ハンターJ再び
- スレ1-95
 
- ハンターJ再び~湖の秘密~
 - 07/09/08 22:48:58
 
 「ハンターJ、例の物は見つかったのか?」 
 昼だというのに暗く、どこか冷たいその部屋で、スクリーンに移された男の声が響く。 
 「予定通り、着々と事は進んでいる。心配するな」 
 「それを聞いて安心したよ」 
 にぃっと黄ばんだ歯を見せながら、男が笑った。 
 「楽しみに待っているよ、私のコレクションのためにもがんばってくれたまえ、ハンターJ」 
 ぶつりと、スクリーンが閉じる。 
 暗かった部屋はさらに暗くなり、置かれた機械の無機質な音が、冷たさを助長していた。 
 「ふん。下衆めが。」 
 ハンターJ。 
 彼女は冷たいヒカリを目にたたえながら、湖の中に張った見張り用の基地へと向かった。   
 夏の日差しを遮断する森の木陰はちょうど良く、それでいて木々を抜ける風が心地よい。 
 夏だから暑いのは当たり前だが、森の中はことのほか涼しく、歩いていても体力を奪われるようなことはなかった。 
 「この近くに大きな湖があるな、そこでランチにしよう」 
 タケシがマップを眺めながら言う。 
 この森には非常に川が多く、大小のさまざまな湖が支流の先にあった。 
 今目指している湖はひっきりなしに川から水が流れ込んでいるが、 
 たいていの湖底には洞窟や滝があって、そこから水があふれる前に流れているというのを聞いた。 
 サトシとヒカリは、そろそろおなかがすいてきた、とすぐにタケシの意見に賛同した。 
 食べ盛りの彼らにとって、タケシの料理は旅の楽しみでもあるのだ。 
 やがて川幅は広がり、湖が見えてくる。 
 岸にはウパーやヌオーが数匹と、ほかにも人がいるのか、釣り糸と浮きがたれてあった。 
 ポケモン用の釣竿でなく、普通の釣竿のところを見ると、食用の魚をつっているらしい。 
 置くには岸壁が聳え立っていたが、そこを真っ二つにしたように滝が階段状に流れていた。 
 ほかの川からも水が来ているのか、その岸壁からもいくつか小さな滝ができている。   
 サトシ達はいつものように薪をくべ、昼食の準備に入る。 
 いつもどおりの光景、いつもどおりののどかな昼だった。 
 そう誰もが思っていた。  
 
- スレ1-96
 
- ハンターJ再び~侵略者達~
 - 07/09/08 22:57:03
 
 パンッと何かがはじける音がして、突然水面が吹き飛んだ。  
 大量の水が空高く打ち上げられて、雨のように降ってくる。  
 「何!?」  
 ヒカリが驚いて声を上げる。  
 サトシとタケシも驚いた表情で湖を見ていた。  
 「―あれは!」  
 遠くてはっきりとは見えない、しかし水上バイクに追われて、こちらへ向かってくる影が2つある  
 細長い蛇のような体と、羽を模した様な耳、口元の珠。  
 ただひとつ、通常の固体と違うのは、その体の色が抜けるような蒼ではなく  
 深く全てを包み込むような紫色ということだ  
 「ハクリューだ!しかも色違い!」  
 よくよく見れば、追われているハクリューは二匹とも色違いで、どうやらつがいの様だった。  
 「見て!あのバイクの上!!」  
 「あれは!」  
 サトシの目に、明らかな怒りの色が浮かぶ。  
 連中はポケモンハンターJの一味だった。  
 ポケモンハンターは様々な悪質な人物とつながり、指名手配対象にもなっている。 
 サトシはもちろん、ヒカリやタケシもその存在を許すことなどできなかった。 
 珍しいポケモンを『商品』として売り買いするような非道な連中だったからだ。 
 よくよく見てみれば、水上バイクは一台ではなく、3台いる 
 そのうちの一台は明らかにほかのものとは違っていて、それに乗っているのはJ本人だ。 
 「あいつらッ!!」 
 Jはまだ気がついていない様子だった。 
 しかしあのままこちらにハクリューたちが向かってくれば、必ず気づかれるだろう。 
 抑えきれずにサトシが前へ出ようとする。 
 しかし、後ろから伸びた太い腕がそうさせなかった。 
 力強く引かれて、草むらの中へサトシが引き込まれる 
 「サトシ!?きゃ!」 
 立て続けにヒカリも引き込まれた。 
 「サトシ!ヒカリ!ぅわ!」 
 残るタケシも、草むらの中へと引き込まれてしまった。  
 
