サトヒカバレンタイン
- スレ5-187
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/18 22:14:03
 
 てなわけでなんか考えてきたから投下します   
 ある日のポケモンセンター内。そこで一人の男が叫んでいた。 
 「お嬢さん方!今日はバレンタインデー!チョコを送るなら是非この不肖タケシへ!!」 
 ・・・・・・タケシである。 
 「そこのお姉さん!自分とチョコのように甘いお話でも・・・って、し、しびれびれ~・・・・・・!」 
 「・・・けっ・・・」 
 慣れた様子でどくづきを放つグレッグル。するとそこへヒカリがやってきた。 
 「ちょっとタケシ!恥ずかしいからセンターの真ん中でこんなことしないでよ!」 
 「す、すまん・・・」 
 まだ痺れが抜けきってないタケシを見て、しょうがないなぁと呟き、小さな小包を差し出す。 
 「はい、これ」 
 「ん・・・?」 
 「こんなことだろうと思って・・・。だからせめて私がタケシにあげるわよ」 
 呆れつつも笑顔でそう言ってチョコをくれるヒカリに、タケシは涙を流す。 
 「ヒカリーー!!おまえはなんていい娘なんだ!!お母ちゃんは嬉しいよ!!」 
 余りの感動に痺れは吹き飛び、ヒカリの頭をこれでもか、というほど撫でてやる。 
 「あはは・・・。お母さんだったらナンパなんかしてないでよね・・・」 
 ヒカリは苦笑いをしていた。  
 
- スレ5-188
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/18 22:15:59
 
 「ところでサトシには渡したのか?チョコ」 
 窓から、外でトレーニングに励んでいるサトシを見やる。 
 「ううん。でも渡すつもりよ」 
 「そうか。じゃあ今からサトシのところに行くんだな」 
 自分もサトシも幸せ者だなと思い、そしてタケシはその場をあとにしようとした。しかしヒカリが止める。 
 「あ、あのね・・・サトシにはね、手作りのチョコをプレゼントしようと思ってるの」 
 サトシの方が何倍も幸せ者じゃないかと思い直す。 
 「ほう。いいじゃないか!」 
 「それで実は、・・・これから作るんだけど・・・。あの・・・タケシ手伝ってくれる?」 
 なるほど、自分に先に渡しにきたのはこのためかと思い、「断ることなんて出来ないだろ」とタケシは言った。     
 「よし取り合えず準備は整ったな」 
 ヒカリは材料を揃え、タケシはポケモンセンターのキッチンを借りた。 
 「あのねタケシ。私、今回これ使いたいんだけど!」 
 そういってヒカリが取り出したのは大きな卵。 
 「ラッキーの卵!お手伝いをしたらジョーイさんがくれたの!別名「しあわせたまご」っていって栄養満点の珍味なんだって!」 
 「卵か・・・。そうなると作るのはチョコレートケーキ辺りか?でも、ラッキーの卵って扱いが難しいんだぞ」 
 「それなの。ジョーイさんもそう言ってたんだけど、具体的にどういうことなの?」 
 「美味だけど癖があったり。特に調理する場合なんかは温度調節を少しでも怠るとその豊富な栄養価が逃げてしまうらしい」 
 「はぅ・・・そうなんだ・・・」 
 説明を聞いて、ヒカリは意気消沈してしまったようだ。 
 「・・・・・・。ヒカリはどうしてもこれを使いたいのか?」 
 「うん・・・サトシはこれからジム戦でしょ?さらにそのあとはポケモンリーグが控えてる。 
  だからこれを食べてサトシに英気を養ってほしいなあって。そうすればもっともっと頑張ってくれるような気がしたから・・・」 
 この理由でヒカリのサトシへのやさしさが伺い取れる。 
 「そうか・・・。だったら大丈夫!ヒカリのそのやさしい心ととひたむきな想いがあればきっと何だって美味しく作れるはずだよ」 
 「本当?」 
 「ああ!サトシが気絶するほど美味いもの作ってやれ!」 
 つくづくサトシは幸せものだとタケシは思った。  
 
- スレ5-189
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/18 22:20:09
 
 その後ヒカリはチョコレートケーキをタケシに教わりながら完成させた。 
 「出来たー!!」 
 「ふむふむ。見た目は中々だが果たして味はいか程か・・・」 
 「大丈夫、大丈夫!私の腕をなめないでよね!」 
 「そうだな。じゃあ俺はサトシを呼んでくるよ」   
 タケシに呼ばれて食堂へやってきたサトシはやけに良い匂いがするなと思い、ヒカリに聞く。 
 「なんだ?今日の昼飯はヒカリが作ったのか?」 
 「へへー♪お昼ごはんよりももっといい物!」 
 「へえ?」 
 なんだか楽しそうなヒカリにサトシも無意識にうきうきする。 
 「まあ座って座って!」 
 ヒカリが椅子を引き、そこへサトシを招く。 
 「よくわかんないけどなんか楽しみだなピカチュウ!」 
 「ピカ!」  
 
