・・・・ 
 「お・・・おれ・・・・・ってうわあああああ!!」   
 5匹が一斉に再び自分に向かって攻撃を仕掛けた事に、サトシは思わず身構える   
 「・・・・・え?」 
 なんとも・・・・ない? 
 バッと後ろを振り向くと、今にも消滅しかかっている闇があった     
 第16話「混乱」       
 「・・・・・集中するんだ、サトシ」 
 いつの間にか側にいたカイが、肩に手を乗せ、サトシの眼をジッと見つめる。   
 「君の気持ちは分かる、君の状態も分かる・・・・・自覚は無いかもしれないけど、今君は確実に『混乱している』」   
 そう、サトシは混乱していた。   
 ヒカリがダークライに連れ去られたあの瞬間から・・・・・確実に。 
 混乱する予兆は幾つでもあった、島に来てからのヒカリの様子が大きな迎因だ、嫌な予感がして嫌な感じもして、何故だかすごく不安になって、それで・・・・・   
 「お前が何を思っているのか、何を知っているのか、何を感じているのかは分からない。けど、その状態じゃあヒカリちゃんを助けるどころかお前までどこかに連れ去られてしまうぞ!!」   
 カイの言葉が心に重くのしかかる       
 「今、そいつらのトレーナーはヒカリじゃ無い、君だ。 
 トレーナーが混乱した状態で、ポケモン達が力を発揮できると思ってるのか!! 
 今を切り抜けられないトレーナーが、バトルで勝てると思ってるのか!!」       
 『ヒカリを助けられると思ってるのか!!!!!』    
 
- スレ2-17
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/28 22:59:41
 
   カイの言葉がサトシの心の不を消し去ってゆく。その場を選んだ言葉と、物事の判断力。そしてバトルの腕・・・・・   
 さっきデレデレ顔でシヤの頭を撫でていたとは思えn   
 「ラプラス『ぜったいれいど』」   
 ちょっっ!!まっっ!!・・・ぎゃああああああ!!!!   
 「(なに言ってんだ、このくそナレーション!!一生氷っとk)・・・ってあら~・・・・・ひょっとして囲まれた?」   
 闇が、いつの間にか自分たちの周りを完全に囲んでいる。   
 集中しろっツっといて、これじゃあカッコつかねえな・・・・・   
 カイはゆっくりと、ベルトの上段にある、もう一組の3つのモンスターボールに手をかける。   
 「よっしゃあ!!いくz」             
 「ウリムー『こなゆき』!!ミミロルは『れいとうビーム』!!」   
 突然のサトシの指示にも動じることなく、むしろ当たり前のようにミミロルはれいとうビームを、ウリムーはこなゆきを繰り出す   
 「エテボース『スピードスター』!!パチリス『ほうでん』!!ナエトル『はっぱカッター』!!ブイゼル『みずのはどう』!!グライオン『はがねのつばさ」!!ムクバード『ブレイブバード』!!ヒコザル『かえんほうしゃ』!!』     
 サトシの的確かつ、素早くするどく繰り出す技の指示に、ポケモン達は完全に身を任せて戦っている。     
 ポケモンが安心してトレーナーの指示に従えるようになった・・・・・すなわち『混乱』状態では無くなった今のサトシに『今、この瞬間を全力で戦えるようになった今のサトシに』こんな敵では役不足。     
 「ポッチャマ『バブルこうせん』!!!ピカチュウ「10まんボルト」!!!」     
 2匹のおきまりのコンビネーション技が決まり、サトシとカイを囲んでいた闇はすべて消えさる。      
 
- スレ2-18
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/28 23:00:17
 
     「・・・・・ごめんなさい、カイさん」 
 「・・・・・・・・・・」 
 カイは黙ってサトシの言葉に耳を傾ける   
 「おれ・・・・・変だった・・・・・ヒカリが消えた時から、なんか頭の中ゴッチャになっちゃって・・・・・なんでか分かんないけど、とにかく混乱しちゃって・・・・・」       
 焦ってて、虚ろになってて、怒ってて、あの嫌な感覚が体中を支配して・・・・・振り回されてた、混乱してた       
 でも、もう振り回されない、混乱もしない       
 『おれ、ヒカリを助けに行きます!』       
 力強い意志・・・・・仲間を思う気持ち・・・・・シヤが気にいるわけだ   
 「わかった、俺でよかったら協力するぜ!!何より俺は守人だ!!島のため、戦わない訳にはいかない!!当てもあるしな!」 
 「ホントですか!?」 
 「ああ!!取りあえずポケモンセンターまで急ぐぞ!!」 
 「は、はい!!」       
 サトシとカイは、力強く地面を蹴った。           
 タイムリミットまで、あと「5時間」    
 
- スレ2-21
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/30 13:58:54
 
   第17話「ポケモンセンター」     
 「サトシ!はやく!!早く中へ!!」 
 「くっ!ナエトル『エナジーボール』!!エテボース『スピードスター』!!パチリス『ほうでん』!!」 
 サトシは未だに自分たちを追ってくる闇を撃退して、ポケモンセンターの中に滑り込む。   
 「よし今だ!ルナトーン『しんぴのまもり』!!ラプラス『ひかりのかべ』!!デンリュウ『リフレクター』!!」 
 カイの指示で、3匹はポケモンセンター全体を包み込むように技を放つ。   
 「仕上げだ!ルナトーン『つきのひかり』!!!」   
 最後にルナトーンにつきのひかりを支持すると、自分もポケモンセンターの中に入り、鍵を閉める。               
 ポケモンセンターの中は、泣き喚く子供の声や、不安や恐怖に歪む人達の顔、パニックでおかしくなる人などもいて、正直とんでもなく空気が悪い。   
 この惨劇で、空気が悪くならない方がおかしいのだけど     
 「ふう・・・・・これで暫く大丈夫のはずだ・・・・・」 
 カイは壁にもたれかかると、そのまま座り込み、深いため息を吐く。   
 「もう4年くらい守人をやってるけど、こんな大騒動初めてだ・・・・・」   
 さあて・・・・・どうするか・・・・・・・・・・ん?   
 いつの間にか自分の目の前に来ていたサトシに気づき、カイはゆっくりと腰を上げる   
 「・・・・・カイさん・・・・・さっき当てがあるって・・・・・どうすればヒカリを助けられるんですか!?」 
 「・・・・・焦るな、色々説明しなきゃいけない事があるし、作戦会議もしなくちゃいけない・・・・・あいつに聞きたい事もあるしな・・・・・」   
 カイは、疲れたのか椅子に座ったまま眠っているシヤの方を向く。     
 「・・・・・・・・・・・・・・・」 
 「?」   
 「カイさん!大変です!!」 
 「タケシ!どうしたんだ?」 
 ポケモンセンターの手伝いをしていた筈のタケシがカイを見つけて駆け寄ってきた、尋常ではない慌てようだ。    
 
- スレ2-22
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/30 14:00:15
 
   「すぐわかります!はやく!!」 
 「わかった!サトシはここで待っててくれ」   
 そう言うとカイとタケシは、ポケモンセンターの奥の方へ駆けて行ってしまった。     
 「・・・・・おにいちゃん・・・・・」 
 「ん?ああ、シヤちゃん!!どうかしたのか?」 
 カイとタケシが行ってしまってからほとんど間が無く、シヤがサトシに話しかけて来た。   
 一度寝たら『あれ』やるまで起きないんじゃなかったのか・・・・・?   
 「・・・これ・・・・・おにいちゃんの・・・・・」 
 「え?これは・・・・・」 
 シヤがサトシに手渡したのは、射的でとったあのペンダント。 
 おそらくヒカリがダークライに連れ去られた時、ヒカリのモンスターボールと一緒にその場に落ちていたのだろう。   
 「サンキュー・・・・・でもこれはおれじゃなくて、ヒカリのなんだ。ヒカリが帰って来た時、渡してやってくれよ」 
 サトシはペンダントを返そうとするが、シヤは首をフルフルと振って、受け取ろうとしない。   
 「おにいちゃんがもっていて・・・・・おねがい」 
 「・・・・・わかった、ありがとうシヤちゃん」   
 シヤを見ていると、なんだか本当に自分が持ってた方が良い様な気がして、サトシはペンダントを自分のポケットにしまった。           
 おにいちゃんが持ってないと、意味、ないから・・・・・          
 
- スレ2-23
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/30 14:01:38
 
   カタカタカタカタ、カチッ・・・・・ビーッ!!ビーッ!!       
 もう何回この音を聞いただろう。 
 画面に出て来た「ERROR」の文字に、カイは力尽きた様に通信機械に突っ伏す   
 「くっそ!やっぱダメかー!!」   
 ・・・・・予想はしてたけどマジとわな・・・・・やっべえなこりゃ・・・・・     
 第18話「作戦会議①」     
 「ジョーイさん!ポケモン転送機械と、回復装置の方は?」 
 「ダメです!何度もやってるんですけど、全然回復しません!!」   
 予想どうりの返答に、カイはさらに頭を抱える。       
 外部との連絡は取れない、ポケモンの預け、引き出し、転移はできない、回復装置も使えない・・・・・状況は最悪・・・・・     
 「・・・・・まあ、ゼッテえ諦めねえけどな!!」           
 「あ!!カイさん!」 
 「・・・・・・・・・・・・・」 
 「お!シヤ!!起きたか・・・・・ちょうど良かった、今から状況説明と作戦会議をしようと思う。ポケモンセンターの地下1階にある『資料室』ってとこだ、タケシはもう行ってる、付いて来てくれ」          
 
- スレ2-24
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/30 14:03:38
 
       大きな棚と、そこに収まっている本ばかりが目立つ、とにかく大きいその部屋は、間違いなく資料室と言うその名に相応しい物だった。   
 それ以外の物と言えば、中央にある少しばかり大きなテーブルとイス、少し汚れている大きいホワイトボードだけ・・・・・     
 「ザ、ザトジ~・・・・・ダ、ダズゲテグレ~・・・・・」     
 「?」 
 「?」 
 何だかタケシに似ているような似ていないような変な声が聞こえて、サトシとカイはキョロキョロと周りを見渡す。   
 「・・・・・あそこ・・・・・」   
 シヤが大量の本と資料に埋もれて力無く蠢く2本の足を指さす・・・・・正直少し気持ち悪い   
 「なにやってんだよタケシー!」 
 「ははは;;」 
 サトシが右足、カイが左足を引っ張り、ズルズルと引きずりだす。   
 「ははは;いや、暇だったから何か本でも読もうと思って適当に1冊抜き取ったら・・・・・」       
 バランスを失って崩れてきたと・・・・・       
 「・・・・・まあいいや、どうせ滅多に使う人いないし、適当に片付けといてくれればいいよ」 
 「え・・・・・でも・・・・・」 
 「いいって、ここの元所有者が片付けを厳かにしていたのが悪い・・・・・ってそれだと自虐をしていることにもなるのか;;現所有者は俺だしな・・・・・」   
 「元所有者って?」         
 「・・・・・研究のためこれだけの資料と本を持ってこの島に来た変わり者・・・・・死んだ俺の母さんさ」           
 ・・・・・まだ・・・・・まだ間に合う・・・・・まだ・・・・・    
 
- スレ2-25
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/30 14:07:01
 
     「そんな・・・・・島の外への連絡も、パソコンの通信機能も、ポケモン達の回復もできないなんて・・・・・」   
 「ポケモン達の回復は他にも手段があるからともかく、SOSが発信できないのと、ポケモンの引き出しができないのは痛いですね・・・・・」   
 「ああ・・・この島の住人はポケモンをゲットしないし、祭りを見に来た観光客は殆どポケモンを預けちゃってるし・・・・・状況最悪と言っていいな・・・・・」   
 「・・・・・・・・・・さいあく・・・・・・・・・・」     
 第18話「作戦会議②」     
 重苦しい空気が、ただでさえ湿っぽく、ほこり臭い資料室の中に漂う。 
 この状況を打破するために開いた会議だが、開始早々の暗い話題に、メンバーの意気は沈む。   
 「しかも・・・・・祭りの時も漁に出てたおっちゃんに話を聞いたんだけど・・・・・どうやら島の外に『出られなくなってる』らしいんだ」   
 「え!!??そ、それってもしかして、色が沢山混ざって、モヤモヤした変な雲と言うかなんと言うか・・・・・・と、兎に角『元の場所に戻っちゃう』ってやつですか!?」   
 「あ、ああ、そうそう・・・・・お前ら何で知ってんだ?」   
 ・・・・・ここで『あの事件』を言っていいのかサトシとタケシは迷ったが、もしかしたら事件解決の手がかりになるかもしれない。   
 サトシとタケシは覚悟を決め、あの事件の事を話し始めた・・・・・           
 ・・・・・・・・・・10分後・・・・・・・・・・             
 「あ、あのー;;・・・・・カイさん・・・・・」   
 「うそだ・・・・・神と呼ばれるディアルガとパルキアにそんなにあっさり・・・・・長年探し求めてた訳でもないのに旅の途中でそんなにあっさり・・・・・ 
 しかもディアルガ対パルキアの熱戦をそんなに近くで観戦したうえ、パルキアの空間移転の力を目の前で見れるなんて・・・・・」(←超小声)   
 地面に突っ伏して、ブツブツブツブツまるで呪術を唱えるかのように感想を言うカイを見てようやく     
 (ああ・・・・・別の意味で話すんじゃなかったな・・・・・)     
 と言う事にタケシは気づく。      
 
- スレ2-26
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/06/30 14:09:11
 
     この他数多くあるサトシの武勇伝を聞かせたら、彼はショックでこの場から一生動けないかもしれない。     
 「だいじょうぶだよ・・・・・だってダークライに会えたよ・・・・・他のポケモンにもきっと会えるよ・・・・・」 
 「シヤ・・・・・・・・・・ああ!そうだよな!!きっと会えるよな!!」   
 シヤは元気になったカイに頭をなでられると、顔をほのかに赤く染めて、嬉しそうに目を細める     
 ・・・・・なあシヤ、まだ間に合う。目え覚ませ、お前を見て若干ドキドキするこの変態からはなr     
 「デンリュウ『10まんボルト』」(ボソッ)   
 な!おい!!マジでやめてくれ!!すみませんでした!!!アニメじゃなんとも無いけど普通人間が10万の電流なんて食らったら即死・・・・・・・・・・(死んだ)     
 (ほんと何ほざいてんだ死ね!!俺は変態じゃねえ!ロリコンでもシスコンでもねえ!!・・・・・確かにドキドキしない事も無いけど・・・・・ 
 第一シヤと俺は4歳しか年の差ねーし、血も繋がってn・・・・・ってこれじゃあほんとに変態だっつーの!!めーさませー!おれー!!)     
 バシバシバシ!!!   
 「カ、カイ・・・・・どうしたの・・・かおバシバシたたいて・・・・・」 
 「え!?ああ・・・その・・・き、気合いでも入れようかなって・・・;;」   
 カイは誤魔化すように急いで椅子に座ると、咳払いを一つして、話の節目を作る。     
 「さてと・・・気合を入れなおして説明するか・・・・・まず、お前らは、分かってる通り、『ディアルガとパルキアが作り出した異空間』に閉じ込められた・・・・・んでもって今回は・・・・・」       
 『ダークライの作り出した異空間に閉じ込められたんだ』           
 ここは・・・・・どこ・・・・・?     
 真っ暗闇・・・・・何も見えない・・・・・     
 あ、あれは・・・・・あれは・・・・・・・・・・!!      
 
- スレ2-31
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/02 14:05:24
 
   「ダークライが作り出した異空間・・・・・?」   
 「ああ、通常、創造という神業ができるのは、時間を司る神『ディアルガ』空間を司る神『パルキア』反転(世界)を司る神『ギラティナ』この3匹だけだ・・・・・ 
 ・・・だけど、例外的にそれ以外で創造ができるポケモンがいる、それが・・・・・」       
 「夢を司る神『ダークライ』なのさ」       
 第20話「夢世界」     
 「ダークライが誕生したのは、シンオウ地方が創造され、人間が移り住んできて暫く経ってからだと言われているんだ。2,300年くらい後らしい」 
 カイは、全体が真っ黒な、いかにも古文書っぽい本を棚から抜き出すと、パラパラとめくる。   
 「それは?」 
 「『夢幻の書』『夢』に関する知識が詰まった本さ・・・・・」 
 カイはあるページでぴたっ、とめくるのを止め、そこに書いてある古代文字を読み始めた             
 ダークライ誕生物語     
 神々によって仮装の地ができ、様々な命が暮らし、300年あまり。   
 最初は小さい力だったその空間は、今や空間の神ですら打ち消せないほど強力なエネルギー体になった。     
 神も、自分の創造力よりも『人間の創造力が勝る』なんて事は予想してなかったのではなかろうか?     
 そのエネルギー空間の正体は他でもなく『人の夢見る力』すなわち『人間の想像力』で生まれたもの。       
 紛れも無い創造の力なのだから・・・・・          
 
- スレ2-32
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/02 14:06:45
 
     神々が創造力で創ったこの地は、他の地とは違い、人が眠る時に出すエネルギーを、目にこそ見えないが創る事が出来た、いや出来てしまった。   
 人は、寝ると夢を見る。自覚すら無いだろうが、それは生きていく上で欠かせない事だからだ。   
 『感情』『意志』『知識』   
 人が持つこれらの3大要素はそれにかかわる事柄に触れる度に稼働し、莫大なエネルギーを生み出す。それは僅か1日で人が貯蔵できる量を超える。   
 眠くなるのは貯蔵できる量が限界に達した証。   
 眠る事によってそのたまりにたまったエネルギー、いわゆる老廃物を想像力で消費する、つまりは夢を見ることで目に見えないエネルギーを体外排出しているわけだ。   
 人が夢の内容を殆ど覚えていないのはその為だ。   
 これが『元』になった。ほかの地方ではいずれ消えてしまうそのエネルギーも、同じく創造力で作られたこの地では残留する。       
 幾月、幾年に渡り、この地に溜まったエネルギーが1つとなり1つの世界を創った       
 そこに誕生した生命体とも思念体とも言い難い何か。       
 悪魔を思わせる形をしたそのポケモンは、その世界にある幾つもの夢中の1つ『悪夢』から生まれた・・・・・           
 この世に在るからには名前が必要だ・・・・・       
 夢のエネルギーでできた世界を『夢世界』ポケモンの方を『ダークライ』と呼ぶことにしよう・・・・・・・・・・       
 とある古代の科学者の日記より抜粋      
 
- スレ2-33
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/02 14:09:03
 
     「・・・・・ってな訳だ!これで分っただろ?俺達はダークライの棲む夢世界にこの島ごと引き込まれ・・・・・・・・・・っておーい!!ちょっと待てー!!何でまた寝てんだよー!!」   
 サトシとタケシはテーブルに突っ伏してグースカと寝ている。 
 シヤは辛うじて目を開けているが、ウトウトしていていつ寝てもおかしくない状態だった。     
 なあ・・・・・俺の話ってそんなにつまらないか?・・・・・ただ本の文章をそのまま読んでるだけじゃねえか・・・・・なんで!なんで?なんでー!?・・・・・ってそれどころじゃねえ!!     
 「おい起きろ!!おーきーろー!!!!!」 
 カイは自分が出来る最大限の声を出し、肩をゆすり、二人を強制的に起こす。   
 「むにゃ・・・・・あれ、カイさん」 
 「んあ・・・・・ど、どうも・・・・・」 
 「たっくお前ら・・・・・人が話してる途中で寝ないでくれよ・・・・・」 
 サトシとタケシは顔を見合わせると不思議そうにカイの方を向く。   
 「おれたち・・・・・寝てましたっけ?」 
 カイは、やっぱりな・・・・・、とため息をつく       
 「忠告しとく・・・・・ここは雪山でも氷山でもねえけど・・・・・」               
 今眠ったら、死ぬぞ      
 
- スレ2-34
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/02 14:10:55
 
   第21話「状況と作戦」       
 ここちいいんですか?       
 闇の中、誰かの声が聞こえた 
 私はその言葉を否定したくても否定できない自分に気づく     
 それいじょうおちたらもどれませんよ?     
 ・・・・・だめだ・・・・・頭では分かっていても、この何とも言えない感覚にどうしても足掻らう事が出来ない・・・・・     
 私はもう成すがままに、体中を支配するその感覚に身を任せた。               
 「・・・・・いいか!夢と全く同じ仕組みと理論でできたこの夢世界に今俺達が居るって事は   
 ①夢を見るのをやめたと言う事になる(現在夢の主人公はそれぞれ自分自身だから) 
 ②夢エネルギーとして吸収される 
 ③ここは『夢世界』だけど『夢』ではなく『現』なので名実ともに消滅決定!!   
 ・・・・・ってな訳だ!この悪夢から目覚めたいのならとりあえず・・・・・」       
 絶対に寝るな!!      
 
- スレ2-35
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/02 14:13:08
 
   カイがサトシとタケシの頬をそれぞれ思いっきり抓っていた手を同じタイミングで放す 
 二人の頬は真っ赤なリンゴのように染まっていた。   
 「いってててて;わ、分りました;;」 
 「そ、それにしても『夢世界』ですか・・・・・元の世界に戻る方法はあるんですか?」 
 カイは考え込む様な表情をすると、ばつが悪そうにボソッと告げる。   
 「・・・・・多分ダークライを倒せば元の世界に帰れる・・・・・・・・・・と思う」 
 「・・・・・なんだ!じゃああいつを倒せばいんだな!!簡単じゃん!!」     
 後はヒカリや攫われた人たちをどうやって助けるか、だな!!     
 自信なさげなカイに対し、サトシはやっと見つかった突破口に大喜びだ。 
 それなら難しい事を考えずただいつもどおりバトルをすれば良い!そして勝てばいい!!   
 「おいおいサトシ、簡単ってお前なあ;;」 
 「仮にも神だぞ?そう簡単にいくとは思えない・・・・・ん?」     
 先程から何かが足りないような・・・・・そんな違和感を感じ、カイはシヤの方を振り向く。カイが思った通り、シヤは今にもスヤスヤと眠り始めそうだった。     
 「おい!シヤ!!お前俺の話聞いてたか?寝るなっつっただろ!!!」   
 カイがシヤの頬をペチペチと叩くと、シヤはようやく気を取り戻す。        
 
- スレ2-36
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/02 14:14:37
 
     「・・・・・カイ?・・・・・ごめんなさい・・・・・」 
 「っつ!!?」     
 口から少しよだれをたらし、瞼をトロン、とさせ、上目遣いで見つめてくる・・・・・!     
 「カイ?・・・・・どうし・・・・ひゃ、ひゃひ?」 
 「たーてたーて、よーこよーこ、まーるかいて」   
 カイはシヤの両頬を掴むと、どこぞの絵描き歌のように上下左右に引っ張る。   
 「チョン!」 
 「ひゃあ!・・・・・うう;いひゃい・・・・・ひゃんへえ?」 
 「俺の話聞いてただろ!!寝たら消えちゃうんだよ俺ら!!」   
 いや、だからってあんな事しなくても・・・・・ 
 シヤは涙目で自分の頬を抑えている。   
 「次寝そうになったら今の倍の量やるからな?」 
 カイの宣言に、シヤはコクコクと猛スピードで首を縦に振る。結構効果があったようだ。     
 カイはコホンと咳払いをすると急に真剣な眼になり3人を見つめる。   
 「さてと、時間が無い、事情と作戦説明する。よーく聞いてくれよ・・・・・」             
 あの時、自分の顔が熱を帯びたのは気のせい、絶対に気のせい!!    
 