- スレ1-97
 
- ハンターJ再び~湖に消えたヒカリ(前編)~
 - 07/09/08 23:20:30
 
 強い力で押さえつけられ、必死にサトシは抵抗する。 
 しかし耳元でささやかれた声は聞き覚えのあるもので、サトシは暴れるのをやめた 
 それを見て、同じく抵抗していたヒカリも暴れるのをやめる。 
 一方のタケシはいち早くその人物に気がついていたようで、草むらに隠れるようにしゃがんでいた。 
 「久しぶりだな、サトシ君」 
 「あなたはたしか・・・シバさん!?」 
 ポケモンリーグにおいて、セキエイとジョウトの四天王でもある人物。 
 格闘ポケモンを主流とするこの男に、サトシは見覚えがあった。 
 「誰?サトシ。」 
 「この人はシバさん、カントー地方の四天王だよ」 
 「じゃあ、ゴヨウさんと同じ・・」 
 「――!!静かに!」 
 ヒカリの言葉をさえぎるように、シバが静かに、しかし有無を言わさない口調でいう。 
 こっそりと草むらからのぞくと、ハンターJがいままさに、ハクリュー達を捕らえようとしているところだった。 
 「よし、おれが・・・」 
 立ち上がろうとしたサトシだったが、再びシバに肩をつかまれて制される。 
 「待つんだサトシ君。今出たら危険だ。相手が多すぎる。」 
 周りの取り巻きはおそらく普段のサトシ達でも倒せるはずだった。 
 しかしJがいるとなると話は別である。 
 Jは底知れぬ実力を持っている上に、何を仕掛けてくるかわからない。 
 下手に飛び出すのは、火中に入る虫の様な物だ。 
 「俺は警察と連携して、ハンターJを追っているのだが・・・。」 
 「それでシンオウに?」 
 「そうだ。Jはポケモンリーグからも捕縛命令が出てる。」 
 シバが言うことを聞いたほうがいい。 
 少し落ち着きを取り戻したサトシが身を引く。   
 「・・・・」 
 Jはハクリューの捕獲を部下に任せ、辺りを見回していた。 
 理由は単純だった。不自然だったからだ。 
 見たところ昼食の準備中だったようだが、火はかけたままの割に人は一人もいない。 
 火の番をしていない人間がいないのは不自然だ。 
 だとすれば隠れたのだろうが、ならばこの荷物の持ち主は自分たちのことを知っている人物ということになる。 
 「邪魔な種は芽が出ないうちにつまねばな・・・」 
 Jは静かに、腰のモンスターボールに手をかけた。  
 
- スレ1-100
 
- ハンターJ再び~湖に消えたヒカリ(後編)~
 - 07/09/08 23:50:08
 
 「そこか!」 
 Jがモンスターボールを草むらに投げ込んだ。 
 ボールが開き、大型のさそりポケモン、ドラピオンが出てくる。 
 ドラピオンは姿を現して間髪入れずに振り下ろす。 
 「ヒカリッ!」 
 サトシがヒカリを抱きかかえて倒れこむ。 
 「サトシッ!危ない!」 
 サトシはヒカリをかばって背中を向けていて、ドラピオンの二撃目に反応しきれない! 
 「サトシ君!」 
 シバはサトシたちをそこから引き剥がして飛びのいた。 
 「ぐぁっ!」 
 しかしそれは間に合わず、ドラピオンの毒爪がシバの足をかすった。 
 「シバさん!!行け!グレッグル!」 
 すかさずグレッグルが、二撃目を与えようとしているドラピオンを殴りつけた。 
 ドラピオンはわずかひるんだが、腕を振り回して反撃する。 
 「クロスポイズン」 
 ドラピオンの爪が光って、グレッグルを襲う。 
 グレッグルはそのまま目を回して気絶した。 
 「グレッグル!戻れ!」 
 モンスターボールにグレッグルを戻し、タケシはシバを安全な場所に移そうとした 
 「させん!」 
 ドラピオンの牙が、タケシを襲う。 
 「ピカチュウ!アイアンテール!」 
 そこにピカチュウが飛び込んできて、ドラピオンはそれを辛うじて防いだ。 
 「また貴様か・・・邪魔をするな!」 
 「10万ボルトだ!」 
 ピカチュウが電気をため、それを放つ。 
 電撃はすばやくドラピオンを捕らえたが、ドラピオンはそれをクロスポイズンで相殺した。 
 「何!?」 
 「シザークロス」 
 ピカチュウはドラピオンの攻撃を回避しきれず、倒れた。 
 「ピカチュウ!」 
 サトシがピカチュウに駆け寄る。 
 Jはそれを見つめながら冷たく言い放った 
 「貴様・・・われわれの邪魔ばかりして・・・。覚悟はいいな」 
 ピカチュウを固めた光線が、サトシを撃とうと向けられる。 
 「サトシ!危ない!」 
 引き金を引かれた瞬間、ヒカリはとっさにサトシをかばった。 
 「ヒカリ!」 
 駆け寄ろうとするサトシの目の前の地面が割れる。 
 サトシは急停止すると、攻撃があった方向を見た。 
 その横では、シバが肩で息をしながらJをにらんでいる。 
 「ハクリューは捕獲した。娘も連れて行け」 
 「はっ」 
 Jの部下が、ヒカリとハクリューを連れて行く。 
 サトシはそれを、ただ見ることしかできなかった。    
 