- スレ5-190
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/18 22:20:59
 
 そして奥からヒカリが出来立てのケーキを持ってきた。 
 「じゃーん♪」 
 「うわ!なにこれ!すっげーウマそう!」 
 「ちょっとぉ、なにこれってなによー!チョコレートケーキに決まってるでしょ」 
 サトシの感想にヒカリが突っ込む。 
 「はは、ごめん。・・・・・・?でもなんでチョコレートケーキなんか・・・?」 
 サトシは疑問に思っていることを口に出す。そこでタケシがヒカリにささやく。 
 「たぶんヒカリ。サトシは今日が何の日かわかってないぞ」 
 「ああ・・・。・・・ま、サトシらしいわね」 
 と言ってサトシの顔を見、くすりと笑う。 
 「む、なんだよ」 
 ヒカリはやれやれといった感じで説明する。 
 「今日はバレンタインでしょ。だからね、私がサトシに手作りチョコをプレゼント!」 
 「ああなるほど。バレンタインチョコ・・・・・・でもさこれケーキじゃん」 
 「だから『チョコレート』ケーキですぅ!!」 
 ああそっか、とサトシは頷く。 
 「でもこれ・・・本当にヒカリが作ったのか?」 
 「私だって料理くらい出来ますぅ!!何よ、さっきから!!」 
 「おいおい・・・」 
 下手したらけんかになってしまうんではないかと思い、タケシが割り込む。 
 「いいかサトシ。このケーキにはな、ヒカリのお前への想いがたくさん入っているんだ。 
  だから文句なんか言うもんじゃない。そしてヒカリには深く深~く感謝すべきだ」 
 「・・・俺、全然文句なんか言ってないぜ・・・?」 
 サトシはなんとなく怒られているような気がしてしゅんとなる。 
 「とにかくだ!感想はこれを食ってから言うんだ」 
 「う・・・・・・うん」 
 タケシにそう言われ、フォークを手に取り、サトシはケーキを一口頬張る。    
 
- スレ5-194
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/19 20:15:47
 
 期待されてもプレッシャーですがやっぱ感想があると嬉しいです!   
 「・・・・・・・・・」 
 「・・・・・・あの・・・ど、どう?」 
 さきほどまでは自信満々なヒカリだったが、やはり不安はあるようだ。 
 「・・・・・・・・・ヒカリ」 
 「え?」 
 「これ・・・すっごく美味いよ・・・!!」 
 ヒカリの顔がぱぁっと明るくなる。 
 「本当!?」 
 「ああ!!俺こんな美味いものヒカリが作れるなんて知らなかったよ!」 
 「だから出来るっていったでしょ?・・・でも、本当に本当!?私、味見とかしてないんだからね?」 
 「本当だって!・・・・・・ほら!」 
 と言ってサトシが口元にケーキを一口分持ってきたのでヒカリは反射的にぱくっと頬張る。 
 「・・・うわ!!美味しい!!」 
 ヒカリの反応にサトシは「なっ!?」と言う。二人とも予想以上の美味しさで驚いている。 
 「これもタケシが手伝ってくれたおかげね。あ、良かったらタケシもどーぞ!」 
 「おいおいヒカリ。これは『サトシのため』に作ったんだろ?俺まで食べたらせっかく想いを込めて作った意味がないだろ?」 
 「うん、でも・・・」 
 「お礼だったらもう俺はチョコもらってるだろ。それに、これはサトシにあげたんだから、ヒカリにはもうそれを言う権限はないんだ」 
 「うう・・・でもせっかく美味しく作れたのに・・・」 
 ヒカリは少し悲しそうな顔になる。そんなヒカリを見て、サトシもタケシにお願いするように言う。 
 「なあタケシ、少しだけでもいいから食ってみろよ。これ本当に美味いんだぜ。 
  それにさ、タケシはヒカリにこれ作るのコーチしたんだろ?だからヒカリは最後に味見だけでもしてもらいたんだと思うんだ」 
 「サトシ・・・」 
 ヒカリはサトシに自分の気持ちを代弁され、少し驚いた。 
 「・・・・・・・・・しょうがない・・・。わかったよ!・・・じゃあヒカリサトシ、これだけもらうからな」 
 そう言ってタケシはケーキをほんの一欠けら取り、口に放り込む。 
 「・・・ん!美味い!やるじゃないかヒカリ!」 
 「えへへ、合格でしょ?」 
 タケシに褒められたヒカリは笑顔に戻り、サトシも釣られて笑顔になる。 
 「ああ!満点合格だよ!・・・・・・それじゃあヒカリ、あとはサトシに想いを伝えるだけだな」 
 「想い・・・?」 
 首をかしげてなんだか鈍い反応をするヒカリを見て、うん?とタケシも首をかしげる。そしてサトシから距離を置かせヒカリに尋ねる。  
 