- スレ2-39
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/04 15:57:34
 
   第22話「光」     
 いい加減どっかに行っちゃってよ・・・・・   
 いまだに私のそばから離れない小さな光に私は言い放つ   
 (いいえ、そうゆうわけにはまいりません) 
 ・・・・・私はここから出る気はないわよ・・・・・   
 だって心地いいもの・・・・・   
 (分かっています。それに私ではあなたを救う事はできません) 
 ・・・・・もういい・・・・・   
 私はそう言うと再び、深まっていくあの感覚に身を任せた・・・・・         
 ですが・・・・・わたしはあなたをすくいたいのです。そして・・・・・かれも、ね               
 「ムクバード『つばさでうつ』!!」 
 「デンリュウ『アイアンテール』!!」 
 「ウソッキー『ウッドハンマー』!!」     
 次々と迫りくる闇を迎撃しながらサトシ達は走っていた。 
 カイの作戦実行の為、この道は避けて通れない。 
 サトシ、カイ、タケシの3人はポケモンを持っていないシヤを囲み、守りながらできるだけ固まって走る。   
 蹴散らすと言うよりは、貫く、と言った感じだ。     
 「ポケモンセンターの人達は大丈夫なんですかー!!」 
 この作戦実行の為には、4人がどうしてもポケモンセンターを離れる必要があったが、やはり気がかりだった。   
 「大丈夫さ!眠気覚ましに『カゴの実』を大量に用意してもらったし、行く前にもう一度『ひかりのかべ』『リフレクター』『つきのひかり』をかけて来た! 
 奴ら、月の光が苦手みたいだからな、2時間はもつはずだ!!」     
 それに『あいつ』も置いてきたしな・・・・・      
 
- スレ2-40
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/04 16:07:18
 
     カイはモンスターボール収納ベルトの中から、一つだけ抜けている所に目をやる。   
 「心配すんな!!大じょうb」 
 「か、カイさん!やっぱり無茶です!!」 
 「・・・・・うるせえ!わめいてる暇があったら走れ!!」 
 息を切らしながらタケシが根を上げる。 
 ポケモンセンターからここまで全力疾走をしているという事もある。 
 が、最大の問題はそこでは無く     
 『1人1匹のポケモンでこいつらを蹴散らすなんて無茶です!!』   
 「仕方ねえだろ!これしか方法ねえんだよ!!」   
 これはあくまで余興、救出作戦のきの字にも入っていない。   
 これからもっと厳しくなるであろう戦いに備えるため、ここで力を使う訳にはいかない。 
 これがカイの結論だった。 
 例外としてサトシの肩にピカチュウが乗っているのを除き、カイはポケモンの出し入れを許さなかった。     
 「なるべく固まりながら走れ!!技の無駄遣いもしないように、最小限の敵だけを倒しながら前に進むことだけに集中しろ!!」   
 「はい!ムクバード『つばめがえし』!!」 
 先頭を行くサトシとムクバードが突破口を開き 
 「デンリュウ『ほうでん』!!」 
 カイが周りの敵を撃退し 
 「ウソッキー『けたぐり』!!」 
 タケシが2人の打ち漏らした敵に止めを刺す。   
 付け焼刃にしてはなかなかのコンビネーションになっている3人は、次々と闇を撃破していくのだが1人一匹合計3匹というのは流石にキツイ。   
 だけど負けるわけにはいかなかった。     
 (まけるもんか!・・・・・絶対に負けるもんか!!)   
 「ムクバード『ブレイブバード』!!!」      
 
- スレ2-41
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/04 16:08:54
 
       サトシの指示でムクバードが空高く舞い上がり、前方を塞ぐ闇を一撃で蹴散らす。 
 「へえ!やるじゃん!!」 
 「おにいちゃん・・・・・すごい・・・・・」 
 「いいぞサトシ!!」   
 俺も負けてらんねえな!!   
 「行くぜ、デンリュウ『はかいこうせん』!!!」   
 カイが負けじとデンリュウの『はかいこうせん』で周りの敵を一掃する   
 「よーし、おれも!ウソッキー『ものまね』!!」   
 それに習いタケシとウソッキーは、デンリュウの『はかいこうせん』をコピーし、これまた一掃する   
 「よーし、あと少しだ!急ぐぞ!!」 
 「はい!!」       
 (まっててくれよ・・・・・ヒカリ・・・・・!!)             
 ふう・・・・・いけませんね・・・・・よそういじょうにてこずっているみたいです・・・・・   
 未だにヒカリのそばを離れない光が、どうし様かというように周りをうろつき始める。   
 このままではまにあわない・・・・・しかたありませんね。   
 (彼がこなくては元も子もありませんもの)   
 すこし、まっててくださいね・・・・・それまでなんとか・・・・・     
 光は、クルリと空中を一周すると、その場からパッ、とかき消える。 
 ヒカリの周囲は、ドンドン暗くなっていった・・・・・        
 
- スレ2-42
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/04 16:10:28
 
       はあ、はあ・・・・・くっそ、マジきりがねえ・・・・・   
 カイの予想をはるかに上回る闇が自分達の行く手を塞ぐ。 
 特訓に特訓を重ねた自慢のデンリュウもHPが4分の1を切っていた。 
 サトシ達のポケモンも同じ、ハッキリ言ってかなりの疲労がたまっている。   
 やっぱ一人一匹ってのはきつ過ぎたか・・・・・・・・・・?   
 「なんだありゃ?」 
 「どうしました?」 
 「なにかあったんですか?」   
 いや、あれ・・・・・         
 カッ!!と光った、突然だった   
 強く、されど美しく、優しい光     
 眩しくて眼をつぶってしまうのに、何とかしてその光を見ていたい。 
 なんだろう・・・・・この感覚・・・・・どこかで・・・・・     
 ゆっくり消えた、急いで眼を凝らした、何も見えなかった、何もいなかった       
 「・・・・・ま、眩しい!目がチカチカする!!」 
 「か、カイさんは平気なんですか?」 
 普段ルナトーンの『つきのひかり』やデンリュウの『フラッシュ』の特訓をしているカイにとって、目を慣らすのはた易い事のはずだったのだが、それでも見えなかった。   
 それでもサトシとタケシよりははるかに早く回復していて、眼はすでに周囲の暗さに慣れている。   
 「ああ、俺は平気・・・・・!?な、なんだこれ!!??」       
 周囲を見渡したカイの目に飛び込んできたのは、今までで見たことも無いくらい光輝く森と、無限にいるのではないかと思わせる程いた闇が消えた後だった。         
 「・・・・・くれ・・・・・せりあ・・・・・」           
 すみませんがあきらめはわるいほうですので。      
 
- スレ2-45
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/07 13:44:31
 
   クレセリア、三日月ポケモン。   
 飛行する時はベールのような羽から三日月の粒子を出す。 
 三日月の化身と呼ばれている   
 (ポケットモンスター、パールのポケモンずかんより抜粋)       
 第23話「いざ、悪夢の世界へ」       
 聖域『月黄泉の泉』     
 「ここまで変わっちまってるともう何処だか分かんねえな・・・・・」   
 必死になって辿り着いたそこは、生い茂っていた草木は枯れ、海は黒く、禍々しく染まり、空は不気味な色を醸し出している。   
 荒れ果てたその土地は、もはや聖域とは言い難い物になっていた。   
 「うそだろ・・・・・あんなに綺麗な場所だったのに」 
 「・・・・・こりゃひどい・・・・・たった数時間でこんな・・・・・」   
 あまりにも変わり果てたその光景はしっかりと目に焼き付いた、元の姿を知っているから尚更だった。   
 「・・・・・代償なの・・・・・」 
 「だいしょう?」 
 「どういう意味だ、シヤ?」   
 「泉を残すための代償・・・・・悪夢世界に行くためのとおり道を残すための代償・・・・・三日月の聖女は全て分かってる・・・・・」   
 シヤは目を閉じたまま、何かを感じ取るように神経を集中させている。   
 「・・・・・なあシヤ、やっぱりさっきの光は・・・・・」 
 「うん、クレセリアだよ」 
 「やっぱりそうか・・・・・」   
 森の木々や地面、岩に小川に草花も、全てが眩いばかりに光り輝いていた。 
 あんなに森が輝いたのは見た事が無い、伝承で伝わっている話で思い当たる節が1つあるだけだった。   
 『その光、慈憎石は金剛石の如く輝き、心は真珠のように美しくなり、闇は白金のように白く染まる』      
 
- スレ2-46
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/07 13:45:47
 
     「伝承はホントだったって訳か」 
 「でも・・・・・何でここに?」 
 「・・・・・ここはクレセリアにとって・・・・・ううん、聖女と悪魔にとって最も大切な場所なの・・・・・」 
 シヤはそう言うと、泉まであと一歩と言うところまで近づく   
 最も大切な場所?聖女と悪魔?いったい何の事なんだ?   
 「・・・・・そうか・・・・・そうだよな・・・・・」 
 カイはシヤの言葉に黙って頷き、泉へと近付くと、ルナトーンを繰り出す。   
 「あ、あの」 
 「もう時間が無い、さっき説明したとおり、ルナトーンが『つきのひかり」を放ったら効果が切れる前に月黄泉の泉の中に飛び込め!『悪夢世界』に囚われてる人たちを全員助けだすぞ!!」 
 「は、はい!!」     
 悪夢世界、ダークライが支配する夢世界の中で、最も深い場所にあるテリトリー 
 そこへの唯一の行き方、それがこの『月黄泉の泉』を使っての転移。     
 この方法を知っていたのはカイでは無くシヤだった 
 作戦会議の直前に眠った時の夢で見たらしい。   
 本来ならば夢、と処理してしまう物も、シヤだからそうはいかない。 
 『夢見子』であるシヤの夢が信用できる物である事は知っていたし、クレセリアと何らかの関わりがあるから尚更だ。     
 「じゃあいくぜ・・・ルナトーン!『つきのひかり』だ!!」   
 カイの指示でルナトーンが泉の真上へと浮上し、『つきのひかり』を放つと 
 泉は黄金色に輝き、水面下にこことは違う異世界を映し出す。   
 「いまだ!!飛び込め!!!」   
 4人はカイの合図で一斉に泉の中へと飛び込んだ。           
 (絶対に・・・・・助けるからな・・・・・ヒカリ)    
 
- スレ2-48
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/08 12:45:16
 
   真っ暗なのに、ちゃんと見えて、見えてるのに、真っ暗で・・・・・   
 なんて不思議な感覚なんだろう。   
 なんて不思議な場所なんだろう   
 なんで嫌な予感がするんだろう       
 第24話『悪夢世界と救出作戦①』       
 「おーい!みんな無事か!?」 
 「おれは大丈夫!タケシは!?」 
 「ああ!俺も無事だ!!」 
 サトシのすぐ側、北東の方向からカイの声が、後ろからタケシの声が聞こえる。 
 いや、聞こえるだけじゃない、ちゃんと見える。   
 カイの側には・・・・・というかカイにピッタリと、貼り付くように抱きついているシヤがいるし、タケシはいつの間にかモンスターボールからグレッグルとウソッキーを出していた。   
 見える?いや見えない。 
 見えない?いや見える。   
 なんとな~くそこにいる、といった感覚的な確信でもなければ、自分の目で見たからという肉体的確信とも違う。   
 でも確実に今の状況が分かる。 
 なんとも不思議だ。   
 「なんだか変なとこですね・・・・・感覚が色んな意味でおかしいというか・・・・・」 
 「ああ、変な気分だな・・・・・まあここは普通の世界じゃないからな、何が起こってもおかしくないさ、さてと・・・・・」 
 カイはポケットから名簿用紙のようなものを4枚取り出す。 
 そこにはいくつかの名前と写真が貼ってある。   
 カイが持っていたのはダークライに攫われた人たちの名簿と写真。 
 ポケモンセンターに避難している人や、ゆりかご島への客船の名簿から調べ上げた物だった。   
 「34人か・・・・・結構多いな・・・・・はいこれ、攫われた人たちの名簿、全員助けるまで帰らないつもりだからそこんとこよろしく」 
 カイは決定事項の様に告げる。 
 最もサトシもその気でいたから文句のもの字も無いけれど。   
 「ここに・・・・・ヒカリもいるんですね・・・・・」 
 「無事だと良いけどな・・・・・」 
 「ああ・・・・・すまない、サトシ、タケシ・・・・・シヤも」 
 「カイさん?」 
 「・・・・・カイ?」    
 
- スレ2-49
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/08 12:46:55
 
   「俺は守人なのに、誰も守ることが出来なかった・・・・・島の人たちも、祭りに来てくれた客も、君達の仲間も・・・・・シヤに関してはもう何年も前から守るって言ってんのに全然そんな事出来てねえ・・・・・むしろ助けてもらってばっかだ・・・・・今回もな・・・・・」 
 「・・・・・カイ・・・・・」   
 らしくない重苦しい空気を纏ったカイは、俯き、眼を閉じる。   
 「・・・・・俺の夢は島を出て、全部の伝説ポケモンを見る事だって言ったろ?確かにそれは夢の為でもあるけど、逃げるためでもあるんだ」 
 「逃げるため?」 
 「この島から・・・・・いや、守人って役目から逃げるためさ、永遠にこの島に束縛されて、実力以上の事を期待されて・・・・・」     
 何かが起これば必ず何とかしなきゃいけなくて、失敗すれば責任を取らされて   
 この島のシンボルとして良い様に利用されて・・・・・   
 「・・・・・んで、色んな事に嫌悪してぬかってたら肝心なとこで守人の役目果たせないでやんの、ホント情けねえ・・・・・」   
 カイさん・・・・・   
 「そんな事ないですよ!カイさんがいなかったらここまで来れなかったし・・・・・それにたった今、いま守人としての役割を果たしてるじゃないですか!!」     
 攫われた人たちを・・・・・ヒカリを助けられるのはカイさんがいてこそなんですから! 
 それに・・・・・カイさんがそんなんじゃシヤちゃんは・・・・・     
 「・・・・・カイ、あの、あのね・・・・・」     
 ほら、心配そうにカイさんを見つめて・・・・・目をウルウルさせて今にも泣きそうに       
 「さっきから囲まれてるよ・・・・・闇に・・・・・」      
 
- スレ2-50
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/08 12:49:51
 
   ・・・   
 ・・・・・・   
 ・・・・・・・・・・・・   
 クルリ   
 ズラリ   
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・         
 ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!     
 「い、何時の間にー!!」 
 タケシの大絶叫が空間一帯に響き渡る。   
 「もっと早く言えこのバカー!!」 
 「だ、だって・・・・・い、いひゃい、いひゃいひょー、ひゃっへひゃひはへんへんひぇんひははいはは・・・・・ひんひゃいへ・・・・・」 
 「!!??・・・・・・・・・・五月蝿えよ!強制突破するぞ!!『ラプラス』!『ヨノワール』!『ハピナス』!」   
 カイは今まで出さなかった、4番目5番目のモンスターボールからヨノワールとハピナスを繰り出す。   
 「ラプラス『ふぶき』!ヨノワール『ナイトヘッド』!ハピナス『ちきゅうなげ』!!」   
 カイが繰り出した3匹が次々に闇を消してゆく。指示を出すカイの表情に、さっきまでの曇りは全くなかった。真剣そのものだ。   
 初めてカイのバトルを見た時から思っていたけど、やっぱりとんでもなく強い。 
 この事件が終わったらバトルしてもらいたいな、とサトシは思う。   
 「なにボーっとしてんだ、お前らも手伝え!まだまだ来るぞ!!」 
 「はい!みんな出て来い!!」 
 「いけ!お前たち!!」   
 サトシとタケシも自分が同時に操れるだけのポケモンを繰り出す。   
 サトシはナエトル、ブイゼル、ヒカリのエテボースとパチリス。 
 タケシはグレッグル、ラッキーにウソッキー。       
 「よーし!救出作戦・・・・・開始だぜ!!」   
 サトシは大きく地面(?)を蹴り、ポケモン達と共に闇へと立ち向かっていった。           
 馬鹿だな俺・・・・・集中集中!!気合入れていくぜ!! 
 良かった・・・・・カイが元気になってくれて・・・・・  
 
- スレ2-53
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/09 13:31:18
 
   ・・・・・ふふふ、来たようですね・・・・・   
 特に闇の色が濃いその場所でも、その光は消えることなく輝いていた。   
 「・・・・・・・・・・」 
 ・・・・・あなた方の事ではありませんよ?   
 闇が少しでも近付こうとすると、ある射程に入った時点でパッ、とその光に消されてしまう。   
 もう大丈夫です・・・・・あなたの光はすぐそこまで来ていますよ・・・・・あとは・・・・・       
 第24話『悪夢世界と救出作戦②』       
 ピィイイイイイーン       
 どこまで続くのか分からない道、その道が2つにわかれる分かれ道、つまりは2股になっている道の一歩手前の空間で、『コイントス』の音が響く。 
 最も、これはポケッチアプリの『コイントス』では無く、リアルコイントスなのだが。   
 前にもこんな事があったな・・・・・   
 旅の途中、どっちの道に行くか迷った時、あいつのポケッチの『コイントス』でどの道を進むか決めたんだっけ・・・・・タケシは、そんな適当に決めていいのか?って言ってたけど、俺達は2人揃って・・・・・2人揃って・・・・・あれ?何て言ったんだっけ?   
 『あいつ』の決めゼリフが思い出せなくてサトシは首をひねる。 
 忘れるわけ、いや、忘れられるわけが無い。   
 「おいサトシ、どうした?」 
 「あ、いや!何でも無い何でも無い!!」   
 こんな事で心配をかける訳にもいかず、ただの『ドわすれ』だろう、と無理やり片付ける。   
 「おーい!ちゃんと聞いてろよ!!ここでは勝手な行動が命と」       
 ピィイイイイイーン       
 「・・・・・なーにやってんだ、お前は~~~~!!!!」 
 シヤの勝手な、と言うよりはマイペースな行動にカイが怒る。 
 悪夢世界に入ってこれで5度目だ。      
 
- スレ2-54
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/09 13:34:12
 
   なあ俺の話聞いてたか?聞いてたよな?勝手な行動が命取りになるって言ったよな~!   
 大体その不思議な力を持っていてもポケモンを持ってないお前を連れて行くこと自体、俺は反対だったんだからな!!・・・・・まあ無理だって分かってたけど・・・・・   
 シヤが何か言いだしたら止めるのはほぼ、と言うか100%無理だった。 
 ・・・・・と言うか止めたら無理に実行しようとしてとんでもない事になる。     
 「カイ・・・・・」 
 「なんだよ!!誤ったって」 
 「おもてだった」 
 「誰が結果を言えって言った!誰が!!と言うかまず謝れっつーの!!」   
 本当にあのカッコ良くて、優しい好少年はどこに行ってしまったのか・・・・・まあ人間1つや2つは他人に理解されない異常な所があるものだから「玉に傷」と言った物だろう。(因みにもう1つは「シヤに対する密かなきんだんn」)   
 え?ちょ、ちょっとタンマ!!ヨノワールの闇の空間って確か吸い込まれると二度と出てこられな・・・・・ってウワーーーーーー!!・・・・・(ズオッー・・・・・ポン!!)   
 「二度と帰ってくるなー!!」 
 「か、カイさん!ど、どうしたんですか?物凄い殺気でしたけど・・・・・;;」 
 「・・・・・か、カイ・・・こ、コワイ・・・・・」 
 「え!いや、その・・・・・なんかまた闇が出て来た感じがしたんだけど、気のせいだったみたいだ;」 
 カイは力無くあははは;、と笑う。       
 ここに辿り着くまでが本当に大変だった。     
 悪夢世界に入った直後から現れた闇は、どんなに走っても、どれだけ倒しても、悪夢世界のどの空間でも現れ、しつこくサトシ達を追いかけまわし、行く手を拒もうと妨害してきた。   
 当然ポケモン達で応戦するのだが、数が数。ここに辿り着いた時には、HPが満タンのポケモンは一匹もいなくなっていた。      
 
- スレ2-55
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/09 13:35:43
 
     「ほら!ボーっとすんな!次はサトシの番だろ!」 
 カイがシヤからコインを掠め取ると、アンダースローで投げ渡す。 
 サトシはハッ、と気がつき、慌てて自慢の身体能力でバシッ!と空中キャッチする。   
 「おい、さっきからボーっとしずぎだぞサトシ!!闇がいないからって気を抜くんじゃねえ!!」 
 「は、はい!!」   
 う~ん、おかしいなあ・・・・・なんで思い出せないんだ?   
 先程から浮かび上がってくる疑問をねじ伏せて、サトシは親指でコインを上に跳ね上げる。       
 ピィイイイイイーン       
 パシッ!   
 手の甲にコインを落とし、即座にもう片方の手で手の甲ごとコインを覆う。   
 「えーっと・・・・・ど、どっちが表だったっけ?」   
 ズルウ!!   
 如何にもサトシらしい発言をかまし、場の緊張感が一気に崩れさる。   
 「どれどれ?・・・・・こっちは表だな・・・・・って事はカイさんが裏、シヤちゃんが表、サトシが表だったんだから俺は自動的に裏だな」   
 表は右の道。裏は左の道に進む事が決まっていたため、人数合わせの為、タケシは自動的に裏、つまりは左の道を進む事になる。        
 
- スレ2-56
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/09 13:37:28
 
       コイントスの結果がでてすぐに、サトシ達はそれぞれの道へ進む準備をする。   
 こんな世界に長居は無用。   
 連れ去られた人達の安否を考えると長々と休むわけにはいかなかった。 
 この安全な空間で休めたのは10分足らずだった。       
 「・・・・・サトシ」 
 「え?」 
 「・・・・・シヤを・・・・・頼む」 
 「え?は、はい」   
 カイは真剣な眼差しでサトシを見つめながらゆっくりと話す。   
 「シヤ!こいつ連れてけ」 
 カイはシヤにラプラスの入ったモンスターボールを手渡す。   
 「カイ?・・・・・でも・・・・・」 
 「勘違いすんな!サトシの足手まといにはさせたくないだけだ!認めたわけじゃねえかんな!!」 
 カイはビシッ!とシヤに人差し指を向け言い放つ。   
 認めるとはいったい何の事だろう。     
 「いいか!危険を感じたらすぐ戻るんだ!いいな!!」       
 サトシとシヤは右側の道へ、カイとタケシは左側の道へと駆けだした。           
 ごめんなさいカイ・・・・・・「勝手な行動はするな!」って言ってたのに、また約束破っちゃった・・・・・でも・・・・・こうしないと・・・・・ぜんぶ、ぜんぶ救う事、できないから・・・・・       
 サトシ達が去った後に残っていたのは、『両面とも表のコイン』だった。    
 
- スレ2-57
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/09 16:57:31
 
   「カイさん!こっち、こっちに広い場所があります!!」 
 「わかっ!!・・・・・ひつけえな!ヨノワール『おにび』!!ハピナスは「ちきゅうなげ」!!」 
 カイは、まだしつこく追ってくる闇を撃退し、追手が来る前に次の空間へと飛び込む。     
 「はあ・・・・・はあ・・・・・」 
 「だ、大丈夫ですか?(ハアハア)」 
 「な、なんとかな・・・・・」   
 カイは息も途絶え途絶えになりながら、その場に座り込む。 
 戦闘態勢を解いた訳ではないが、休まないとやっていられなかった。   
 なにせ2手に別れてから、今まで以上の数と、今まで以上の強さを持った闇に襲われ続け、もうボロボロだ。   
 カイだけでなくタケシも懸命に戦ったが、ウソッキーは2手に別れた空間に着く直前に「戦闘不能」ピンプクはバトル論外。 
 頼りのグレッグルも、今ではいつ戦闘不能になってもおかしくない状態になってしまった。   
 カイのヨノワール、ハピナス、もグレッグルほどではないが、相当疲労がたまっている。 
 バトルをしながら全速力で駆け抜けるのはとんでもなくキツイ。     
 おそらくこれ以上闇のLvが上がったら今の状態じゃあ・・・・・     
 「・・・・・それにしてもこの空間、前がちっとも見えませんね・・・・・1メートル先が見えない」 
 その空間は闇の濃霧とでも言えば良いのだろうか、それが掛かっていてロクに前が見えなかった。   
 罠か・・・・・それともボス部屋か・・・・・   
 「下がっててくれ・・・・・ヨノワール!『サイコキネシス』で濃霧をかき消せ!!」   
 ヨノワールの目がカッと光り、段々と闇の霧が薄まっていく。 
 見えなかった場所が、徐々に見えてくる。   
 「・・・・・!?」 
 「!!こ、これは・・・・・・・・・・」     
 第25話『悪夢世界と救出作戦③』       
 「グライオン『シザークロス』!!ヒコザル『かえんぐるま』!!ウリムー『げんしのちから』!!」   
 一方こちらは未だに闇と格闘中のサトシとシヤのペア。   
 カイとタケシよりポケモンの数は多いはずなのに、何故かカイとタケシよりペースが遅い。 
 多数のポケモンを一度に使うのがサトシにとって難しい、と言う事もあるのだが、それ以上に    
 
- スレ2-58
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/09 16:59:51
 
   「ウリムー戻ってくれ!パチリス、君に決めた!!」 
 サトシがポケモンの入れ替えを、いつもの倍以上行っている事が主な原因だろう。 
 それも入れ替えの対象になっているのは殆どが、戦闘に出ている3匹のうち1匹いる『○○○』のポケモンだった。   
 「パチリス『ほうでん』!!ヒコザルかえん、ひ、ヒコザル!!」   
 新しく出たパチリスに指示を出している時にヒコザルが大きなダメージを受ける。 
 そのヒコザルに指示を出そうとして、今度はグライオンがダメージを受ける。   
 3匹のポケモンを使って、大勢の敵と戦いつづける事は、有利どころか不利な状況を作り出していた。   
 「グライオン!!ヒコザル!!」 
 体勢を崩し、集中砲火を浴びせられ、グライオンとヒコザルが戦闘不能になり、闇の狙いはパチリス一匹に定まる。   
 だめだ、他のポケモンを出してる暇がない!!   
 「パチリスー!!」 
 「『サイコキネシス』」   
 ドン!!   
 という音と共に、パチリスに襲いかかろうとしていた闇が吹き飛ばされる。 
 すぐ後ろを見ると、モンスターボールから出ているラプラスと、シヤがいた。   
 「今の・・・・・シヤちゃんが?」 
 「・・・・・(コクン)・・・・・(バッ!)」 
 「え!?」   
 シヤがバッ、と手を向けた方向に、ラプラスが素早く『ふぶき』を放つ。 
 いつの間に接近していたのか、パチリスに近づいていた闇に向けて放たれたふぶきは、予想以上の威力で、パチリスの周りの闇は勿論、結構遠くの方の闇まで一瞬で凍りつかせる程の物だった。   
 カイの時とはケタが違う。ラプラスも超が付くほどご機嫌だ。       
 「・・・・・集中しよう・・・・・おにいちゃん」 
 シヤが真剣な眼差し、サトシをジッと見つめる。    
 
- スレ2-59
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/09 17:01:40
 
     おねえちゃん、たすけるんでしょ?   
 おねえちゃんのポケモンをつかいつづけないのって、おねえちゃんにあわせてあげたいからでしょ?   
 ひっしになってがんばるおにいちゃん、すごくかっこいいよ。おねえちゃんもきっとそうおもってる。       
 「がんばろう?もうちょっとだよ・・・・・」 
 「・・・・・へへ!ああ!そうだな!!よーし!まず気合いが足りないよな!!集中集中!!!」   
 そうだ・・・・・絶対にあいつをたすけるんだ・・・・・こんな所で負けられない!!   
 「パチリス戻れ!ピカチュウ!ポッチャマ!君達に決めた!!」 
 サトシはパチリスを戻し、自分の相棒と、あいつの相棒をバトルに出させる。   
 3匹を一斉に使うのにはあまり慣れてないけど、2匹なら・・・・・!   
 「ポッチャマ『バブルこうせん』!!ピカチュウ『10まんボルト』!!」   
 それは賢明な判断で、指示のスピードも、技のタイミングも、それぞれ高まっていた。   
 「ラプラス『ハイドロポンプ』」   
 加えて強力な見方もいる・・・・・このままいけば・・・・・     
 だいじょーぶさ!!      
 