- スレ1-101
 
- ハンターJ再び~特訓~
 - 07/09/09 00:15:40
 
 「・・・ヒカリ・・・」 
 サトシはただ、Jが消えていった湖を見つめることしかできなかった。 
 「警察の応援はもうしばらくかかりそうだ。」 
 「もうしばらくって・・・ヒカリが危ないんですよ!?そんなに待ってられません!」 
 「落ち着けサトシ、ヒカリなら大丈夫だろう」 
 「そうだ、Jはポケモン専門のハンターだからな。だが急がなければいけないのは確かだ」 
 シバは荷物から一枚のメモを取り出した。 
 「Jにハクリューの捕獲を依頼した依頼主が、二日後直接ハクリューを引き取りに来る。それまでにヒカリちゃんを助けないと、Jはここを離れてしまう」 
 そのままシバは、つぶやくように話を進めた 
 「色違いのハクリュー、しかもそのつがいともなれば高額な値段で取引される。依頼があってもおかしくはないだろう。しかし奴の基地は湖の中だ・・・」 
 サトシもタケシも、そしてシバも水タイプのポケモンを持っていない。 
 「とにかく潜入方法を考えよう。それにサトシ君、君にはやってもらわなければならないことがある」 
 「俺がやらなきゃいけないこと・・ですか?」 
 「そうだ。こっちに来なさい」 
 ぐるりと湖を周回して、岸壁を流れる小さな滝のひとつに連れてくるなり、シバはサトシに胴着を渡した。 
 「俺はこのとおり、今脚が使い物にならない。基地に潜入するのはおそらく無理だろう。そこで―」 
 「君に潜入してもらう。そしてそこでおそらく君はJと戦うことになる」 
 サトシはうなずいた。 
 自分のために捕まったヒカリを、自分の手で助け出したいという思いが強くあったからだ。 
 「だが、今の君ではJのドラピオンは倒せないだろう。だが勝つ術はある」 
 「勝つ術って何ですか!?教えてください」 
 「奴のドラピオンの攻撃は二段攻撃だ。二段攻撃の前にはいかに強力な一撃もいなされる。それに打ち勝つためには、それを上回る3段攻撃しかない」 
 「三段攻撃・・・」 
 「そうだ、今から君にはこの滝を自らの手で切ってもらう」 
 「俺がですか!?」 
 サトシは驚きを隠せない。ポケモンに勝つ修行なのだから、ポケモンを使うものと思っていたのだ。 
 「二段攻撃を見切り、それ以上の攻撃を仕掛けるには、ポケモンの力だけでなくトレーナーが見切ってポケモンに教えてやる必要がある。」 
 「君にならできる。がんばれ」 
 サトシの修行が、今始まった。  
 
- スレ1-103
 
- ハンターJ再び~滝を見切れ!~
 - 07/09/09 00:42:09
 
 「・・・ここは・・・」 
 腕を動かそうとする。 
 しかし腕に痛みが走って、ヒカリは自分が鎖でつながれていることに気がついた 
 「私の基地だ」 
 モンスターボールは届かない位置においてある。 
 「貴様の処分は取引が終わってからだ、せいぜいそこで仲間の助けを待っていろ」 
 ヒカリはあえて何も言わなかった。 
 絶対にサトシは助けに来る。それがわかっていたからこそ、今のうちにJをしっかりとにらみつけておいた。   
 「くそっ・・・」 
 すでに日はくれ、夜行性のポケモンたちが活動を始めていた頃だった。 
 サトシとピカチュウはいまだ特訓を続けている。 
 シバが途中にあった滝を無視してこの滝を選んだのには、わけがあった。 
 この滝はテンガン山から運ばれてくる石や氷が滝に乗って落ちてくる。 
 そしてそれは問答無用にサトシを襲っていた。 
 「ダメだ・・・できない・・・。」 
 痛みと悔しさで、サトシは目をわずかに潤ませた。 
 「・・・」 
 シバは悔しかった。自分があそこで怪我をしなければ、サトシにこんなつらい思いをさせずにすんだかもしれない。 
 しかし今Jの基地に潜入してポケモンやヒカリを救出できるのはサトシ位の物だ。 
 シバは溜息をついて、サトシに歩み寄った 
 「その顔は何だ・・・。その目はなんだ!その涙は!その涙で・・・君の仲間を救えるのか!?」 
 今は彼が頼りだと、鬼になるしかなかった。 
 それでもサトシは折れない。であったとき、彼の目を見てそう思ったのだ。 
 はじめてあったときよりもたくましくなったと思う。 
 「滝がどちらに流れているのか。それを見極めるんだ。サトシ君」 
 「滝の・・・流れ・・・」 
 「滝を切ろうと思わず、その流れに沿ってすばやく攻撃するんだ」 
 「・・・」 
 滝をじっと見る。 
 滝の音が頭に直接浮かんでくる。 
 「いまだピカチュウ!アイアンテール!」 
 サトシの様子をすぐ後ろで見てたピカチュウが、光になって滝を駆けた。 
 いつもと違うのは電光石火の上乗せがあるという点だ。 
 ただスピードを乗せるのではなく、電光石火の一撃目で滝の水をはじき、アイアンテールを繰り出す。   
 そしてようやくサトシとピカチュウは滝を切った  
 