- スレ5-195
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/19 20:18:39
 
 「・・・・・・・・・おいヒカリ、お前は今回愛の告白をするためにチョコケーキを作ったわけじゃないのか?」 
 「えっ!?な、何言ってんのよ!?そんなこと一言も言ってないじゃない!」 
 どうやらタケシは勘違いしていたようだ。 
 「まあ・・・、確かにそうだが・・・。・・・それじゃあどうしてお前はサトシに手作りチョコを送ろうとしたんだ・・・?」 
 「えっ?だから、ポケモンリーグに向けて精を付けさせようとしてって最初に言ったじゃない」 
 「・・・それはたまたまたまご(・・・)を貰ったからだろ?わざわざバレンタインにやることじゃない。 
  よ~く考えてみろ・・・・・・他の理由は?」 
 「えっと・・・・・・日ごろの感謝・・・?」 
 という事は基本的に義理チョコな感覚のようだ。しかしどうしてもそうは思えないタケシだった。 
 「・・・なるほどね。・・・という事はヒカリは俺を差別でもしてるのか?」 
 「な、なんでよ!?そんなことあるわけないじゃない!?」 
 するとタケシはポケットからごそっとヒカリに貰った小包を出し、その中身をポロポロと取り出す。 
 「いいか・・・?俺が貰ったのは市販のチ○ルチョコが二つだ・・・。今言った位の理由でこんなに格差が出て溜まるか」 
 「う、その・・・ごめんね。お金が無くって・・・」 
 「まあ、いいんだよそんな事は。俺は貰えただけで嬉しいんだからな。きっと他の小遣いはケーキの材料代に廻したんだろ?」 
 「・・・うん」 
 「お前がサトシに告白するって言うんだったらこれも理解は出来る。 
  ・・・・・・でもヒカリは今日、サトシに告白するわけじゃないんだろ?」 
 「こ、告白って・・・。だって私、・・・サトシの事そんな風に・・・思ってるわけじゃないもの・・・・・・」 
 ヒカリは確かにそう思って言ったが、なぜかだんだん声が小さくなっていってしまう。 
 タケシはその反応を見逃さず、さらに聞いてみる。 
 「ふーん。でもきっとお前の中じゃ特別な存在なんじゃないか?」 
 「それはそうよ!だって一緒に旅する仲間だもの」 
 「だったら俺もそうだぞ?」 
 「だ、だからタケシも特別よ・・・!」 
 「ほう・・・それにしても格差があるじゃないか。じゃあサトシは『超』特別って事だな!?(ニヤニヤ」 
 「な!だ、だだっ、だからね!!その・・・サトシは・・・そのね!!」 
 無意味に手をばたつかせ、必死に答えを探すヒカリ。するとちょうど隣に来ただれかの腕を引っかいてしまった。  
 
- スレ5-196
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/19 20:19:22
 
 「あてっ」 
 「きゃ、すっすみません!!・・・ってサトシ・・・・・・!?」 
 通行人かと思ったが、それはサトシだった。 
 「いきなり引っかくなよな・・・。ところでさっきから話に俺の名前が出てきてるみたいだけど、何を話して・・・っておいヒカリ!?」 
 サトシに気づくとヒカリはピューっとものすごいスピードでどこかへ去っていってしまった。 
 「ヒカリのやつ、やけに真っ赤な顔して。なんかあったのか?」 
 「・・・・・・ありゃきっと自分でも気づいてないんだな」 
 「何が?」 
 (まったくここにも一人鈍感なやつが・・・。・・・こっちにも聞いてみるか) 
 「・・・ところでサトシ。お前はヒカリにチョコ貰ったことをどう思ってる?」 
 「へ?当然嬉しいに決まってるよ。しかも手作りなんだろ?」 
 さらりと感想を述べるので、タケシはまさかなと思いこれも聞く。 
 「ああ・・・。・・・で、お前はバレンタインの日の意味はちゃんとわかってるだろうな?」 
 「なんだよそのくらいわかってるよ!女の子が、好きな人へチョコを渡す日だろ?」 
 一応理解はしていたようだ。 
 「その通り。・・・ってことはつまり、ヒカリはお前が好きだって事だ」 
 ためしにヒカリの言わなかったことを補足してみる。 
 「うん。俺だってヒカリが好きだよ。だからホワイトデーには返さなくちゃな!」 
 なんとも分かっているようで分かっていないサトシにタケシはやっぱりなと思う。 
 (まあヒカリもヒカリでそういうつもりじゃなかったんだが・・・) 
 「でもさタケシだって貰ったんだろ?」 
 「はあ・・・・・・まあな」 
 (激しくレベルの違いがあるんだって・・・) 
 「それにしてもヒカリどこ行っちゃったんだろ?まだお礼言ってないのに・・・」 
 「・・・そうだな、じゃあ探して来い」 
 「うん!」 
 それはどことなく嬉しそうで、楽しそうで、待ってましたと言わんばかりの元気のいい返事だった。 
 (まったくこいつらは・・・)  
 