- スレ2-60
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/09 17:03:03
 
       「大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」 
 タケシが浮いている人達に大声で呼びかける。 
 浮いていると言っても幽霊では無い。生身の人が、どっちかというと『浮かされている』   
 さっきから何度も大声で呼びかけているのに何の返事もない。 
 まるで眠っているかのように目を閉じ、ダラリと、仰向けになっていて、体が僅かながら光っている。   
 「32、33・・・・・間違いない・・・・・ここにいる人達全員、ダークライに攫われた人だ!!」 
 カイが、リストと照らし合わせて数えると、1人を除いて、全員ここにいる事が分った。 
 顔、服装、特徴、それら全てが1人1人見事に一致する。   
 どうやらここは監禁部屋の様な所らしい。   
 「カイさん!なんだか様子が変です!!光り方が弱くなってます!」 
 タケシの言葉に偽りは無く、元々微量の光を放っていた体が、さらに弱くくなっている。 
 個人差こそあれど、どんどん弱くなる一方だ。   
 「間違いない・・・・・あれは『想像力』だ!!」 
 「『想像力』?」 
 「この悪夢世界に存在するためのエネルギーみたいなもんだ!あれが無くなったら、つまり光らなくなった人間は消えてしまうんだ!!」     
 ・・・・・もう時間が無い・・・・・     
 カイはモンスターボールに手をかける。   
 「カイさん!?な、なにを!?」 
 「・・・・・・・・・・・・・」       
 (カイ・・・・・しんじて・・・・・わたしの事・・・・・しんじられないかもしれないけど・・・・・わたしは約束破っちゃうこともある悪い子だけど・・・・・おねがい)       
 馬鹿だなシヤ・・・・・ 
 おれはいつだって・・・・・       
 「ルナトーン!『つきのひかり』!そして『ひみつのちから』!!」     
 おまえの事、信じてるんだぜ・・・・・        
 
- スレ2-61
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/09 17:04:13
 
       「ピカチュウ『ボルテッカー』!!ポッチャマ『うずしお』!!」 
 「『ふぶき』『ハイドロポンプ』」   
 倍以上に多くなった闇を一気に蹴散らそうと、カイとシヤは一気に得意技を連発する。   
 「今だ!シヤちゃんこっち!!」 
 「(コクン)」   
 サトシとシヤは、今の技で闇が一気に消え去った事を気に、一気に次の空間へと走りこむ。     
 はあ・・・・・はあ・・・・・な、なんなんだ・・・・・ここに入ろうとしたら一気に闇が押し寄せて来たような・・・・・くそっ!足がしびれて・・・・・   
 サトシの体力はもう限界   
 ここまで頑張ってくれたピカチュウ、ポッチャマ、その他のポケモン達も右に同じ。 
 HP、PP、体力、どれも使い果たした感じだ。     
 も、もう動けな・・・・・   
 「おにいちゃん・・・・・」 
 「な、なに?シヤちゃん?」 
 「おねえちゃんいたよ・・・・・」   
 「あ、そ、そうなんだ・・・・・」       
 ・・・・・・・・・・え?       
 目を見開いて部屋の奥に目をやるとそこにいたのは・・・・・     
 「!?っつ!『○○○』!!!!」     
 サトシは、疲れているのも忘れ、彼女の名前を言えてないのも気づかず、彼女に駆け寄った・・・・・           
 ここからが正念場ですよ・・・・・ここからが・・・・・    
 
- スレ2-64
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/10 16:08:09
 
   見えるものは何も無い。   
 感じると言う事さえ忘れた。   
 どんどん失われていくのは・・・・・わたしの・・・・・           
 ドン、ドン、ドン!!   
 サトシは思いっきり箱を叩く。『あいつ』のポケモン達もそれに倣う。   
 「大丈夫か!?返事してくれ!!」     
 見間違うはずが無い。 
 無限にいる闇と戦い続け、辿り着いた大きな空間で、子供が体育座りで何とか入れるほどの箱の中にいたのは、間違いなく『あいつ』だった。   
 半透明の、薄黒い箱の中に、体を小さく縮めて入っている。 
 瞳は輝きを失い、顔は鬱な表情をしたまま、頬の少しも動かさない。     
 こんなの・・・・・こんなの『あいつ』じゃない!     
 「目を覚ましてくれ!こっち向いてくれ!『○○○』!!」 
 「おにいちゃん!あぶない!!」       
 バシュウ!!   
 「が、はっ・・・・・つ!」 
 何かの発射音と共に、サトシは自分の後方にいたシヤの方へ大きく吹き飛ばされる。   
 いつの間にか箱のすぐ上に禍々しい渦が出来ていて、今の黒い硬球もそこから放たれたようだ。   
 「な、なんだ!?気をつけろ、みんな!!」   
 ポケモン達を一斉に戦闘態勢にさせる。 
 何かが放たれた方向に、全員が威嚇の構えをとっている。物凄い警戒と怒りの表情だ。     
 「・・・・・くる!」   
 やがて渦が1つに纏まり、現れたその存在に、サトシは体から色々な物がこみ上げて来るのを感じた           
 「ダークライ!」   
 第27話『呪縛①』    
 
- スレ2-65
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/10 16:10:10
 
   歯軋りがする 
 眉間にしわが寄る 
 目つきが鋭くなる   
 体中から色んな物がこみ上げてくる 
 それが何かなんて考える事をサトシはしなかった。     
 ただ、それを     
 相手にぶつけるだけだ!!!!     
 「うぉぉおおおおお!!!」   
 態勢を整えるため、いったん全てのポケモンをモンスターボールに戻し、すぐにまた手をかける。     
 たおす!倒す!!斃す!!!       
 こいつだけは・・・・・絶対にたおす!!!       
 「うぉぉおおおおお!!いくz」 
 「『ハイドロポンプ』」   
 ドババババババババン!!   
 ・・・・・今度はラプラスの放った大量の水流に吹っ飛ばされ、シヤの真ん前に力無くその身を横たわる。   
 「・・・・・ゲホッ!ゲホッ!な、なにすん」   
 そこまで行ってサトシは押し黙る。   
 シヤは睨みこそしないものの、眼を大きく見開き、両ひざを付いたサトシの心を見通すようにジッと見つめている。 
 その独特の強みがある体から滲み出るようなオーラは、見通すような目線は、サトシの心を止らせ、落ち着かせてくれた。     
 「・・・・・だめだよ・・・・・全部勢いに任せちゃだめ、全部感情に任せちゃだめ、大切な事、大切な物、大切な人、みえなくなるから・・・・・」 
 「・・・・・」     
 シヤは目を閉じると、詩を読むように言葉を続ける。   
 「でもそうなっても大丈夫、助けてくれる人がいれば、支えてくれる人がいれば、家族がいれば、仲間がいれば、友達がいれば」   
 大切な人が、1人でもいれば     
 だから・・・・・一人ぼっちが一番だめ・・・・・   
 「・・・・・今のおねえちゃんは一人なの・・・・・そんな悪夢を見ているの・・・・・それで、間違った幸せを感じてる・・・・・」 
 「だからダークライを倒せば・・・・・」 
 シヤは(ふるふる)と首を振る    
 
- スレ2-66
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/10 16:11:54
 
     「今は倒せないよ・・・・・もし倒せたとしてもおねえちゃんが起きようとしなくちゃだめ・・・・・・出たいって思わなくちゃだめ・・・・・それに、時間が無い」 
 シヤは箱を指差す。気のせいか前より少しばかり黒くなっているような感じがした。   
 「あれがまっ黒になっちゃったら、おねえちゃんは世界に吸収されて消えちゃうの・・・・・あと10分45秒で箱はまっ黒になっちゃう・・・・・」 
 「そんな・・・・・!?」   
 いやだ、そんなのやだ、させない、そんな事、絶対にさせない!!     
 「どうすればっ」 
 「だからおにいちゃん・・・・・おねえちゃんをたすけてきて・・・・・」 
 シヤは、有無を言わさずサトシの頭に手をかざす。     
 シヤの手が、カッ!!と光った・・・・・シヤの後ろに何だか大きくて優しい光が見えた気がした・・・・・     
 サトシの意識と心はもう体には無かった。       
 シヤは相棒が眠ってしまい、心底慌てているピカチュウを抱き、やさしく、落ち着かせるように頭を撫でる。   
 「だいじょうぶ・・・・・きっと帰ってくる・・・・・おにいちゃんも、おねえちゃんも・・・・・だから、それまでいっしょにがんばろう?」   
 シヤはピカチュウは勿論、サトシのボールに収まっているポケモンにも笑顔を向ける。   
 安心できる感覚に、ピカチュウは勿論、サトシと『あいつ』のポケモン全員が意気込んで頷いた。   
 (おにいちゃん、おねえちゃん・・・・・みんな、借りるね)      
 
- スレ2-67
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/10 16:13:22
 
       ありがとうクレア・・・・・   
 それはこちらの言葉です・・・・・このような事にあなたと、関係のない人々を巻き込んでしまい、本当に申し訳なく思っています・・・・・   
 (ふるふる)こまってる時はおたがいさま・・・・・クレアが目指した理想のひとつ・・・・・みんなが幸せになるには大切なことでしょ?   
 ・・・・・ありがとう・・・・・       
 シヤから発せられた光によって、空間の1部が、カッ!と輝く。 
 今度は手だけでは無く、体全体が光り輝いていた。   
 美しいベールのようなものをその身にまとったその姿は、三日月伝説に出てくる『聖女』を思い起こさせる。   
 なんとも美しい。   
 その美しさに魅かれる様に、今まで動きもしなかったダークライが、いきなりシヤに襲いかかる。     
 「「10分くらいなら・・・・・もつかな」」       
 シヤは鋭い手つきで1匹目のポケモンを繰り出した。    
 
- スレ2-68
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/10 16:31:25
 
 どうも!映画公開が来週に迫り   
 「やばいやばいやばい!!間に合わない間に合わない間に合わないー!!!!\(゜ロ\)=(/ロ゜)/」 
 と右往左往してパニクッている者ですorz   
 シヤが覚醒!!(ちがうだろ)サトシは寝てる!!(どっちが主役なんでしょうね;)   
 次回はついに!・・・・・シヤオンリーですorz(石は・・・投げて結構ですorz) 
 次次回からサトヒカ一色ですのでどうかご勘弁をー!!     
 PS・誤解されるといけないので一応言っておきますが、シヤは鉄拳制裁をするという訳ではありません。 
 ただ『内気な天然』なので今回の場合、サトシの暴走を止める良い方法が思いつかなくて、「取り合えずこれなら確実に止まるだろう」 
 ということを『素でやるんです』   
 (他には『マルマインに刺激を与えて投げる』とか(即死だっつの))    
 
- スレ2-70
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/11 15:11:57
 
   はじめてなのにかなりうまくいきましたね・・・・・   
 うん・・・・・でもいつまでもつかな?   
 大変なのはこの後、ですからね・・・・・余裕を持たないと・・・・・   
 うん・・・・・がんばらなきゃ・・・・・     
 第28話『BATTLE』       
 ズドドドドドドドドン!!!!     
 技のぶつかり合う激しい音があたりに響く。   
 ただのポケモンバトルにしては少し、結構、かなり激しい。   
 ダークライが素早く、連続して放つ黒い硬球を放つのに対し、シヤはあまり動かず、必要最低限のポケモンを使い、必要最低限の技で弾き返す。   
 激しく、荒れ狂うように攻撃するダークライに対し、シヤはサラリ、サラリと舞ようにかわし、弾き、的確に攻撃を当てる。     
 シヤの優勢は明らかだった。     
 いま自分達が優勢になっている事に、サトシと○○○のポケモンは驚きを隠しきれない。   
 ここに来るまでの間に力の全てを出し切り、戦い続けた。戦闘不能になっているポケモンもいた・・・・・・・・・・はずだった。   
 なぜ力がみなぎってくるのか、なぜ全力が出せるのか、なぜ戦闘不能になったはずの自分が戦いの場に出られるのか       
 なぜ急に強くなっているのか。   
 人間だったらそんな疑問で頭が埋め尽くされていたに違いない。   
 「「『シザークロス』」」 
 嵐のような攻撃の間に出来る一瞬の隙にグライオンの『シザークロス』を叩き込む。   
 ガツン!!という音と共に、ダークライの鳩尾に『シザークロス』が決まる。 
 悪タイプであるダークライには効果抜群の技だ。   
 ダークライは、一旦ヨロリ、とフラ付きこそすれど、すぐに体勢を立て直し、今度は足元に広げた影へと消える。   
 「「・・・・・かくれんぼ?」」     
 ドシュッ!!     
 キレのいい音がしたと同時に、低空飛行をしていたグライオンはバタリと地面に落ちる。   
 一瞬ではあるが微かに見えた、ダークライが『シャドークロー』を急所に当て、一撃でグライオンを仕留めたのが。      
 
- スレ2-71
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/11 15:17:26
 
   「「・・・・・」」   
 シヤは無言でグライオンをモンスターボールに戻し、代わりに「ピカチュウ」「ミミロル」「ポッチャマ」「ムクバード」を繰り出す。         
 もうこれいじょう力を使えません・・・・・後々の為にも・・・・・   
 わかってる・・・・・これできめる・・・・・だいじょうぶ       
 凄まじい速さで動く影(ダークライ)を止めることは不可能に近いはずだ、第一出て来たとしても、すぐに影へと戻ってしまう。   
 「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」   
 シーンとした空気の中、シヤは静かに目を閉じる。               
 シュン! 
 「「『つばめがえし』!!」」   
 シヤは微かに聞こえた音の出所に『つばめがえし』を放つ。     
 上へ昇って、出来るだけ高く。     
 見事にダークライに『つばめがえし』を命中させたムクバードは、シヤの指示通り、ダークライごと、一気に上空飛行するが       
 ズバシュッ!!     
 当然の如く切り裂かれ、ムクバードは落ちてゆくが、この時すでに勝負は付いていた。     
 「「あしをねらって『れいとうビーム』!!」」      
 
- スレ2-72
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/11 15:18:13
 
     ミミロルがタイミング良く『れいとうビーム』を放つ。 
 初めから場所を指定していたからか、ダークライがムクバードを落としたとほぼ同時に『れいとうビーム』が決まる。   
 とたんにダークライの動きが鈍る、足が動かせないからか、それとも『れいとうビーム』の怜気のせいか、あるいはその両方か。         
 もう逃げられないよ・・・・・だって空中に影はできないもの・・・・・       
 「「『バブルこうせん』!!『10まんボルト』!!」」       
 2つの技が同時に決まり、ど派手な音があたりに響く。   
 大きな爆発音と共に、ダークライは地面に落ちて・・・・・溶けるように、消えた。         
 「・・・・・あとはおにいちゃんを待つだけだね・・・・・」               
 おわった?・・・・・そんなわけありませんよね?だってあなたは・・・・・・・・・・      
 
- スレ2-73
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/11 15:19:50
 
   「・・・・・これで最後だ!『つきのひかり』!!『ひみつのちから』!!」   
 カイの指示でルナトーンが放った2つの技が、眠ったように空中で仰向けに浮いている人に命中する。   
 その人はうっすらと目を開けると、光の粒子に包まれてその場から消えた。   
 「これで33人全員、救出完了だな!!」   
 カイは技を何度も繰り出し、疲れ切ったルナトーンをモンスターボールに戻す。   
 「ええ!あとはシヤちゃんとサトシと・・・・・あれ?誰だったっけ?もう1人いましたよね?ほら、俺とサトシと旅してたえ~っと・・・・・・・・・・」 
 「は?・・・・・う~ん・・・・・」     
 そんな奴、いたか?       
 第29話「闇の中の君①」       
 「ここは・・・・・どこなんだ?・・・・・」   
 サトシは奇妙な場所を歩いていた。   
 周りは真っ暗な上、黒い霧が立ち込めていて、悪夢世界に近い感覚を覚えるが、大小様々な物が浮遊している。 
 大きい物は一軒の家から、小さい物はモンスターボールまで実にバラエティ豊かだ。     
 そして、訳や理屈は一切分からないが、サトシは確信していた。     
 ここに『あいつ』がいる!!     
 「どこだ!どこにいるんd」 
 「ふふふふ、ずいぶん必死だな?」 
 「!!??」   
 自分と似ている、いや、『まったく同じ』声を聞き、サトシは反射的に後ろを向く。   
 「おまえ、そんなに『あいつ』のことがだいじなのかよ?」 
 「お、おまえ・・・・・!!」    
 
- スレ2-74
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/11 15:21:07
 
   何度も夢に出て来たこいつ 
 おれの悪夢に出て来たこいつ 
 そして・・・・・     
 「ちがうんじゃねぇ?世界一のポケモンマスターになる事、それがお前にとって・・・・・いや」       
 おれたちにとって一番大事なことだろ?お・れ♪   
 おれを苛立たせるこいつ!!   
 「ふざけんな!確かにそれはおれにとって大事な事だけど、それ以上の事なんて沢山あるんだ!『あいつ』をかえせ!」   
 サトシの凄みのある言葉にも闇は不気味な笑い顔を浮かべたまま飄々と話す。   
 「おいおいそんなにおこんなって、確かにお・れ♪、発言はキモイ上に嘘だけどさ~・・・・・」     
 だっておれの主は・・・・・     
 「おまえじゃなくてコイツだもんなあ」   
 闇が右手をバッ、と払うと霧の一部がゆっくりと晴れ、そこに現れたのは     
 「っつ!!」   
 シヤの光を浴びる前にいた空間にいたのと同じ体制、同じ表情、同じ小さな箱に入った『あいつ』だった。      
 
- スレ2-75
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/11 15:22:02
 
   サトシは全力で側に駆け寄る。闇は完全に無視だった、一方の闇も近づくのを少しも拒もうともしない。   
 「おい!へいきか!?しっかりしてくれ!!」 
 サトシはあの時と同じく箱を力いっぱい叩くが反応はあの時と一緒で、眉の一つも動かさない。   
 「くそっ!なんで・・・・・なんで・・・・・」   
 箱に両手を付いてうなだれるサトシが面白いのか、闇はクスクスと笑みを強くする。   
 「おいおい、お前、かけてやる言葉違うんじゃねえ?こいつ、呼ばれてる事わかってねえよ。人に言葉をかける時はちゃーんと『なまえ』を読んでやらなきゃなあ?」   
 「!!??・・・な、なまえ・・・・・?」     
 サトシは、なんで今自分は驚いたんだろうと思う事に驚く。   
 そういえば気づいた時には『あいつ』を『あいつ』って呼んでた・・・・・何の不思議もなく、ごく自然に、いつも『あいつ』のなまえで呼んでたのに・・・・・         
 なまえ、簡単な事じゃないか、何回も呼んできたじゃないか、いつも呼んでるじゃないか     
 なんで・・・・・出てこないんだ・・・・・?     
 「ほら、早くなまえを呼んでやれよ、こいつのなまえ呼んでやれよ、じゃないと・・・・・」           
 こいつは永遠にこのままだぜ?      
 
- スレ2-78
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/12 14:27:36
 
   忘れる訳が無い、忘れられる訳が無い   
 いっしょに・・・・・一緒に旅してきたあいつの事・・・・・     
 色んなとこに行って、色んな人と出会って、色んな事があって・・・・・   
 それぞれの夢をかなえるために一緒に旅した・・・・・はずなのに・・・・・     
 「なんで、思い出せないんだよ・・・・・!!」       
 第30話「闇の中の君②」     
 「・・・・・・・・・・・・・・・」   
 「おーい、どしたー?黙り込んじまって、まさかあきらm」 
 「うるせえ!!だまれ!!!!」 
 サトシはまるで阿修羅のような顔で闇を睨む。     
 イラツクいらつくイラツクいらつくイラツクいらつくイラツクいらつくイラツクいらつく!!!!!!!!!!   
 こいつに対して?こんなに呼んでるのに出て来ない『あいつ』に対して?それとも『あいつ』の名前が思い出せない自分に対して?     
 とにかくイラツク!!!!   
 「絶対に思い出してみせる!!!!」 
 「・・・・・あ、そ、まあガンバンな」   
 闇はどうでもよさげに言うと、その場から消える。     
 クックックッ、そうだよなあ?諦められる訳、ねえよなあ?・・・・・でも忘れるなよ?箱が完全に黒く染まらない内に助けないと・・・・・この世界の餌になっちまうんだぜ?        
 
- スレ2-79
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/12 14:30:02
 
         サトシが『あいつ』救出に勤しんでいる頃・・・・・『シンオウ地方西側』     
 ミオシティ   
 テレビコトブキ『シンオウニュースネット(生中継)』の撮影中     
 「本番5秒前!3!2!・・・・・(ゴー!)」   
 「緊急臨時ニュースをお伝えします!緊急臨時ニュースをお伝えします!先程、シンオウ地方ドゥムタウンを中心として突如、黒く半透明な空間が出現しました!!この空間は時間と共に徐々に影響下とする範囲を広げており、その空間に飲み込まれ 
 た人やポケモンは、一瞬にして眠りに堕ち、まるで悪夢を見ているかのように魘されているとの事です!」   
 ミオシティを背にしたアナウンサーが、緊迫した表情でスラスラと文面を読んでゆく   
 「突如として起こったこの状況をシンオウ地方のポケモン研究の権威、ナナカマド博士は『感知された磁場とエネルギーから推測するに、我々の英知を超えたエネルギーが暴走しているのかもしれない、このままでは『シンオウ地方全域が飲み込まれ 
 てしまうだろう』」と話しています。付近の住民の皆様は速やかに避難してください!」     
 ・・・・・どうやら夢世界に取り込まれたゆりかご島と、そこに取り残された人々だけの問題では済まなくなりそうだ。   
 神の創ったこの地に影響を及ぼすほどのエネルギー、どれだけ凄まじい物かは想像が付く。 
 はたしてダークライの目的は何なのだろう・・・・・       
 ・・・・・むこうの世界にも影響が出始めましたね・・・・・   
 うん、はやくしないと・・・・・このままじゃ・・・・・   
 シンオウ地方が飲み込まれてしまったらそこで終わりですもの・・・・・でも   
 うん、だいじょうぶ・・・・・きっと・・・・・           
 「くそっ!!なんで・・・・・なんで思い出せないんだ・・・・・!!」 
 サトシは頭を抱えて唸る。必死に記憶を手繰るが、一向に名前が出てこない。   
 それどころかあんなに沢山あったはずの『あいつ』との思い出すら出てこない、思い出せない。   
 なんで・・・・・どうして・・・・・   
 「おもいだせない?本当にそうかあ?」 
 「!?」    
 
- スレ2-80
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/12 14:31:58
 
   ハッと後ろを振り向くと、闇が渦を巻き、あいつが現れる。 
 あのいやらしく不気味な笑みは健在だ。   
 「どうゆう意味だ!!」 
 「『あいつ』との記憶は『現』じゃなくて『夢』じゃねえのか、って言ってんだ」     
 言ってる事の意味が分からなくて、サトシはより強く闇を睨む。   
 「『思い出せない』それ即ち『無かった事』『夢だった事』と同じ・・・・・『あいつ』の存在・・・・・それ自体がお前の『夢』だったんだよ」 
 「!!??」     
 う・・・・・そだ・・・・・・・・・・嘘だ!!!!     
 「出鱈目を言うな!!『あいつ』が夢な訳無い!!!!」 
 「だったら如何して『あいつ』の名前が出てこないんだ?名前だけじゃねえ、思い出も、記憶も『あいつ』に関する事がぜーんぶ出てこないんじゃねえのか?」 
 「そ・・・・・それは・・・・・」   
 サトシは返す言葉が無くなって俯く、闇が言っている通り『あいつ』に関わりのある事が1つも出てこない   
 「因みに『消された』って訳でもないぜ?おれにそんな力は無いしな」 
 闇はサトシにグッ、と近づいて、耳元で囁く様に告げる。           
 ・・・・・全部・・・・・夢だったんだよ   
 「うそだ!!」 
 サトシは闇を思いっきり跳ね飛ばす。   
 「そんな事、信じるもんか!!」 
 「・・・・・なら現実を見れば納得するか?・・・・・箱を見てみな!」   
 見たくない・・・・・みたくない?   
 なぜ?どうして?何で箱を見たくないんだ・・・・・?   
 ・・・・・・箱を見ちゃいけない・・・・・見たら・・・・・   
 怖い・・・・・なんで? 
 おれ・・・・・怖がってる?   
 「・・・・・そんなわけ・・・・・あるか!!」       
 勢いよく振り向いた、箱もあった、だけど・・・・・         
 『あいつ』はいなかった      
 
- スレ2-83
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/14 16:17:28
 
   まっくらで、なにもない・・・・・光が届かない深海みたいな所で、私はひとり、仰向けになっている・・・・・ねむい・・・・・すごくねむい・・・・・     
 ・・・・・?・・・・・だれ?     
 こえ・・・・・だれかのこえ・・・・・   
 つよくて、こどもっぽいけど、たよりになりそうな・・・・・やさしいこえ・・・・・   
 わたし・・・・・このひとをしってるの?   
 ・・・・・だれ?       
 第31話「おもいで」         
 うそ・・・・・だろ・・・・・   
 あいつが夢?おれの夢?   
 おれが見てたあいつは・・・・・まぼろしだったのか・・・・・?     
 サトシはガックリと、全身の力が無くなった様に両手両ひざを付く。   
 「な?いないだろ?夢だったって分かっただろ?」 
 闇はサトシの真後ろに立ち、へらへらとした調子で薄ら笑いを浮かべる。   
 「ここはさあ、人が見た『夢』のエネルギーが集まって出来た世界なんだぜ?幻や夢を見る事なんてよくある事なのさ」 
 「・・・・・・・・・・」     
 信じられない   
 もはやそう言う気力さえサトシは無かった。     
 どうしても思い出せない・・・・・もしかして思い出せないってこと自体もおれの夢なのかな・・・・・・?     
 夢から覚めたら・・・・・どんな現が待っているのかな・・・・・         
 「さ、もういいだろ?精神的状態になっているとはいえ、ここは夢主以外の奴が入ってくる所じゃねえ」       
 夢から覚めな        
 
- スレ2-84
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/14 16:19:14
 
   闇がサトシの肩にゆっくりと手を置くと、何故だか急に眠くなって、サトシはゆっくりと前のめりに倒れる         
 『あいつ』に似たやつは・・・・・いるかな・・・・・?         
 ドサッ!!!     
 チクリ! 
 「いって!な、なんだ!?」   
 胸のあたりに刺が刺さった様な痛みを覚え、サトシは寝転んだまま胸元を探る。   
 「!!??こ、これって・・・・・!!」   
 間違いない、それの事は間違いなく覚えていた。     
 「『あいつ』のペンダント・・・・・!!」       
 カァアアアアアアアアン       
 突然ペンダントが眩しく、月光のように光り輝いてあたりを照らす   
 「なっ!なんだあああああ!!こ、このひかりはあああああああああ!!!!!」 
 「!!?こ、これは・・・・・」 
 闇はペンダントが放つ光を浴び、顔を覆う。明らかにこの光を嫌っていた。 
 表情からは、あの嫌らしい笑みと、相手を挑発するような態度は欠片もない。声もサトシそっくりな物ではなく、低く、いかにも闇らしい音程になっている。       
 ・・・・・おにいちゃん・・・・・      
 