- スレ1-123
 
- ハンターJ再び~湖底基地を追え~
 - 07/09/10 00:36:21
 
 まだ日も昇りきっておらず、辺りは静かだった。 
 サトシとタケシ、シバは、Jのいる湖底基地に潜入するために、最終的な打ち合わせをしていた。 
 シバは地図を指しながら、湖に浮かんでいる二隻の船を睨む。 
 「まず、サトシ君のムクバードに俺のモンスターボールをくくりつける。それをあの見張りの船に落としてくれ。」 
 「その後、見張りの船の機能を停止させたら、サトシ君は湖の真ん中へ、そこに着けてある小船で行く。そして―」 
 シバが、反対側の岩壁を指しながら続ける。 
 「俺とタケシ君は、岸壁に上って岩を湖に落とす。Jの基地は今岩壁のそばにつけてあるからな。それで追い立てる。」 
 シバは地図をたたみ、さらに続けた。 
 「Jの湖底基地は移動式だが、前進すると同時に浮上することがわかっている。 
 サトシ君は俺が貸したチャーレムの未来予知を使って基地の上がってくる場所を予測、懐に入り込むんだ」 
 「わかりました」 
 サトシはチャーレムの入ったモンスターボールを握り締めた。 
 「失敗は許されない。気を張っていこう」 
 サトシとタケシは再び大きくうなずいた。 
 「よし、すぐに始めよう。サトシ君、ムクバードを」 
 「はい!ムクバード!君に決めた!」 
 ボールが開いて、中型の鳥ポケモン、ムクバードが羽ばたきながら出てきた。 
 ムクバードはシバからモンスターボールを受け取ると、空高く飛び上がり、やがて小さくなっていった。 
 「よし、俺とタケシ君は岩壁に回る。サトシ君は小船の準備を。行こう、タケシ君」 
 タケシとシバの姿が小さくなると、サトシも小船へと乗り込み、時を待った。   
 湖面は静かで、双眼鏡からは昨日反抗したトレーナー達のテントが見えた。 
 動く様子はない。ただひとり、Jに無謀にも向かってきた少年が小船で静かに何かを待っている以外は、変わったことは一つもなかった。 
 カシャ。 
 背後でそんな音がして、振り返る。 
 ムクバードが見えた。そして床には・・・ 
 「モンスター・・・ボール・・・?」 
 うまい具合に、開閉スイッチが床に触れて押されている。 
 そして中からキックポケモン、サワムラーが現れた。 
 「うわっ」 
 急に現れたサワムラーに、モンスターボールをとろうと腰をまさぐる。 
 しかし無常にも伸びてきた足がみぞおちを捕らえ、男は気絶した。 
 Jとの決戦が、幕を開けた。  
 
- スレ1-124
 
- ハンターJ再び~開戦~
 - 07/09/10 00:53:06
 
 妙な音と悲鳴に、休眠をとっていたほかの仲間も気がついたのか、金属製の扉が勢いよく開いた。 
 「おい!何だ今の音・・・ぐあ!!」 
 最後まで言葉を聴かず、間髪要れずにサワムラーがけりを入れる。 
 伸び縮みする最大の武器は、シバの育て方も手伝って、絶大な破壊力とスピードを生んだ。 
 見張りは次々と事態を把握する前になぎ倒されていく。   
 「A班どうした!?応答しろ!・・・くそっ!!」 
 何があったのか、事態を把握する前に同じ見張りの船が機能を停止したことに、スキンヘッドの大柄な男が受話器をたたきつけた。 
 いったい何があったというのか・・・。異変はないはずだ。 
 「班長!!大変です!」 
 「どうした!?」 
 「か、甲板が凍り付いています!」 
 「ん何ぃ!?」 
 あわてて甲板へ出る。 
 すると事態の収拾に甲板へ出した班員3名が伸びていた。 
 ただひとつ、無事な影があるが、それはこの船の誰も持っていないポケモンだ 
 「何でこんなところにエビワラーがいやがるんだ!?」 
 こちらを見やったパンチポケモンは、にやりと笑う。 
 「こんの・・!」 
 男が、悔しがって前へ出たそのときだった。 
 「うおわ!!」 
 さっき以上に、床が凍りついている。 
 ぶつけた頭を抑えながら起き上がろうとするも、急には立ち上がれない。 
 エビワラーが即座に床に放った冷凍パンチは、隙を作るのに十分だった。 
 逃げようと張って扉を閉めようとするも間に合わず、男と甲板の異常事態を知らせに来たその部下は連続パンチによって沈んだ。   
 「何事だ」 
 Jは湖面の異変に気がついたのか、すぐさま部下に事態を把握するように命じた。 
 見張りの船には各五人の部下を乗せていただけに、予想外の事態だった。 
 眉を不機嫌そうに寄せながら、わずかに唇を噛む。 
 誰が何をしたのか、予想はついた。あの子供だ。 
 奴が何かをしたに違いない。そう思ってJは踵を返す。 
 「私が直接出る。浮上ポットを用意しろ!」 
 「はっ!」 
 「私を散々馬鹿にしてくれた見返りをつけてやる・・・。」 
 Jが再び唇を噛むのをみて、部下は体に寒気が走るのを感じて息を呑んだ。  
 
- スレ1-126
 
- ハンターJ再び~勇気ある戦い1~
 - 07/09/10 01:08:00
 
 辺りが騒がしくなっている。ヒカリはそう感じながら、何とか脱出する方法を考えていた。 
 何かないか・・・注意深く床を見回す。 
 すると甲板のハッチが開いて、Jが潜水ポットで逃げていくのが見えた。 
 「きゃ!」 
 その直後、大きな揺れがヒカリを襲う。 
 上でタケシとシバが落としている岩の衝撃が、基地を揺らす。 
 ぐらぐらと地震の様に揺れ、プラスチック製のパイプとモンスターボールがテーブルから落ちる。 
 「あっ!」 
 この距離ならモンスターボールを取れるかもしれない。 
 必死に足を伸ばしてこちらへ引き寄せる。 
 しかし再び来た揺れが、モンスターボールを遠くへ転がそうとしていた。 
 「あ!まって!」 
 とっさにヒカリは、すぐ横のプラスチックパイプを蹴っていた。 
 端を蹴られたプラスチックパイプは回転して、再びモンスターボールを、さっきよりもヒカリの近くに寄せる。 
 「これなら・・・だいじょー・・・」 
 再び足を使ってこちら側に転がす。 
 「ぶ!」 
 床と足の裏を利用して、開閉スイッチを押した。 
 「ポチャ!」 
 ボールから愛くるしい姿のポッチャマが現れる。 
 「ポッチャマ!腕の鎖を壊して!」 
 「ポチャ!」 
 ポッチャマが鎖を固定している部分をつつくで攻撃し続ける。 
 その衝撃で鎖の鍵はだんだんと弱まり、やがて片手の鎖が取れた。 
 床に転がっているもうひとつの、ブイゼルのはいったボールをとって、開閉スイッチを押す。 
 「ブイゼル!ソニックブーム」 
 「ブイ!」 
 ブイゼルの尾が光って、空気の刃を鎖にたたきつけた。 
 もう一方の鎖も切れ、ヒカリはようやく、地に手をつけることができた。 
 「さあ、はやくここを脱出しましょ」 
 二匹をボールに戻し、ヒカリは単身、基地から脱出するために部屋を出た。  
 