- スレ5-211
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/21 09:41:43
 
 ここからは文章が勝手に一人歩きをしてしまったところです 
 やっぱ前回で終わらしたくらいでちょうど良かったと思いますがね   
 ポケモンセンターの外。大きな木の下にヒカリは腰を下ろしぼーっとサトシの事を考えていた。 
 「・・・・・・私はサトシの事が好き・・・・・・?」 
 自身に問う。答えはもちろん好きだ。これまでの長旅をしてきて、もはやサトシは家族同然だとも思う。タケシについても同じ。 
 特にタケシは本当に保護者的な役割をしてくれている。 
 「じゃあサトシは私にとって・・・何?」 
 わからないのはそれだ。だが取り合えず自分がサトシに想っている気持ちに一番近い気がするのは・・・。 
 「きょうだい・・・・・・?」 
 ヒカリはそう口にだしてから、今発した言葉に違和感を感じた。 
 (でもきょうだいにしては私、サトシのことすごく・・・・・・あれ?) 
 そこでヒカリは考えに詰まる。 
 「・・・すごく・・・何・・・?」 
 声に出してもみたが、それでも結局そこの答えが出てこない。 
 「・・・・・・・・・・・・あ~も~~!なんなの~~!!?サトシの、バカーーー!!」 
 だんだん頭の中がゴチャゴチャしてくる。 
 「ポチャー!」 
 「うるさい!」ということだろうか。ポッチャマがひと鳴きする。(実はいました) 
 「・・・あはは、ごめんごめん・・・」 
 そう謝ると、ヒカリはポッチャマをぎゅっと抱きしめる。 
 「・・・・・・もし、サトシがポッチャマだったらこうやって抱きしめられるのにな・・・」 
 無意識にそんなことを呟く。そして気づく。 
 (あ、あれ?ってことは私ってサトシを抱きしめたいとか思ってるわけ?///) 
 「おーいヒカリー」 
 ギクッ!!! 
 そこで突然サトシの声が聞こえヒカリは飛び上がる。 
 「あれ?確かに今、この木のあたりからヒカリの声がしたはずなんだけど・・・、なあピカチュウ」 
 サトシはどうやらこの木の裏側にいるようだ。 
 「ピカピ」 
 「ん?この裏側ってか?」 
 (わ、さ、サトシが来ちゃう~!!なななんとか逃げないと!) 
 なぜサトシから逃げたいと思ったのかはわからない。しかしここでヒカリは何を血迷ったか、 
 (そうだ!ここはポケモンの鳴きまねで誤魔化すのよ!) 
 という、わけの分からない作戦を思いつく。 
 (大丈夫!小さい頃は上手いってよく褒められてたんだから!)  
 
- スレ5-212
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/21 09:42:35
 
 「だ、だねだね~」 
 「ん?この声は・・・」 
 「だねふし~」 
 サトシはこの太い木の周りをぐるりと半周し、そこで足を止める。 
 「・・・・・・ヒカリ、なんでフシギダネのまねなんかしてんだ?」 
 サトシの視線の先にはそこで四つんばいになってフシギダネの鳴きまねをしていたヒカリの姿があった。 
 「あ・・・・・・・・・」 
 そうしてやっとヒカリは今の自分の行為の無意味さに気づく。すると顔がみるみる赤くなっていく。 
 「っっっ~~~~~~~~~~~~!!!!////」 
 そしてその場から駆け出す。 
 「あ、おい!ヒカリ!」 
 べタンッ!!! 
 ヒカリの帽子が吹き飛んだ。体勢が悪い状態から走り始めたためか、ヒカリは数メートル進んですぐにこけてしまったのだ。 
 「ヒカリっ!!」 
 サトシは駆け寄る。 
 「・・・・・・・・・」 
 しかしなぜかヒカリはこけた状態から動かない。サトシは心配して起こす。 
 「お、おいヒカリ!どうしたんだよ、大丈夫か!?」 
 「えへへへ・・・。だいじょーぶ、だいじょーぶ・・・・・・」 
 力なくへらへらと笑うヒカリ。 
 「本当に大丈夫なのかよ!?どこか擦りむいたりしてないか!?」 
 ヒカリの大丈夫が余りにも信用できないのでサトシは外傷がないか確認する。 
 「・・・・・・取り合えず傷はないみたいだな。よかった・・・」 
 ほっと胸をなでおろす。  
 