- スレ2-85
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/14 16:21:13
 
   ・・・・・おにいちゃん・・・・・   
 「!!この声・・・・・シヤちゃん!?」   
 突然ペンダントから聞こえてきたシヤの声にサトシは耳を疑う。   
 ・・・・・おねえちゃんのこと・・・・・わすれちゃったの?   
 「・・・・・」   
 情けなくて何も言えない・・・・・!!   
 ・・・・・だいじょうぶ、おもいだせるよ。ちゃんと思い出もあるから・・・・・   
 「・・・・・ペンダントの事か?」   
 サトシが今、本当に僅かに覚えているあいつの事・・・・・覚えているとはいえ、顔や声、容姿も何も思い出せない。 
 ただこのペンダントを取るまでの経過を、微かに覚えているだけ。   
 たったそれだけで思いだせるわけ・・・・・     
 (フルフル)ちがうよ・・・・・そのペンダント(三日月の羽根)には悪夢を退ける効果があるから・・・・・それで影響をうけてないだけ・・・・・大切なのは・・・・・おもいで・・・・・   
 「思い出?でもおれ・・・・・なんにも思い出せn」   
 『思い出』じゃなくて『想い出』・・・・・ひとはね、生きていく内にいろんな『おもいで』を作るの・・・・・『思い出』は人間の脳が、あった事、見た事、思った事をその時のまま記憶したもの・・・・・ 
 『想い出』は『誰かに対する『想い』を『心』で記憶した物』・・・・・       
 ・・・・・思い出は、時間がたったり、1人1人記憶できる量や質が違うから、だんだん薄れていったり、無くなってしまったりするけど、『想い』は誰かに対して抱いた事を『心』に記憶しておくの・・・・・だから・・・・・想い出せば、きっと思いだせるはずだよ・・・・・     
 想い・・・だす?・・・・・『あいつ』を・・・・・想う?   
 おねえちゃんへの『想い出』は無くなってないよ・・・・・だから・・・・・         
 ちゃんと、思い出してあげて・・・・・         
 「おれの・・・・・ため・・・・・『あいつ』の・・・・・『あいつ』に対する・・・・・『想い出』」   
 サトシは胸にそっと手を当てて、眼を閉じる。      
 
- スレ2-86
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/14 16:25:49
 
   ・・・・・あったかい・・・・・あいつの事を想うと・・・・・ここがあったかくなる・・・・・   
 落ち着く 
 元気になる 
 不安が消える 
 笑顔になる   
 ・・・・・こんなにあったんだ・・・・・おれの、あいつの、『想い出』・・・・・     
 暫く経って、サトシはゆっくりと目を開ける。     
 「思い出したよ・・・・・」   
 カァァアアアアアアアアアアアアン   
 ビシッツ!   
 「ウギャァァアアアアアアアアアア!!」   
 ペンダントの光がさらに強くなり、箱にはひびが入る。それと同時に闇にもひびが入る   
 「忘れちゃってて・・・・・ごめんな・・・・・」     
 一緒に旅をして 
 おれが困ってたら、助けてくれて 
 君が困ってたら、おれが助けて 
 喧嘩して、みんなに仲裁されて、仲直りして 
 ジム戦で必死に応援してくれて、アイデアもくれた・・・・・戦っている時も、君の声は届いてた・・・・・ 
 コンテストで君が勝つとすごく嬉しくて、君が負けるとすごく嫌な気分になった・・・・・     
 ・・・・・頑張っている君は、ダイヤにも、パールにも、プラチナにも負けないくらい輝いて見えたんだ・・・・・     
 「ちゃんと・・・・・思い出したから・・・・・」   
 ビシビシッツ!!!!   
 「ヤ、ヤメロォォオオオオオオオ!!!!!」   
 闇の断末魔を背中に聞き、サトシは箱の前で叫んだ     
 ひ・か・り         
 「ヒカリーーー!!!!」   
 バリィィィイイイイイイイイン!!!!!!!!         
 箱が割れて中から飛び出て来た『あいつ』をサトシはしっかりと抱きとめた。  
 
- スレ2-90
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/15 15:50:43
 
     「・・・・・!」   
 あの人の呼ぶ声が聞こえて、私は眠気を跳ねのけ、声が聞こえた上の方向へともがく。   
 なんだろう・・・・・不安だけど、怖いけど、ここよりも暖かくて、気持ちの良さそうな場所に行ける気がする・・・・・     
 必死になってもがくと、ビシッ!!という音が聞こえて、上の闇が、ガラスみたいにひび割れて、光が木漏れ日のように降り注ぐ。   
 私は、ひび割れから漏れている光にむかって、泳ぐようにもがいていく。   
 「・・・・・!!」   
 前よりも強く聞こえたあの人の声に応える様に、私はより強く、この場所から逃れる様にもがく。     
 ・・・・・あの人、じゃなくて、もっと・・・・・なまえ・・・そう、名前で呼んでいた・・・・・呼び捨てにしてたんだっけ・・・・・   
 「・・・・・!!!!」   
 ビシッッツ!!   
 私のもがきと、もっと強く聞こえた声に反応するように、ひび割れは大きくなる。     
 ひび割れが大きくなると同時に、私が忘れていた物が少しずつ戻ってきた。     
 わたしは・・・・・わたしは・・・・・わたしを呼んでるこの人は・・・・・           
 「ヒカリーーー!!!」   
 バリィィィイイイイイイイイイイン!!!!!       
 「ヒカリ!!!」 
 「・・・・・サトシ・・・・・」   
 箱が割れて、飛び出すように出て来た私を抱きとめたサトシの腕の中で、私を見て微笑んだサトシに、わたしもニッコリと微笑んだ。     
 第31話「帰還」    
 
- スレ2-91
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/15 15:52:58
 
   「ヒカリ!!・・・・・よかったあ!!」 
 「い、いた!いたいってばサトシ;」   
 サトシは相棒のピカチュウにするように思いっきりヒカリを抱きしめた。 
 ヒカリも慌ててはいるが、少し頬を赤く染め、嬉しそうな表情をしているように見える。   
 「あ、ご、ごめん;嬉しくてつい;」   
 サトシはヒカリからパッ、と離れる。 
 ピカチュウにするのとは違い、少しばかり気恥ずかしい。     
 それに、やらなければならない事もある。     
 「えっと・・・・・とりあえずここから出ようぜ!!」   
 またあんなの(自分の闇)が出て来るのはもうごめんだしな・・・・・   
 「うん・・・・・でも、どうやって?」 
 「そりゃ・・・・・そりゃ・・・・・」   
 どうすればここから出られるんだろう?   
 サトシは自分がとんでもない見落としをしていた事に気づく。   
 ここに来た(?)時は・・・・・半強制的に行かされたみたいなもんだし・・・・・ 
 あの時、シヤちゃんの手がおれの頭に触れた途端にクラっとして・・・・・   
 「シヤちゃん?そうだ!!シヤちゃんならなんか知ってるかもしれない!!」   
 シヤちゃんの所に行こう!!   
 「わかった・・・・・それでサトシ・・・・・」 
 「ん?なに?」       
 「シヤちゃんはどこにいるの?」 
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わからない」   
 サトシは情けなくなって地面に座り込む   
 せっかくヒカリを助けても出られないんじゃ意味ないじゃ~ん!!     
 「どうすりゃいんだよ~」     
 たすけられたんだね・・・・・おにいちゃん   
 え?      
 
- スレ2-92
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/15 15:55:43
 
   確かに聞こえた、空耳なんかじゃない・・・・・・シヤちゃんの声だ!!   
 「シヤちゃん!?」 
 「シヤちゃん?え?なんでシヤちゃんの声が聞こえてくるの?」 
 ヒカリがもっともな疑問を口にするが、今はそれに構ってられない。     
 おねえちゃんを助けたから・・・・・もうその世界もここの世界も終わりだよ・・・・・しっかりおねえちゃんを守っててね・・・・・   
 え?   
 シヤが言葉を言い終えた時だった。     
 ゴォォオオオオオオン!!!!!   
 「わわっ!!な、なんだ!?」 
 「な、なに?」   
 突然立っていた地面が大きく揺れて、サトシとヒカリはバランスを崩す。     
 ビキッツ!!   
 次に聞こえて来たのは数十秒前にも聞いたひび割れの音。 
 足元から聞こえて来たその音は、間違いなく地面がひび割れたもので、足元には幾つもの亀裂が入っていた。     
 ビキビキビキビキビキッツ!!!!バカッッツ!!!!!   
 ヒカリ足元に、今までで一番大きな亀裂が入ったかと思うと、当然の如くヒカリはそこに落ちてゆく   
 「キャャアアアアアアアア!!!!!」 
 「ヒカリーーーーーーーー!!!!!」   
 サトシはヒカリを追って、勢いよく穴に飛び込んだ。     
 何とかヒカリに追い付くと、離れないように再び強く抱きしめる。   
 はなさない!!・・・・・もう・・・・・絶対に・・・・・         
 忘れるもんか!!       
 「うおぉぉおおおおおおお!!!!」       
 バリィィイイイイイイイイイイイン       
 何かが割れる音がした。    
 
- スレ2-93
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/15 15:57:44
 
     何だか感覚がおかしい、どうやら仰向けになって寝ているみたいだ。   
 「?・・・・・こ、ここは・・・・・」   
 見間違うはずがない、ここは・・・・・   
 「聖域!?」 
 「な、なんで?」   
 「・・・・・おかえり・・・・・おにいちゃん、おねえちゃん」   
 2人のすぐそばにはシヤが笑顔で立っていた。 
 シヤの周りに自分達のポケモンが全員ボールから出されていて、サトシとヒカリの無事を確認すると、勢いよく飛び付いてきた。   
 「みんな・・・・・うん、ごめんね・・・・・もうだいじょうぶ・・・・・ただいま・・・・・」 
 「わわっ!!や、やめろって;わ、わかった分かった;だいじょうぶだから;;」   
 サトシは飛びついて来たポケモン達を安心させ、宥めると、シヤの方を向く。   
 「シヤちゃん、なんでここに?おれたち、変なとこにいて・・・・・」     
 ヒカリを助けようとして、夢世界に飲み込まれた『ゆりかご島』から聖域の『月黄泉の泉』を通して『悪夢世界』にいって、それで、ヒカリを見つけたは良いけど、このままじゃ助けられないって聞いて、それで・・・・・     
 サトシがこれまでの事を回想していると、シヤはトコトコと2人に歩み寄って、ジーッと見つめる。   
 「・・・・・なかよしだね」 
 「「え?あっ・・・・・」」   
 いつの間に繋いでいたのか、サトシとヒカリは、お互いの手をぎゅっ、と握り締めていた。 
 2人は慌ててお互いの手を放す。    
 
- スレ2-94
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/15 16:01:37
 
   今更だが、結構恥ずかしいセリフを吐いていた自分が恥ずかしくなってくる。   
 あんなにヒカリヒカリ言っていた自分の口は何所へ行ってしまったのか。   
 「サトシ!ヒカリ!目が覚めたんだな!!よかった・・・・・カイさーん!!二人の目が覚めましたー!!」   
 2人が起きている事に気づいたタケシが、遠くで泉を見ていたカイを呼ぶ。   
 「お!ホントだ!!よかった・・・・・シヤがお前らのポケモンを使って『体』を運んで来た時は本当に吃驚したぜ!!んでもって、『パンドラの箱』の中に精神があるって聞いたからもう目が覚めないかと・・・・・・・・・・ほんとに良かったよ」   
 「『パンドラの箱』?」   
 ヒカリが閉じ込められてた箱の事か?   
 「『パンドラの箱』ってのは、人の精神を閉じ込めるための幻夢の箱の事さ、それも只閉じ込めるだけじゃない。その中に入った人・・・・・まあその精神や心は『その人が最も恐れる悪夢』を見るんだ。そして・・・・・その悪夢に心が負けてしまった時・・・・・」       
 心と感情は無くなり、悪夢世界の核となるエネルギーになってしまう・・・・・夢を見る人の心は夢世界の何よりのエネルギーだからな       
 「・・・・・なんで・・・・・なんでヒカリがそんな箱の中に入ってたんですか!?」   
 何でヒカリが・・・・・!   
 「・・・・・サトシ・・・・・」 
 「・・・つまりは夢世界にささげられる贄としてその箱の中に閉じ込められる訳だが・・・・・何人もの贄の中から選ばれたからには、何らかの理由があると思う・・・・・ダークライがこんな事をしているのもな・・・・・シヤ!お前なんか知らないか?」   
 カイを含め、みんな一斉にシヤに注目する。   
 シヤなら・・・・・不思議な力を持っているシヤなら何か知ってるかも・・・・・!!   
 シヤは一瞬、本当に一瞬ヒカリを見ると、ふるふると首を横に振る。   
 「しらない・・・・・わからない・・・・・ごめんなさい」 
 シヤは今度はハッキリとヒカリを見ると、ペコリと頭を下げる。   
 「べ、別にいいわよ;・・・・・・・・・・だって・・・・・」 
 「ヒカリ?」 
 ヒカリの目が一瞬悲しく染まった気がして、サトシは不安になる。 
 また今みたいな事が起きるのではないかと思ってしまう。    
 
- スレ2-95
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/15 16:03:04
 
   「とにかく、俺達もここ(聖域)に戻って来て少ししか経ってないんだ。状況を確認したり、これからの事を考えたり・・・・・とにかく色々やる事はあるぞ、手伝ってくれ」 
 「はい!!」 
 クイッ 
 「?」   
 サトシ達はそれぞれ大きく頷いてカイについていこうとするが、ヒカリはシヤに服の袖を引っ張られ、動きを止められる。     
 「シヤちゃん?」 
 「・・・・・おねえちゃんは、休んでた方がいいと思う・・・・・」 
 「そうだな、ヒカリはまだ休んでろよ!おれたちg」 
 「おにいちゃんも、おねえちゃんについててあげて・・・・・」 
 「え、おれ?こういうのはタケシの方が・・・・・」   
 クイッ!   
 サトシは少し強めに服の裾を引っ張られる。   
 またシヤちゃんかな?と思ったが、肝心の本人は自分の真ん前にいる。 
 後ろを売り向くと、ヒカリが自分でも驚いたような表情で服の裾を引っ張っていた。    
 
- スレ2-96
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/15 16:03:55
 
   「ヒカリ?」 
 「あ、えっと・・・・・ほ、ほら!私を助けてくれたのってサトシなんでしょ?お礼も言いたいし、色々話も聞きたいの!少なからず私の夢の世界をのぞいたわけじゃない?私、うっすらとしかおぼえてないから・・・・・だめ、かな・・・・・」     
 サトシは別に嫌と言う訳では無かった。 
 ただ、自分ではヒカリの力になれないのではないか、そう不安になってしまう。   
 今回は助けられたけど、未然に防ぐ事は出来なかった・・・・・あんなにやな予感がしてたのに、ヒカリに何の言葉もかけてやる事が出来なかった、守ってやる事も出来なかった・・・・・また同じ事になってしまうような気がして怖かった。       
 「・・・・・ああ、べつに・・・・・いいぜ」 
 「・・・決まりだな、何か決まったら呼びに行く、それまで休んでろ。シヤ!タケシ!行こうぜ!」 
 「うん・・・・・みんな(ポケモン)の面倒はわたしとタケシさんで見てるから・・・・・ほら、みんな行こ?」   
 シヤの言葉にポケモン達は素直に従う。 
 普通今のような状況で、ポケモンがトレーナーによく懐いている場合、トレーナーの身を案じ、離れようとはしないものだが、普通にぞろぞろと付いていく。   
 この短期間でサトシとヒカリのポケモンはシヤにすごく良く懐いていた。 
 他人が見れば、シヤのポケモン同然な位に。   
 「・・・・・ぴ、ピカチュウ~・・・・・」 
 「な、なんか複雑ね;・・・・・・・・・・ねえサトシ」 
 「な、なに?」     
 ヒカリは急にサトシの目をジッと見つめると、ゆっくりと口を開く。             
 ちょっと付き合ってくれない?    
 
- スレ2-99
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/16 13:40:48
 
   サトシ・・・・・私・・・・・わたしね     
 第32話「ひかりあるばしょ」       
 荒れ果てた聖域、その聖域の中で辛うじて未だにその原型と緑を保っている、小さな小さな、森とは少しばかり言い難い森の中。   
 ここに来るのは2回目。 
 ヒカリの悲鳴(ほんとは違ったけど)を聞いて駆け付けた時以来だ。   
 『以来』と言う言い方はおかしいかもしれないが、それくらいこの数時間で起きた事が長く感じられていた。     
 お祭り目的でこの街によって、島で開催されることが分かって、大慌てで船に乗り込もうとしたけど間に合わなくて、喧嘩して、シヤとカイに出会って、船に乗せてもらって、ちょっと寄り道して、やっとお祭りが始まったと思ったらヒカリや他の人達が攫われちゃって・・・・・     
 「本当に今日1日で色んな事があったよな~」 
 「うん・・・・・そうだね・・・・・」 
 「・・・・・なあヒカリ、動いて大丈夫なのか?やっぱり動かないで休んでた方が・・・・・」 
 「だ、だいじょーぶダイジョーブ!!・・・・・気にしないで・・・・・」   
 明らかに元気がないヒカリをサトシは案じる。 
 あの時と違い、闇の様な気配は感じられないが、辛そうな顔をしている。   
 ・・・・・辛いって言うよりは思いつめてるような・・・・・そんな感じもした。     
 「それに少しでも緑が有る場所の方が早く元気になれそうじゃない!」 
 「そりゃまあそうだけど・・・・・おっ!!」 
 サトシがふと上を木の上を見上げると、まだ生っている2つのルナの実を目ざとく見つける。 
 ヒカリも気づいたようだ。   
 「ヒカリ!腹減って無いか?」 
 「え?でも・・・・・すっごく高い所に生ってるよ?」 
 ルナの実は、サトシの身長よりも3メートル弱上に生っていて、ジャンプをしても届きそうにない。    
 
- スレ2-101
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/16 13:50:29
 
   「だいじょーぶダイジョーブ!!ほら!おれの肩にヒカリが乗れば届くだろ?」 
 「え!?で、でも・・・・・」 
 そう言うとサトシはヒカリが肩に乗りやすいよう小さく屈むが、ヒカリは若干戸惑っているようだ。   
 「どうしたんだ?腹減って無いのか?」 
 「そうじゃ無いけど・・・・・・・・・・分かった」 
 「よし!じゃあ」 
 「でもぜっっったいに!!上向いちゃだめだからね!!!!」 
 「?なんでだよ?上向かないとうまく木の実との距離がとr」 
 「い~い~か~ら~!!」   
 この様な状況における女の子の戸惑いと、無茶な要求が分からないのは、サトシらしいが、 
 それではヒカリが大いに困る。   
 ヒカリは覚悟を決めた様にサトシに近づくと、ゆっくりと肩に足を掛ける。 
 ヒカリが両足を掛け終り、バランスがとれていることを確認するとサトシはゆっくりと立ち上がる。ヒカリに言われた通り、上では無く下を向くのも忘れない。   
 「よっと!どうだーヒカリー!!届きそうかー!?」 
 「も、もうす・・・・・こし」 
 ヒカリが思いっきり手を伸ばしても木の実には20センチ弱足りない。 
 何らかの小道具を使えば良かったのだが、今この状態になって「小道具を使う」と言う思考は二人の頭には無かった。   
 「よーし・・・・・えいっ!!」 
 掛け声と共にヒカリはサトシの肩を踏み台にしてジャンプする。   
 パシッ!という音がして、ヒカリの両手の中にルナの実が納まる・・・・・までは良かった     
 ドッシーーーーーン     
 ヒカリはサトシの肩にうまく着地できず、サトシはジャンプにより急激に加わった負荷に耐え切れず、地面に叩き付けられてしまった。   
 今はサトシがヒカリを背中に乗せて、地面にうつ伏になっている状況だ。   
 「わわ;ご、ごめんサトシ;;」 
 「いってててて;だ、ダイジョーブだって!!」 
 ヒカリは急いでサトシから退く。   
 「それより食べようぜ!!」      
 
- スレ2-102
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/16 13:53:04
 
     サトシとヒカリは適当に地面に座ると、それぞれルナの実をかじる。 
 ルナの実独特の大量の果汁があふれ出て、のどを潤していく。 
 量は少ないものの、疲れ切ったサトシにとって、ありがたい程の栄養補給になった。       
 「初めて食べた時も思ったけど、やっぱ美味いなこれ!」 
 「うん・・・・・」 
 「そう言えばあの時はホントどうしたのかと思ったぜ!ほら!ヒカリがシヤちゃんとこれ食べて凄い悲鳴上げただろ?」 
 「うん・・・・・あ、あの」 
 「あっ!凄いと言えばさ!!カイさん、バトル凄く強いんだ!!この事件が終わったらバトルしてもらいたいな~」 
 「うん;あ、あのね、サトシ」 
 「シヤちゃんもすごいんだぜ!!カイさんのラプラスを完璧に使いこなしててさ!!おれ達より年下なのに色んなこと知ってて・・・・・あと」   
 「私にも喋らせてよサトシ!!」   
 ヒカリが、どこまで続くか分からないサトシの話を大声で途絶えさせる。 
 このままでは何時になっても喋れそうにない。   
 「あ、ああ;ごめん・・・・・で、なに?」 
 「・・・・・」   
 いざとなったら話す事が出来ないなんて、自分はなんて卑怯者なんだろうとヒカリは思う。   
 話したくない・・・・・でも     
 ヒカリは覚悟を決め、サトシの顔をジッと見る。   
 「ヒカリ?」 
 「あのね・・・・・あのねサトシ・・・・・・・・・・」               
 「・・・・・私があの箱の中に入ってたのは・・・・・自分の意志だと思うの」      
 
- スレ2-103
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/16 13:54:17
 
     「・・・・・どういう事だよヒカリ・・・・・」   
 ヒカリが自分であの箱の中に入った?ダークライに閉じ込められてたんじゃなくて?   
 「サトシは・・・・・夢って好き?」 
 いきなり問いかけられた内容の意味が分からずサトシは首をひねる。   
 寝るのは好きだけど、夢が好きかと聞かれると返答に困ってしまう。 
 いい夢の時もあれば、悪い夢、文字どおり悪夢の時もある。   
 「夢って、これが見たいって思って見れるもんじゃないじゃん・・・・・わかんないや」 
 「うん・・・・・そうだよね・・・・・でももし、もし最高に幸せな夢を見れて、それが・・・・・・・・・・それが夢だったら・・・・・」 
 「そりゃガッカリするよなあ、でもほら!ムーマージの時言ったじゃん!!「夢は自分で叶える」ってさ!!」 
 「それは自分の目標、『ゆめ』でしょ?」       
 「私ね、小さい頃から夢を見るのが大好きだったの・・・・・今夜はどんな夢が見れるのかな、って・・・・・ 毎晩毎晩楽しみでしかたなかった・・・・・夢はどんなあり得ない事でも叶えてくれる時があるから・・・・・」     
 現で幸せを感じるまでは・・・・・・・・・・       
 「サトシと出会えて、わたし、すっごく幸せなの。いろんな場所を旅して、みんな(ポケモン)や、色んな人に会えて・・・・・トレーナーとしても、コーディネーターとしても、人としても成長できたと思う・・・・・・・・・・」       
 だから・・・・・怖くなった       
 夢が好き、だとか言ってるけど、本当は夢の内容を殆ど覚えてない。 
 ・・・・・微かに覚えていても、その日の内に消えてしまう・・・・・・・・・・           
 ・・・・・サトシはいつかシンオウじゃなくて、別の地方に行く・・・・・別れる事は怖くない。 
 いつかまたきっと会える、そう信じてる・・・・・・・・・・それが現だったら。       
 もし・・・・・・・・・・夢だったら?       
 ジム戦をチアリーダーになって応援したことも、コンテストでハイタッチした事も、君の応援があったから頑張れたことも、みんな(ポケモン)の事も、一緒に旅した事も         
 もし・・・・・夢じゃなかったとしても・・・・・    
 
- スレ2-104
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/16 13:56:03
 
     「サトシ達の事も、何時か、夢みたいに消えちゃうんじゃないかなって・・・・・」 
 「・・・・・ヒカリ・・・・・」 
 ヒカリは必死になって笑顔を作るがそれでも涙はボロボロと溢れて来る。   
 元々そんな事を思っていたのなら・・・・・悪夢を見せられた時の精神的ダメージは計り知れないだろう。   
 「あ、あれ、おかしいな?な、なんで泣いてるんだろ私・・・・・」   
 情けない・・・・・なんて情けないんだろう。 
 勝手に思い込んで勝手に不安になって勝手に攫われて迷惑かけて・・・・・     
 「ご、ごめん!!」     
 余りの情けなさにその場から逃げようとした・・・・・           
 パシッ!!と言う音がして自分の手が攫まれる。   
 ギュッ!と温もりのある手で握り締められる。(無意識)   
 「サトシ・・・・・?」 
 「おれも・・・・・見たんだ、ヒカリが夢だったっていう悪夢」   
 ・・・・・え?   
 「おれの形をした変な奴に、ヒカリは夢だった、この世に存在しない、全部夢だった、みたいなこと言われてさ・・・・・本当にそうなのかもって思ったら、箱に入ってたヒカリの姿が見えなくなっちゃって・・・・・ヒカリの事、全部、全部忘れちゃって・・・・・」     
 でも・・・・・     
 「・・・・・ヒカリの事を考えると、ココが温かくなって、すごく気分が良くなって、幸せな感じがする・・・・・ヒカリの事を考えたら・・・・・ヒカリの事を想ったら、少しずつ思い出せたんだ・・・・・」   
 サトシはヒカリの手を優しく握りしめる。(無意識)   
 「なあヒカリ・・・・・おれ、覚えてるよ、ヒカリの事・・・・・離れ離れになる時があっても、どんな時も・・・・・もし忘れる事があっても、絶対に思い出す!!」 
 「・・・・・」     
 なんだろう、あんなに不安だったのに、あんなに嫌な感じだったのに、あんなに自己嫌悪に陥っていたのに     
 全部、温もりに包まれて、消えていく・・・・・    
 
- スレ2-105
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/16 13:57:50
 
     「だから、ヒカリもおれの事、覚えててくれよ!ほら!!2人がお互いの事を思ってたら、効果が2倍になるかもしれないだろ?」     
 無邪気で、頼もしくて、優しい君と一緒にいたら・・・・・       
 どうしよう・・・・・なみだが・・・・・涙が止まらない・・・・・   
 サトシはさっきよりも涙を流す私に慌てている。サトシのせいじゃ・・・・・せいかな。   
 「うん・・・・・うん・・・・・おぼえてる・・・・・サトシの事・・・・・」     
 ありがとう・・・・・サトシ・・・・・             
 一通り泣いてやっと涙線が閉まる。 
 サトシは未だに心配そうな表情をして私の顔を覗き込む。   
 ちょ///ちょっと!そんなに顔を近づけないでってば///!   
 「ヒカリ・・・・・・・・・・」 
 「な、なに?」   
 サトシはポケットをゴソゴソと探ると、ハンカチを取り出してヒカリの目元を拭う。   
 「目え真赤だぜ?泣いたのすぐ分かるからちゃーんと拭いとけよ」 
 「!!??△○×☆?/////」   
 サトシはヒカリの頬を優しく触ると、自分の方へグイッ、と引き寄せる。 
 別に純粋に涙を拭こうとしただけなのだが、ヒカリの方はもう大パニックだ。   
 な!?ちょっ!!さ、サトシ・・・・・/////・・・・・             
 ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ 
 リリリリリリリリリリリリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ 
 ン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!    
 