- スレ1-127
 
- ハンターJ再び~勇気ある戦い2~
 - 07/09/10 01:25:45
 
 「くっ!いったいなんだこの揺れは!」 
 「上の岩壁から落石の模様です!このままでは外壁が持ちません!」 
 「やむおえん!基地を前進させろ!すぐにここから離れるんだ!」 
 つばを飛ばしながら、髭面の男が怒鳴り散らす。 
 メインのコントロールルームは、単純な基地の前進、交代、通信しかできない。 
 ほかは気圧の調整装置やら何やらが詰まっていて、上で何が起こっているのかを通信なしに把握するのは難しかった。   
 一方ヒカリは、動き始めた要塞と、はめ殺しの窓を見て自分が湖の中にいることを把握した。 
 脱出を優先したかったが、あのハクリューやほかのポケモンたちもつかまって、どこかに閉じ込められているはずだ。 
 幸いここは小さな基地なのか、現在地のようなものを記したものもあって、ヒカリはそれでどのあたりを探せばいいのか見当をつける。 
 「ここは真ん中の階なんだ・・・。上は操縦室みたいだし・・・。下かな・・・?」 
 船のことは良くわからないが、貨物船やなんかはしたに荷物をまとめていたきがする。 
 だとすれば、ポケモンたちもそこだろうか。 
 (行ってみよう。・・・足音だ!) 
 「ばたばたとあわただしい足音が、上から降りてくるのが聞こえる。」 
 ヒカリはとっさに身を隠した。 
 「浮上調整のボタンは一番下だよな?」 
 「ああ、浮上調整しないと湖面に出ちまう」 
 (浮く為のボタンも下にあるんだ・・・!) 
 ならばついでにそれを押してしまおう。 
 そうすれば、ブイゼルで脱出できる。 
 ヒカリは男達が通り過ぎるのを見計らって、階段へ向かった。   
 「まってろよ・・・必ず助けてやるからな、ヒカリ。」 
 ピカチュウも隣で、気合の入った声を出す。本当に心強い。 
 「チャーレム、どうだ?」 
 「レム・・・」 
 チャーレムはさっきから何かを感じ取っているのか、瞑想の体制に入っている。 
 アサナンやチャーレムは考え込むと長いと聞いたことがあるが、こういう姿を見ていると納得できる気がしていた。 
 「ピカ?」 
 不意に、ピカチュウが耳をそばだてた。 
 「チャーレム」 
 チャーレムも瞑想をとく。 
 何かが来ている。そう伝えるようだった。そして海面が盛り上がり― 
 「J!」 
 「・・・」 
 目の前に現れてのはまさしく、憎むべきJその人だった。  
 
- スレ1-128
 
- ハンターJ再び~勇気ある戦い3~
 - 07/09/10 01:45:09
 
 階段を下りると、下には大きな部屋が二つあって、男達そのうちの一つに入っていった。 
 「きっとここだわ・・・」 
 ヒカリは見つからないよう、反対側の部屋にはいる。 
 部屋は冷たいタイルが敷き詰められている無機質なもので、入り口以外にも、もうひとつ扉があった。 
 扉の前まで来ると、ぼそぼそと話し声が聞こえる。 
 隣の部屋とつながっている様子だった。 
 「今入ったらまたつかまっちゃうわよね・・・。」 
 静かに踵を返して、奥にかけてある大きな布を取り払う。 
 案の定、中には捉えられたポケモンたちがいた。 
 もちろんあのつがいのハクリューもいる。 
 「まってて、今助けるから」 
 石化の解除ボタンを押す。 
 するとケースと一緒に石化は解けて、ハクリューは自由の身になったことをもう一匹と共有した。 
 ほかにつかまっているのはサイドンやトリトドン、サーナイト・・・。 
 石かを解除してみれば全てが色違いで、ヒカリはぽかんと口を開ける。 
 こんなにも色違いがそろっているのを見るのは、最初で最後だろう。 
 「みんな、早く脱出しましょう。隣にこの基地を浮かばせるスイッチがあるみたいなの、手伝って!」 
 助けられたポケモンたちは、Jへの怒り、そして助けてくれたヒカリへ恩返しだといわんばかりに頷いた。   
 ゆっくりと扉を開く。 
 思ったとおり扉は隣の部屋につながっていて、中にいた二人の男が気づく 
 「あ!おまえ!すぐに取り押さえろ!」 
 男達がモンスターボールを投げる。 
 中からはゴルバットやヤミラミ、マグカルゴが、すぐにでも攻撃できるような体制で出てきた。 
 「ポッチャマ!ミミロル!お願い!」 
 ヒカリはポッチャマとミミロルで応戦する。 
 「そんなポケモンで何ができる!やっちまえお前ら!」 
 一斉に三匹が飛び掛るのを見て、男は他愛もないと言わんばかりににやりと笑みをこぼした。壁を突き破って、破壊光線がポケモンたちを襲ったのだ。    
 