- スレ5-213
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/21 09:44:41
 
 「だから大丈夫って言ったじゃなーい!」 
 下は芝生だったため、怪我をする方が難しいくらいだ。しかし、余りにも派手にヒカリがずっこけたので万が一と思いサトシは言い返す。 
 「ヒカリの大丈夫が一番だいじょばない!・・・・・・頭は打ってないだろうな?」 
 サトシはヒカリの頭にこぶでも出来てないかと確かめる。 
 「打ってませー・・・・・・ん・・・?」 
 その行動は、ヒカリの頭を撫でているのと同じことだった。 
 (あ・・・、なんか気持ち良いな・・・) 
 サトシの心配とは裏腹にヒカリは正体不明の心地よさに浸っていた。 
 「どうしたんだよ?急におとなしくなって・・・・・・」 
 「・・・・・・・・・・・・」 
 「・・・・・・・・・・・・ヒカリ??」 
 「・・・あのさぁ・・・・・・サトシって・・・・・・なんで私にこんな優しくするの?・・・・・・」 
 怪我が本当に無いことを確認し終えると、サトシは突然のヒカリの質問に首をかしげ、ヒカリの顔を見る。 
 「はあ?なんだよいきなり」 
 「・・・なんとなく。・・・・・・・・・旅の仲間だから?」 
 「・・・んー、そうだなぁ。まあそれは当然あるな」 
 「・・・それ以外の理由もある?」 
 「・・・そう言われれば、俺はヒカリのママに「ヒカリをよろしく」って任されてるし、 
  普段タケシにだって「いざとなったらヒカリはお前が守ってやれ」とか言われてるし・・・」 
 「ふーん・・・。・・・じゃあ言われてるからやってるだけか・・・・・・」 
 答えを聞くとヒカリはサトシから視線を外す。 
 「え!?そんなことないって!それじゃあ、一番の理由教えてやるよ」 
 「・・・え?・・・なあに・・・?」 
 もう一度サトシを見る。 
 「ズバリ!ヒカリの大丈夫はだいじょばないから!」 
 「・・・なるほど・・・って・・・ちょっとサトシ~~・・・!?」 
 「はは、だって本当のことだろ!?」 
 「そんなことありませんー!・・・・・・・・・・・・・・・はぁ~・・・サトシになんかあんな物作るんじゃなかったなぁ」  
 
- スレ5-214
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/21 09:46:12
 
 なんだか聞いていてばかばかしくなってきたと思い、帽子を拾い、ヒカリは立ち上がろうとする。 
 「あ、それともうひとつ!」 
 「何よもういいわよ!」 
 ヒカリは帽子をかぶり直しながら、中腰で止まる。 
 「ヒカリが大好きだから」 
 そしてそのまま聞き流そうとする。 
 「はいはい、私が大好きだからね・・・・・・って、・・・・・・はいぃっ!!!??」 
 一瞬何を言われたか分からなかった。ヒカリはまじまじとサトシの顔を見る。 
 サトシは普段ピカチュウに向けているような笑顔を浮かべていた。・・・ような気がした。 
 そして、   
 ぶしゅうううううううぅぅぅ!!!!   
 突然、湯気が出るような勢いで顔を真っ赤にし、ヒカリはその場にコテンと倒れこんでしまった。 
 「うわ!?ちょ、どうした?ヒカリ!!?」 
 「・・・あうぁ~・・・・・・もうだいじょばない~・・・・・・!」 
 身体に全く力が入らなくなってしまい、ヒカリは目をまわしている。 
 「すっごい熱だぞ・・・大丈夫か・・・!?。・・・・・・と、取り合えず日陰に移動させないと・・・」 
 「よいしょ」とサトシはヒカリの両脇を抱え、そのままずるずると引きずって、さっきまでヒカリがいた木陰まで運ぶ。 
 ヒカリは今自分がどうなっているんだかサトシに何されているのか全くわかっていない状態だ。 
 「おいヒカリ!」 
 「・・・ふえ~・・・?・・・」 
 呼びかけに答えているんだかいないんだかわからない。 
 「だめだ・・・・・・とにかく熱を冷まさないと・・・・・・あっ!そうだ!!」 
 サトシは何か思いついたのか、今までなぜか背負っていたリュックを降ろしごそごそと中から何かを取り出す。 
 そしてそれをヒカリの額にぴとっと当てる。 
 「ひゃあっっっ!!?」 
 「お、起きた」 
 ヒカリは額に急に冷たい感覚を覚え、びっくりして飛び起きた。  
 