- スレ2-106
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/16 13:58:51
 
     「おいシヤ!!分かってんのか!?肝心のお前が起きてないと意味無いんだよ、お~~~~~き~~~~~ろ~~~~~~~~~~!!!!!」 
 「い、いひゃ、いひゃい~、ひゃ、ひゃへへひょハイ~」   
 「・・・・・」 
 「・・・・・っつ~~~!!あ、相変わらず凄い音だな、あの目覚まし時計」   
 泉の方から聞こえて来た『超音波砲』と、カイとシヤの最早おきまりのやり取りで空気が一気にぶち壊れる。   
 おそらく発信源の近くにいたタケシやポケモン達は気絶してるんじゃあないだろうか。       
 「いいから早くサトシとヒカリを呼んで来い!緊急事態なんだからな!!」     
 「!?何かあったのか?ヒカリ!行こうぜ!!」 
 「う、うん!!」       
 サトシとヒカリは、揃って泉の方へと駆けだした。             
 君のいる場所、それがわたしの現      
 
- スレ2-109
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/17 14:52:35
 
   サトシ達はカイを囲むようにして座っている。   
 カイを含む、全員の目と表情は真剣そのもので、何か重要な事を話しているのが分かる。     
 「いいか!もう1度説明するぞ!! 
 1!「シヤの能力を使って『夢幻回廊』への扉を開く!」 
 2!「サトシ、ヒカリはシヤを護衛しながら『夢幻回廊』を通って『あんこくじま』へ行き、ダークライを倒す!!」 
 3!「おれとタケシは『夢幻回廊』の入り口で待ち構え、この聖域に入ってこようとする闇を迎え撃つ!!」 
 これが最後のミッションだ!全員気を抜くなよ!!」   
 まるでポケモンレンジャーのリーダーになったかの様にカイが告げる。 
 と言うかノリノリだ。   
 「・・・・・カイ」 
 「何だ!シヤ!」       
 「さいごのみっしょんって・・・・・まだ一つもみっしょんやってn」 
 「余計な事は言わなくていんだよ!!」 
 「ひ、ひゃいい!!」   
 ・・・・・大丈夫なんだろうか・・・・・byサトシ、ヒカリ、タケシ、&ポケモン達の心の声       
 第33話「あんこくじまと、夢幻回廊①」         
 ・・・・・10分前・・・・・         
 「カイさん!!なにg」 
 「キャアアアア!!みんなだいじょうぶ!?」   
 カイの『緊急事態なんだ!!』と言う言葉を聞き、みんなの元へ駆けて行ったサトシとヒカリが見たのは正に『地獄絵図』だった。       
 『ポケモン達が全員白目を剥いて気絶している』これが地獄絵図以外に例えられようか。 
 タケシに至っては某名画の様な顔のままピクリとも動かない。     
 「サトシ!ヒカリ!!良かった、今呼びに行こうと思ったんだ・・・・・大変な事になった」 
 (いや今この状況の方がよっぽど大変だっつの)   
 恐るべし、シヤの目覚まし時計・・・・・!!あの音波でピンピンしているカイも只者では無い。     
 離れていて、そして瞬時に対応できて(耳を塞げて)良かった~、と2人は思う。   
 恐らくここで気絶している犠牲者たちは、耳を塞ぐ暇もなくあの恐ろしい音波兵器の餌食となったのだろう、ア~メン。      
 
- スレ2-110
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/17 14:54:51
 
     「これを見てくれ」 
 カイは地面に置いておいたノートパソコンを持ちあげて開き、映っている映像を2人に見せる。   
 そこに映っていたのはシンオウ地方を上から見た物だった・・・・・ある一点を除けば・・・・・   
 シンオウ地方の西側、最西端である「ドゥムタウン」を中心に、一定の距離が薄黒紫に染まっている。   
 「これって・・・・・!」 
 「ああ、これは衛星映像で見たシンオウ地方さ。人質を助けて空間を作っているエネルギーが薄くなったからかな?ついさっき使えるようになったんだ!」 
 「へーえ・・・・・そう言えば、助けた人達はどうしたんですか?」 
 「・・・・・・・・・・シヤの言う通りなら、ポケモンセンターにワープした・・・・・と思う」   
 そうなんだよな?カイは確かめる様にシヤをジーッと見つめる   
 「?どうしたの、カイ?」         
 正直・・・・・自信が無い。     
 「つきのひかり」はまだ良いとして、ルナトーンの「ひみつのちから」をもろにぶつけまくってしまった。   
 光の粒子になって消えていったけど・・・・・じつは『消滅してました~』・・・・・なんてオチ、ないよなあ・・・・・ないよなあ?     
 「?どうしたんですか?」 
 「あ、いや、なんでもない」 
 カイは首をブンブンと振り、余念を祓うと、ビシバシとキーボードを叩く。   
 すると今度はシンオウ地方の西側部分、『島があった部分』がUPされた映像が映る。    
 
- スレ2-111
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/17 14:56:37
 
   「あれ!?島が・・・・・ゆりかご島があった部分が黒く染まってる?」 
 「ここはまあ当然と言えば当然だな、島ごと夢世界に飲み込まれたんだから。問題は・・・・・ここさ」 
 カイは画面をずらし、「ドゥムタウン」にほど近い「ミオシティ」の映像をドアップで映し出す。   
 「な!?なんだこりゃ!!」 
 「人が・・・・・街中で倒れてる!?」 
 「たおれてるんじゃなくて・・・・・寝てるの・・・・・悪夢を見てる・・・・・」 
 シヤはその小さい体を活かし、3人の間に割り込むと、眼を細めて画面を見る。   
 「『半悪夢世界』・・・・・『悪夢世界のエネルギーが現実世界に現れる事で出現する』の・・・・・このエネルギーに飲み込まれると悪夢を見ちゃう・・・・・・」 
 「しかもこのエネルギーの影響下における範囲は徐々に拡大してるんだ・・・・・シンオウ地方を包み込むように・・・・・このままじゃあ」         
 シンオウ地方は悪夢世界のエネルギーに飲み込まれる・・・・・・・・・・人も、ポケモンも、みんな永遠に眠ったまま・・・・・     
 「そんな事、させるもんか!!」 
 「わたし達で何とかしましょう!もうそれしか無いもの!!」 
 「(コクン)」 
 「勿論そのつもりさ・・・・・」       
 誰か1人忘れてる気がするけど!!             
 あの破壊音波の至近距離攻撃&耳栓無しは、グレッグルの「どくづき」5発分くらいありましたbyタケシ        
 
- スレ2-112
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/17 14:58:12
 
     もうすぐ・・・・・もうすぐあくむがおわりますよ・・・・・     
 ・・・・・『幻夢の悪魔』・・・・・     
 第34話「あんこくじまと、夢幻回廊②」       
 「さてと・・・・・全員決意が固まった所でまずどうするかなあ・・・・・」 
 カイは腕組をしながら溜息を吐く。決意が固まってもやるべき事が分からなければ意味がなかった。   
 「ダークライを倒せば良いんじゃないですか?」 
 「そうですよ!!元凶はあいつなんですから!!!」   
 そう、ダークライが現れてから全てがおかしくなった。だったらダークライを倒せば・・・・・   
 「あ~・・・・・俺もそう思うんだが・・・・・・・・・・その・・・・・行き方がな?」 
 「行き方?」 
 カイは、厄介なんだよな~、と言わんばかりに顔をゆがませる。   
 「『悪夢世界』の力が弱くなった・・・・・つまりダークライはその影響で受けたダメージを回復するために『あんこくじま』にいるはずだ」 
 「あ、『あんこくじま』・・・・・?」   
 初めて出て来た単語にサトシは戸惑う。そこにダークライがいるんだろうか?   
 「・・・・・今どこにあるかも分からない島さ・・・・・・・・・・」     
 カイは開いていたノートパソコンをパタン、と閉じると、再び溜息を付く。 
 どうでもいいが後10年ぐらいたったらタバコが似合いそうだ。(ホントに関係無いな;)     
 「そーだなー、例えるなら・・・・・ホウエン地方に『まぼろしじま』ってのがあるだろ?あれは『時空のはざまを漂っている島』『あんこくじま』は『夢世界と現実世界を漂っている島』ダークライ誕生の地さ」   
 「えっと・・・・・つまり・・・・・」 
 「ああ、今何所に『あんこくじま』が、ダークライがいるのかサッッパリ分かんない。正直お手上げだな」 
 「そんな・・・・・」   
 なにも・・・・・できない・・・・・?    
 
- スレ2-113
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/17 15:01:25
 
     いつの間に復活したタケシを含め、全体の士気が下がる。 
 『いざ最終決戦!!』ってなると思ってたのに、なにもできないなんて・・・・・     
 「まあそう士気を落とすな、取り合えずポケモンセンターに戻って状況の整理を・・・・・」     
 グイッッッッツ!!!!       
 「うおわああああ!!!!」     
 ドシャツ!!       
 何が起こったのかも分からず、カイはバランスを崩して背中から地面にたたきつけられる。   
 「!!??・・・・・おいシヤ!!なん何すんだおm」 
 「(ふるふるふるふる、ふるふるふるふる、ふるふるふるふる、ふるふるふるふる、ふるふるふるふる)」 
 「お、おいシヤ!落ち着け;!!なにかあるなら口で言え!そんな思いっきり首を振るな;ちぎれるぞ!!」   
 あまりにも勢いよく首を振るシヤに吃驚して怒りを忘れる。 
 その内ブチッ!!と言う音と共に体と頭が離れてしまいそうだ。   
 「だめ・・・・・戻っちゃダメ・・・・・今しか・・・・・今しかないの・・・・・」 
 「シヤちゃん?」 
 「・・・・・シヤ?」         
 「・・・・・『夢幻回廊』が開くのは・・・・・今しかないの」 
 「!!?『夢幻回廊』だって!?」 
 「そこを通れば『あんこくじま』に行けるのか!?」 
 「(コクン)」 
 サトシの言葉にシヤは力強く頷く。   
 「いや、でも・・・・・シヤ・・・・・その・・・・・あの・・・・・あっと・・・・・えっと・・・・・」 
 「?どうしたんですかカイさん?なんか変ですよ」   
 カイの態度が突然挙動不審になる。慌ててると言うか、焦ってると言うか、脅えてると言うか、心配してると言うか・・・・・とにかくおかしい。     
 「あ~・・・・・その・・・・・いや確かに行けるかもしれないんだが・・・・・」 
 「行けるかもしれないんだが?」         
 「下手すりゃ永遠に出てこられない・・・・・」       
 え?    
 
- スレ2-114
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/17 15:09:39
 
     「『夢幻回廊』・・・・・別名『なぞのくうかん』・・・・・このシンオウ地方に伝わっている、所謂『裏伝説』って奴で、創造神がこのシンオウ地方を創った時の反動で出来たと言われている場所・・・・・ 
 いわゆる『シンオウの裏側』『もう1つのシンオウ地方』みたいな所でさ、真っ暗で、な~んにも見えないけど、シンオウ地方にあるすべての場所に繋がっていると言われているんだ・・・・・ 
 たとえそれが、普通人が行けない場所や入れない場所『神の領域であろうとも行くことができる』・・・・・おれの母さんも研究してた・・・・・」     
 ただ・・・・・そのリスクも高くてさ・・・・・・     
 「なにせ迷ったら永遠に出てこられないと言われてしるし、もし出口を見つけたとしても目的の場所に行けるかどうか分からない。出口を見つけたと思ったら海の真上だったとかな、すごく不安定な世界なんだ」 
 「?どうしてカイさんがそんなこと知ってるんですか?」     
 ああ・・・・・聞いてほしくなかったなあ・・・・・     
 「・・・・・だよ」 
 「へ?」       
 「今のはぜ~~~んぶ『実話なんだよ!!』あの、クソ好奇心旺盛天然研究者~!!島に偶然出現した『夢幻回廊』に俺をぶち込みやがって~~~~!!! 
 な~にが『暗いの怖いからかわりに見てきて~』だ!!5歳だったおれの方がよっぽど怖いっつ~の!!真っ暗だったんだぜ、真っ暗だったんだぜ、な~んにも見えなかったんだぜ!! 
 おかしいよな?絶対頭おかしいよな!?自分の息子をもう二度と出て来れないかもしれないって空間にアッサリと放り込んだんだぜ!!? 
 あるいてあるいて、ないてないて、マジで涙線枯れ果てた時や~っと出口見つけたと思ったらそのまま海にドボーン!さ!! 
 偶然島の近くだから良かったけどさ、テンガンざんの頂上とか、キッサキの吹雪の真っただ中とかだったら俺死んでたぜ?確実に死んでたぜ!? 
 泳いで泳いでやっと島に着いたと思ったら浜辺で『あはは~おかえり~』とか言ってほのぼの笑顔で笑ってやがるし! 
 親父は放任主義でな~んにも注意してくれねえし!!トラウマにならない方がおかしいだろ!!??」       
 ・・・・・完全にぶっ壊れている。      
 
- スレ2-115
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/17 15:13:05
 
     カイの度胸と強さはここからきているのだろう・・・・・ 
 またあんな事があっても今度はバッチリ対応できるように・・・・・哀れな   
 だが自分の母親の志を継ぎ、伝説ポケモンの研究をする辺り、同じ血が流れてい『親』として認めていたのかもしれない。     
 「あはははははははは!!!!」     
 「・・・・・か、完全におかしくなってるな・・・・・;」 
 「ど、どうしよう;カイさんがこんな状態じゃあ・・・・・」 
 「え、えっと;・・・・・シヤちゃん?」 
 「大丈夫・・・・・この話になるといつもこうなるの・・・・・すぐなおるよ」         
 シヤはおかしくなっているカイにトコトコと近づくと、ポンポンと、背中をノックする。   
 「カイ・・・・・『夢幻回廊』にいく前に色々きめておいた方がいいとおもう・・・・・まだ話してないこともあるし」 
 「そうか・・・・・この際仕方ない、もたもたしてる場合じゃないしな・・・・・急がないと」       
 ええええええええ~~~~~~~~~!!!!     
 あの壊れっぷりはどこに!!??   
 カイは話を振られた途端コンマ0,1秒で顔と表情を変えた。その表情と言葉は真剣そのものだ。 
 その余りの変貌っぷりにサトシ達は絶句する。     
 「ん?どうした?取りあえずポケモン達の容態チェックと今後の作戦を決めるぞ!手伝ってくれ!!」   
 カイはそう言うと、再びノートパソコンを開き、ビシバシと叩き始めた。         
 回想終了     
 おめでとう!!皆のカイの印象が『頼もしい人』から『哀れで変わった人』に進化した!!        
 
- スレ2-117
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/17 15:31:53
 
     ポケモン達の体調は万全   
 シヤの言葉に従い、作戦と役割も決まった   
 気合は十分!後は・・・・・     
 ダークライを倒すだけだ!!   
 第35話「あんこくじまと、夢幻回廊③」       
 「・・・・・でも本当にこんな所に『夢幻回廊』ができるのか~!?」 
 「さ、サトシ!!ちゃんと手繋いでてよ~!?ふ、振り落とされちゃう~!!」 
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(おえっ!・・・・・き、気持ち悪~);」 
 「ちっ!おいシヤ!!お前本当に此処であってんだな!?」 
 「(コクン)」   
 カイの言葉にシヤは頷くが、今回ばかりはツッコミを入れない訳にはいかない。     
 「ここは島の裏側!!しかも『断崖絶壁』だぞ!?お前が言うから、無理言って船出して、夢世界に飲み込まれた影響で『超荒れ狂ってる本来なら船出禁止になってる海』に死ぬ覚悟で出て来たんだからな!!!間違ってたりしたらタダj」       
 ザッパ~~~~~~~ン!!(全員ズブ濡れ)       
 「・・・・・・・・・あ~~~もう!!」   
 カイは荒れ狂っている海上の、ある一点に船を保っていられるように舵を取る。 
 簡単にやっているように見えるが、凄まじいまでに荒れている海で、ある場所に船を留めておくにはかなりの高等テクがいる。カイはもう必死だ。   
 船が転覆しても、すぐ目の前にある絶壁に船がぶつかっても一巻の終わりだ。   
 「くっそお!!」   
 波が前後左右から押し寄せ、船を襲撃する。このままではいくら自分が上手く舵を取り続けていても、いずれ船が壊れてしまう。   
 「うわっ!!」 
 「おい!!しっかりつかまってろ!落ちたら死ぬぞ!!」   
 サトシ達は出来るだけ頑丈そうな場所にしっかりとつかまるが、大きな波が押し寄せる度、船の外に放り出されそうになる。   
 「シヤちゃん!!まだ『夢幻回廊』への扉は開かないの!?」 
 「しょ、正直じぶんはもうげんか・・・・・うっぷ!」   
 タケシに至っては、当たり前かもしれないが船酔いし、顔が真っ青だ。   
 もう限界だった・・・・・・・・・・その時      
 
- スレ2-118
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/17 15:34:11
 
     「カイ・・・・・こっちこっち・・・・・」 
 「?・・・・・!!??○×△□◇☆!!??し、シヤ!!お、お前何やってっ」   
 シヤは船の船頭、つまりは最も危険な場所に立っていた。このままではすぐに海に放り出されてしまう。     
 ピョ~ン     
 目を疑った・・・・・シヤは自ら絶壁の方へと大きく跳んだ、これは紛れもなく自殺行為だ。     
 「シヤ~~~~~~~~~~~!!!!」   
 カイは舵を取るのも忘れ、シヤの方へと駆け出す。 
 船が転覆しようがバラバラになろうが構わなかった・・・・・シヤを守れるなら!!   
 「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」     
 カイはシヤを追って船頭から絶壁の方へ飛び出した・・・・・と、思った。       
 ・・・・・ズブリ・・・・・     
 「え?今・・・・・消えた、よな・・・・・絶壁の中に」 
 「な、なんなの・・・・・あれ・・・・・」     
 おにいちゃん達も飛び込んで・・・・・だいじょうぶだから・・・・・     
 テレパシーのようにシヤの言葉が頭に入ってくる。     
 サトシ達は顔を見合わせると、頷き合い、3人一緒に絶壁の中へと飛び込んだ・・・・・           
 真っ暗で何も無い空間・・・・・そこで見たのは・・・・・             
 「ひゃ、ひゃひゃひ~、ひょひぇんひゃひゃい、ひょひぇんひゃひゃい~、ひょふひゃへへ~ひゃひ~」 
 「五月蝿え!!黙れ!!あれだけ心配させておいてなに言ってんだテメエ!!マジで海に落ちちまえ!!と言うか落ちろ!!」     
 ・・・・・もはや恒例と化したいつもの光景だった・・・・・      
 
- スレ2-119
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/17 15:40:08
 
   「ひ~~~~~~~ひゃうっ!!」 
 カイは最後にシヤの頬を思いっきり左右に引っ張ると、やっと手を放す。   
 「はあ・・・・・はあ・・・・・まったくこいつは・・・・・みっともねえとこ見しちまったな」 
 いやもう何回も見てます。   
 「ここが・・・・・『夢幻回廊』・・・・・」 
 「本当に真っ暗ね・・・・・お互いの姿が確認できるのが不思議なくらい」 
 「ああ、どうやら出現する場所が絶壁と一体化してたらしい・・・・・まったく、そうゆう事は早く言え!!」 
 未だにイラついているカイに、シヤが初めて反論の表情を見せる。   
 「だって・・・・・だって・・・・・カイが乗り込むの遅いから・・・・・」 
 「は?」 
 「カイが船ごと突っ込んでくれてれば・・・・・もっと早くついたのに・・・・・」     
 ・・・・・・・・・・・・・     
 「シヤ・・・・・まさかお前、『夢幻回廊』への入口『最初っから開いてた』んじゃないよなあ?・・・・・」 
 「あいてたよ?・・・・・なんですすまなかったのカイ?」     
 ・・・・・・・・・・・・・・・     
 「テメエふざけんなぁぁああああ!!!!!」 
 「(ビクッッッツ!!)」   
 シヤはすでに危険を感じ取っていたのか、カイが沈黙している間に、3人の後ろに、小さくなって隠れていた。   
 「まあまあ;・・・・・シヤちゃんも悪気があったわけじゃないんですし・・・・・」 
 「そ、そうですよ;許してあげましょう?」 
 「それにほら!時間もありませんし;ね!!」 
 3人は必死でカイを宥める。ただでさえ自らのトラウマである『夢幻回廊』に入ってカイの気が立っている今、暴走されたら全てが台無しだ。   
 「・・・・・・・・・・!ヨノワール『ナイトヘッド』!!」   
 3人に拒まれ、シヤを睨みつけていたカイが、突然後ろ、つまりは入口の方を向き、モンスターボールからヨノワールを繰り出す。 
 ヨノワールが放った『ナイトヘッド』は攻撃対象にバッチリと当たる。   
 「これは・・・・・闇!?」 
 「やっぱり見つけたか・・・・・ここには『夢世界』を超えるエネルギーが沢山あるからな・・・・・さ、て、と。気持ちを切り替えろよ・・・・・」           
 カイ・・・・・心配してくれて、ありがとう・・・・・    
 
- スレ2-122
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/21 11:44:22
 
   「ハピナス『ちきゅうなげ』!!ヨノワール『おにび』!!」 
 「グレッグル『かわらわり』!!ウソッキー『けたぐり』!!」   
 カイとタケシのポケモン達が次々と『夢幻回廊』に入ってくる闇を倒してゆく。   
 今は若干現れるスピードより、倒すスピードの方が速いが、ポケモンが疲れてきたり、この場所を嗅ぎつける闇が次第に多くなることが予想される。 
 決して優勢とは言えない。   
 「なにしてんだ!早く行け!!どんどん来るぞ!!!」 
 「「で、でも・・・・・」」   
 やっぱりおれ(わたし)達も手伝った方が・・・・・   
 「お前ら俺の話聞いてなかったのか!?お前らがこの先に行って事件を解決しない限り、永遠にこいつらは出て来るんだよ!!」     
 それにこのままじゃおれ達だけじゃなくて、シンオウ地方全体が眠りの地になっちまうんだぞ!!時間が無いんだ!!だから・・・・・     
 「はやくいけぇぇえええええ!!!!!」 
 「いこう・・・・・おにいちゃん、おねえちゃん」   
 カイの必死な叫びと、シヤの訴えるような目線に、サトシとヒカリは頷くと、シヤを先頭にはしりd       
 「ちょっとまてえぇぇえええええ!!!!!」 
 「「どっちですか!?」」   
 カイの急な呼び止めに、サトシとヒカリは若干バランスを崩す。     
 「いや、お前らじゃなくてシヤだシヤ!・・・・・シヤ、こいつら連れてけ・・・・・」   
 カイはシヤに3つのモンスターボールを投げ渡す。 
 中にはシヤを慕っている「ラプラス」を筆頭に、「ルナトーン」「デンリュウ」が入っていた。   
 「カイ・・・・・いいの?」 
 「・・・・・2人の足手まといにならないようにしろよ・・・・・」 
 「うん・・・・・カイ、ありがとう・・・・・」 
 「分かったらとっとと行け!!」     
 シヤは頷くと、サトシとヒカリを連れ、今度こそ『夢幻回廊』の奥へと駆けだした。      
 
- スレ2-123
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/21 11:46:44
 
     第36話「暗闇の中で①」         
 ・・・・・3年前・・・・・     
 「なんだって!?子供が『鮫肌岩』の方へ流された!?」       
 ・・・・・その日も俺は、日課である島のパトロールをしていた・・・・・   
 基本的に平和な空気が流れているこの島、人が俺(守人)を頼るような事態など、そうそう起こらない。   
 そして、今日もそうだと思っていた・・・・・     
 「どういう事だ!?あそこは常に人員が配備されて注意を呼び掛けてるんじゃ無かったのか!?」   
 『鮫肌岩』とは、その名の通り、「サメハダーの特性「さめはだ」で削られて出来たボロボロの岩の事。   
 そして勿論そこはLvの高いサメハダーの巣窟、危険極まりない場所だ。バトルの腕に結構自身が有るカイでも絶対に近寄らない。   
 「わりぃ・・・・・どうやら冒険家の娘らしくて・・・・・小さい体を生かして、警備の合間をすり抜けたみたいなんだ・・・・・」 
 「親譲りの好奇心って奴か・・・・・くそっ!!」   
 何とかしなくちゃ・・・・・でも・・・・・おれの手持ちには「なみのり」できるポケモンがいない・・・・・   
 「船で行くのか・・・・・・・・・・」(-人-) 
 「ちょっと待て!!何で合掌してんだ!?」 
 「いや、もうお前に会えなくなるのかと思うとさびしk」 
 「勝手に殺すな!!」 
 「でも少なくとも船の命は無いと思った方がいんじゃね?お前あそこで何台も船が沈められてるの知ってるだろ?」 
 「・・・・・」   
 確かにあそこにはサメハダーの襲撃により崩壊した船がいくつも沈んでいる。   
 つい去年貰ったばっかりの自分の船『ムーンライト』船裁きも結構いたについてきた今日この頃、正直自分の船であの危険な場所には行きたくなかった・・・・・でも     
 「いってくる。お前は万が一の為、街にSOSメールを出しとけ」 
 「分かった!気をつけろよ!!」           
 一方その頃・・・・・『鳴砂場』・・・・・シヤ     
 「・・・・・だいじょうぶ?・・・・・」 
 浜辺で苦しそうに喘ぐラプラスにシヤは優しく話しかける。   
 体を横たわらせてグッタリとしたそのラプラスの体には、無数の触手の跡が付いていた      
 