- スレ1-129
 
- ハンターJ再び~勇気ある戦い4~
 - 07/09/10 01:58:49
 
 ↑ 文が長すぎますと言われたので分削ったら残っている文があった。 
 見なかったことにしてくれ。   
 ドンッ! 
 大きな衝撃が耳を劈いた。 
 壁を突き破って、破壊光線がポケモンたちを襲ったのだ。 
 何事かとその方向を見やれば、ハクリューやサイドン、サーナイトなんかの捕まえたはずのポケモンたちがこちらを見ている。 
 しかし、その目は笑っていない。獲物を見つめる目だった 
 「っく!」 
 あわてて新しくポケモンを出そうとする。 
 しかし体がぴたりと動かなくなって、それはかなわなかった。隣にいる仲間も同じ様子で、ぽかんとしている。 
 サーナイトがサイコキネシスを使って、動きを止めている。 
 その横では、サイドンが突進の構えを。ハクリューは再び破壊光線の準備をしていて。男達は顔を青くしていく。 
 まさに血の気が引くような光景が、やけにゆっくりと自分達を捉えるのを感じる。 
 「や、やめっ・・!」 
 聞く耳持たずといわんばかりに、突進でたたきつけられ、破壊光線を浴びせられ、男達は口から煙を吐きながら気絶した。 
 破壊光線の熱で髪が波打って、どこぞのロックミュージシャンのようになっている。 
 「すごい・・・あ、この潜水艇を浮かせるボタンてどれだろ」 
 見てみると、赤と黒二つのボタンがある。 
 どっちだろう・・・。 
 「黒といえばサトシよね。」 
 そんなことを言いながら、なんとなく黒を押す。 
 ポッチャマはそんなんでいいのかという目で見つめていたが、あまり気にするほうでもなかった。 
 間違っていたらもう一つのほうを押せばいい。 
 黒のボタンを押すと、床の下で何かが抜けたような音がした。 
 上の画面が光って、送り込まれる空気と、排出される水の映像が出てくる。 
 そして潜水していた湖底基地は、前進しながらの少しずつの浮上から、真上の浮上に切り替わった。 
 「やったぁ!」 
 そしてヒカリとポケモンたちは、喜びの歓声を上げた。  
 
- スレ1-130
 
- ハンターJ再び~基地GO!GO!GO!~
 - 07/09/10 02:14:14
 
 日はすでに昇り、夏とはいえシンオウの朝の冷たい空気がサトシを包んでいた。 
 目の前にいるJは、おそらくそれよりも冷たい目をしている。 
 正直、まずかった。 
 小船の上ではまともに動けない。 
 つまり逃げ場がないということだ。 
 戦う場所がないのは、Jも同じなのか、すぐには仕掛けてこない。 
 だが攻撃してこないとも限らない。 
 しばらく対峙していると。突然湖面が大きく盛り上がって、小船を揺らした。 
 「おわっ!」 
 「何だ!」 
 Jが振り返る。 
 サトシはその一瞬を見逃さなかった。しかも後ろに現れたのは、おそらくは目指す湖底基地だ! 
 「ピカチュウ!アイアンテール!」 
 「ッ!!」 
 腕の通信機で防いだJだったが、ゆれる湖面のせいでバランスを崩し、湖に落ちてしまう。 
 「いまだ!行くぞピカチュウ!」 
 サトシは急いでチャーレムを戻し、ピカチュウとJがのっていた潜水ポットに乗り込む。 
 これはジェットスキーにもなる代物だ。 
 レバーを引くとスクリューが回転して、勢いよく発進した。 
 「くそ!ボーマンダ!!」 
 Jもボーマンダに乗り、サトシを追う。 
 サトシはちょうど基地の側面、平らになった甲板上の場所に飛び乗ると、ヒカリを探すために中へと入っていった。  
 