- スレ5-215
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/21 09:47:39
 
 「なな、なにしたの・・・・・・!?」 
 「大丈夫か?ヒカリ」 
 そう言ってヒカリの顔を覗き込むサトシ。 
 「っっ・・・!!!////」 
 今せっかく引いた熱が、再び上ってくる感じがした。その感覚に耐え切れなくなってヒカリは三度逃げようとした。 
 しかし、残念ながら両足の上にサトシが乗っかっていたのでどうにも動けない。 
 「ちょっ!サトシ!!なんで乗っかってんの・・・・・・ひゃっっ!!?」 
 と思ったら、今度は両頬が急に冷たくなった。 
 「・・・・・・・・・・・・・・・缶・・・・・・ジュース・・・?」 
 「やっと落ち着いたか?」 
 さっきから冷たかったのはサトシが持っていた缶ジュースだった。今ヒカリはそれを両頬に当てられている。 
 「・・・うん。・・・取り合えず・・・・・・」 
 「そっか」 
 サトシはヒカリの頬から缶を離すと、今度はヒカリの目の前に持ってくる。 
 「・・・オレンジとグレープどっちがいい?」 
 「・・・・・・オレンジ」 
 そうヒカリが答えるとサトシは片方の缶を手渡す。ヒカリは「ありがと」と言って受け取るとサトシから少し距離を置いて座りなおす。 
 「ヒカリ、頼むからもう逃げないでくれな?」 
 そう言ってサトシは缶を開け、口に付ける。そしてぷはっと一息つく。 
 「・・・・・・・・・ヒカリのほっぺたでちょっとあったまっちゃったかな?」 
 「ぶっっっ!!!」 
 ヒカリは最初の一口目を無駄にしてしまった。 
 「ヒカリ?・・・大丈夫か?」 
 「・・・だ・・・大丈夫・・・・・・」 
 「そっか・・・。・・・それにしても俺、もう疲れちゃったよ」 
 口元を拭いながら、むしろこっちの方が疲れた、とヒカリは思った。 
 「・・・だったら最初から追ってなんか来なければよかったのに・・・」 
 「そっちが逃げなければいいんだろ。ていうか、何でさっきから俺から逃げるんだよ?いい加減今日のヒカリはおかしすぎだぜ?」  
 
- スレ5-216
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/21 09:48:25
 
 「・・・ごめん。・・・なんかさっきから私、サトシのこと考えてると頭の中がおかしくなっちゃうの・・・」 
 「はあ?なんだよそれ?」 
 「・・・それでね、サトシがそばに来ると・・・、もーっと気持ちが変になるの・・・」 
 「・・・それってもしかしてヒカリは・・・俺の事が嫌いだったのか・・・・・・?」 
 サトシはすごく悲しそうな顔になる。 
 「な!?そんなこと絶対にあるわけないじゃない!!だって私だってサトシと同じ気持ちだもん!!」 
 ヒカリは必死に否定する。 
 「大体、嫌いだったらバレンタインにチョコなんかプレゼントしないわよ!!」 
 それを聞いてサトシはほっとしたようだ。 
 「・・・そっか・・・だったらほっとした・・・って、そうだ!バレンタインチョコだ!!」 
 そう言ってきょろきょろとサトシは辺りを見回す。何かを探しているようだ。 
 「ピカピ?」 
 「ああ、お前が持っててくれてたのか!さんきゅ」 
 探し物はピカチュウが持っていたようだ。 
 「・・・何?その箱」 
 そういえば最初見つかった時にはサトシがその紙箱を持っていたような気がする。 
 「何って、お前が作ってくれたケーキだよ。ジョーイさんにこれに詰めてもらったんだ」 
 「へー。でもなんで持ってきたの?」  
 