- スレ2-124
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/21 11:49:11
 
   「・・・・・ドククラゲと戦ったの?」 
 ラプラスは荒い呼吸をしながら、コクリと頷く。   
 ラプラスは海を回遊するポケモン。恐らく海を泳いでいるうちにドククラゲの縄張りに入ってしまった・・・・・そんな所だろう。   
 ドククラゲの触手には毒がある。「まきつく」そして「どくばり」この二つの攻撃を受け、ラプラスの体は弱っていた。   
 「だいじょうぶ・・・・・わたしにまかせて・・・・・こわがらないで・・・・・だいじょうぶ、すぐ良くなるよ・・・・・」   
 当初シヤを警戒していたラプラスだが、シヤの何とも言えないオーラを見ている内に、なんだか安心した表情に変わってきた。   
 シヤはラプラスの警戒が解けたのが分かると、若干大きめのポシェットから、幾つかの木の実と、小さなすり鉢を出す。       
 「その代わり・・・・・おねがいがあるの・・・・・」             
 「・・・・・油断した・・・・・」     
 ・・・・その時、俺のポケモンは4匹だった。   
 色違いの白色コイキング(本当は「アルビノ」)を釣り上げ、是非是非交換してほしい、と、コイキングマニアのおじさんから頼まれ、進化させる為の道具付きで交換した「ヨノワール」(サマヨールだったが、交換の際に進化した)   
 崖崩れの撤去作業の時に、見ていたシヤが、偶然岩と岩の中で、これまた岩の様に眠っているのを見つけた、色違いの「ルナトーン」   
 本当は観光客のお婆さんポケモンだったけど、この島で死んでしまったため、俺が預かる事になった「モココ」(後のデンリュウ)   
 そして、観光客の「わすれもの」だった「ポケモンのたまご」から生まれてきたピンプクから進化した「ラッキー」(後のハピナス)   
 この4匹   
 本当はもう1匹、守人になる事が決まった時に、始めて貰ったポケモンが「なみのり」を使えるけど、ちょうどその時体調を崩してしまっていて、ポケモンセンターに預けていたし、何より今は人を乗せて「なみのり」出来るほど大きくない。     
 ・・・・・かなり鍛えあげていたし、島に観光に来るポケモントレーナーと何度もバトルしてきた。 
 「守人」と言う俺の噂を聞き、挑戦しにやってくる者もいたが、負けた事は殆ど無かった・・・・・      
 
- スレ2-125
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/21 11:54:44
 
   まさか滅多に近づかない場所とは言え、ホームで俺がここまで追い詰められるなんて・・・・・・・・・・       
 俺は、鋭い眼光で俺を敵意むき出しの目で見つめて来るサメハダー達を負けじと睨み返すが、殆ど強がりだった。   
 「お、おにいちゃん・・・・・」 
 「だいじょうぶだ・・・・・さわぐな、余計に向こうの気が立っちまう。なるべく船の中央にいるんだ」   
 俺の言葉を無視して、少女は震えながら俺にしがみ付く。年はシヤより少し上くらいだろうか。 
 よっぽど怖かったのだろう。顔は真っ青に染まり、散々泣いたであろう目は、赤く染まっている。   
 ごめんな・・・・・本当に・・・・・       
 船で鮫肌岩に向かったカイが見たのは、今にもサメハダー達に襲われそうになっている少女だった。   
 すぐさま少女の側にいたサメハダーを蹴散らし、船の甲板に少女を上げる。後は怒ったサメハダー達をある程度倒して、群れが動揺している隙に逃げる・・・・・あまかった。     
 みず・あくタイプのサメハダーに、ヨノワールとルナトーンは論外的に弱い、鍛え上げていたとは言え、タイプ相性が最悪だ。   
 ラッキーは体力と特殊防御、「たまごうみ」による回復はあるが、攻撃面はカラッキシ駄目なポケモンだし(当時まだ「ちきゅうなげ」は覚えていなかった)、「こうげき」面の方が強いサメハダーには意味が無い。   
 タイプ相性がいいのはモココだが、いま海に向かって「かみなり」を放てば、ここにいないサメハダー達は勿論、他のポケモン達も怒らせてしまう。 
 「かみなりパンチ」で一体一体片付けていくしかないが、カイのモココは特殊攻撃の方が攻撃力が高いし、なによりサメハダーの数が予想以上に多く、PPが尽きてしまった。       
 ポケモン達は皆ひんしに近い状態だ。   
 「絶対絶命ってやつか・・・・・ガッ!ハッツ!!」   
 突然群れの中の一匹が、カイに向かって「ロケットずつき」を放つ。 
 すると他のサメハダー達も一斉に船に向かって「ロケットずつき」を浴びせる。    
 
- スレ2-126
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/21 11:56:09
 
   「攻撃してこなかったのは力を溜める為か・・・・・くそっ!!」   
 船が大した波も無いのにガンガン揺れる。このままでは船が転覆するか、バラバラになって・・・・・   
 なんとか・・・・・この子だけでも助けなきゃ・・・・・   
 「おにいちゃん!!」 
 「!?なっつ!!」   
 サメハダー達が一斉に、甲板にいる2人に攻撃しようと大きく跳びあがる。     
 くそっ!・・・・・ここまでか・・・・・   
 カイが少女を強く抱きしめ、少しでもダメージを和らげようとした・・・・・その時だった。       
 「なみのり」     
 たった今自分達の上空にいたサメハダー達が高波に攫われ吹き飛ばされる。   
 「!!?し、・・・・・シヤ!?」 
 何故かラプラスに乗って現れたシヤにカイは動揺する。   
 この場所が危険だと言う事はシヤもよく知っているはずだった。 
 なんでここに・・・・・   
 「し、シヤ・・・おまえ・・・・・」 
 「・・・・・・・・・・・・・・・」   
 シヤはカイの方を向き、面白くなさそうな表情をする。凄く珍しい表情をしたシヤに、カイは更に動揺する。   
 シヤは滅多な事では拗ねないし、もし不快になる様な事があったとしても、表情に出すことは少なかった。      
 
- スレ2-127
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/21 11:57:10
 
     「・・・・・し、シヤ!あぶねえ!!」 
 突然なみのりを浴びせた突然の来訪者に攻撃対象を切り替えたサメハダー達が、一斉にシヤに襲いかかる・・・・・と思った     
 「うずしお」   
 サメハダー達が襲いかかってくる前に、シヤはラプラスの「うずしお」を放ち、全員の動きを止める。   
 だがサメハダーもみずタイプ。ただの僅かな時間稼ぎにしか・・・・・   
 「ぜったいれいど」   
 シヤの指示を受け、ラプラスは渦の中心に「ぜったいれいど」を放つ 
 渦が見る間に凍ってゆくが・・・・・   
 「シヤお前何やってんだ!!「ぜったいれいど」は放ったポケモンより相手のLvが高いと効果が無いんだぞ!!?そいつがどんだけLvが高いか知らないけどこいつら全員に効くわk」 
 「いいの・・・・・ただ渦ごと凍らせたかっただけだから・・・・・カイ、ルナトーンとサマヨールを出して」 
 「は!?」 
 「おねがい・・・・・」 
 シヤは相変わらず不機嫌な顔だ、本当に珍しい・・・・・そして何故だか言う事を聞いた方が良い気がしてきた。   
 「分かった、ヨノワール!ルナトーン!」   
 モンスターボールの中からひんし寸前の2匹が出てくる。   
 「同じ技をして・・・・・「サイコキネシス」」   
 ラプラスの念が、サメハダーごと凍った渦を包む。 
 そして「サイコキネシス」は凍った渦を上へと持ち上げる。   
 「シヤお前何やって・・・・・そうか!!ヨノワール!ルナトーン!お前たちもサイコキネシスで氷の塊を上空へ浮かせるんだ!!」   
 カイもシヤの考えている事が分り、2匹に援護するよう指示を出す 
 2匹の念が加わり、巨大な氷の渦は、水面上空10メートルくらい上へと上がる。   
 「モココ!「じゅうでん」!!」   
 上空なら他のポケモン達に電撃を浴びせる事は無い! 
 そして、こんなに大きな的だったら外すこともない!!   
 「「でんじほう」!!」             
 「本当にありがとうございました!!」   
 少女の父親がこれでもかと言わんばかりに頭を下げる。 
 少女は父親の手をしっかりと握りながら、これまた頭を下げている。    
 
- スレ2-128
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/21 11:58:31
 
   「ありがとうございました!」 
 「いえ、俺はこの島の守人ですから・・・・・・・・・・もう一人であんなとこ行っちゃだめだぞ?冒険はポケモンを持てるようになってから、な?」 
 「(こくり)」 
 「うん!おにいちゃん!シヤちゃん!本当にありがとう!!」   
 父親と手を繋いでポケモンセンターへと帰ってゆく少女を見送って、カイはシヤの方を向く。     
 「さ~~てと、シヤ、今度はお前に聞きたい事、言いたい事が有るんだけどな」 
 「・・・・・・・・・・・・・・・」 
 「あのラプラスはどこで手に入れたんだ?そして、なんで俺が鮫肌岩にいるって分かったんだ?」 
 「・・・・・・・・・・(ぎゅっ~~~~~)」   
 シヤは何も言わずにカイの腕に強くしがみ付く。   
 「?・・・・・シヤ?」 
 「かえったら・・・・・はなすよ・・・・・・・・・・かえろう?」 
 「え?あ、ああ・・・・・」   
 カイは家へ向って歩き出そうとしたのだが・・・・・       
 ズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・       
 「・・・・・おいシヤ!!お前なんでしがみ付いたままなんだよ!?離れろって!!歩けないだろ!!」 
 「・・・・・わかった」   
 シヤは名残惜しそうな顔をするが、すぐにパッ、とカイの腕から両手を離す。   
 やれやれこれでやっと帰れ・・・・・     
 ズシリ・・・・・     
 「?・・・・・おいシヤ!お前何やってん」 
 「つかれちゃった・・・・・おんぶ・・・・・」   
 シヤはそう言うと、カイの背中にピッタリと張り付く。   
 「はあ!?お前もう子供じゃないんだからさあ・・・・・」 
 「(ぎゅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~)」   
 シヤは、より一層強くカイの背中にしがみ付く。 
 絶対に離れない、そんな意志を示すように・・・・・   
 「・・・・・分かったよ!なんだかよく分からないけど今日はお前に助けてもらったしな」 
 「(こくん)」     
 シヤは嬉しそうに微笑む。・・・・・ 
 正直、悪くない気分だった        
 
- スレ2-129
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/21 12:04:24
 
       家へと向かう道をトコトコとシヤをおんぶして歩く。 
 おんぶなんて何年振りだろう・・・・・シヤがまだ5歳の時だったから・・・・・2年前か。   
 「カイ・・・・・」 
 カイがそんな事を考えていると、シヤが眠たそうな、寝言と間違えそうなか細い声を出す。   
 「カイの背中ね・・・おひさまみたいにあったかいよ・・・・・ポカポカして、フワフワして・・・・・・・・・・・・・・・カイ・・・・・」           
 ・・・・・だいすき・・・・・           
 え?         
 カイがバッ、と背中を見ると、シヤはもう夢の世界へと旅立った後だった。 
 いつもと変わらない、呑気な寝顔。気持ち良さそうにスースーと寝息を立てている。       
 ・・・・・だいすきなんて・・・・・ただ自分の義妹からそっけなく言われただけなのに・・・・・シヤはまだ7歳の少女なのに・・・・・       
 「なんで、なんで顔真っ赤になってんだ俺は・・・・・っ!!//////////」     
 顔が赤くなってるのを、綺麗に見える夕陽のせいにして、俺は早歩きになりながら家に帰った・・・・・              
 
- スレ2-130
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/21 12:06:13
 
       「かいさん・・・・・カイさん!!」 
 「あ!?ああ・・・・・如何した?」   
 タケシが自分に呼び掛けている事にようやく気付き、カイはようやく反応を示す。   
 「如何したじゃないでしょ・・・・・さっき大群が来てから闇が来ないからおかしいですねって」 
 「あ、ああ、そうだな・・・・・確かにへn」           
 ゴゴゴゴゴゴゴォォォォォ!!!!!           
 「!?な、なんだ!!?」 
 「うわさをすれば何とやらって奴だろ・・・・・くるぜ・・・・・」           
 シヤ・・・・・あの後お前言ったよな・・・・・「カイがそのときがきたとおもったら・・・・・カイがわたしのことをみとめてくれたら・・・・・わたしにもたたかわせてくれないかな」って・・・・・           
 夢幻回廊の入り口から、これまでとは比較にならない位巨大な闇がその姿を現す。どう少なく見積もっても20メートルはある。           
 ・・・・・お前、本当に馬鹿だな・・・・・お前の事は最初っから認めてるよ・・・・・夢巫女として、踊り子として、俺の義妹として・・・・・少しだけど、本当に少しだけど・・・・・・・・・・女の子として・・・・・           
 俺はお前を信じてる・・・・・そしてお前は俺を信じてくれてる・・・・・だから           
 「その証は立てないとな!!・・・・・さあいくぜ!!「カイリュー」!!」       
 カイは、先ほど自分の元に帰って来た、最初のポケモンに手を掛けた。        
 
- スレ2-132
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/22 15:00:03
 
   真っ暗な闇の中・・・・・     
 もうどれ位走っただろう・・・・・     
 周りは真っ暗で、何も見えないこの状況で分かるのは、今自分達が走っているという事だけ・・・・・     
 ただ、ヒカリと手を繋いで走っていると言う事だけ・・・・・         
 この提案をしたのはシヤだった。     
 「まっくらなやみのなかでも・・・・・たいせつなひとがそばにいてくれるのがわかれば、あんしんできるから・・・・・」って。       
 ・・・・・たしかに・・・・・ヒカリと手を繋ぐ前よりも、気分が良い気がする。 
 ヒカリもここ(夢幻回廊)に入ったばかりの時は不安げな顔をしていたが、今はそう言った感情はないみたいだ。     
 「サトシと手を繋いでるから・・・・・こわくないの」   
 ヒカリが、サトシの心を見透かしたんじゃないかと言うタイミングで語りかける。   
 「なんだよ突然?」 
 「・・・・・不思議だね、ただ手を繋いでるだけなのに・・・・・」       
 元気が出るし、安心するの・・・・・サトシのパワーを分けてもらってるからかな?     
 「・・・・・そっか!!だったら元気が欲しくなったら、おれに言えよ!何時でも分けてやるぜ、おれのパワー!!」 
 「・・・・・サトシ・・・・・・・・・・うん!!」     
 第37話「最終決戦①」       
 カッッッツ!!!!     
 辺りが急に明るくなり、サトシとヒカリは反射的に目を瞑る。 
 今まで真っ暗な場所にいたのだから無理もない。だが目が慣れるのに、そう時間は要らなかった。     
 だってその場所は、文字どおり『あんこく』で包みこまれた場所だったから・・・・・        
 
- スレ2-133
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/22 15:02:02
 
     「ついたよ・・・・・ここが『あんこくじま』」 
 「ここが・・・・・?」 
 見渡す限りのあんこくの雲で包みこまれたその島の浜辺に、サトシ達は立っていた。     
 ゆりかご島の半分くらいの大きさのその島の第一印象は、ハッキリ言って気味が悪い。     
 草木は枯れているし、地面には亀裂が入っていて、そこから禍々しく、ドロドロとしたマグマの様な闇が見える。   
 それに何だか嫌な感じがする。頭の奥がキ~~~ン、となるような・・・・・     
 「なんだか気味の悪い場所ね・・・・・当然と言えば当然かもしれないけど・・・・・」 
 ヒカリも気分が悪そうだ・・・・・早く目的を達成しなければ。   
 「シヤちゃん!!ダークライはどこに・・・・・この島のどこにいるんだ!?」   
 この事件の根源・・・・・ダークライ!!あいつを倒せば・・・・・       
 「・・・・・・・・・・あそこ」 
 「「え!?」」     
 シヤの指さした場所に、禍々しく、暗い闇が集まったかと思うと、一瞬にして悪魔の形をつくってゆく。     
 「ダークライ・・・・・」   
 シヤは何の警戒もなく、タッタッタッと、早歩きでダークライに近づいてゆく。   
 「!?シヤちゃん!!」 
 「シヤちゃん!!ダメだ!!」     
 サトシとヒカリは、必死になってシヤを止めようとした。 
 カイのポケモンを借りているとはいえ、シヤがダークライに勝てるとは思えなかった・・・・・     
 ゴン!!     
 「いってててて;・・・・・な、なんだ!?」 
 サトシがシヤに追い付く寸前「なにか」に顔をぶつけ、尻モチを付く。   
 コンコン   
 ヒカリが「なにか」を叩くと、ガラスのような音がした。   
 「なにこれ・・・・・ここに見えない壁みたいなのがある!!」 
 「・・・・・ダークライはわたしと戦いたいみたい・・・・・1対1で・・・・・」      
 
- スレ2-134
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/22 15:04:13
 
     そう言えばダークライは、最初からシヤしか見てなかったような気がする。   
 「なんだって!・・・・・おい!ダークライ!!1対1だなんて卑怯だぞ!!1対3に・・・・・って全然卑怯じゃ無いか;」 
 サトシは自分が言っている事の方が卑怯だと気付き、恥ずかしくなる。     
 あ~、でもあいつがひどい事してきたのは事実だし、でもそんな事でおれ達も卑怯者になりたくないし・・・・・・・・・・そうだ!!   
 「だったらまずおれが相手になってやる!!シヤちゃんと交代させろ!!」     
 あいつは・・・・・ダークライはおれが倒す!!     
 「ちょっと待ってサトシ!一人じゃ無理よ!!」 
 「・・・・・分かってる・・・・・おれ一人でなんて無理だって事・・・・・でも、でも」     
 ヒカリにだけは戦わせたくない・・・・・もう悪夢なんて見てほしくないんだ!!だから・・・・・ 
 サトシにだけは戦わせたくない・・・・・悪夢を見るのは私だけで十分なの!!だから・・・・・     
 「・・・・・ううん、無理だよ・・・・・おにいちゃん1人じゃ勝てない・・・・・」 
 「うっ::」   
 分かってはいるけど、こうハッキリストレートに言われるとサトシでも傷つく。 
 しかも自分より年下(だと思っている)のシヤに言われた事で、ダメージは倍増だ。   
 「もちろんおねえちゃん1人でも勝てない・・・・・けどね」             
 ・・・・・おにいちゃんにはおねえちゃんが、おねえちゃんにはおにいちゃんがいる・・・・・・・・・・2人いっしょなら・・・・・             
 「だいじょーぶ!!・・・・・だよ」 
 シヤは微笑みで顔を一杯にしてヒカリの決めゼリフを真似る。   
 「「・・・・・だいじょーぶ・・・・・1人じゃないから・・・・・ヒカリが(サトシが)いるから・・・・・」」       
 2人一緒なら・・・・・・・・・・       
 「「だいじょーぶ!!」」      
 
- スレ2-135
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/22 15:05:32
 
     「(こくん)だ・か・ら・そんなおにいちゃんとおねえちゃんにお願いがあるの・・・・・2人だから出来る事・・・・・おにいちゃんとおねえちゃんじゃなきゃ出来ない事・・・・・」       
 ダークライを倒すより、ずっとずっと大事なこと・・・・・                 
 「いっけぇぇぇぇぇええええええええええ!!!!!カイリュー「げきりん」!!」   
 カイリューが、巨大な闇をこれでもかと言わんばかりに打ちのめしてゆく。   
 爪の生えた拳、頭、尻尾、体のせいで小さく見えるが実際は大きい羽根。 
 それら全てを使い、ドラゴンタイプ打撃系最強クラスの技「げきりん」を連続で放つ。   
 まさに「暴れ竜」そのものだ。     
 この技を放っている時は危ないから下がってろ!!と言われて、カイの後ろ20メートルくらい後方で眺めていたタケシが驚愕してしまうほどに。   
 「ジムリーダー・・・・・いや、もしかしたらそれ以上の強さを持っているかも・・・・・」 
 かつてニビジムのジムリーダーをやっていたタケシにはそれが分かった。   
 極限までに鍛えられている・・・・・!!      
 
- スレ2-136
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/22 15:06:47
 
     「へへ!どうだ!?「こだわりはちまき」持ちカイリューの「げきりん」の威力は!?」 
 カイは得意顔になりつつも、指示を怠らない。   
 「疲れ切ってこんらんする前に・・・・・ハピナス「しんぴのまもり」!!」 
 しんぴのまもりは状態以上になるのを防ぐ技、これでカイリューがこんらんする事は無くなる。     
 だが闇も負けてはいない。その巨大な腕を振り回し、カイリューに大ダメージを与える。   
 「まだまだ!!弱ってきたら・・・・・ヨノワール「トリック」!!「こだわりはちまき」と「たべのこし」を入れ替えて・・・・・「はねやすめ」!!ハピナスは「このゆびとまれ」!!」   
 「こだわりはちまき」の効果で1つの技しか出せなくなっているカイリューを、持物を入れ替える技「トリック」で「たべのこし」と入れ替え、それ以外の技が出せるようにした後「はねやすめ」で体力を回復。 
 HPが高いラッキーは、隙を作らないよう「このゆびとまれ」で壁になる。     
 攻撃はあくまでカイリューに任せ、2匹はサポートに徹する。     
 カイの戦法を言葉で表すなら「適材適所」だろう。 
 そのポケモンが、どうゆう風にしたら一番力を発揮できるか、それを知っている。     
 だが何回も繰り返せば、いくらHPを回復した所で、体力に限界がくる。体力が減れば技の威力も下がる。とうぜん回復量も少なくなる。   
 「こっのデカブツ・・・・・どうにも倒れねぇ・・・・・」   
 さっきから何回も「げきりん」かましてるはずなのに・・・・・くそっ!!     
 「カイさん!!!あぶない!!!」       
 タケシの声がいやに遠くに聞こえたと思った時にはカイの体は闇に覆いかぶさられて・・・・・             
 消えていた。        
 
- スレ2-139
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/23 12:17:42
 
     真っ暗だ・・・・・何も見えない・・・・・・・・・・おれ・・・・・死んじまったのか?     
 くそっ!!まだだ・・・・・まだ・・・・・おわるわけ・・・・・には・・・・・・・・・・       
 第37話「最終決戦②」   
 あんこくじま・黒霧の森・中間部       
 「ヒコザル「かえんほうしゃ」!!ナエトル「エナジーボール」!!」 
 「エテボース「スピードスター」!!パチリス「ほうでん」!!」   
 サトシとヒカリは見事なコンビネーションで、今までの数倍は濃くなっている闇を蹴散らしながら必死で奥へと進む。     
 「ブイゼル「アクアジェット」!!」 
 「ミミロル「れいとうビーム」!!」     
 このエリアで一番大きいと思われる闇を氷のアクアジェットで撃退して、サトシとヒカリは更に島の奥深くへと進んでゆく。     
 目指すはあんこくじまの中心部!すべきは・・・・・・・・・・・・・・・                 
 20分前・・・・・まだシヤと一緒にいた時・・・・・     
 「おねがいがあるの・・・・・」   
 シヤはそう言うと、ポケットの中をゴソゴソと探り、ヒカリのペンダントとよく似た羽が描かれた、少し小汚い真ん丸な石を取り出す。   
 「これを・・・・・これを島の中心にある「制御の岩戸」にはめてきて・・・・」 
 「これは・・・・・?」 
 「・・・・・「悪夢の要石」・・・・・ダークライが暴れているのは、この石が原因・・・・・」 
 「この石が?どうゆう事?」     
 「ダークライは『神では無いけど、神の力を手に入れてしまったポケモン』・・・・・悪夢世界・世界の一つを支配できるほどの力を身に宿してしまったポケモン・・・・・ 
 ・・・・・その力をそのまま行使したら体の方が持たないの・・・・・だからこの石を使って力を制御していた・・・・・だけど」         
 ある日突然、石の力が失われてしまった・・・・・      
 
- スレ2-140
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/23 12:19:23
 
     「・・・・・じゃあ私達を攫ったのってもしかして・・・・・」 
 「(こくん)助けてほしかったの・・・・・」       
 でもダークライが人ととれるコミニケーションは・・・・・       
 自分の苦しみを・・・・・悪夢で分かってもらう事だけだった・・・・・       
 「・・・・・そう・・・・・だったのか・・・・・」 
 「・・・・・そう言えば私が見た悪夢、サトシが助けてくれなかったら、私が消えてなくなる夢だったかもしれない・・・・・」     
 自分の存在だけじゃない。   
 旅の思い出も 
 コンテスト・夢を叶えるために頑張った事も 
 ジム戦・大切な人の為に必死に応援した事も   
 今まで築いてきた私の中にある、ありとあらゆる物全てが・・・・・消える。       
 勿論サトシも・・・・・       
 そんな事、想像したくもなかった     
 「少しだけ・・・・・少しだけで良いから・・・・・」       
 「「ダークライのこと・・・・・わかってあげて・・・・・」」       
 え?    
 
- スレ2-141
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/23 12:20:11
 
     なんだかシヤの声に何か別の声が被ったような感じがしたが、すぐに聞こえなくなった。   
 「・・・・・おねがい・・・・・」 
 「・・・・・わかった!」 
 「わたし達にまかせて!!・・・・・ってシヤちゃんはどうするの!?まさか一人で」   
 「だいじょうぶ・・・・・おにいちゃんとおねえちゃんが早くその石をはめれば・・・・・ダークライは暴れるのを止める・・・・・それにこの石は2人じゃないとはめられない・・・・・」       
 この石は世界を象徴した物・・・・・世界は人と人との交わりによって創られている・・・・・1人では・・・・ううん、一人の時点で世界は成り立たない・・・・・だから       
 「この石も、最低2人以上ではめる必要があるの・・・・・それに、それぞれが、お互いの事を大切に心から大切に思えなきゃダメ・・・・・だから・・・・・」       
 わたしはあなたがたをえらんだのです・・・・・         
 「はやく・・・・・もう時間が無いよ・・・・・はい」 
 シヤはヒカリめがけて要石をゆっくりとアンダースローで投げ渡す。     
 「シヤちゃん!気を付けて!!」 
 「無茶したらダメよ!だって・・・・・」         
 シヤちゃんにも大切な人は、いるでしょう?       
 シヤがこくりと頷いたと同時に、サトシとヒカリは島の中心部へと駆けだした・・・・・           
 必至だから気付かなかった・・・・・なんでバリアの様なものがあったのに、石がすり抜けられたのか・・・・・・・・・・・・・・・             
 シヤは・・・・・何を知っている?        
 