- スレ1-134
 
- ハンターJ再び~vs.J~
 - 07/09/10 23:05:43
 
 無機質な廊下には点々と照明がつけられており、閉鎖的な基地内をさらに狭く感じさせる。 
 しかしサトシにとって、その廊下はとても長く感じられるものだった。 
 「ヒカリー!!どこだー!!」 
 立ち止まる暇はない。 
 Jが追ってくるのは目に見えている。 
 しかし、闇雲に走ったのが災いして袋小路に入ってしまった。 
 「そこまでだな・・・。」 
 Jが静かに、しかし確実に詰め寄っている。 
 「くそっ・・・!」 
 サトシは何よりもまずヒカリの救出を優先したかった。 
 しかし、それはJを倒さなければかなわないと覚悟を決める。 
 「頼むぞ!エイパム!」 
 「エイパ!」 
 ボールから意気揚々と飛び出してきた尾長ポケモンは、狭い船内を有効に活用するために決めていた手の一つだ。 
 「ボーマンダ。破壊光線。」 
 Jの投げたボールから出てきたボーマンダが強力な一撃を加えるが、エイパムは壁を蹴ってそれをかわした。 
 破壊光線で壁に大穴があく。さすがに威力は伊達ではない 
 「スピードスター!」 
 星型の光線はエイパムが自ら回転したパフォーマンスにより螺旋状に発射され、ドラピオンを襲う。 
 しかしボーマンダはそれを翼で防ぎものともしない。 
 しかしそれは同時に、ボーマンダの視界を狭めている要因でもある。 
 エイパムは床に着地してすぐに飛ぶと、すばやくドラピオンの懐に入り込んだ! 
 「いまだ!気合パンチ!」 
 力を込めて、拳をたたきつける。 
 ボーマンダの巨体がぐらりと揺らぐ。効いた! 
 「もう一度だ!気合パンチ!」 
 拳のように固められた強力な一撃がボーマンダの頭を打とうとする。 
 「頭突きだ」 
 防がれた。しかしこれが待っていた瞬間だ。 
 「エイパム、その体制でスピードスター!」 
 再びスピードスターがボーマンダを襲う。 
 しかしそれはさっきの牽制技ではない。至近距離から大量に叩き込まれたスピードスターは、ボーマンダをひるませるのには十分だった。 
 「とどめの気合パンチ!」 
 エイパムは落下のすれ違いざまにボーマンダのあごに気合パンチを叩き込んだ。 
 「何!?」 
 ボーマンダはその巨体はゆっくりと傾けるとそのまま倒れて動かなくなった。    
 
- スレ1-135
 
- ハンターJ再び~~
 - 07/09/10 23:06:56
 
 ↑ ぽけもんのなまえドラピオンになってるところがある・・・。 
  ボーマンダに脳内変換してください。  
 
- スレ1-136
 
- ハンターJ再び~再開。最前線より愛を込めて~
 - 07/09/10 23:21:32
 
 「くっ!戻れボーマンダ!・・・ただ闇雲に向かってきたわけではないということか・・・」 
 Jがサトシを睨む。 
 一方のサトシもそれに怖じることなく、Jを睨み返した。 
 「ドラピオン!」 
 Jがモンスターボールから出したのは、やはりばけさそりポケモンのドラピオンだった。 
 大きく発達した二本の腕のパワーの恐ろしさは、よく知っている。 
 「戻れエイパム!」 
 サトシはエイパムをモンスターボールに戻す。 
 ドラピオンとの決着はピカチュウでつけておきたかった。 
 「頼むぞ、ピカチュウ」 
 足元にいたピカチュウは頷くと、果敢に飛び出す。 
 本当に頼もしいパートナーだ。 
 「ドラピオン!シザークロス!」 
 「ピカチュウ!10万ボルト!」   
 「みんな、急いで!」 
 水中から脱出できたのはよかったものの、ヒカリは基地から脱出できずにいた。 
 大量のJの一味に追われているのだ。 
 攻撃すればいい話かも知れないが、場所を選ばないと大変なことになる気がする。 
 「嘘ッ!?行き止まり!?」 
 追い詰められてしまった。 
 (どうしよう・・・) 
 こうしている間にもじりじりと敵は詰め寄ってくる。 
 するとサーナイトが前へ、ハクリューたちは光を守るように左右へ。 
 そしてサイドンは真後ろに回り、壁に向かって、助走をつけ始めた。 
 「みんな・・・」   
 「ピカチュウ!アイアンテール!」 
 「ドラピオン、クロスポイズン。」 
 戦いはどちらも譲らない、一進一退の攻防だった。 
 しかし長期戦は体の小さなピカチュウにとって不利だ。 
 さっきの攻撃で見破られたのか、同じように連続攻撃しても防がれ、返されてしまった。 
 もしヒカリならばどうするだろうか。 
 サトシがそう考えた瞬間、後ろの壁が粉々に砕けて、サトシもJも何事かと壁を見やった 
 その壁の向こうにいた少女も、こちらに気づいたのか驚いた様子だ。 
 「「あ・・・」」 
 お互いに間違えるはずはない。あの声は、あの服は、あの髪は・・・。 
 「ヒカリ!」 
 「サトシ!」 
 作戦開始から4時間、サトシとヒカリはようやく再開を果たした。  
 
- スレ1-139
 
- ハンターJ再び~背中合わせの戦い~
 - 07/09/10 23:37:44
 
 今まで頼れる人間がいなかったヒカリも、そしてヒカリを何よりも助けたかったサトシも、 
 予期せぬ遭遇に自然と気持ちが高ぶった。 
 「助けに来てくれたの!?」 
 「当たり前だろ?ヒカリは俺の・・・」 
 サトシは途中で言葉を切った。 
 今は再開を喜んでいる暇はない。 
 「ヒカリ、またタッグバトルだな。しっかりやれよ」 
 「ええ、サトシもね。」 
 二人はぴったりと背中をくっつけた。 
 お互いの体温が溶け合ったような感覚があって、自然と安心できた。 
 敵は迫ってきている。だけど今なら、その苦境を跳ね飛ばせる気がした。 
 「ポッチャマ!ミミロル!お願い!」 
 外見はかわいらしい、しかしやる気満々の二匹が、ボールから勢いを区飛び出す。 
 バブル光線が、冷凍ビームが、迫ってくるJの部下をなぎ倒していく。 
 「いくぞピカチュウ!」 
 「ピッカァ!」 
 ピカチュウとサトシも、気合を入れなおした。 
 「ふん。まとめて蹴散らしてやる!ドラピオン!シザークロス!」 
 ドラピオンが交差した腕を、ピカチュウに叩き付けんと迫る。 
 「ピカチュウ!電光石火!」 
 天井を蹴り、Jの足元を駆け抜ける。そしてピカチュウはドラピオンの真上にとんだ。 
 「何をする気かはわからんが・・・ドラピオン!迎え撃て!」 
 ドラピオンが、力をためた腕を振り上げて待ち構える。 
 「クロガネジムでのバトルを思い出せピカチュウ!回転しながらアイアンテール!!」 
 ピカチュウが、空中で逆さになりながらもきりもみ回転を始める。 
 その落下速度にあわせ、それを殺さないように体を反転し始めた。 
 ドラピオンの腕が、ピカチュウを捉える! 
 「いまだ!いけピカチュウ!」 
 「ピッカァ!!」 
 クロスされたドラピオンの腕が、ピカチュウを襲う。 
 しかしピカチュウはそれをクロスに対する同じ方向の回転の勢いで無効化した。 
 そしてその尾を、両腕にたたきつける。 
 ドラピオンのうでが、痛みで力なくだらりと倒れた。 
 「止めだ!ボルテッカー!!」 
 電気と光の玉となったピカチュウが、ドラピオンにぶつかると、大きな爆発とともにドラピオンは力なく倒れた。  
 