- スレ5-217
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/21 09:48:49
 
 「だってこれ、きっと俺一人じゃ食いきれないよ」 
 「ああ・・・確かにそうかも」 
 ずいぶん張り切って作っていたため量やサイズの事を考えていなかった。 
 「でもだったらタケシに半分分けてくればよかったでしょ」 
 「俺だって食ってくれって言ったけど「だったらヒカリと食えばいい」って断られたんだ」 
 「・・・私が食べちゃったら、それこそ私が作った意味がないような気がするけどなぁ」 
 「まあいいじゃん。それに、俺はもちろんだけどヒカリだってまだ昼飯食ってないんだろ?だからちょうどいいし、ここでこれ食おうぜ」 
 そう言うとリュックとケーキを持ってヒカリの隣に座る。 
 「うぁ・・・///」 
 「あ・・・俺がそばに行くとだめなんだっけ・・・」 
 隣に座ったとたんに顔を赤くし動揺するヒカリを見てサトシは「悪い」と言ってまた離れようとする。しかしヒカリがその腕を掴む。 
 「あっ・・・あの・・・大丈夫・・・。我慢するから」 
 「本当か?理由は全然わかんないけど・・・無理すんなよ?」 
 この不思議なポケモンワールドのことだ。ポケモンだけでなく、人間同士の間にも何か不思議な力が働くことくらいあるだろう。 
 サトシは自分が何か変なわざでも習得してしまったのかもしれないとでも思い、取り合えずヒカリを心配してみた。 
 「大丈夫・・・。・・・それによくよく考えたら・・・大好きなのに離れたいとか思うのはやっぱりおかしいじゃない」 
 「まあ、確かに」 
 わかったような顔をしていたが、大好きと言われた瞬間にサトシは心の奥が暖かくなった。  
 
- スレ5-238
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/23 23:11:35
 
 よっし、今回で終わりにさせます 
 いい加減バレンタインとか遠い昔だし   
 「タケシに言われてちゃんと準備してきたんだ」 
 サトシはリュックからフォークと紙皿を取り出しヒカリに渡す。 
 「飲み物はお茶もあるからな」 
 ペットボトルのお茶と紙コップも出す。 
 「ずいぶん用意がいいじゃない。・・・なんかピクニックみたいね」 
 早速ヒカリはケーキを一切れ皿に取る。 
 「ピクニックの弁当がケーキかよ・・・」 
 さらにまだ何か出そうとしているのか、そんな事を言いながらまだリュックの中をあさっているサトシ。 
 「いいじゃなーい!しかも手作りなんだからね!」 
 そう言って、はむっと一口食べる。 
 「ん~!おいしー!」 
 ヒカリは「さすが私!」とか言っている。 
 「・・・ねえ、サトシは食べないの?」 
 「それが、フォークがもう一本あるはずなんだけど・・・」 
 「見つからない?」 
 「・・・うん」 
 「じゃあ二人で一本を使うしかないわね。・・・はい、あ~ん」 
 ヒカリが一口分よこして来たので反射的にサトシはぱくっと食べる。 
 「むぐむぐ・・・まあフォークは、いっか」 
 「はい、もう一個!」 
 「ちょっと待って」 
 「?」 
 サトシに差し出したが食べなかったのでヒカリはそれは取り合えず自分の口へ運ぶ。 
 「ほら、ポケモンフーズももらってきたからさみんなで食べ・・・って、容器忘れた・・・!」 
 サトシはポケモンフーズも取り出すが、ポケモン用の容器は忘れてしまったようだ。 
 「まいったなぁ、容器のことまでは頭が廻らなかったぜ・・・」 
 「仕方ないわよ。悪いけどポケモンたちは戻ってからごはんね」  
 
- スレ5-239
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/23 23:12:29
 
 結局、使われなかったサトシの紙皿を使ってピカチュウとポッチャマだけは先にポケモンフーズを食べている。 
 一方サトシは相変わらずヒカリにケーキを食べさせてもらっている。・・・というより自分で食べさせてもらえない。 
 「なあヒカリー、俺自分で取るからさぁ・・・。だからフォーク貸してくれよ」 
 「えー?そしたらサトシが一人でたくさん食べちゃうでしょ?」 
 「そんなことないって。ていうか、もともとこれは俺が食べるようにって作っ・・・(むぐっ!」 
 サトシがうるさいのでヒカリはもう一切れくれてやる。 
 しゃべっている最中だったがサトシは目の前に出されたのでつい頬張ってしまう。 
 「大丈夫だって!ちゃんとサトシの方にたくさん取ってあげるから」 
 普段は対等な関係の二人だが、いつもよりなんとなく優勢に立っているこの状況がどうにもヒカリには面白かった。 
 「・・・・・・もぐもぐもぐ・・・・・・」 
 隣でおとなしくなってケーキを食べているサトシを見ていると、ヒカリはあることに気づく。 
 「・・・・・・ん?・・・どうした?ヒカリ」 
 「・・・・・・なんかそういえば私、サトシの隣にいても大丈夫になってる・・・・・・!!」 
 「変な気分になってたのが治ったか?」 
 「うん!・・・・・・なんか変な心配かけちゃっててごめんね・・・」 
 「いいや。それに、もしかしたら俺のせいだったのかもしれないし・・・」 
 「そんなことはないわよ!・・・わかんないけど。・・・でも今日はいっぱい迷惑かけて本当にごめん!」 
 ヒカリは頭を下げて誤る。 
 「迷惑なんて俺はこれっぽっちも思ってないよ。でもヒカリがいつものヒカリに戻って良かった!」 
 「サトシ・・・!」 
 その瞬間ヒカリも先ほどのサトシと同じく、心の奥がすごく暖まっていくのを感じた。    
 