- スレ2-146
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/24 16:11:28
 
   だいじょうぶ・・・・・もうだいじょうぶだよ・・・・・     
 だから・・・・いまは、いまはわたしが・・・・・       
 第38話「最終決戦③」       
 くそっ!・・・・・ねみぃ・・・・・   
 眠ってたまるか!!と気合を入れようとしても力が入らない。 
 目を開けるのがやっとだった。     
 どこまでも続いていそうな闇の中でカイは一人、辛うじて意識を保っていた。 
 最早頬を抓る力すら残っていない。       
 いま・・・・・ここで・・・・・ねむったら・・・・・     
 直感で分かる・・・・・今ここで意識を手放したら・・・・・俺は・・・・・俺は・・・・・       
 くっそ・・・・・・・・・・     
 秒増しに増える眠気に耐え切れず、カイはゆっくりと目を閉じた・・・・・・・・・・               
 所変わって『制御の岩戸』その入口       
 「・・・・・ここが」 
 「制御の・・・・・岩戸・・・・・」      
 
- スレ2-147
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/24 16:14:21
 
     やっとの思いで辿り着いたその岩戸の入り口は、思った以上に小さい物だった。   
 見た目は普通の小さな洞窟の入り口だが、何とも言えない威圧感がある。 
 聖域の入り口と同じくらいだろうか?2人横並びになって通るのがやっとと言う感じだ。     
 「ヒカリ・・・・・だいじょーぶか?少し休むか?」   
 ヒカリはダークライに攫われ、悪夢を見せられ、パンドラの箱の中に入っていた。 
 それだけでも精神力、体力、ともに疲れ切っている筈なのに、手強い闇たちとの連戦・・・・・   
 疲れてない訳がないのに・・・・・   
 「ううん、ありがとね!サトシ!!」   
 サトシは私を救ってくれた・・・・・訳の分からない異次元世界に飛び込んで、闇と戦って、悪夢を見ていた私を起こしてくれて   
 勇気をくれて、元気をくれて、光をくれた・・・・・   
 闇と戦って居る時も、私を労わる様に、積極的に前に出て戦ってくれた・・・・・       
 そんなサトシと一緒にいると、体の底から力が湧いてくる!だから・・・・・       
 「だいじょーぶ!!」 
 「・・・・・そっか!!」   
 サトシとヒカリは互いの顔を見て微笑み合う。 
 シヤの言う通り、2人一緒だったら何があっても「だいじょーぶ!!」な感じがした。     
 「よし!!行こうぜ!!」 
 「うん!!」       
 2人が『制御の岩戸』に足を踏み入れたその瞬間、何かすさまじい力に引っ張られて・・・・・       
 岩戸の中へと吸い込まれた。         
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぃ   
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぃ    
 
- スレ2-148
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/24 16:16:21
 
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぃ   
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・い   
 ・・・・・・・・・・?   
 ・・・・・・・・かい・・・・・   
 !!!!????このこえ・・・・・   
 カイ!!         
 ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリィィィィィィィィィィィィィン!!!!!!!!!!!!!!!     
 耳を劈く様な音がカイの脳裏に響く。   
 ハッ!と目を覚まし、ゴソゴソとバッグの中を探ると、シヤ専用の巨大な目覚まし時計がこれでもかと鳴っていた     
 「うるせえよ・・・・・少し休憩してただけだ・・・・・心配すんな・・・・・」     
 だいじょーぶさ・・・・・     
 カイは未だに力が入らない手で、モンスターボールからカイリューを繰り出す。 
 もうカイもカイリューもひんし寸前だが、気合いは十分だった   
 「カイリュー!!最後の力をふりしぼれ!!!「りゅうのまい」!!」 
 カイリューは垂直に急上昇しながら、華麗な「りゅうのまい」を踊る     
 シヤ・・・・・俺は約束、守るぜ・・・・・     
 「ぶっ壊せ!!「ドラゴンダイブ」!!!!!」     
 急降下しながら放ったドラゴンダイブが闇のどこかに当ったその瞬間、カイを包んでいた闇が弾け飛び、かき消える。 
 そして闇に代わり、優しい光がカイを包む     
 「やった・・・・・ぜ・・・・・・シ・・・・・ヤ」     
 心地よい、やわらかな光に包まれて、カイは今度こそ、完全に意識を手放した。           
 誰かを救おうとする・・・・・お前の手伝いをさせてくれ!!    
 
- スレ2-158
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/29 12:16:46
 
   不思議な空間・・・・・   
 暗い色をベースにした様々な色が、歪んだ雲の様に浮かんでいる。   
 足元を見ると、その不思議な空間に浮かんでいる、幾つもの大きな石板の様な物の中の1枚に、自分達が立っている事が分り、2人は体をすくませる。   
 「うわっ!!と、と・・・・・な、なんだ、ここ・・・・・」 
 「『制御の岩戸』・・・・・の中なのかな?・・・・・」   
 辺りは自分達と、浮いている石板・・・・・石板と言うよりはボロボロになった四角い岩が大量にあるだけ。     
 あの時、確かに自分達が『制御の岩戸』の中に吸い込まれた事を思い出す。     
 間違いなくここは『制御の岩戸』の中・・・・・そして・・・・・・・・・・       
 第39話「最終決戦『悪夢の果てに』」         
 「あ!?サトシッ!!あれ!!」 
 「え!?・・・・・ああ!!」   
 ヒカリが指さした方向・・・・・自分達の遥か上空にそれはあった。   
 光輝いているそれは、一番大きな石板の上で、これでもかと言わんばかりの光を放っている。     
 直感で分かった、あれが・・・・・   
 「あそこだ!間違いない!!」 
 「うん!あれが・・・・・」   
 制御の岩戸の中枢・・・・・最終目的地!!   
 「行こう!ヒカリ!!」 
 この悪夢から覚めるために!!   
 「でも・・・・・どうやって?」 
 「どうやってって・・・・・う、う~ん・・・・・」   
 そう、周りは自分たち以外だーれもいない。 
 何も無きに等しい、と言っていい。       
 ムクバードは風が無くても飛ぶことは出来るけど、人を乗せて飛ぶ事は出来ない。   
 グライガーは人を乗せて飛ぶ事は出来るけど、あくまで滑空するだけ・・・・・上昇気流でも無い限り、上に向かって飛ぶことは出来ないし、大体2人も運べない。     
 だいいちここに来るまでに闇との連戦で全員疲れ切っている。100戦練磨のサトシのピカチュウもサトシの肩で脱力している。    
 
- スレ2-159
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/29 12:18:44
 
     「う~んと・・・・・お!?」 
 「ピカ?」   
 サトシの目に映ったのは、自分達が立っている石板のすぐ近くにある、別の石板。 
 しかも、今自分達が立っている場所よりも少しばかり上にある。ジャンプすれば届きそうだ。   
 「ヒカリ!こっちだ!!」 
 サトシは少しばかり助走を付けると、一気に目標の石板へと大きくジャンプする。   
 「サトシ!!」 
 「おわっ!とっ!とっ!とっ!!」   
 若干頼りないものの、見事に別の石板へと着地する。 
 伊達に幾つもの修羅場をくぐり抜けて来た訳では無い。   
 「へへ♪だいじょーぶ!ヒカリ!!来いよ!!」 
 「う、うん!!」     
 せーー・・・・・の!!     
 タンッ!!・・・・・と、とととととと!!   
 「きゃっ!!」 
 「ヒカリ!!」   
 ギリギリ辿り着いたは良い物の、バランスを崩し、後ろに転倒しそうになったヒカリの手をしっかりと握る。     
 ギュッ!!   
 ・・・・・離さない・・・・・絶対に離さない!!   
 あの時・・・・・おれが手を離さなかったら・・・・・ヒカリは・・・・・       
 ヒカリは悪夢を見ずに済んだんだ・・・・・・・・・・       
 ヒカリが見た悪夢は・・・・・消える事への恐怖。   
 おれやみんなが消えて・・・・・最後にはヒカリも消える・・・・・・・・・・そんな、そんな事・・・・・         
 夢の中だけで十分だ!!!!!         
 「うおおおおぉぉ!!!!」      
 
- スレ2-160
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/29 12:20:12
 
     サトシの腕に一層力がこもる。ヒカリを思う気持ちが力を形作っているかのようだった。   
 グイッ!!!!   
 強い力でヒカリがサトシの胸元に引き寄せられる。     
 ポスッ!!・・・・・ギューーーーーッ     
 ヒカリがサトシの胸元に収まるや否や、サトシは腕に力を込めヒカリを強く抱きしめる。     
 「さ、サトシ/////・・・・・あ、あの・・・・・」 
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だいじょーぶだから・・・・・」 
 「え?」   
 「もう絶対悪夢なんて見させない・・・・・見たとしてもおれが助ける」       
 だから・・・・・さ     
 「もうちょっとだから、がんばろうぜ!な?」   
 サトシはヒカリを離すと、安心させるように微笑む。       
 どれだけ不安だったのだろう・・・・・悪夢を見た後、もう一度悪夢を見るかもしれない世界に飛び込む事は・・・・・どれだけ勇気が必要なんだろう・・・・・     
 未だにヒカリの中にある不安や恐怖。おれがそれを消し去ってやる!!・・・・・ってそんな事無理かもしれないけど、なんの力もないけれど、それでもおれは         
 ヒカリの力になりたいんだ         
 「あ、りが・・・・・とう・・・・・ありがとうサトシ・・・・・わたし・・・・・がんばる」   
 ヒカリはボロボロと涙を零しながら何度も頷く。   
 サトシにそんな事を言ってもらえるのが堪らなく嬉しかった。 
 わたしと言う存在がここにいるんだって実感できた・・・・・   
 なにより・・・・・なによりわたしは・・・・・・・・・・・・・・・      
 
- スレ2-161
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/29 12:21:52
 
     「さあ、あと少しだ!頑張ろうぜ!!」 
 「うん!!」     
 ヒカリはゴシゴシと目元を拭うと、再び別の石板めがけて飛び移ったサトシの後を追った。         
 じゃんびしなくちゃ・・・・・あくむをおわらせるためのじゅんびを・・・・・           
 「よっと!!・・・・・・・・・・ヒカリ!!」 
 「うん!・・・・・せーのっ!!」   
 タンッ!!と勢いよく、ヒカリがサトシめがけてジャンプする。   
 サトシがヒカリをしっかりと受け止めるのは、最早暗黙の了解になっていた。 
 息もタイミングもピッタリだ。       
 とは言え、サトシに抱き締められるとドキドキするような、温かい気持ちになるような感覚は健在だ。何回受け止められても変わらない。     
 天気の良い日に干したばかりの布団にボスッ!っと勢いよく飛びこむような・・・・・       
 「ピーピーカ?ピカチュウ?」 
 「どうしたんだよヒカリ?ボーっとして?」 
 「え!?あ、ううん!!なんでもないなんでもない!だいじょーぶ!!」 
 「・・・・・無理すんなよ?ってももうジャンプする必要は無いみたいだな」     
 『制御の岩戸』に入ってからここまで、石板から石板を飛び渡り、ようやく光輝く場所まであと一歩と言うところまで来ていた。   
 だがここからは段と段の間に結構な差があるとは言え、階段状になっていた。     
 ・・・・・・・・・・なぜだか、少しばかりガッカリした様な感覚を覚え、ヒカリは慌てる。   
 な、なんでガッカリしてるんだろう私・・・・・     
 「ほら!行こうぜヒカリ!!」 
 「え?う、うん!!」      
 
- スレ2-162
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/29 12:24:11
 
   あのひとたち・・・・・きてくれるかなあ?・・・・・だいじょーぶ・・・・・きっときてくれる・・・・・         
 「これが・・・・・」 
 「シヤちゃんの言ってた「制御装置」・・・・・なのか?」   
 ただ訳の分からない文字が浮かんでいるそれは、今まで自分達が渡り跳んできた石板とは違い。 
 薄っぺらく、三角を2つ、上向きと下向きにした物を合わせた様な石板が空中に浮いていた。     
 その中心にはコンパスで描いたような綺麗な穴が開いていて、その穴の中に浮いていたのは『ひび割れた悪夢の要石』その物だった。     
 「サトシ!!あの石、私たちが持っている要石とそっくりよ!?」 
 「あれがひび割れたから、夢世界はおかしくなったのか?」   
 サトシは要石に触ろうとするとするが、バシュン!!と言う音と共に、遠くへ吹き飛ばされてしまう。   
 「うわああぁぁ!!」 
 「サトシ!!」 
 「ピカピー!!」   
 辛うじて自分達が乗っている石板の端に片手で?まる。 
 正直右手が悲鳴を上げていたが、ここで手を離したら悲鳴を上げるどころでは済まない。   
 「サトシ!捕まって!!」     
 客観的に見れば無謀だ。   
 以前にもヒカリがサトシを助けようとして、落ちるサトシに手を差し伸べた事がある。 
 その時はサトシの左足に足場があったにも拘らず、2人一緒に高い塔の途中から落ちてしまった。(ブイゼルのおかげで助かった)     
 その時よりも状態が悪い今、ヒカリがサトシを持ち上げるのは不可能に近い・・・・・       
 グィィイイイイ!!!       
 物凄い力で、サトシの体が石板の上へと引き戻される。 
 どう見ても普段のヒカリからは想像出来ない力だ。   
 「サンキュ!!ヒカリ!!」 
 「どういたしまして!」       
 サトシがいれば、私は何時だって「だいじょーぶ!!」なんだから!!byH         
 あともう1ふんばり・・・・・・・・・・・・・・がんばろう・・・・・・・・・・    
 
- スレ2-163
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/29 12:25:15
 
     「あのひび割れた要石を取り換えてっ、て事なら・・・・・」 
 「ああ!壊すしかないな!!・・・よぉおーし!!みんな出て来い!!」     
 サトシとヒカリはモンスターボールで休ませておいた自分達の頼れる仲間全員を繰り出す。       
 「ウリムー「こなゆき」!!」 
 「ムクバード「かぜおこし」!!」     
 頑張る理由がある     
 「ブイゼル「アクアジェット」!!」 
 「ミミロル「れいとうビーム」!!」     
 帰りたい世界がある     
 「グライオン「シザークロス」!!」 
 「エテボース「ダブルアタック」!!」     
 その世界で叶えたい夢がある     
 「ヒコザル「かえんほうしゃ」!!ナエトル「エナジーボール」!!」 
 「ポッチャマ「バブルこうせん」!!」     
 守りたい約束が、大切な人がいる     
 「ピカチュウ!最大パワーで「10まんボルト」!!!」 
 「パチリス!最大パワーで「ほうでん」!!!」       
 だから負けない・・・・・だから消えない・・・・・         
 「「いっけぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」」        
 
- スレ2-164
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/29 12:27:09
 
     ガラスの様なそうでないような破裂音をたて、ひび割れていた要石が完全に砕け散る。 
 要石が無くなった影響か、自分達がいるこの世界が大きく歪む。世界が爆発する寸前だ。     
 もう時間が無い。     
 「ヒカリ!!」 
 「うん!」   
 ヒカリが急いで要石を石板の穴に埋め込もうとするが、途中でつっかえてはまらない。ギリギリのところではまらない。       
 うそ・・・・・なんで!?     
 力一杯押し込もうとするが、不思議な力に押し戻される様で、どうしてもはまらない。       
 そんな・・・・・どうしよう、このままじゃ・・・・・       
 シンオウ地方が・・・・・そこにいるみんなが・・・・・       
 サトシが消えちゃう・・・・・あの悪夢みたいに・・・・・いや、そんなの、そんなのっ   
 目頭が熱くなって涙が零れそうになった時           
 フワッ・・・・・     
 そよ風のように優しく、自分の手に添えられた、柔らかく、暖かく、だけどしっかり頼もしい手・・・・・     
 「サトシ・・・・・?」 
 「おれとヒカリ、2人一緒なら・・・・・・・・・・?」           
 この石は2人一緒じゃなきゃはめられないの・・・・・・・・・・      
 
- スレ2-165
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/29 12:30:17
 
   そうだ・・・・・そうだった・・・・・     
 ヒカリは「サトシと一緒に」再び力を込める。     
 なにも今だけじゃ無いじゃない・・・・・     
 ググッ・・・・・     
 おれとヒカリ、2人なら・・・・・     
 グググッ・・・・・!     
 ((2人一緒なら・・・・・・・・・・))   
 グググググッ!!       
 「「だいじょーーーーーぶ!!!!!」」       
 ガチン!!!!!         
 穴に要石が嵌った瞬間、聞こえて来たのは懐かしいメロディ・・・・・そして初めて聞いた時は付いてなかった歌・・・・・   
 優しく、美しく、聞惚れてしまうほどの歌声・・・・・世界の全てを慈しむかのようなその歌声と共に       
 世界が、光に呑まれて消えてゆく・・・・・       
 全てを飲み込む光の中、見えたのは見覚えのある3匹の、神と呼ばれしポケモン達・・・・・それとその3匹を率いるかのように中心に見覚えのないポケモンがもう一匹・・・・・その4匹が見つめているのは・・・・・・・         
 間違いなく、シヤとクレセリアだった。           
 世界が消えてゆく中、サトシとヒカリはお互いの手をしっかりと握り合って・・・・・     
 消えていった。    
 
- スレ2-168
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/31 18:55:40
 
   ありがとう・・・・・もうだいじょうぶです・・・・・     
 あなた方のおかげで・・・・・様々なものを救う事が出来ました・・・・・     
 本当にありがとう・・・・・・・・・・さあ・・・・・         
 ・・・・・めざめなさい・・・・・       
 第40話「エピローグ『夢の終わりに』」             
 自分の脳裏に不思議な声が聞こえて、ヒカリは重い瞼をパチパチと動かす。     
 ここは・・・・・どこだろ?・・・・・   
 頭がボーっとしていて、うまく思考が出来ない。 
 体から伝わってくる感覚から、自分が寝ていると言う事は分かるが、何故こんな所にいるのかも、うまく思い出せない・・・・・       
 風が気持ち良い・・・・・寝心地も良いし、風が立てる木々の音も心地よく、再び目を閉じてしまう。     
 良い気持ち・・・・・このままボーっとしてるのも良いな・・・・・風も気持ち良いし、ポカポカして暖かいし、抱き枕もある事だし・・・・・・・・・・・・・・・         
 だきまくら?        
 
- スレ2-169
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/31 18:56:35
 
     抱き枕にしては心地よすぎる暖かさと、何故だか抱き枕の方から抱きしめられている様な感覚を覚え、ヒカリは今度こそパッチリと目を開ける。       
 ・・・・・・なんだ、サトシか・・・・・気持ち良さそうに寝てるし、私ももう一眠り・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・         
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・サトシ?                 
 「!?●×▲□★◇~=%$#“&+*>¥@;:。・、//////////~~~~~~~~~~~~」     
 ヒカリは悲鳴を上げ、サトシを跳ねのけて飛び起きる (喜鳴の間違いじゃなくて?)。 
 その大声を至近距離で聞いたサトシが起きないはずが無い。   
 「な、何だよヒカリ~・・・・・折角良い気持ちで寝てたのにさ~」   
 続いてサトシもダルそうに体を起こす。 
 余程良い気分だったのか、まだ眠たそうな眼でジ~ッ、と恨めしそうにヒカリを見つめている。     
 一方のヒカリはそれどころでは無い。   
 先程まで自分を覆っていた睡魔は何所へやら、何故かは分からないけど心臓がバクバクいって、思考回路がこんがらがって、もう何が何だか分からない。   
 完全なパニック状態だ。      
 
- スレ2-170
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/31 19:06:35
 
     「な、な、なな、なんでサトシが私の隣で寝てるのよ!!」 
 「え?・・・・・あれ?何でだろ?おれ確かにピカチュウを抱いたまま寝た筈なのに・・・・・」     
 要はサトシの寝相が悪かったんだか、寝惚けてたんだかは分からないが、どうやらヒカリをピカチュウと勘違いして抱きしめていたらしい。本物のピカチュウは、未だ他のポケモン達と一緒に、スヤスヤと眠っている。     
 「そっか~、どうりで『頭撫でても頬擦りしても』変な感じがすると思ったぜ、夢だったのか~」   
 サトシの発言に、ヒカリは顔を赤くして絶句する。 
 口は言葉を発したいのに発せず、金魚のようにパクパクと動いていた。     
 『頭撫でたり頬擦りしたり』って・・・・・/////       
 「ヒカリ?お~い」   
 サトシはヒカリの目の前でヒラヒラと手を振るが、何の返事もない。 
 少しも変化が無いヒカリに、サトシは少しばかり心配になる。   
 「おいヒカリ!だいj」       
 ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリン!!!!!       
 辺り一面に、先程のヒカリの悲鳴とは比べ物にならない位やかましい音が響き渡り、今度はサトシも絶句する。 
 ヒカリもこの音には気づいたのか、両手で目一杯に耳を押さえている。   
 必死に耳を押さえても喧しく聞こえてくるこの音・・・・・       
 『初めて聞く音』なのになんだろう・・・・・何所かで聞いたことある様な・・・・・・・・・・     
 デジャヴに近い物を感じ、サトシは困惑する。 
 こんな『バクオングのハイパーボイス』並の音なんて聞いたこと有る筈が無いのに・・・・・       
 バシッ!!   
 と言う音と共に喧しかった音は消える。        
 
- スレ2-171
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/31 19:09:29
 
     「・・・・・おはよう・・・・・」 
 「おうシヤ!起きたか。いや~な、シヤはマジで寝ると地震があろうが火事があろうが起きなくてさ~これ位大きな音が出る目覚まし時計じゃ無いと起きないんだよな~」   
 あはは~、と高らかに笑っていたのは・・・・・カイだった。 
 その横にはシヤがチョコンと座っている。     
 「!!??カイさん!!シヤちゃん!!」 
 「大丈夫だったんですか!?」 
 「ちょ、なんだよお前ら・・・・・大丈夫って・・・・・何の事だよ?」     
 え?     
 「何の事って・・・・・・!」 
 「『あれ』ですよ!!『あれ』!!!」       
 『あれ?』       
 「・・・・・『あれ』って・・・・・」 
 「・・・・・何の事・・・・・・でしたっけ?」   
 首を傾げる2人を、カイは呆れた顔で見つめる。   
 「なんだ、なんだあ、2人揃って怖い夢でもみたのか?」     
 夢?     
 そんなはず無かった、だって・・・・・だって『あれ』は・・・・・『あれ』は・・・・・ 
 あれ?何だったっけ?     
 何だか考えれば、考えるほど『あれ』の事が思い出せなく・・・・・いや、分らなくなってくる・・・・・・・・・・       
 だけど、確かにここにある感覚。   
 もう「だいじょーぶ」だという感覚・・・・・ 
 何故だか分からないけど、そう思える。      
 
- スレ2-172
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/31 19:10:48
 
     「・・・・・まあ・・・・・みんないるし・・・・・」 
 「うん、だいじょーぶ!!」   
 サトシとヒカリは、お互いの顔を見て微笑み合う。 
 何故だか分からないけれど、嬉しさや喜びといった物が体の奥底から出てきて、どうしても笑顔になってしまう。         
 うれしい・・・・・自分が、そしてサトシがここにいる。 
 夢だとか、幻だとか、そんなのが有っても無くても、ちゃ~んと分かる。   
 何故だかは、良く分かんないけど・・・・・それでも今、自分達はここにいる。   
 自分が、サトシがここにいる事が、こんなにも嬉しい・・・・・     
 この幸せが、夢だったら・・・・・そう思って、怖くなった・・・・・・・     
 でも、もうだいじょーぶ・・・・・・・・・・     
 これは夢でも幻でもないって、ちゃ~んと分かる・・・・・だって・・・・・           
 だってサトシがいるんだもん!!     
 「・・・・・すごくなかよしだね・・・・・おにいちゃんとおねえちゃん」     
 シヤの言葉で2人はやっと我に帰る。 
 シヤはサトシとヒカリに負けない位の頬笑みで、2人を見つめていた。   
 「ああ、何だか微笑ましいな・・・・・ところでさ・・・・・」       
 あいつほっといていいのか?       
 「「あ」」     
 そう、シヤの特大目覚ましで気絶していた某T氏の事を、2人はすっかり忘れていたのだった。        
 
- スレ2-173
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/31 19:12:36
 
     「そっか・・・・・おれ達、カイさんの話の途中で寝ちゃったのか・・・・・」 
 「ごめんなさい、その・・・・・なんだか急に眠くなっちゃって・・・・・」 
 「う~~ん、おかしいなあ・・・・・全然、寝たって感覚、無いんだけどなあ・・・・・」   
 復活したタケシを加え、3人は揃って首を傾げる。     
 もしかして『あれ』が関係しているのかもしれないが、証拠も無いし、第一感覚以外、全くと言っていいほど何の事だか分からなくなっていた。     
 「まあ『聖域』は凄く気分が良い場所だからな、眠たくもなるさ。シヤなんて必ず寝るもんな」 
 「(こくこく)」       
 何事も無かったかのように流れる時間・・・・・       
 「さてと・・・・・そろそろ行くか!」 
 「え?いくって・・・・・」     
 その時間が、何時までも幸せで満ちているとは限らないけど・・・・・     
 「おまつり・・・・・いかないの?」 
 「え・・・・・ああ!!すっかり忘れてた!」     
 でも・・・・・     
 「ヒカリ、ほら!早く行こうぜ!!」   
 サトシはヒカリ前に立ち、導く様に手を差し出す。     
 「うん!!」       
 君と一緒なら、君がいるこの世界なら、どんな事があっても、だいじょうぶ・・・・・そう思えるから・・・・・      
 
- スレ2-174
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/31 19:22:36
 
     祭りが終わり、夜が明けて・・・・・     
 ゆりかご島・船着き場・時刻、昼前       
 「帰りもおれの船に乗ってけばいいのに、そりゃ5人も乗れば流石に狭いけどさ・・・・・」 
 「(こくこく)」   
 カイとシヤが名残惜しそうに3人を見る。 
 交流時間は1日にも及ばないが、カイとシヤとは凄く仲良くなっていた。     
 なぜだか、かなり長い時間を一緒に過ごした様な気がする・・・・・     
 「そうもいきませんよ、本々この島には、あの船で来る予定だったんですし、カイさんも、お祭りの事後処理で忙しそうですし・・・・・」   
 タケシが昨晩話し合って決めた事をカイに言う。 
 守人として忙しいカイに、自分達の都合だけで船を出してもらう訳にはいかなかった。   
 「・・・・・そっか、分った」 
 カイが再び名残惜しそうに言う。   
 それと同時に、出港3分前の合図の船の汽笛があたりに響く。 
 この島に別れを告げる時が来たようだ。     
 「お!もうすぐ出航時間だな・・・・・それじゃあ、おれ達行きます」 
 「元気でね、シヤちゃん」 
 「カイさん、色々、ありがとうございました!!」 
 「いいって、いいって!!当然の事をしただけさ!それより、また来いよ!何時でも歓迎するぜ!!・・・・・おれがこの島を出てってなきゃな♪」 
 「はい!それじゃあ!!」     
 さような・・・・・         
 ググイイッッ!!     
 「うわ!!」 
 「きゃ!!」   
 急に服の裾が引っ張られた事に2人は少々驚くが、もう慣れた物で、動じる事は無かった。     
 「シヤちゃん?」 
 「どうしたの?」   
 サトシとヒカリの予想どうり、シヤが意味有り気な眼で2人を見つめている。      
 