- スレ1-140
 
- ハンターJ再び~ハイタッチ~
 - 07/09/10 23:59:26
 
 「な、何だこれは!!」 
 Jのドラピオンがサトシとピカチュウの前に破れ、 
 ヒカリのポケモンと救出したポケモンがあらかた追ってきたJの部下を掃除した丁度その時だった。 
 ドラピオンを顔を歪ませながら戻すJ、それに対峙している少年少女が、依頼したポケモンたちと基地を破壊している。 
 「な、なぜ私の依頼した色違いのポケモンのコレクションが逃げ出して・・・」 
 その言葉の意味を理解してか、助け出されたポケモンたちの表情に、また怒りが宿っていく。 
 「お前が依頼したのか!?」 
 「ち、違う、私は何も知らない・・・ヒ、ヒィッ・・!」 
 サイドンやハクリュー、サーナイトにじりじりと詰め寄られ、男は悲鳴を上げた。 
 サトシとヒカリも、ポケモンたちの怒り様に肌が粟立ったくらいだ。 
 それを集中して浴びている本人の恐怖は相当なものだろう。 
 サイドンとハクリューが、口元にエネルギーをため始める。 
 サーナイトは足が竦んで動けない男にサイコキネシスを浴びせて、さらに逃げ場を失わせていた。 
 「や・・・、やめっ・・・!」 
 ドン!! 
 基地に大穴が開いて、男の悲鳴はだんだんと遠くなっていった。 
 破壊光線を一斉に現況に浴びせてすっきりしたのか、ポケモンたちは吹っ切れた表情だ。 
 サトシとヒカリはその様子を、自業自得だと見てみぬふりを決め込むことにし、再びJに振り返る。 
 「あれ?」 
 Jの姿は、忽然と消えていた。 
 逃げたのだろう。 
 基地を破壊され、依頼主がああなって、しかもポケモンが逃げたのではJもあきらめるほかない。 
 ジュンサーにJを引き渡すことができなかったのは少し残念だったが、それよりも二人はお互いに再会できたことに喜びを感じていた。 
 「やったね、サトシ!」 
 「ああ、ヒカリも無事でよかったよ。Jにも一泡吹かせてやれたし・・・。」 
 二人はどちらからでもなく、お互いの手を叩いた。 
 ありがとうと、そしてお互いの喜びを込めて。 
 今回のハイタッチは、ぜったいに忘れてはならない。忘れられない思い出になる。 
 お互いにそう思えて、二人は顔をあわせて笑った。 
 外の湖面ではタケシとシバが、二人を待っている。迎えに来てくれたようだ。 
 「さ、いこうぜヒカリ。タケシ達が待ってる。」 
 「うん」 
 ヒカリはサトシの手をとり、そしてまた、仲間の元へと走った。  
 
- スレ1-141
 
- ハンターJ再び~エピローグ~
 - 07/09/11 00:05:47
 
 その後、駆けつけた警察隊が基地に残っていたJの部下を拘束、逮捕した。 
 サトシたちも事件の当事者ということでいろいろ聞かれたが、 
 ジュンサーがありがとう。といってくれただけでも、 
 そしてポケモンを助けられたことを考えても、この騒動に巻き込まれた意味はあっただろう 
 ただひとつだけ。サトシには心残りがあった。 
 シバに礼をいえないまま、シバがまた行ってしまった事だ。 
 Jに勝てたのはシバのおかげだと、サトシ自身がわかっている。 
 ヒカリと一緒にお礼を言おうと思ったのに、すっかりおいていかれてしまったのだ。 
 テントに一枚。 
 『協力してくれてありがとう、いつかポケモンリーグで会おう。私が沈む夕日ならば君達は明日の朝日だ』と書かれた手紙を残して。   
 サトシ一行はまた、夢に向かって歩き出している。 
 超えるべきものを超えるために。 
 かなえるべき夢をかなえるために。 
 シバが手紙に書いてくれたように、朝日になれるために。  
 
- スレ1-142
 
- ハンターJ再び~~
 - 07/09/11 00:07:27
 
 とりあえずハンターJ再びは、これにて幕を閉じました。 
 ここまで目を通してくださった皆さんありがとうございました。 
 調整ミスによる文のミスなんかもいくつかありますが、多めに見てやってください。