- スレ5-240
 
- サトヒカバレンタイン
 - 10/02/23 23:13:40
 
 「・・・・・・あー、なんかすっごいすっきりした気分!」   
 ヒカリはケーキをサトシに渡すと立ち上がって、日のあたるところまで出る。   
 「そうだなー、なんか俺もすがすがしい感じ!」   
 サトシもケーキをその場に置いてヒカリのいるところまで来る。   
 「・・・・・・・・・・・・・・・サトシ」 
 「ん?」   
 「・・・いつも私のそばにいてくれて・・・ありがとう!」   
 「・・・へ?なんだよ突然。さっきまではそっちが拒んでたってのにさ」 
 「それはさっきの話!・・・それに、今は心の底からこう思うの」 
 ヒカリはさっきまでとは打って変わり、まっすぐとサトシを見つめている。 
 「・・・っ!!///」   
 すると、驚いたことに、今度はサトシが先に顔を逸らした。 
 「?、サトシ・・・?」 
 「・・・・・・おれだって・・・いつもヒカリがそばにいてくれてうれしいって思ってるよ・・・」 
 顔を逸らしながら、呟くようにサトシは言った。小さな呟きだったがヒカリは聞き逃さなかった。 
 そして、サトシの顔を見る。なんとなく頬が赤くなっているような気がする。まるでさっきまでのヒカリのように。   
 「・・・・・・・・・・・・くすくす♪・・・・・・なーんかサトシとダンスでもしたい気分♪」 
 ヒカリはサトシの両手を握ってそんな事を言う。 
 「ダンスって、俺ポケモン音頭くらいしか踊れねぇよ?」 
 「もーサトシったらー、それはダンスじゃありませんー!」 
 握った腕を無造作に揺すりながらそう言うヒカリ。しかしその顔はなんとも楽しそうな表情をしていた。   
 「・・・それよりさ・・・・・・俺、ヒカリに言わなくちゃいけないことがあるんだ!」 
 「なーに?」   
 「・・・・・・今日はバレンタインチョコありがとうな!」 
 「!!!・・・・・・・・・・・・・・・どういたしまして♪」   
 終わり  
 
- スレ5-241
 
- バレンタインの人
 - 10/02/24 00:18:30
 
 やっと終わりました 
 まあやっと、って言っても最初から全部書いてあったので 
 少しずつ投下していただけですけどね 
 結局サトヒカは気持ちに気づいたんだか気づいてないんだか? 
 もはや最後なんか色々意味不明ですがまあ仕方ないです 
 文章力、表現力が中途半端ですから・・・ 
 でも、サトシたちの口調や性格は出来るだけアニメ本編に 
 近づけたつもりです 
 皆さんも作品を書くときはそこだけはよーく注意してください! 
 例えばヒカリの名前をカスミに変えて違和感なく文章になってしまったりするんでは 
 その作品はサトヒカの魅力が充分に引き出せていないという証拠ですからね! 
 あとは明らかにそのキャラが使わない言葉使いをさせても違和感を感じてしまいます 
 サトシが「てめえ」「きさま」なんて言葉を使ってたら泣いてしまいますよ・・・ 
 きっとサトヒカファンならサトシやヒカリの口癖や、絶対に使わない言葉 
 なんかはわかると思います! 
 小説が出来上がったら、まずよく自分で読み返してからじっくりと誤字脱字の確認、 
 文章に矛盾はないか、このキャラは本当にこういう喋り方だっただろうか?などと考えて、 
 違和感なくスムーズに読めるようになったら投稿することをおすすめします   
 というのも実は他の方の作品を読んでいるとこういうのが時折気になるんですよね・・・   
 でもあくまでここで一番重要なのはやっぱり「サトヒカらしさ」だと思うので、 
 それさえ大事にされている作品ならとやかく言う必要はないですね   
 うわ、なんて偉そうなことを書いてしまったんだ・・・ 
 自分はこれにて、傍観者にまた戻ることにします