- スレ2-175
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/31 19:23:45
 
     「おにいちゃん・・・・・おねえちゃん・・・・・ずっとずっ~~~~~となかよくね・・・・・」 
 「もちろんさ!な、ヒカリ!!」 
 「うん!だいじょーぶ!!」   
 サトシとヒカリがニコッと笑うと、シヤもまたニッコリ笑う。       
 「よかった・・・・・・・・・・」               
 体に優しい海風が当たる・・・・・   
 ドゥムタウンに行く時に通った道を、サトシ達は歩いていた。   
 1日も経ってないのに、ここを歩くのは久しぶりな気がする・・・・・ 
 船に乗ってから、カイとシヤが見えなくなるまで振り続けていたせいか、手が痛い。     
 「さてと、次の目的地は『ミオシティ』だな」   
 タケシは地図を開き、次の街までのルートを確認している。   
 「サトシ!ジム戦頑張ってね!!」 
 「ああ!よーし!!絶対6つ目のバッジをゲットしてやるぜ!!」 
 「ピカチュウ!!・・・?ピカピーカ?」   
 サトシの肩に乗っているピカチュウが、ヒカリの胸元に、キラリと光る何かを見つける。   
 「ん?あれ、ヒカリ。そのペンダント、どうしたんだ?」 
 「え?ああ、これ?サトシが射的で取ってくれたの!!『みかづきのペンダント』って言うお守りなんだって!!」   
 ヒカリは嬉しそうにタケシにペンダントの説明をする。     
 「へー・・・・・やるじゃないか!サトシ!!」 
 「え!?あ、うん・・・・・」   
 おかしい・・・・・なんだか記憶があいまいだった・・・・・取った様な気もするし、取って無い様な気もする・・・・・      
 
- スレ2-176
 
- ポケットモンスターDP【慈しみの聖女クレセリア】
 - 08/07/31 19:48:28
 
     えっと確か昨日のお祭りで、たこ焼き食べて、綿菓子食べて、三日月焼き(ゆりかご島名物!!満月焼きも一緒にどうぞ!!)と、グレッグル焼き食べて(売ってたのか;) 
 ポケモンヨーヨーすくいと、福引やって・・・・・     
 あれ?射的なんて・・・・・やった様なやって無い様な・・・・・う~ん・・・・・     
 「サトシ?どうしたの?だいじょう・・・きゃっ!!」 
 「ヒカリ!!」   
 サトシの方を向いて・・・・・つまり後ろ歩きで話していたため躓き、後ろにのぞけったヒカリを転倒させないように、手をしっかりと握る。       
 ほら、だいじょーぶでしょ?       
 なにか声が聞こえた様な気がして、サトシとヒカリはゆりかご島の方向をジッと見つめる。 
 何だか元気が湧いてくるような・・・・・そんな声     
 「おーい、2人共だいじょぶか?」       
 そう、貴方達2人なら・・・・・ 
 どんな時でも、何が起こっても、何度悪夢を見ても           
 「「だいじょーぶ!!!!」」       
 そう、きっとだいじょうぶ・・・・・       
 3人の旅路を明るく照らす太陽は、まだ昇り始めたばかりだ・・・・・・・・・・         
 ポケットモンスターDP『慈しみの聖女「クレセリア」』   
 本文・完        
 
- スレ2-179
 
- おまけ①
 - 08/08/01 23:02:31
 
   ポケットモンスターDP『慈しみの聖女「クレセリア」』   
 『おまけ』   
 「慈しみの聖女の独り言日記」       
 ○月○日・天気「嵐」     
 それはもうビックリしました・・・・・もうかれこれ何百年と色んな所を見て回ってきましたが、ここまでビックリしたのは初めてです。           
 その日は、凄い嵐でしたが、私はいつも通り散歩に出かけました。 
 こんな愚昧なる身ですが、これでも『伝説のポケモン』   
 シンオウを創りし神々より貰い受けた力がありますので、私のいる場所から一定範囲以内は嵐でも鎮める事は出来ます。   
 これも、何時如何なる時でも、苦しむ者に慈しみの力を注ぐ為の私の能力です。       
 その散歩の途中、1つの船が転覆し、ゆっくりと海の底へ沈んでゆくのを見ました。     
 ・・・・・・・・・・念波で探ってみると、命の灯が消えた人が2人・・・・・   
 男女の夫婦でしょう。微かに残った思い出から、その人達の子供が私を祀っている島の「守人」だと言う事が分りました。     
 亡くなった魂を慈しむのも私の役目・・・・・どうか心安らかに・・・・・     
 私は夫婦の魂を光に包み、しっかりと冥界へ送り届けた後、散歩を再開しました・・・・・     
 暫く歩いて・・・・・いえ『歩いて』と言う言い方はおかしいですね・・・・・『飛んで』でしょうか?そもそも散『歩』ではありませんね・・・・・?       
 『散飛?』       
 ・・・・・はっ!!すみません、余計な事を考えてしまいました。 
 私がまだ『聖女』と呼ばれている時から、ボーッとしている。とよく言われましたが、別に何も考えずボーっ、としている訳では無いんですよ?   
 ただ、話の話題の途中で全く別の事を考えてしまうもので・・・・・・・・・・急に話を振られて、トンチンカンな返答をしてしまう事もあるんです。   
 ああ、恥ずかしい/////   
 なおしたい癖なんですが・・・・・      
 
- スレ2-180
 
- おまけ①
 - 08/08/01 23:04:09
 
     話を戻しましょう。   
 暫く飛んでいると、なんだか妙な波長を感じ取ったんです。     
 なんでしょうこの感覚・・・・・ずっとずっと前から知っている様な・・・・・     
 私は導かれるように、波長が強まってゆく方向へと飛んでゆきました。         
 おんなのこ・・・・・でしょうか?   
 そう、そこにいたのは、光の粒子で出来た船に乗った、小さな人間の女の子でした。 
 寝ているのでしょうか、それとも気絶しているのでしょうか、眼を閉じ、横たわっています。       
 突然おんなのこの持っていた物がキラリと光り、私の目に入りました。         
 ・・・・・・・・・・見間違うはずがありませんでした・・・・・そして、思い出しました・・・・・・・・・・         
 あれは、当時私がしていた「みかづきのあかし」 
 そしてこの子から発せられている波長、それは『聖女だった頃の私と同じ波長』だったのです。             
 ○月△日・天気「晴れ」         
 昨日の嵐はどこへやら。   
 今日は晴天です。島から三日月が綺麗に見えます。      
 
- スレ2-181
 
- おまけ①
 - 08/08/01 23:26:25
 
     私の背中の上では、おんなのこがスヤスヤと寝息を立てています。       
 ・・・・・あの後、おんなのこを三日月島へと連れ帰った私は、すぐに夢幻回廊を通って『シンオウの創造神』様の元へと行きました。   
 聞きたい事があったからです。       
 なぜあのおんなのこは『当時の私と同じ波長を放っているのか』・・・・・私の創造主である創造神様なら知っていると思ったからです。       
 創造神様は、私の問いを待っていたかの様に、ゆっくりと話し始めました。       
 私が今の姿になった時、『感情』『意志』『知識』と言った、私を組み立てている、ありとあらゆる物が、光の粒子に・・・・・ナノ単位に分離されました。   
 そして、それを再び組み立て直し、出来上がったのが今の私なのです。       
 ここまでは分かっていました。問題はその次です。           
 私を組み立てていた物は、姿を変え、一つ残らず再び私となった筈でした。 
 ですが、今の私が出来た、その反動により『光の粒子のコピー』が出来てしまったらしいのです。     
 そして何千年もシンオウ地方をさまよっていたらしいのですが、つい先ほど起こった『時間神様と空間神様と反転神様の戦い』により、シンオウの一部が歪み、その力が溢れ出してしまい、光の粒子に当てられ一つの、新たな命を創ってしまったらしいのです。      
 
- スレ2-182
 
- おまけ①
 - 08/08/01 23:27:39
 
     ビックリしました・・・・・まさか・・・・・・・・・・             
 まさか『時間神様と空間神様と異空神様』がまた『喧嘩』をされていたなんて!!!!   
 そっちじゃないでしょ!!ですか?いえいえ、私にはそっちの方がびっくりなんです。   
 あの方達の三つ巴の戦いは凄まじいなんて物じゃありません。 
 それこそ現実世界で争われたら、シンオウ地方が消えてしまうでしょう。     
 私も何度もその喧嘩の仲裁役をさせて頂いたから良く分かります。   
 『怒神鎮歌』   
 その名の通り、怒れる神を鎮める歌です。私はこれを歌い、お三方の怒りを鎮めさせて頂いております。     
 ・・・・・そう言えば、確かガウディイと言う方がこれを元に『オラシオン』と言う素敵な曲をお作りになられました。   
 私も一回聴きに行った事がありますが、あれは凄いですね!!歌が入っていないのが残念ですが、とても素晴らしい曲でした。     
 え?どうやって時空の塔を鳴らしたの?ですか?       
 ・・・・・その・・・・・お恥ずかしい話なのですが・・・・・・・・・・その・・・・・わ、私にも子供の様な好奇心や悪戯心はあるわけでして・・・・・・・・・・・・・・・           
 夜中にコッソリ忍び込んで音盤を借りて・・・・・時空の塔を鳴らしました・・・・・     
 暫く聞惚れていましたが、ふと気が付くと街の方が豪く大騒ぎになってまして・・・・・・・・・・・     
 それはそうですね、こんな時間にあんな大きな曲が奏でられたと言う事もありますが、何よりもあの『仕掛け』です。私も本当にビックリしました。     
 『塔から巨大な光の翼が生える』だなんてそんな事聞いてませんもの。     
 その翼は私の光のベールと同じ、怒りを鎮める光を放つようです。   
 ・・・・・ガウディさんはいったい何者なんでしょうか。こんな物、それこそ神でなければ作れないと思うのですが・・・・・・・・・・      
 
- スレ2-183
 
- おまけ①
 - 08/08/01 23:29:47
 
     その後ですか?もう必死になってその場から立ち去りました。 
 あんなに冷や汗をかいたのは初めてです。       
 後日『幻夢の悪魔』・・・・・ダークライに協力してもらい、関わった人達全ての記憶を変化させて頂きました。     
 ダークライには散々呆れられましたが、それでも協力してくれました。 
 本当に感謝しています!!それともう二度とあんな事は致しません!!・・・・・多分         
 あ!また話がそれてしまいました・・・・・私って話下手なんでしょうか・・・・・       
 今回は創造神様が直々に止めに行ったらしいです。   
 ますます世界が崩壊する様に思えますが、流石は創造神様。お三方に見事、制裁を下してきたそうです。   
 今頃お三方は、それぞれの世界で謹慎処分を受けているのでしょう。       
 話が終わった後、創造神様は私にこう言いました。       
 『お前達は親子では無い、姉妹では無い、双子でも無い、新たな絆で結ばれた存在なのだ』と。     
 まあ私のゲノムコピーが元となって、神の力で創られた命ですからね。どれとも違うのでしょう。           
 ですがこうなった以上、この子の育て親を見つけるまで、私が面倒を見る事にしました。       
 やはり,人の中で育ってほしいですものね。      
 
- スレ2-184
 
- おまけ①
 - 08/08/01 23:33:16
 
     ○月☆日・天気「晴天」       
 「女の子が島に来てから2日目」     
 今日は女の子に色々な話を聞かせてあげました。   
 例えば、人々の間に伝わっているシンオウ神話と、その裏話や、私が見て来た喜劇。 
 後は、慈しみと、私の存在について。       
 あまり喋りませんが、私の話を興味深く、目をキラキラさせて聞いてくれるその女の子のかわいい事!!     
 こんな愚昧なる私が元になったとはとても思えません!!ああかわいい!!         
 え?いつまでも「おんなのこ」呼びしてないで名前を付けろ、ですか?     
 ・・・・・私もそう思ってはいるのですが・・・・・その・・・・・       
 実は昨晩、ダークライの元へ行き、ある相談をしました。 
 その相談と言うのが『おんなの子の名前』なのですが・・・・・       
 ダークライ曰く、私は「ねーみんぐせんす」と言う物が『最高に悪い』らしく、暫く名前を付けるな!と言われてしまったのです。       
 なまえ候補は幾つも有りました。   
 例えば、美しい女性の事を「たかねのはな」と言う事から取って『貴乃花』とか 
 可愛いポケモン代表の、ピチュー、ピィ、ピンプクから1文字ずつ取って『ピピピ』とか 
 どんな時でも、絶対に諦めない粘り強さを持ってほしいという願いを込め、オクタンから取って『オタク』とか・・・・・何がいけないんでしょうか?       
 でも名前は大切な物ですから、いつかは付けてあげたいなと思います。      
 
- スレ2-185
 
- おまけ①
 - 08/08/01 23:34:42
 
     ○月×日・天気「雨」         
 今日は、悲しい事がありました。     
 おんなの子の具合が急に悪くなってしまったのです。 
 いや、悪いと言うほどの物では無いのですが・・・・・何と言うのでしょうか、調子が悪い?     
 しかし私の慈しみの力を持ってしても、おんなの子の調子は一向に良くなりませんでした。     
 これはおかしいと、すぐさま創造神様の元へ相談に行くと・・・・・         
 『明日にでも人間達の手に渡らせた方が良い』       
 そう、返答されました。       
 どうやら私たちの出す波長のエネルギーが共鳴して、互いに影響を与えるのだそうです。 
 それは、良い物でもあり、悪い物でもあります。   
 共鳴率が強くなればなるほど、互いのありとあらゆる能力が劇的に飛躍します。 
 ポケモン、つまり私だったら、戦闘能力が上がったり、人、つまりおんなの子だったら、ポケモンバトルの腕が上がったり、扱っているポケモンが一時的に強くなったり・・・・・     
 その代り、互いに負担を与えるのだそうです。     
 私はまだ全然大丈夫ですが、このままではいずれ、おんなの子の方の力が負け、再び光の粒子になってしまうでしょう・・・・・         
 そんな事は絶対にさせません。     
 偶然とは言え、今、ここにある命。     
 夢では無く、幻でも無く、ちゃ~んとここにある1つの命・・・・・無駄にしたくはありません。       
 私は明日の夜、彼女を人の手に渡らせることを決意しました。      
 
- スレ2-186
 
- おまけ①
 - 08/08/01 23:37:12
 
     ○月?日・天気『月夜』       
 三日月が一段と輝く夜。   
 私は、眠りについたおんなの子を背中に乗せ、三日月島を飛び立ちました。     
 本当に綺麗に三日月が見えました。 
 私とおんなの子を優しく照らします。     
 私は『みかづきのけしん』なんて呼ばれていますが実際はそうではありません。   
 創造神様が私を見て『月の光の様にやわらかで、やさしい』とイメージされて出来た体なので、実際はみかづきのけしんと言う訳では無いのです。     
 それにしても、創造神様の過大評価だとは思いつつも、嬉しくなってしまいます。   
 聖女の時から、夜に月を見るのが大好きでした。 
 周りは暗くても、月は優しく、やわらかい光を放っています。   
 太陽のように、元気がビンビン伝わってくるような事は無いけれど、やわらかな光の布団で私をくるんでくれそうな、そんな感じがするんです。     
 光の布団・・・・・ふわふわの布団・・・・・・・・・・・・・・・           
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハッ!!     
 いけませんいけません、つい居眠りをしてしまいました。   
 私の背中で寝ているおんなの子と、やわらか布団の事を考えたらつい;       
 みなさんも居眠り運転はやめましょう!!危険ですよ?      
 
- スレ2-187
 
- おまけ①
 - 08/08/01 23:40:15
 
     この島なら・・・・・安全ですね。 
 私はおんなの子を背中からそっと降ろし、砂浜に寝かせます。     
 ここの島の人達は、いい方ばかりですし、なによりこの島の波長が私にピッタリ合っています。そして私に合うと言う事はこのおんなの子にも合うと言う事です。 
 ・・・・・やはり生まれ育った場所だからでしょうか・・・・・ね。     
 私はスヤスヤと寝息をたてるおんなの子を見て微笑みます。     
 私と過ごした時間の記憶は・・・・・一部、変化させてもらいました。 
 元々私と仲が良かった、と言う事になっています。それ以前の事は、本々覚えてはいなかったのですが、念には念を入れ、こちらは完全に記憶ごと消去させてもらいました。   
 ユクシーさん、どうもありがとうございます。       
 ・・・・・これが一生の別れと言う訳ではありません。時々ですが、夢でも会えますし、彼女が大きく、強くなれば実際に会う事も出来るでしょう。 
 ですが、やはりどうしても胸がキュンとなってしまいます。   
 やはり・・・・・寂しい物です。       
 たった4日とは言え、かなりの親近感、そして絆を感じていました。 
 私はどんなに時間がたとうと、この夜の事を忘れる事は無いでしょう。       
 思い出に残る夜・・・・・・       
 ・・・・・思夜・・・・・       
 また「ねーみんぐせんす」が悪い、とダークライに呆れられてしまうのでしょうか・・・・・・・・・       
 ですが・・・・・なまえくらい、私が付けても、良いですよね・・・・・・・・・・       
 バイバイ・・・・・・・・・・・・・・・シヤ・・・・・・・・・・       
 私は静かに島を後にしました・・・・・・・・・・・・・・・         
 『おまけ』その①シヤの過去編・完    
 
- スレ2-189
 
- おまけ②
 - 08/08/04 20:21:42
 
     ポケットモンスターDP『慈しみの聖女「クレセリア」』     
 『おまけ』②-1『それぞれの証言』       
 『サトシの証言』     
 なんか最近ヒカリの様子が変なんだよ・・・・・         
 ・・・・・おれの顔をジッと見てると思ったら、顔を赤くして慌ててそっぽを向いたり、朝、前よりテントから出てくる時間が長くなったり・・・・・ 
 まあ要はポッチャマのバブルこうせんで髪を正す時間が長くなったって事なんだけど、それだけじゃなくて 
 おれにコンテストの衣装や、身だしなみ・・・・・つまり「おしゃれ」の感想を聞いてきたりするようになったんだ。かわいい?とか、キレイ?とか・・・・・前以上に。     
 「女の子なんだな~」 
 「?どういう事だよタケシ?」   
 ヒカリの様子を夕食の準備をしながら見ていたタケシが言ったんだ       
 「『可愛く、綺麗に見られたい』そうゆう年頃なのさ」   
 ってさ     
 ・・・・・でも・・・・・       
 ヒカリはコンテストでドレスなんか着なくても、わざわざ「バブルこうせん」を浴びてまで髪を解かさなくても、おしゃれなんかしなくても       
 『可愛いし、綺麗だと思うんだけどなぁ』   
 ポケモンコンテストに出てる時なんて凄いのにさ!カッコいいし、名前の通り、光り輝いて見えるんだ!!         
 ・・・・・・・・・・加えて「おしゃれ」までして『誰か』に自分を見てほしい・・・・・・・・・・   
 やっぱり「おんなのこ」って分かんないなぁ~?      
 
- スレ2-190
 
- おまけ②
 - 08/08/04 20:23:14
 
   『ヒカリの証言』     
 最近・・・・・夢を見る様になったの。         
 同じ夢を、2、3日おきに繰り返し・・・・・ 
 その夢に決まって出て来るのがサトシ、そして私。       
 その夢で私は、真っ暗で、冷たい海の底みたいな場所にいて、仰向けになって寝ている。   
 それで、仰向けのまま、どんどんどんどん沈んでいって、体の感覚も、感情も、意志も、思考も無くなってしまいそうな時になって       
 サトシが出て来るの。       
 どこからともなく出てきて、有無を言わさず私を強く、でも優しく抱きしめる。     
 サトシに抱き締められると、心の中がポカポカして、元気になってくるの。       
 それと同時にビキッ!!って音が聞こえる。 
 それは夢の終わりの合図で、だんだん大きくなってくる。       
 何だか怖くて、私はサトシにしがみ付く。そうするとサトシは手を握ってくれる。     
 すごく・・・・・安心できる・・・・・そう、きっと・・・・・・・・・・        
 
- スレ2-191
 
- おまけ②
 - 08/08/04 20:24:38
 
       「「だいじょーぶ!!」」   
 私とサトシのセリフが重なった所で目が覚める。   
 ・・・・・なんだか・・・・・ちょっと残念。     
 あれ?なんで「残念」だなんて思うんだろ?   
 あんなに真っ暗で冷たい所、もう二度と出てきてほしくないのに・・・・・・・・・・     
 あ!いや!サトシは出てきていんだけどね;;・・・・・・・・・・・・・・・いつでも       
 さ、サトシなら何時でも出てきていいって・・・・・な、何言ってんだろ私・・・・・ 
 そもそもなんでこんな事考えてるの!??どういうこと??       
 う~ん・・・・・分からないよ~;;       
 『タケシの証言』     
 最近・・・・・なんか孤独なんだよな・・・・・・・・・・         
 最近、やたらサトシとヒカリの仲が良くてさ・・・・・   
 サトシが水汲みに行こうとしたらヒカリも「私も行く!」ってサトシについて行くし(一人で十分なのになあ~・・・・・) 
 ヒカリが木の実を取りに森へ行こうとしたらサトシも「おれも行ってくる!」ってヒカリの後を追うし・・・・・(サトシには必要ないのにな~ポヒィン作らないし)   
 バトルとコンテストの特訓も専ら2人でやるし、ポケモン達も雰囲気か何かの問題なのか殆ど2人と一緒にいるし・・・・・       
 ああ!!う、ウソッキー!ピンプクまで!!!       
 ・・・・・グレッグル、俺を慰めてくれるのはお前だけだ~(T_T)     
 「グェー、グェー・・・・・ッケ!!」←いやそ~・・・・・な目       
 ぐ、グレッグルさん?      
 
- スレ2-192
 
- おまけ②
 - 08/08/04 20:28:57
 
   『おまけ』②-2   
 『シヤのまとめ』       
 あれから・・・・・2週間がたちました・・・・・・・・・・     
 誰もあくむの事、覚えてない・・・・・ 
 クレアとダークライがうまくやってくれたから・・・・・         
 今、この事件の真相を明かします。         
 『時間神さんと空間神さんの戦い』     
 これが全ての原因です。   
 最近、アラモスタウンと言う所で行われた2匹の神様の戦いで『あくむのかなめ石』にひびが入った事により、ダークライさんが夢を支配する事が出来なくなってしまったのです。 
 (創造神様は無茶苦茶に怒っていました、怖かったです)     
 それどころか、ダークライさんも悪夢に飲み込まれてしまい、このような事件が起こりました。     
 ダークライさんは本当は心優しいポケモンです。   
 なので『自分がシンオウ地方を脅かす』この悪夢が現実になって表れてしまったのです。       
 解決策はありました。   
 クレアとダークライさんはお互いをフォローし合う存在です。   
 クレアが創った『あくむのかなめ石』をはめると、新たな夢世界を創るだけのエネルギーが放出されます。それを、4匹の神様達の力を借りて、新しい夢世界、悪夢世界を創る。       
 こうする事によって、事件は終わりました・・・・・      
 
- スレ2-193
 
- おまけ②
 - 08/08/04 20:30:46
 
     夢・・・・・そして現・・・・・どっちが本当なのか、分らなくなって、苦しむ時もあるけど・・・・・     
 それでも・・・・・夢、現夢、どちらも在るこの世界・・・・・両方あるんだから、どちらも楽しめたらいいな・・・・・そう思います。       
 でも、できれば、できれば・・・・・・・・・・               
 ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリン!!!!!!!!!!     
 海岸に例の目覚ましの音が響く。     
 「おいシヤ!お前何時まで寝てんだよ!!風邪ひくぞ!!」 
 カイはシヤの肩を少し激しめに揺らす。   
 「あ、カイ・・・・・おはよう・・・・・」 
 「おはよう、じゃねーよ!!もう真夜中だぞ!!!何やってたんだよ!!」   
 カイはシヤをキッ!!と睨む。   
 「だって・・・・・」 
 「だってじゃね~よ!!お前に何か理由があるのは分かるけど、心配する必要もないと思ってるけど、それでも心配なんだからな!!!」     
 カイの言葉から、表情から、真剣にシヤを心配していたのが分かる。     
 「・・・・・ごめんなさい・・・・・」 
 「・・・・・分かればいい・・・・・ほら、帰るぞ。」   
 カイは、いつもの事、と、あっさり話を切り替える。   
 「・・・・・」  
 「今日はもういい・・・・・安心したら疲れた・・・・・お前、昼も夜も食ってないから、腹減ってるだろ?・・・・・帰ろうぜ。」   
 カイはシヤを安心させるように微笑んで、手を差し出す。       
 ああ・・・・・やっぱり・・・・・・・・・・・・・・・・      
 
- スレ2-194
 
- おまけ②
 - 08/08/04 20:32:35
 
   「カイ・・・・・」 
 「なんだ?」 
 「・・・・・疲れちゃった・・・・・おんぶして・・・・・」 
 「はあ!?お前何言ってんだ!?疲れてんのはお前を探してた俺だっつーの!!いい加減に・・・・・」 
 「(ジーーーーーッ)」 
 「うっ!!し、シヤ、お前どうし・・・・・」     
 シヤはいつもの倍以上に目をウルウルさせて、訴えかける様にカイを覗き込む。   
 「(ジーーーーーッ)」 
 「・・・・・・・・・」 
 「(ジーーーーーーーーーッ)」 
 「・・・・・・・・・・・・・・」 
 「(ジーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ)」 
 「っ!だーもう!!分かった分かった!!・・・・・ほら、乗れよ・・・・・」   
 カイは諦め、シヤに背中を向けてしゃがむ。 
 自分に対する情けなさは残るが、嫌な気分では無かった。   
 シヤがピョコン!とカイの背中に飛び乗る。     
 「・・・・・カイ」 
 「なんだ?」 
 「・・・・・・・・・・好きだよ」     
 すきだよ?スキダヨ?SUKIDAYO?     
 「っな!?/////し、シヤ!!お、お前何言って・・・・・!/////」 
 「カイの背中」 
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい」   
 カイは顔を引き攣らせたまま、背中を振り向くが     
 「(スヤスヤ)」 
 ・・・・・寝てるし!!・・・・・   
 「はあ・・・・・もういい・・・・・落ちんなよ」   
 カイはそう言いながら、シヤをしっかり!おぶって、歩き始めた。   
 ・・・・・少し、頬笑みながら。         
 どんな時でも、どんな世界でも、カイが側にいてくれたらいいな。       
 『おまけ』②   
 完